ネタバレありで感想と解説を始めます
今回公開する映画はこちら!
「ガリーボーイ」
それでは「ガリーボーイ」、感想・解説、ネタバレありでいってみよー!!!!
あらすじ
・インドで活躍するアーティスト・Naezyの実話をもとに、スラムで生まれ育った青年がラップとの出会いによって人生を一変させる姿を描いた青春サクセスストーリー。ムンバイの貧しい家庭で生まれ育った青年ムラード。両親は彼を大学へ通わせるため一生懸命に働いているが、そんな親の思いを知る由もなく、ムラードは悪友と車上荒らしに手を染め、医者の父を持つ身分違いの彼女と内緒で付き合っている。自分の人生を半ば諦めて生きてきたムラードだったが、大学構内でフリースタイルラップのパフォーマンスをしていた学生MC Sherとの出会いをきっかけに、ラップの世界にのめり込んでいく。親からの反対や友情、恋など様々な葛藤を抱えながらも、フリースタイルラップの大会で優勝を目指すムラードだったが……。「パドマーワト 女神の誕生」などボリウッドで注目を集めるランビール・シンが主演を務め、「チャンスをつかめ!」のゾーヤー・アクタルがメガホンをとった。作家・クリエイターのいとうせいこうが日本語字幕を監修。
映画の感想
インドらしい音楽、インドらしい踊り。
川崎チネチッタで「ガリーボーイ」鑑賞!
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2019年10月19日
これぞ新たなボリウッド!
インド映画の概念をヒップホップで覆す、ニューヒーローの誕生!
これぞリアル「スラムドッグミリオネア」だっ!
韻の効いたリリックを、見事な日本語ラップに訳した翻訳チームもお見事!#ガリーボーイ
自分の言葉を武器に、のし上がる!熱き男の物語
最近のインド映画は、インドの現代社会の暗部を炙り出すようなストーリーが多いように感じます。
昔のインド映画はとにかく陽気で明るくて、みんなハッピー踊ろうぜ!的なノリだったんです。
しかし、最近のインド映画はまるでイスラム圏のカウンターカルチャー映画のようで、宗教や身分制度により迫害される人々を主人公にする傾向にあるなぁと感じるのです。
今作もご多分に漏れず、明らかに身分が下の青年を主人公にして、成り上り不可能なインド社会からのし上がっていく物語でございました。
ちなみに、映画のゴールはラッパーのNasが来るライブの関連イベントとしてラップ選手権があり、優勝賞金100万ドルを手にするまでを描く物語で。
今作のガリーボーイは実在するラッパーということもあり、これぞ真のスラムドッグ・ミリオネアのように感じました笑
今回はヒップホップの中でもラッパーを主人公にしているということで、「自分の言葉」に焦点を当てているところが良くって。
ガリーボーイが憧れのラッパーであるシェールに
「俺歌詞書いてきたからさ、使ってよ!」とせがむ場面があるんですけど、シェールは「俺、歌詞かけるし。お前の言葉ならお前で使えよ」みたいなセリフをいうところが、もう本当に痺れちゃって。
よくよく考えたらラッパー相手に非常に失礼な話なんですけどね笑
自分が考えに考えた言葉で言いたいことを言う、伝えたいことを伝える。
もちろんアーティストであれば自分で歌詞を作る人も多くて、自分の言葉で勝負している人は多いんですけども、ヒップホップの歌詞の特徴は「等身大の自分を讃えること」にあって、彼の心境がそのまま歌詞になっているのが、映画の数々のシーンとリンクして伝わるのが本当に素晴らしくて。
アーティストって、今までの自分と決別して、もはや第2の人格を作ってる人が多いと思うんですよね。
極論ですけど、クイーンのフレディとかがまさにそういうタイプで。
www.machinaka-movie-review.com
ただ、ラッパーはそんな人格は作り上げない。あくまで等身大の自分を歌い上げる。
自分が今まで経験したこと、苦しかったこと辛かったことを全部歌詞にして、言葉を詩にして、全てをぶつける。こんなの食らったら、もう泣くしかありません。。
私自身、こうして自分の言葉をブログに書いてるんですが、時に自分の言葉に自身をなくす時があるんですよね。そんな時、こうしたBボーイイズムがビンビンの映画を見ると、すごく勇気付けられるんですよね。
今までの自分を全肯定し、カッコよく見せることのカッコよさ。
俺もまだまだ頑張れるぞ!ってやる気にさせてくれる映画でもありました!
