こんばんは! Machinakaです。
今回批評するのはこちらの映画
「マルティニークからの祈り」
http://blogs.c.yimg.jp/res/blog-de-de/gunsowssi/folder/672323/98/26177298/img_2?1454842839
はい、韓国だと2013年に、日本だと2014年の秋に公開しました。私はTOHOシネマズシャンテで鑑賞しましたが、その時はブログを持っておらず、Yahoo!映画でコメント書いただけだったんです。
1.なぜ今になって?
たまたま、今日家でブルーレイを見返したからです笑
また、先週シークレットサンシャインを見て、チョン・ドヨンの演技に感動、、というかトラウマが植え付けられたからです(良い意味で)
こちらの映画もおすすめす! ただ、病んでる時には絶対に見ないでください!!!
一言でいえば、普通の人があまりにも不幸な事件によって壊れていく様子を描いてます。
やはりチョン・ドヨンにハズレなし!
と思って、「マルティニークからの祈り」を紹介することにしました。
私にとって非常に大事な作品だったので、今一度解説させてください。
1.あらすじ
http://images.ciatr.jp/2014/08/マルティニークからの祈り4.jpg
言葉も通じない異国の地で、身に覚えのない罪で投獄された平凡な主婦が、家族のもとへ帰るために苦闘した約2年間を描いたドラマ。2006年に韓国で放送されたドキュメンタリー番組でも紹介されて反響を呼んだ、1人の女性の実体験を映画化した。04年10月30日、夫と娘がすべてのごく普通の主婦ジョンヨンは、フランスのオルリー空港で突然逮捕される。貧しい生活のため生活費のたしになればと、南米からフランスまで「金の原石」を運ぶ仕事を引き受けていたが、運んでいたものは石などではなく、麻薬だった。騙されていたジョンヨンだったが、異国の地で言葉も分からず、弁解の余地も与えられないまま、フランスの海外領でカリブ海に浮かぶマルティニークの刑務所へ送られてしまう。主演は「シークレット・サンシャイン」でカンヌ映画祭女優賞を受賞したチョン・ドヨン、夫役に「超能力者」「高地戦」のコ・ス。「容疑者X 天才数学者のアリバイ」で知られる女性監督パン・ウンジンがメガホンをとった。
主演はチョン・ドヨンさん
http://www.hf.rim.or.jp/~t-sanjin/image/chondoyon_p.jpg
韓国を代表する女優さんです。
韓国だけでなく、ハリウッド映画にも出演する国際的な俳優さん
この人の凄いところは、演技力もさることながら、徹底した役作り。
一言でいえば、作品のたびに顔が変わるんです。メイクとか髪型という外見以外に、骨格というか表情というか、、、
こちらがマルティニークからの祈りのチョンドヨン
http://www.martinique-movie.com/images/cast1_photo.jpg
こちらがシークレットサンシャイン(左)のチョンドヨン
http://www.siff.jp/siff2009/image/movie/017.jpg
こちらが無頼漢のチョンドヨン
http://movie.jorudan.co.jp/cinema/images/320/1012677_01.jpg
2.事実は小説より奇なり
この映画ですが、本当に韓国であった話をベースに映画化したものです。
2004年に起こった、チャン・ミジョン事件を題材にした映画になってます。
夫の借金を返すために、妻が知人の紹介で「フランスに行って帰ってくるだけで大金をあげる」という怪しい仕事を真に受けてしまい、フランスの空港で麻薬所持の罪で捕まってしまいます。
フランスで捕まってしまったため、裁判は韓国ではなくフランスで受けることに、、、と思いきや大使館の怠慢で裁判が受けられず、なんと2年もフランスの刑務所に入れられてしまいます。しかも、その大半はフランス本国ではなく、カリブ海のマルティニーク領の刑務所で地獄のような生活を送ることに。アメリカのドラマ、「オレンジイズニューブラック」の刑務所が天国に思えてきます。
何となくイメージで分かると思いますが、海外で裁判を受けるためには通訳や書類の翻訳が必要となり、大使館を通さないと絶対に裁判を受けられません。
この映画の場合だと、韓国→在フランス韓国大使館→フランス裁判所という経由で裁判が始まるべきなのですが、大使館がヘマしたんですよ!! 公務員が信頼できないという、恐ろしい話なのですが、そこをどう乗り越えたのかは、映画をご覧になってください!
