バースデーワンダーランドは、映画における成長のパラドックスを楽しむ映画
バースデーワンダーランドで、アカネが最後に呟くセリフ「ちょっとだけ成長した気がする、多分」
というのは、今作自身がアカネを成長させないような構造になっていた事への観客への説明、となっている。
また、よくよく考えれば今作はアカネの誕生日前日に起こった出来事となっており、アカネが1歳年を取る、つまり「成長する」前日という日に設定されている。
だから「バースデー」というタイトルが付いてるんだろうけども。
誕生日前日という、作品の時系列的には、主人公が成長するはずである。
しかし、ラストのセリフでは上記の時系列的必然性を否定している、ように見える。
以上より、今作においては「主人公の成長」に関するパラドックスが生じている。
ただ、個人的にはこのパラドックスこそを楽しむ映画だと思う。
小学生だからといって、1歳年を取っても人は劇的に成長しない。
冒険したからといって、大きく人格が変わるわけではない。
成長は、必然ではない。
人の誕生日というのは、以外にもあっという間に過ぎていく。そして、あっという間に年を取っていく。
気づけば、人は勝手に成長する。でも、その瞬間を当人はなかなか気づかない。
誕生日という特別な日に不思議な世界に迷い込んでも、大した成長をしていない(と自身で発言している)アカネ。
人の成長とは不思議なものだ、でも、それが人生だ。
人生はワンダーランドである。