ボリウッドの概念覆す音楽!!
ボリウッドの音楽といえば、伝統的な衣装に身を包んで伝統的な音楽をBGMに踊るってのが、代名詞だったんですよね。
↓これみたいに
'Tharki Chokro' FULL VIDEO Song | PK | Aamir Khan, Sanjay Dutt | T-Series
今回はヒップホップ映画ということもあり、当然ながら現代的なヒップホップが流れるんですけど、それがまぁカッコよくて!
ガリーボーイの心境を代弁するような、美しくも尖ったバックトラックに、ガリーボーイのリリックが刺さる。そんな音楽に、インドの雑然とした風景が映るのですから、もう新しさ全開ですよね笑 これだ毛で十分見に行く価値があるw
特に刺さった曲は、やはり「APNA TIME AAYEGA」でしょうかね。和訳すると「(俺の)時代は来てる」って意味。
自分が売れる時代は絶対やってくるんだ。時代は来てるんだ!って自分を鼓舞する歌でもあり、自分を大きく見せるヒップホップの典型的なテーマを歌っているんですよね。
彼が映画前半からずっと書き続けた曲なんですが、これを完全に披露するのは最後の最後で。それまでは車の中で口ずさんでたり、ぼやいてるだけで。
貯めに貯めて、最後にキレッキレのリリックとダンスで「時代は来てる!」って歌い上げるのが最高なんですよおおおお!!!!
よくよく考えてみたら、これをまだ活躍できてない時に歌っても、あまり説得力がないから、最後の最後に取っておいたのかもしれないですけどw
彼にとっては、この歌が初めて作った歌でもあり、自分がラッパーとして生きていく歌でもあり、自分なりのBボーイイズムを宣言する歌でもあるんですよね。
Apna Time Aayega | Gully Boy | Ranveer Singh & Alia Bhatt | DIVINE | Dub Sharma | Zoya Akhtar
Bボーイイズムと聞いて思い出すのは、やはりこの曲。
僕が大好きライムスターの「B-BOYイズム」
ライムスターのリリックの中でも、一番刺さったリリックがこの曲の中にあって。
「決して譲れないぜこの美学 何者にも媚びず己を磨く」
実は、この言葉を自分の座右の銘としているんですけど笑
ガリーボーイも、誰に何を言われようともひたすらBボーイになろうと努力して、ひたすらラップを磨いて成り上がっていくんですよね。
もちろん、生きるために真面目な仕事もヤバい仕事もしますけど、最終的にはBボーイとして生きる決意をするガリーボーイ。
彼なりの美学があったんでしょう。
彼女にバカにされても、彼は(彼女と違って)暴力を振るうことなく、ラップで勝負する。これぞ彼の生き様なんですよね。
ガリーボーイの彼女が笑っちゃうくらい暴力的なのは、おそらくヒップホップとの対比を見せたかったのかなぁと思うんですよね。ヒップホップって格好は不良っぽいですけど、あれあくまでファッションですからw 中には怖い人もいるらしいですが、トップのラッパーは暴力よりも言葉で相手をぶちのめしますから。。
あと、これはラップぽくはないですが、エンドロールに流れていた「Train Song」がまぁ良い曲で。
最初はいかにもインドらしい、おじさんの唸り声のような歌が流れていたんですけど、途中からなんとカントリーブルースのような曲調になり、インド音楽とアメリカ音楽が融和していて、、
この曲も本当によかったなぁ〜〜!!
Train Song | Gully Boy | Ranveer Singh & Alia Bhatt | Raghu Dixit & Karsh Kale | Midival Punditz
鑑賞中に思い出した映画
ラップ好きなら知らない人はいない、ストレイト・アウタ・コンプトンの自伝映画。この映画みたいに過激な描写はガリーボーイにはないけれど、ラッパーの自伝映画ということで。
エミネムの自伝映画やってますよね。しかも本人が主演で。
日本でも流行りましたね。
まぁ、あの彼女を見てるとねww
ガリーボーイの浮気相手(と勝手に思ってる)をなんの脈絡もなく瓶で殴る描写や、ガリーボーイに会うためにガリーボーイの仲間を見合い相手に指定し、「ガリーボーイに連絡させないとお前と結婚する」とまさかの結婚脅迫を決めた彼女は、本当に猟奇的でしたww