こんばんは! machinakaです。
今回批評する映画はコチラ!!
「裸足の季節」
はい、原題は「Mustang」で、スペインから派生した野生の馬というのが直訳らしいです。あと、家主のいない家畜という意味もあり、複合的な意味でこの映画のタイトルが決められてると思います。
1.あらすじ
北トルコを舞台に、自由を求めて古い慣習から抜け出そうとする5人姉妹の運命を瑞々しいタッチで描いた青春ドラマ。10年前に事故で両親を亡くし、祖母の家で叔父たちと暮らしている5人姉妹。厳格なしつけや封建的な思想のもとで育てられた彼女たちは自由を手に入れようと奮闘するが、やがて家族が決めた結婚相手にひとりずつ嫁がされていく。トルコ出身の新人女性監督デニズ・ガムゼ・エルギュベンがメガホンをとり、デビュー作ながら卓越した構成力や美しい映像が世界各地の映画祭で高く評価された。第88回アカデミー賞外国語映画賞にノミネート。
はい。両親を失った5人の女姉妹がお婆ちゃんの家に引き取られ、イスラム教の厳しい風習を目の当たりし絶望する。姉が次々と結婚していく中で、末っ子のラーレは驚きの計画を企てる。
5人の少女を美しく描きならも、ヒゲもじゃの親父が厳しく映りますね。5人の少女は自由を勝ち取れるのか?
2.映画の見どころ
何といっても、トルコ語が使われて、トルコで撮られているトルコ映画という点。トルコの風景が映画で使われているところって、あまり見たことがなくて、すごく新鮮でした。
ただ、映画に映ったイスタンブールのファーティフ・スルタン・メフメト橋は、カリフォルニアのゴールデンゲートブリッジを彷彿とさせて、一瞬ハリウッド映画を見ている気持ちにもなります。
ゴールデンゲートブリッジ
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ファーティフ・スルタン・メフメト橋
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監督はデニズ・ガムゼ・エルギュベンさん。女性の方です。
トルコのアンカラのご出身ということです。アンカラといえば観光地としても日本人に大人気の場所ですね。
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フランスで映画を学び、映画監督になろうと決めたそう。その時、女性監督が少ない現状に疑問を感じたそうです。事実、映画監督は男性の方が多くて、脚本とか編集に女性が多いような印象を受けます。
女優さんは、全員初見です。
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末っ子のラーレ役にギュネシ・シェンソイ、長女ソナイ役にイライダ・アクドアン、三女エジェ役のエリット・イシジャン、四女ヌル役のドア・ドゥウシルです。まぁ全員初耳でしょうからこの機会に覚えてくださいな。
インタビューで答えていましたが、三女以外は全員演技が未経験だそう。映画を見ている時は全然そんな感じしなかったんんですけどね。これは間違いなく、監督の技量なのではないかと。。。
三女役のイシジャン以外は、これまで本格的な演技経験のなかった少女たちで、今回の映画出演が人生の大きな転機になったそう。
https://eiga.com/news/20160609/14/
無名の監督・無名の女優で構成されてますが、昨年のアカデミー賞外国語作品賞に、フランス代表としてノミネートされています!!トルコ語なのにフランス代表ってどういうこっちゃ!?笑
さて、前評判が非常に高い作品ですが、その内容とは!?
3.映画の感想
イスラム教独特の男尊女卑の戒律が際立った、少女達の青春を描いた傑作でした!
女性が監督ということもあり、非常にフェミニズムの高い映画となっていました。イスラム教における女性の自由について、5人の姉妹を使って見事に描いていたと思います。
ただ、単にイスラム教の不自由さを描くのではなくて、地方の不自由さも色濃く残していました。
5人姉妹の両親は10年前に他界しているんですね、幸運にもおばあちゃんの家に住めたわけですけど、その影響もあって姉妹の結束がより強いんです。
5人姉妹は、下は小学校高学年〜上は高校生までいて、オシャレや恋愛をしたい年頃なんですね。もしかして年子なのかな?
