- はじめに
- あらすじ
- ジャッキーの出る映画は極力映画館で見るようにしている
- 映画の感想
- こんなジャッキー見たことない
- ジャッキーが反政府を貫くキャラを演じること自体が、珍しい
- ジャッキーの凶行には心の声が添えられている
- 訓練シーンがよかった
- ジャッキーがサイコパスに見えるなら、ケン・ローチの映画を見ろ!
- 今作を見て思い出した作品たち
はじめに
今回公開する映画はこちら!
「ザ・フォーリナー復讐者」
それでは「ザ・フォーリナー復讐者」、感想・解説、ネタバレありでいってみよー!!!!
あらすじ
・ジャッキー・チェンがおなじみの笑顔を封印し、孤独で冷徹な復讐者をシリアスに演じたサスペンスアクション。元特殊部隊員のクァン・ノク・ミンは、現在はロンドンでレストランのオーナーとしてつつましく暮らしていた。ところがある日、高校生の愛娘が政治的な無差別テロに巻き込まれ、命を落としてしまう。静かな怒りに燃えるクァンは、犯人を探すうちに北アイルランドの副首相リーアム・ヘネシーの存在にたどり着き、復讐を開始するが……。ヘネシー役に5代目ジェームズ・ボンドのピアース・ブロスナン。「007 カジノ・ロワイヤル」のマーティン・キャンベル監督がメガホンを取り、「エネミー・オブ・アメリカ」のデビッド・マルコーニが脚本を手掛けた。
ジャッキーの出る映画は極力映画館で見るようにしている
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ジャッキーは、映画においては基本的に「スマイル」を強調する俳優だと思います。
どんだけ高いところから飛んだって、敵から攻撃を食らったって、戦いが終わりさえすればすぐさまスマイル。
いつもニッコニコしてるジャッキーに、こっちも笑顔になってしまう。
特に最近では、映画活動だけでなく環境活動や平和活動に熱心なジャッキー。
ナショナルジオグラフィックで、「ジャッキー・チェンのリサイクル大作戦」という番組も放映されたほどだ。
ちなみにリサイクル大作戦を行う場所はチベット高原に住む原住民の住む村。リサイクルを行う理由は、撮影現場で出る大量のゴミに頭を抱え、自分自身がこれまで映画を撮ってきた弊害への反省ともなっているところが、実にジャッキーを聖人たらしめる番組にもなっている。
映画の感想
・笑わない
こんなジャッキー見たことない
ジャッキーの映画は基本的にユーモラスで、ニッコニコしながら見れる映画、というのはあくまで「基本的」であって、今作ほど「例外」的な作品も珍しいと思うほど、
こんなジャッキー見たことねぇ・・・・ 怖えええぇぇぇ!!!!
と心の底から感じました。
映画は「復讐捜査線」を監督した人ということもあって、同作と非常に類似している作品のタッチです。
ちなみに、復讐捜査線のあらすじはこちら。
BBCのTVシリーズを、7年ぶりの映画主演となるメル・ギブソン、「007 カジノ・ロワイヤル」のマーティン・キャンベル監督で映画化したアクションドラマ。
ボストン警察の殺人課刑事トーマス(ギブソン)の自宅で、彼の一人娘のエマが殺害される。当初はトーマスが本来の殺しの標的だったと思われていたが、実はエマには秘密があることがわかり……。脚本は「ディパーテッド」でオスカーを受賞したウィリアム・モナハン。
今作のジャッキーも、過去には3人娘がいたのものの、映画の冒頭では一人娘となっているんですよね。
大事な大事な一人娘が殺され、復讐に燃えるジャッキー・チェン。
もうこのプロット、色んな映画で見てますよね笑
いわゆる「舐めてた相手が実は殺人マシーンでした」系の映画なんですけど、その主人公がジャッキーになっているというのがすごく新鮮でありました。
今作のジャッキーもそうですが、「舐めてた相手が実は殺人マシーンでした」系映画の主人公は、必ずと言っていいほど「失うものが何もない」状態に陥るんですよね。
その状態こそ、殺人マシーンに覚醒する条件になるんですけども。
