- ネタバレありで感想と解説を始めます
- あらすじ
- DCコミック映画に新たな風を吹かせるか?
- 映画の感想
- 単なるアメコミ映画にあらず
- ジョーカーになった真の理由とは?ー悲劇王ジョーカーと喜劇王チャップリンの対比ー
- ジョーカーの笑いにこそテーマが詰まっている!!
- ロバート・デニーロが出ている理由
ネタバレありで感想と解説を始めます
今回公開する映画はこちら!
「ジョーカー」
とうとうやってきました。
今年数ある映画の中でも、もっとも意外な評価を受け、現在ではもっとも期待されている映画であると言えるでしょう。
まずは今作がヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を取れたことに、素直に賞賛したいと思います。
後から詳しく書きますが、映画界では「ジョーカー」を演じることは、もはや、いわくつき。「ダークナイト」のジョーカーを超えられるのか、演じられたとしても、その後心身に問題はないのか?
なぜなら、2008年「ダークナイト」でジョーカーを演じたヒース・レジャーが役に没頭しすぎて精神がおかしくなり、薬物大量摂取で死んでしまったから。
見ているこっちが不安になる、ジョーカーを演じる役者。
今回はジョーカーをホアキン・フェニックスが演じるということで、さらに不安に。
役に入りすぎてこっちの世界に帰れないんじゃないかと思ったんですが、どうやら無事のようです。
それでは「ジョーカー」、感想・解説、ネタバレありでいってみよー!!!!
あらすじ
・キアヌ・リーブスが伝説の元殺し屋に扮し、銃とカンフーを融合させた「ガン・フー」や車とカンフーを合わせた「カー・フー」など、これまでにないアクション要素を盛り込みヒットした「ジョン・ウィック」シリーズの第3弾。前作で怒りのあまりに、一流殺し屋が集う「コンチネンタルホテル」の掟である「ホテル内で殺しはおこなってはいけない」を破ってしまったジョン。聖域から追放された彼を待っていたのは、組織による粛清の包囲網だった。刺客たちがさまざまな殺しのスキルを駆使し、賞金首となったジョンに襲いかかる。傷だらけとなったジョンは、かつて「血の契約」を交わしたソフィアに協力を求め、カサブランカへと飛ぶが……。監督は前2作から続投のチャド・スタエルスキが担当。イアン・マクシェーン、ローレンス・フィッシュバーンら前作からのキャストに加え、オスカー女優のハル・ベリーが謎の女ソフィア役で出演。
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どう考えても、ノーランの「ダークナイト」を引きずり過ぎていて、無駄にダークで重厚な感じを出そうとしたんですよ。昔やってた「スーパーマン」なんて本当にエンタメ大作だったのに。
そしてトドメが「スーサイドスクワッド」 。この映画で俺のDCコミック映画の評価は揺るぎないものになりました。
揺るぎなく、クソであると。
こちらの作品は、ノーランのようなダークな作風でもなく、マーベルのようなコメディタッチの作風でもなく、単に良いところがないクソみたいな作品でしてね。
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ただ、その後「ワンダーウーマン」で超絶面白いエンタメ大作に仕上げ、これから王政復古が行われると期待したんですよね。
ちなみに、アメコミ映画はDCコミックスの方が遥かに昔に上映され(確か1960年代から)、量・質ともに良かったんですよね。マーベルは映画界の長い歴史でみれば、ここ10数年で飛躍的に伸びた「ぽっと出」のようなものなんです(こんなこと言ったら、マーベルファンに罵倒されるかもしれないけど)
その後、アクアマンやジャスティスリーグが公開。
ジャスティスリーグでは、アベンジャーズを撮ったジョス・ウィードンが監督し、ここら辺からだんだんマーベル映画に寄せてきてるなぁと思ってきてます。
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ここまでまとめると、2000年代以降のDCコミック映画は
ノーランの「ダークナイト」で人気加熱!
