- はじめに
- あらすじ
- 映画の感想
- 現代人は必見!スキャンダルを多角的な視点で描くゴシップ物語
- アメリカの政治家がジャスティン・ビーバーになった日
- ゲイリー・ハートもヘラルドの記者たちも、ゴシップの素人であった
- 現代にも通じる話
はじめに
今回公開する映画はこちら!
「フロントランナー」
それでは「フロントランナー」、感想・解説、ネタバレありでいってみよー!!!!
あらすじ
・「グレイテスト・ショーマン」「X-MEN」シリーズのヒュー・ジャックマンが、スキャンダルにより失脚した実在の政治家ゲイリー・ハートを演じるドラマ。監督は「マイレージ、マイライフ」「JUNO ジュノ」でアカデミー賞にノミネートされたジェイソン・ライトマン。1988年アメリカ大統領選挙。ゲイリー・ハート上院議員は、史上最年少の46歳で民主党の大統領候補となり、予備選で最有力候補として一気に躍り出た。その若さからジョン・F・ケネディの再来と称され、大衆からも愛されていたハートの状況を一変させる出来事が起こる。アイアミ・ヘラルド紙の記者が入手したハートに関する「ある疑惑」。このスキャンダルが一斉に報じられたことで、ハートの支持率は急落し、予備選の当落線上から姿を消すことになってしまう。。
それでは映画の感想でっす!!!
映画の感想
マスコミの報道姿勢の変遷が分かる映画!
現代人は必見!スキャンダルを多角的な視点で描くゴシップ物語
時は1984年。若くして民主党の大統領候補となった政治家ゲーリー・ハートの不倫スキャンダルを通して、政治家とマスコミの関係を描いていく社会派な作品でございました。
私がいつも見てきたヒュージャックマンは「オーーーアーーーーーアアアーーー!!」って踊ったり歌ったりしたり、深爪を振り回したりする暴れん坊おじさんなんですけど、今作のヒューはアクションなし、ミュージカルなしの真面目な政治家を演じていました。
物語はゲイリー・ハートをはじめとする政治家陣営と、ヘラルド紙をはじめとするマスコミ陣営のドラマが交互に流れ、バランスの良い作りとなっています。
また、ゲイリー・ハートの妻の視点であったり、今作のファムファタールとも言える、不倫相手の視点も交えて、非常に多角的な視点で描かれておりました。
今作は決して「不倫、ダメ絶対!」とか「政治家はこうあるべきだ!」とか「マスコミはマスゴミ!」だとか、どちらかの陣営に肩入れしているわけではなく、あくまでもフラットな視点で描かれたのが良いと思っています。
記者の前で「追い回していいぞ。でも何も出てこないからつまらないぞ」というセリフを吐いてしまったことから、徹底的に張り込みをされてしまうゲイリー。
が、張り込みをしてる記者は未熟者で、簡単にゲイリーにバレてしまう。
なんとかして記者たちを懐柔するのかと思いきや、「何をやっとるか!!!」とマジギレするゲイリー・ハート。
あれ、なんだこれ。。
アメリカの政治家がジャスティン・ビーバーになった日
実はゲイリー・ハートが大統領候補だった時代は、まだ政治家がゴシップの被害に逢うことは少なかったんです。
多くの政治家が多くの愛人を抱えていることは当たり前だった時代。ゲイリーも先人の政治家と同じように、不倫を謳歌しているだけだったのです。決してゲイリーが特別ではなかった。
単にゲイリーを陥れようとか、そういうわけじゃない。マスコミの目的は特ダネをつかむことだけなんです。共和党のネガティブキャンペーンとか、そういうわけじゃない。
単にマスコミが狙う対象が、ハリウッドスターから政治家に変わっただけなんです。
その時、歴史が動いた的な、マスコミの報道姿勢が変わった瞬間だったわけですな。
昔までは、政治家の恋愛ネタを扱うなんてご法度だったんですよね。ケネディにどれだけ愛人がいたことか。。
日本でもねぇ、愛人のいない総理大臣の方が珍しいんじゃないですか? 今はなぜかニュースにならないけども。
今作の「フロントランナー」は「最有力候補」という訳ができますが、同時にゴシップネタにされた政治家のフロンティアでもあったわけです。まぁ本人は、すごく凹んでるんですけどw
ゲイリー・ハートもヘラルドの記者たちも、ゴシップの素人であった
まだ政治家へのゴシップ攻撃に免疫のないゲイリー・ハートは、マスコミとの完全な対立を選択します。
「あんなの放っておけ!それよりも政治だ!政策だ!」
とても良い言葉に聞こえるんですけど、マスコミ側の視点でゲイリーを見ると、マスコミ側を断絶しているゲイリーがコミュニケーション不足に感じてしまうんですよね。
だってゲイリーはひたすら「政治家のゴシップを取り上げなるなどけしからん!!」って怒ってるだけなんですから。これがずっとゲイリー側で描かれるとマスコミ=マスゴミって思わせられるんですけどね。ヒュージャックマンがマスゴミを成敗!みたいな勧善懲悪な話だったらこんなこと思わないんですけどね。
でも、この映画はあくまでもゴシップされる方とする方を平等に描く。だからお互いの悪いところが見えてくるんです。
一言で言えば、政治家のゲイリー・ハートもヘラルドの記者たちも、ゴシップ対応の素人だったという点ですよね。
どうもぎこちないんです。ゲイリー・ハートもマスコミも。
ヘラルドに至っては、不倫相手の名前も裏付けも撮ってないのに、ただゲイリー・ハートとの写真を撮っただけで「特ダネだ、やっほーーい!!!」って嬉しがってるんですよ。
さすがに週刊文春でも、もっと裏付けはしますってww
ヘラルドの圧倒的な調査不足と、特ダネを出したいはやる気持ちが相まって、非常に不完全な形でニュースになってしまったんですよね。
普通なら却下されるようなネタなのに、テレビは「政治家 不倫」というパワーワードにつられて連日報道してしまう。
まだ、本当に不倫してるかどうかわからないのに。
マスコミに対して「解せん!」と一喝するゲイリー・ハートも下手な対応だと思いましたが、際立ったのはマスコミ側の粗すぎる仕事っぷり。
ハリウッドのパパラッチの方が、もっとちゃんとしてますよ。この不倫問題がもしハリウッドゴシップだったら、ゴシップする方もされる方も、もっとクレバーなやり方でゴシップを流していたはずですよ。
まだ政治家のゴシップ黎明期の時代、政治家とマスコミの対応の不手際さが目立ったのでした。
現代にも通じる話
不完全な調査のままニュースが流れてしまうというのは、現代にも通じる話で。
ニュース・ゴシップを発信するプロじゃない人達がニュースを流すのは、今のネットニュースに通じる話だなぁと。
パワーワードに踊らされて、全体の文脈も考えずに記事にしてしまう。今のニュースは極端に調査と校閲が少ないんですよね。
今回のヘラルドの3流記者たちのように、素人がニュースを発信する時代だからこそ、見て欲しい作品だと思います。
どうでもいいですが、ジャスティン・ビーバーはゲイリー・ハートよりもよっぽどパパラッチの対応うまいからね(⌒-⌒; )