なので、今回は一人娘が死んでしまい殺人マシーンと化すのは、同じジャンルの中でも結構王道な設定かと思われます。
ただ、設定こそ王道でも、覚醒したジャッキーは格が違うほど、怖い。
「96時間」のリーアム・ニーソンよりも遥かにタチが悪いんですよwwww
復讐心に燃え、周りが見えなくなっているジャッキーの眼差しは、私が知っているジャッキーとは違ってました。
そこまで喋るキャラクターではなく、直接口で伝えることが難しいキャラクターなんですよね、今作のジャッキーは。
こんなキャラ造形になったのはちゃんと冒頭で理由が説明されていて、警察に何度も何度も「犯人を探してくれ!」と尋ねても突っぱねられるジャッキーが描かれてるんですよね。
だからもう、ジャッキーの中では「こいつらに話してもしょうがない」と諦めてるんですよね。
ただ、今作では説明セリフをかなり排除しており、ジャッキーの行動原理が見えず、単なるサイコパスなジャッキーに映ることも面白くて。
きたアイルランド政府がどうしても犯人の手がかりを教えてくれないことの腹いせとして、副首相のオフィスに爆弾を仕掛けているジャッキーを見たときには、正直引きました。
怖いんです、ジャッキー(褒めてます)
何をするか、本当に分からないんです。
でも、そのクレイジーっぷりこそが「復讐者」たる所以だし、悪いほどなぜか微笑んでしまう自分がいるのでした。
殺人マシーンになってからのジャッキーは、現実には絶対に会いたくないほど怖い狂気のキャラクターになっている。
それをセリフではなくて、もう未来も希望もないような「絶望的な目」で表現してたのが本当によかったです。あれ、ジャッキーって演技派だっけ? と思うほど濁った目をしてるんですよね。せっかくの二重が、台無し。
やることなすこと、狂気じみたジャッキーを見れるだけで実に幸せなんですよ。
もう完全に、リーアム・ニーソンを超えましたよ。
リーアムといえば、ジャッキーの宿敵であるピアース・ブロスナンの役名が「リーアム」でしたねw これ、何か意識してるんですかねww 単なる偶然だとは思いますがw
ピアース・ブロスナン、今回は名台詞連発でしたね!
現役のアイルランド兵士がジャッキーにボコボコにされて返ってきた時には、「お前らは本当に兵士か!あんなジジイに負けとは!!」と怒ってるのが本当に面白かったですねww
ジャッキーを「ジジイ」と一蹴してしまうこと自体珍しいし、冷静に考えれば現役の兵士が60超えたジャッキーにボコボコにされるという対戦結果自体がシュールなんですよね。
ジャッキーが反政府を貫くキャラを演じること自体が、珍しい
今作のジャッキーは反政府を貫いてるんですよ。
ジャッキーはハリウッド映画もよく出るとはいえ、傾向として中国が舞台になっている映画が多い。
となると、中国政府を叩くような主人公は絶対に演じられない。どこかで聞いた話ですが、ジャッキーが映画撮るたびに、中国政府はジャッキーの子供を拘束して人質にするそうです。もし下手な真似したら、子供はどうなるか分からないよ?と脅されることもあるんだとか。。
もう「リアル96時間」じゃねぇかよ!!
と突っ込みたくなるのも分かります、でもこれが社会主義なんですよねぇ、、。
話を元に戻しますと、普段は中国政府によって表現が規制されているジャッキーですが、今回はイギリス政府に向かって歯向かうだけなので、こういう反政府的なキャラクターが作れるんですよね!
ジャッキーの凶行には心の声が添えられている
復讐心のためジャッキーは、犯人はまだ捜査中であるという現実を見ようとしない、人の話を聞かない、「犯人の名前を教えろ!」以外のセリフは言わない。
まさに見ざる・聞かざる・言わざるが三拍子揃った、最強にタチの悪い主人公なんですよねw むしろこいつを主人公としていいのか?
どっちかといえば、副首相という立場と元武闘派活動家という立場で揺れ動く、ピアース・ブロスナンの方が主人公なんじゃないのか? と思ってしまいますw
そんな、現実ではありえないジャッキーの暴虐武人な対応が、見ていて本当に面白かったし、スッキリしました!!