こちらは韓国でドキュメンタリー番組として放送された「追跡60分」の写真。
http://img.yaplog.jp/img/18/pc/y/a/m/yamu98/66/66213.jpg
フランスで逮捕された女性は、逮捕当時は4歳の娘がいました。その子に2年間会えないという苦痛を、異国のフランスで体験するのです。フランス本国ならまだしも、マルティニークで韓国人など暮らしているはずがありません。言葉が全く通じない世界で自分の将来がどうなるか分からない。娘と夫とも会えない。こんな地獄ありませんよ。
とにかくこの映画では言葉が通じなくてすれ違ってしまう描写が多いのですが、これって日本人にも当てはまることだと思いました。英語も上手く話せない日本人だって、ちょっと間違えば海外で捕まってしまうこともあるのです。
3.救いようのない描写が上手すぎる
痛みであったり、不安になったり、とにかく救いようのない描写を撮らせたら、世界で韓国映画に敵う国はないと思っています。
キム・ギドクを代表するように、苦しい描写は韓国映画の18番です。
この映画の場合、最初はごくごく普通の家庭生活から始まりますが、、
・夫の借金が発覚→まぁよくある話だわな
・妻がフランスで逮捕→おい、まぁ面倒な事件に巻き込まれたな
・裁判がいつまでも受けられない→え、これどうなるの?
と、映画のスタートからずっと人生の下降線を辿っていくんですね。笑いのシーンはほとんどなし。ずっと苦しい描写が続きます。
これ以上はネタバレになるので言いませんが、つかの間の休息がないんです。映画館で見ている時には、逮捕された母親があまりにも可哀想で、そして大使館の連中が本当に憎たらしくて、「悲しみ」と「殺意」という、非常にネガティブな感情を持ちながら鑑賞することになってしまいました。
映画が進めば進むほど、事態は悪化していく。裁判を受けるのが早いのか、母親が自殺するのが早いのか、本当にソワソワしながらの映画鑑賞でした。
この映画の凄いところは、人体損壊なしにエグイ描写を伝えているんですよ。ただの書類が、ただのロッカーが、この映画では拷問器具のように見えるのですから、映画の力は恐ろしい。。
4.奈落の底からのまさかの大逆転劇
映画につられてとことんネガティブな文章ばかり書きましたけど、安心してください。実話ベースだからネタバレしてもいいと思いますが、逮捕された母親は現在では無事に韓国に帰国できてますし、夫と娘も健在です。
つまり、実話である以上はエンディングはハッピーエンドに仕上げなければいけない訳です。映画の途中までは、何も救いようがない、これぞ地獄だ、と思いながら映画を見ていた。
しかし、あることをキッカケに韓国国民全員が味方に付きます。そして、権力に立ち向かう様子が描かれます。
そこに最高のカタルシスがあるんですよねーーーー!!!
映画館であれだけガッツポーズをしたのも珍しいです。とにかく、アッと驚く方法で大使館に立ち向かい、無事に裁判を受けられることになります。
裁判が決定する運びからは、ギャグシーンも増えたりとにかく映画が明るくなります。とにかく、映画を見ていてどんなに辛くても、途中でやめないでじっと我慢してください!!
前半が悲壮感、敗北感がたっぷりだった反面、最後のカタルシスは最高ですよ!!
・日常が一番幸せだと感じることができる「喜」び、
・怠慢な大使館のお役所仕事、人柄に「怒」りを感じ、
・娘と夫、そして韓国を奪われた一人の母親が背負う、究極の「哀」しみ
・最後の最後で大逆転、悪をやっつけるカタルシスが味わえる「楽」しみ
まさしく「喜怒哀楽」の全てが詰まった大傑作です。
この映画がなかったら、私が韓国映画を見ることはおろか、映画館に足を運んでなかったかもしれません。
というわけで、超オススメです!!!
あなたの1クリックが、新しい記事を作ります!