こんばんは! Machinakaです。
今回批評する映画はこちら
「素敵なサプライズ」
https://img.cinemacafe.net/imgs/thumb_h1/221812.jpg
はい、初めてのオランダ映画になります!
コメディ映画との触れ込みだったので、とっても気楽な気持ちで鑑賞してまいりましたー!
1.あらすじ
「キャラクター 孤独な人の肖像」で第70回アカデミー外国語映画賞を受賞したマイケ・ファン・ディムが監督と脚本を務め、オランダの大富豪が自殺ほう助を裏稼業とする謎の代理店を訪れたことから巻き起こる騒動を描いたコメディ作品。何不自由ない日々を送る大富豪のひとり息子ヤーコブは、楽しみのない人生に嫌気がさし、自殺を試みるが、常に邪魔が入り自殺できずにいた。たまたま拾ったマッチ箱に記された謎の「代理店」をベルギーまで訪ねると、その店は事故に見せかけて自殺をほう助するサービスを提供する旅行代理店だった。主人公のヤーコブ役を演じるのは「LOFT 完全なる嘘(トリック)」などに出演しているコメディ俳優イェルーン・ファン・コーニングスブリュッヘ。
はい、「こんなコメディ見たことない!」と宣伝しているように、とっても変な設定の映画です。なぜなら、主人公に自殺願望があり、死ぬために奔走する映画だからです。
そんな主人公はオランダの貴族。高級車を乗り回し、ベルサイユ宮殿のような豪邸を持ち、イケメンで性格も良い。全く死ぬ要素などない一人の男に、焦点が絞られた映画です。
主人公が生きるためではなく、死ぬために頑張るというなんともブラックなコメディ映画ですが、その感想は、、、、?
2.映画の感想
ちょっとお上品な死生観勉強映画でした
主人公が死ぬために奔走するコメディと聞いてたのですが、思ったより不謹慎なブラックジョークはなく、死に対して非常に真摯な描き方をしていると思いました。
なので、腹一杯笑いたいと期待している人には、お勧めできません。爆笑したいなら、隣国のベルギー映画がお勧めです。
www.machinaka-movie-review.com
ちなみに、主人公は40歳でまだまだ働き盛り。持病も借金も家庭もナシ。しかも大金持ち。客観的に見たら、自殺する必然性が全くない人なんです。
映画の冒頭から、主人公は「あぁ死にたい、死にためにはどうしたら?」とひたすら考えて行動します。この設定を受け入れられるかどうかが、本作の肝だと思います。
つまり、自殺願望が強い人が主人公なんです。「こんな若いのに死ぬなんておかしい!」と怒る人は、絶対向いてない映画です笑
この映画がオランダ映画ということに大きな意味があって、オランダでは積極的な安楽死はおろか、自殺幇助まで認められている国なんですね。
つまり、主人公の自殺願望を許容できる国なんです。
安楽死や自殺幇助を容認できる人は面白いし、不謹慎だと考える人にとっては、つまらないでしょう。何より、「死生観を考える」という映画の見方ができているかどうかで、評価が大きく分かれる作品です。
そういう意味では、非常に人を選ぶ映画だと思います。
あとは、、、この映画は「間接話法」が非常に優れている映画だと思いました。セリフやタイトルで直接伝えずに、メタファーを多く入れている映画って意味です。
ただ、アート映画のように分かりづらいシーンがあるわけではなく、ヒントを見逃すことがなければ、大変わかりやすい映画だと思います!
と、非常に真面目な感想を述べてしまいました笑
なんかねー、コメディ映画なんですけど、あんまりふざけた言葉は使いたくないんですよねー。
「ヤベェwwww」
「ウケるwwww」
なんて表現は使いたくないんですよねw
なので、全体的な感想はこの辺で終わりにしたいと思います( ´ ▽ ` )ノ
3.宗教を知れば映画が分かる!?