アイルランドの副首相があやふやな返事をするたびに、ブチ切れるジャッキー。
副首相のオフィスに小型爆弾を仕掛け、「俺を無視したらこうなる」という仕返しには、狂気を感じながらも笑わせてもらいました。
ただ、これは単なる爆弾攻撃ではなく、ジャッキーの心の声なんですよね。
「俺はアメリカの特殊部隊にいてよぉ、爆弾の扱いとか手馴れてるんだわ!だから俺に色々情報くれたら、爆弾犯とか簡単に捕まえられると思うんで協力してくれないかね?」
という心の声を伝えたくて、あのような凶行に至ったのでしょう。
また、得意の爆弾もアピールしていることから、名刺交換も兼ねた爆弾コミュニケーションだったに違いないと思いました。
訓練シーンがよかった
また、最終決戦に備えて身支度をするジャッキーも、本当に最高で。
ホームセンターで装備を揃え、筋トレするジャッキー。
2019年だというのに、ジムにも行かずに非常に土着的な筋トレを続ける姿は、もはやロッキーにしか見えない。
泥臭いのがジャッキーの良さだとは思うが、一つツッコみたい。
車のドアをひたすら開け閉めするトレーニングは、果たして役に立つのか?
アメリカの特殊部隊の出身ながらも、非科学的なトレーニングを繰り返すジャッキーに、笑いを禁じえませんでしたwww
ジャッキーがサイコパスに見えるなら、ケン・ローチの映画を見ろ!
ただ、一見してサイコパスにも見える今作のジャッキーですが、彼にはこうするしかなかったんですよね。
そもそも、口だけで交渉できているなら、こんな凶行じみたことしませんよ。
今作のジャッキーは、徹底的に話して交渉することを禁じられるんですよね。
ジャッキーは喋ってるんだけど、イギリス政府には全く伝わらない。相手にされない。
細かいところなんですけど、冒頭でジャッキーが一人娘と車に乗ってるシーン、あるじゃないですか?
そこでジャッキーが彼氏の名前を娘から教えてもらうところで、「え、なんて言った?」って聞き返すところがありますよね。
ここからも分かるんですけど、ジャッキーは娘と違って、イギリス英語に慣れてないと思うんですよね。
だから、上手く英国人とコミュニケーションが取れない、交渉ができない、という伏線になってるんですよね。
こういった言語の壁が垣間見えた時、foreignerというタイトルの意味を改めて感じるわけです。
映画ではカットされてますが、もう何度も何度も警察に政府にお願いをしてるんですよね。
ついになけなしのお金を叩いて警官を買収しようとするんですけど、イギリスの警官は真面目で、全く通用しない。
このシーンもカルチャーギャップを端的に表したシーンだと思います。
とことん、ジャッキーの交渉は失敗していく。
このままではいつになっても犯人が見つからない、という結果、ああいう凶行に走るということになってるんですよね。
ジャッキーは手を尽くしたんです。映画では全くもってカットされてますがww
イギリスの官僚体質、移民に対する世間体の冷たさ、老人に対する仕打ちの厳しさ。
こういったイギリスの冷たい現実を知るには、名匠ケン・ローチが撮る映画をみれば良いと思います。
特にイギリスにおける「高齢者」と「外国人」の処遇について知りたいならば、「私はダニエル・ブレイク」がおすすめです。
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おそらく、ジャッキーもダニエル・ブレイクのように、散々役所に振り回されたんでしょう。
副首相に電話するに至るまで、何度も何度も電話をかけたんでしょう。
こういった電話のやりとりは今作には描かれてませんけども、ダニエル・ブレイクには役所の横柄な態度がじっくり描かれてますので、よければご覧になってください。
ジャッキーが政府を信用できなくなったのには、復讐心だけでなくイギリス政府の対応の悪さもあったと思うんですよね。
今作には、「私はダニエル・ブレイク」的な要素が凄く詰まってたんですよ。
今作を見て思い出した作品たち
「96時間」
舐めた相手が殺人マシーンでしたと言えばこの映画。
リーアム・ニーソンが、本当に狂気じみてんだ。。
ただ、今作のジャッキーはリーアム・ニーソンよりも怖い。。
「ロッキー4」
非科学的な訓練シーンをしてるのを見て。
「ゆきゆきて神軍」
ピアース・ブロスナンが「過去のことはもう忘れて・・・」と言ってるのに、ガン無視して問い詰め続けるジャッキーを見て。
「ブレイキングバッド」(TVドラマ)
自作で爆弾作ってるのを見て。
「私はダニエル・ブレイク」
ジャッキーに対する警察のひどい対応を見て。