なので、5人姉妹はキャーキャー言って、お菓子を食べながら恋バナを楽しんでいるシーンが本当に見ていて楽しい!!
女性姉妹の共同生活にフィーチャする映画って、たまんないですよね、、 海街Diaryでは美人すぎる姉妹を描いて話題になりましたけど、この映画も負けてませんでした、、、
同じ「姉妹映画」でも、海街はユートピア、裸足の季節はディストピアといった印象を受けます。
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ディストピアと言った理由は、単にイスラム教が不自由だという意味ではなくて、姉妹の家庭環境にあるんですね。
両親の代わりに子育てをすることになった、エロルおじさん。コイツがとんでもない悪役なんですよ!! まさにクズ親父! バリッバリのイスラム教徒で、女性をモノとして見ているようなクソ野郎ですね!
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コイツと叔母さんのせいで、5姉妹は学校を禁止、自宅軟禁されてしまうんですよ!!
その後はずっと花嫁修行の日々。パソコンも電話も禁止。彼女たちの人生の選択肢は「結婚」以外ないという、地獄の環境に身を置くことになるんですね。
日本から見たらSFみたいな設定ですけど、これは監督の実体験も含まれているようで、とてもリアルな生活描写みたいなんです。トルコといえば親日家で、明るくて楽しい家庭があるみたいなイメージなんですが、、、どこの国でも、イスラム教の女性は苦労するんだなぁと思いました。
4.超リアルな少女の結婚描写
ただ、ディストピアといってもずっと少女たちが苦しむんじゃなくて、最初の方はリア充感満載ですし、長女や次女は結婚して結構幸せそうなんですよね。
年が下がるにつれて結婚とは不釣合いな年齢になっていって、次第に結婚に不満を感じていくんですね。
特に末っ子のラーレは結婚するのが嫌で嫌でしょうがない。
トルコの少女たちは日本人より成長が早いので分かりづらいんですが、実は末っ子のラーレが13歳の設定なんですね。
13歳で結婚!? そんなのありえないだろーート思っているアナタ、イスラム教なら、あるんですよ。。。
この映画を見ている時、下のポスターを思い出しました。
https://www.koyamajunko.com/works/images/because.jpg
都内の電車には結構貼ってあったので、覚えている方もいらっしゃるかなぁと。。
この子は13歳で結婚して、民族衣装に身を包んでるんですね。結婚と出産をしたのでおそらく学校にも行けてないでしょう。
だから、末っ子のラーレも嫁ぐ可能性は十分にあるんですね。だから映画では、ラーレがあんなに結婚に対して悲観的だったんです。
おそらくですが、少女たちが「両親を覚えているかどうか」で結婚観って大きく変わると思うんですよね。長女や次女は、お父さんお母さんの生活を見てきたから、結婚に関しては肯定的だったのかな、、、ただ、末っ子や四女は両親をよく知らない、、、
あとは、「恋愛経験があるかどうか」
長女や次女は学校に通っていた時は普通に恋愛してましたもんね。末っ子はとっても羨ましそうに眺めていたのが印象的でした。
5.光が素晴らしい映画
光が非常に美しい映画でしたね。特に、木漏れ日と5姉妹が見事にマッチするシーン。
実は、この映画は出来る限り自然光を使っていて、非常にリアルな風景を描写しているんですね。
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逆光の撮影も抜群に上手い! とっても綺麗な映画ですよ!
お化粧やオシャレが制限されている姉妹だからこそ、せめて光でメイクアップしたかったのでしょうか。。。
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フランスのゴールデングローブ賞とも言えるリュミエール賞では、撮影賞も獲得してますね。
「レヴェナント」のルマニエル・ルベツキのように、今自然光での撮影が流行ってるんですかねー。
www.machinaka-movie-review.com
はい、ということで、イスラム教の女性の苦悩を理解する上でも、最良のテキストだと思います。もちろん、現実はこんなに酷い家庭ばかりではないと思うんですが、イスラム教で10代の結婚というのは多いみたいですし、イスラム教の人が見たらどんな感想を持つんだろうな、と思った映画でした。
オススメです!!
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