↓
ノーランのようなダーク&重厚な作風に引っ張られてしまう
↓
ただの駄作乱造で低迷
↓
マーベル映画に寄せて人気が再燃
の流れだと思ってます。
そもそも「DCコミックス映画らしさ」なんて分からないけども、個人的にはマーベル映画に寄せる必要は全くないなぁと思っていて。
確かにコメディタッチで明るくてワクワクするような演出ばかりでもいいんですけど、それって結局マーベル映画の一番の立役者、ケビン・ファイギが尊敬するロバート・ゼメキスやロン・ハワードに繋がるわけで。
シリーズものに作家性はいらない、と映画検定一級の方が仰っていましたが、それも理解できる。だからケビン・ファイギの方向性は否定できないし、DCコミックがそれを追いかけるのも失敗じゃない。
でも、DCコミックとマーベル映画で何か差別化をして欲しいと願う自分がいます。
例えばバットマンのような絶望的なディストピア世界はマーベルでは表現できないし、 マーベルとは違う方向に持っていける可能性はあるんですよ。
そして、今作ジョーカーが大変高い評価を得ている。
DCコミックス映画を製作するワーナーの上層部は、私の記憶が間違ってなければ、高い評価を受けた作風を継承して類似の作品を作る傾向にある。
今後のDCコミックス映画が左右されるといっても過言ではありません。
映画の感想
思ってたのと、全然違う。
単なるアメコミ映画にあらず
はい、実はこの映画を見たのは23時50分、終了したのは2時過ぎ。。
見る前から分かってましたが、深夜に見るもんじゃないですね、これwww
なんだかモヤモヤした気持ちが劇場を包んでいました笑
アメコミファンだと思われる観客は、ジョーカーのあまりにも悲劇的な人生に、言葉を失っておりました。
まぁーーね、これ見て「いやぁぁぁ、最高っ!!楽しい〜〜〜!!!」なんて感想を呟く人は高確率で前科者だと勝手に思っております。
この映画を人に進めることも、少し憚られるかもしれませんね。少なくとも、これを親には絶対紹介できないwwww
物語はですね、ホアキン・フェニックス演じるピエロさんがジョーカーになっていくまでの話で、バットマンの前日譚とも言えると思います。
バットマンではゴッサムシティといえば悪がはびこる犯罪都市ですが、今作ではまだあれほど治安が悪化してない状態なんですよね。
ジョーカーがジョーカーとして目覚めていくたびに、街の暴徒が増え、みなさんご存知のゴッサムシティになっていく。
そしてラストのアレ!!!!!
これはさすがにネタバレできませんけども、感想を一言いうなら「繋がった!!」と心の中でガッテン×100くらい頷いてしまいました。
強いて言うならば、「ローグワン」っぽかったですかね。。繋がった!!!って言いたくなるラストです。アメコミ好きな人にとっても、そうじゃない人でもあのラストは心に響いたと思います。
今作のすごいところは、単なるアメコミ映画で終わっていないところにあると思います。ベネチアで金獅子賞を取ったのも納得。
もちろんバットマンを知ってる人なら楽しめるし、そうじゃない人でも十分衝撃を受けることができるでしょう。
ジョーカーのあまりに悲劇的な人生に胸を打たれる人もいるでしょう、これなら他のDC映画でのジョーカーの暴れっぷりに納得するでしょう。
ただ、今作は単にDC映画の延長線上で見てほしくないと切に願います。
今作は普通の人間がジョーカーになっていく様を描いていきますが、なぜジョーカーになったのか、その理由を表現する方法が実に素晴らしいんですよね!
なぜホアキンはジョーカーになってしまったのか?その理由を、これから解説していきまっす!!!