とにかくこの映画は、「死生観」を勉強するためには非常にためになりました。
日本人にとっては、「死生観」という言葉は聞きなれないかもしれません。それもそのはず、無宗教が大多数の日本人にとっては、「死んだらどうなるか」という問いに対して答えを用意している人は少ないからです。
ネタバレしない程度で説明すると、この映画は様々な宗教がストーリーに深く関係します。
例えば、主人公のヤコブは「キリスト教カトリック」、主人公の恋人は「仏教」、主人公が契約した自殺幇助会社は「ヒンドゥー教」、それぞれの宗教の死生観が、キャラクターの人格形成に大きく影響しているのです。
それぞれの宗教の死生観をまとめてみましょう。
主人公
「キリスト教カトリック」
https://www.celavi.net/wp-content/uploads/a0023_000016.jpg
死とは、人情的な面から見れば、たとえ一時的な事とはいえ、死 によって親子夫婦兄弟朋友の様な近い縁につながれた者と別れなければならない
www.geocities.co.jp/HeartLand-Gaien/2696/mors.html
主人公の彼女
「仏教」
https://www.jyofukuji.com/06kokoro/2001/img/07-1.jpg
輪廻転生:すべての生けるものは生と死を永遠に繰り返す。死んでも、何処かで何かに生まれ変わる。生き続け、また死に、また生まれ変わる。
https://www.geocities.jp/todo_1091/religion/020.htm
「ヒンドゥー教」
https://crea.bunshun.jp/mwimgs/3/a/586/img_3ad1087811a2a6b616df6fdbd3f89651104296.jpg
ヒンドゥー教においては全ての生命がひとつの輪となる神聖なものと考えられるため、すべての人には前世があり亡くなったあとには来世が待っている
https://ancestral-memorial-service.net/shiseikan/india/
大事なのは、これらの宗教の死生観通りに、キャラクターは行動していくのです。なので、この法則が分からない人は行動原理がわからない構造になっています。
なので、「あのキャラクターがなんであんな行動をしたの!?」と不思議に感じている人は、単に宗教と映画を結びつけてないだけです。
4.(ネタバレ注意!)宗教の死生観と結びつけたストーリーの解釈
この章ではネタバレ全開で解説していきます。ご注意を!!
はい、ではいきます。
<あの結末>
この映画は宗教に基づいた死生観でキャラクターの行動が既定されていると言いました。
結末のシーンから言ってしまえば、主人公はカトリックなりの死に方で、無事に死ねたんだと思います。
あくまで考察ですよ!
理由は3つ。
<一つ目>
召使いのおじいちゃんがカトリック流の死に方=「最後は最愛な大事な人と一緒に死ぬ」が主人公に大きな影響を与えたこと、それ自体が結末のフリになっていること。
<二つ目>
ポスターをよーく見ると、主人公には天使の輪っかが付いているから=逝ったから。
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<三つ目>
最後に主人公と恋人は消えていたから。実はもうこの世に居なかったんじゃないか、と思いました。
<宗教ギャグ>
また、旅行代理店と偽って自殺幇助を代行してくれる会社の様子。初めて来た人には「宗教は?」とスタッフが質問して、宗教別の棺の販売コーナーに案内されるくだり。
https://asbs.jp/mgr/ckfinder/userfiles/images/De_Surprise%20still%20SUB01.jpg
主人公の名前が「ヤコブ」だったので、店員は思わず「ユダヤ教?」と最初に問いますね。
でも同じヤコブでもキリスト教のヤコブ(イエスの兄弟)という二重構造になっているというネタ。
おそらく、本国オランダでは大ウケだったんだろうなー笑
日本では、、、無反応でしたよw
<ヒンドゥー教が可哀想>
自殺幇助会社の人々は、ヒンドゥー教だと思われます。主にヒンドゥー語を話すし、インド人ばかりなので。
この映画で「悪」として描かれているヒンドゥー教。黒服で、まさに死神、、マフィアと捉えられても仕方がない撮り方してます。
https://asbs.jp/mgr/ckfinder/userfiles/images/De_Surprise%20still%20SUB02.jpg
実はこの会社の社長は、仏教徒である主人公の彼女の父親なんです。
おそらく、ヒンドゥー教と仏教の死生観が近いからだと思います。で、どうしてヒンドゥー教と仏教徒が自殺幇助の会社を運営しているのかというと、両方の宗教とも「輪廻天性」の考え方があるからです。つまり、今生きている人生だけが全てじゃない。死んだら別の生き物に移り変わると信じているのです。
そのため、自殺に対して寛容というか、死んでも来世があると思っている人たちなのです。
ただ一つ苦言を言うなら、オランダやベルギーは自殺幇助や安楽死が認められている現実がありながら、この会社は「非合法なことをしている」と社長自らがゲロってしまうんですww
映画見た方なら分かるんですが、この会社って自殺幇助代行会社ではなく、「殺人代行会社」になっちゃうんですよねw
サイレンサーを付けて銃をぶっ放したり、殺すために激しいカーチェイスを繰り広げたり、、、、。中盤は自殺や安楽死に対して、全く関係のないシーンが入ります。
おそらく、娯楽要素としてサービスシーンを入れたつもりだったのでしょうが、私にとってはあまり好ましいものではありませんでした、、。
以上です!
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