ジョーカーになった真の理由とは?ー悲劇王ジョーカーと喜劇王チャップリンの対比ー
今作で象徴的に引用されているのは、喜劇王チャップリンの映画やセリフ。
ジョーカーはピエロ時代にはコメディアンに憧れており、人を笑わせようと躍起になっていたので、チャップリンに憧れるのも当然。
普通に考えれば、チャップリンに憧れていた純粋無垢なピエロが次第に闇に堕ちていくという展開にも見えるんです。つまり、ジョーカーになる前の彼を描くためにはチャップリンはうってつけの引用になるんですね。
ただ、今作の素晴らしいのはそれだけじゃない。
チャップリンを引用するのはジョーカーになる前のパーソナリティを描くためではなく、むしろジョーカーになった後のパーソナリティを描くためにチャップリンを引用しているように見えるんですよね。
チャップリンの名言に「人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇だ」という言葉があります。
つまり、起こっていることは同じでも、人の見方によって喜劇にも悲劇にもなるってことですよね。
これはつまり、ジョーカーに起きた出来事も悲劇に見えても、見方によっては悲劇にも見えるわけで。
ジョーカーになる前のホアキンは、病気によって笑いが絶えないも、悲劇の連続に苛まれ、笑いながら泣くシーンを連発します。こんな演技ができるから、ホアキンは凄いと思うんですけど。
つまり、この時はまだ自分の人生は悲劇だと思っているんですよね。
しかし、ジョーカーに目覚めた後は泣くこともなく、笑うばかり。
ホアキンがジョーカーになった理由は、単に悲劇が続いて人生に絶望したからじゃないんですよ。
彼は自分の人生を悲劇か喜劇、どちらで捉えるか?人生の見方を悲劇から喜劇に切り替えただけなんです。
これが彼がジョーカーになった理由。チャップリンの名言を忠実に実行しただけなんですよね。だからジョーカーは、マレーの番組に出演した際に「俺の人生は昔は悲劇だった。でも今は喜劇だ」と言ってるんですよね。
人生の見方を変えるだけで、こうも人間は変わってしまうのかと恐怖を覚えますが、彼のあまりにも絶望的な人生を乗り切るには、どんな悲劇でも笑うしかないってことなんですよね。
彼は彼なりに、チャップリンを目指したんだと思います。ただ、彼の場合は喜劇王じゃなく悲劇王の方ですが。。
それゆえ、悲劇を喜劇だと解釈してしまい、意のままに人を殺し、犯罪に手を染めてしまうんですよね。
彼の考えでは、いくら人を殺そうが犯罪を犯そうが喜劇だと捉えてるんですよね。
ただ勘違いしないで欲しいのが、彼は自分の人生を恨んで犯罪を犯してるわけじゃないんですよね。
ジョーカーになった時に、悲劇と喜劇の取り方が反対になってしまっただけなんです。
これぞジョーカーがサイコパスたる所以だし、ジョーカーの目的が分からない理由でもあります。彼は人殺しをしてるように見えて、実は喜劇を演じてるだけなんですよね。。。
怖いわ!!!
どう考えてもサイコパスですが、これをチャップリンの名言を引用して表現したところが実に素晴らしい。これぞ金獅子賞を取った理由なんじゃないかと思われます。こんな表現の仕方ないですよねぇ。。
ちなみに、ジョーカーになる前はクローズドショットが多く人生を悲劇的に描き、ジョーカーになった後はロングショットが増えて喜劇的に見えてくる撮影手法も実に見事だと思います。
ジョーカーの笑いにこそテーマが詰まっている!!
以上の文脈を踏まえると、ジョーカーが笑うときにこそチャップリンの名言が効いてくるんですよね。
ジョーカーになる前は、病気のせいで仕方なく笑っているホアキン。笑っていても、悲劇にしか見えないのです。それを表現するためにホアキンは顔は笑って目は笑ってない演技を何度も何度も連発するのが本当に凄いと思うんですけどw
目尻を下げることなく笑うのは結構難しいですよ、これ。。どうやって演技してるんだw
一方でジョーカーになった後は本気で笑っているように見える。病気が継続していることも影響していると思うのだけど、彼の行いや言動から本気で笑ってるようにしか見えない。これこそ喜劇として笑っているシーン。
同じホアキンの笑いでも、悲劇的に笑うのか喜劇的に笑うのかで、ジョーカーになるスイッチが分かるんですよね。
ロバート・デニーロが出ている理由
今作はコメディアンのマレー役を演じたロバート・デニーロですが、この配役も非常に重要なんですよね。
今回ホアキンはマレーの番組に出たくて出たくてしょうがない。テレビで活躍する司会者になりたいと思ってるんですけども、これってロバート・デニーロ主演「キングオブコメディ」のプロットそのままですよね。
ちなみにジョーカーの赤色のジャケットは、このキングオブコメディのデニーロのジャケットの色を模したのでしょうか?
ちなみに芸人のキングオブコメディは、この映画から引用しています。
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