- まえがき
- あらすじ
- 「ミッドナイトスワン」のネタバレありの感想と解説(短評)
- 痛く、汚く、そして臭い。それでもこの映画は、美しい
- 草なぎくんの演技が冴え渡る
- 鑑賞中に思い出した映画
- 色めがね映画評論:「青と赤の配色から見えてくる今作の気概」
- まとめ
まえがき
今回批評する映画はこちら
「ミッドナイトスワン」
草なぎくんを映画館で見るのは、いつぶりでしょうか。
元Smapという意味では、「マスカレード・ホテル」の木村拓哉をスクリーンで観て以来かな?
解散しましたが、精力的に活動されていて何よりです。
ちなみに慎吾くんはファミマでよく見かけます。
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ただ、本作を観ようと思ったのは草なぎくん目当てではなくて、監督・脚本を担当したのが「全裸監督」の内田さんということで、いてもたってもいられなくなったのです。
草なぎくんが演じる役を見る限り、どうしても「チョコレートドーナッツ」を思い出すのは、私だけではないはず。いったいどんな映画に鳴ってるんだろう。。
それでは「ミッドナイトスワン」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。
あらすじ
・草なぎ剛演じるトランスジェンダーの主人公と親の愛情を知らない少女の擬似親子的な愛の姿を描いた、「下衆の愛」の内田英治監督オリジナル脚本によるドラマ。故郷を離れ、新宿のニューハーフショークラブのステージに立つ、トランスジェンダーの凪沙。ある日、凪沙は養育費目当てで、少女・一果を預かることになる。常に社会の片隅に追いやられてきた凪沙、実の親の育児放棄によって孤独の中で生きてきた一果。そんな2人にかつてなかった感情が芽生え始める。草なぎが主人公・凪沙役を、オーディションで抜擢された新人の服部樹咲が一果役を演じるほか、水川あさみ、真飛聖、田口トモロヲらが脇を固める。
「ミッドナイトスワン」のネタバレありの感想と解説(短評)
#ミッドナイトスワン 鑑賞
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2020年9月25日
「チョコレートドーナツ」のような、あの時のヒリヒリした感情を思い出す。
「レインマン」や「真夜中のカーボーイ」など、ダスティン・ホフマンの名演が草なぎくんの宿り、涙した。
痛く、汚く、そして臭い。それでもこの映画は、美しい。新たな傑作がここに。#草なぎ剛 pic.twitter.com/Vbv1UZDuQl
痛く、汚く、そして臭い。それでもこの映画は、美しい
草なぎくんの演技が冴え渡る
鑑賞中に思い出した映画
また、未だ記憶に新しいですが、「彼らが本気で編むときは」で、同じジャニーズ生田くんが女性(になろうとする)を演じていましたよね。この作品も素晴らしかった。
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・フロアダンサーからプロダンサーへ
草なぎくんがフロアダンサー、一果ちゃんがバレエに奮闘する姿は、少し古い映画ですが「フラッシュダンス」を彷彿とさせますよね。
特に、一果ちゃんが草なぎくんの職場でバレエ・ダンスを踊る姿は、本当にフラッシュダンスだったなぁ。。
・草なぎくんの演技を観て
皆さんどれだけ感じてらっしゃるか分かりませんが、草なぎくんはダスティン・ホフマンの演技に大きな影響を受けてると思うんですよね。
分かりやすいのが、「レインマン」。自閉症のダスティン・ホフマンの挙動・言動はそのまま「僕の歩く道」の草なぎくんに完璧に継承されています。
並木道を歩く姿からも、制作側は「レインマン」に影響を受けていると思われます。
今作においても、草なぎくんがサングラスを掛けながら颯爽と歩く姿から「レインマン」を思い出さずにはいられませんでした。
こちらが「僕の歩く道」、レインマンと同じく並木道を走る姿が印象的。
また、今作のラストで一果と草なぎくんがバスに乗るシーンがありますよね。草なぎくんは既に大病に侵されていて、瀕死状態で海にたどり着こうとするのですが、このシーンは「真夜中のカーボーイ」のオマージュではないでしょうか?
また、一果がニューヨークに向かうシーンからも、真夜中のカーボーイを思い出さずにはいられませんでした。
以上、むりやりなこじつけかもしれませんが、草なぎくんはダスティン・ホフマンから大いに学び、大いにモノにしていると信じて疑いません。
色めがね映画評論:「青と赤の配色から見えてくる今作の気概」
今作で目立ったのは赤と青の配色。
単刀直入に言って、今作は現代のLGBTQ映画の中でも一線を画すLGBTQ映画としてニューシネマを生み出したと思われます。
私の持論であるのですが、原色に近い赤と青(正確には青緑)が強調して使われる映画はニューシネマである傾向が強いんです。「気狂いピエロ」や「パリ、テキサス」など、ニューシネマの代表作は総じて赤と青の配色が映えています。
ニューシネマと色の関係については、詳しくはこちらの記事で書いています↓
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凪沙は常に「赤」の服が多いのですが、どちらかというと「黒み」と「艶」がある高級感漂う赤色なんですよね。まるでレッドカーペットの配色のような、非常に高級感のある赤で。
なので、一果ちゃんがバレエの練習をしている時に、赤いカーテンから光が差し込み一花ちゃんを照らすのは、赤=凪沙が一果ちゃんを包み込み応援しているメタファーになっていると思うんですよね。このカーテンの赤みと凪沙の服の赤みは色彩・明度・彩度ともに非常に近いです。
また、ニューシネマではないですが、 今作の配色は同性愛をテーマとした「キャロル」と非常に似ているのも印象的です。
赤とは対象的な青緑の服も今作では頻繁に使われており、補色的な関係である赤と青緑の関係にあります。また、上は赤で下は青でコーディネートする場面もあり、ここでの配色は、赤と青の対極的な関係:女性と男性が混在するトランスジェンダーのメタファーでもあると感じます。
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本筋に戻ると、今作の特徴的な配色は同性愛であったりニューシネマの映画の配色と近い部分があり、LGBTQ映画に新たな風を吹き込もうとした気概に満ちあふれているのです。
近年の映画におけるLGBTQの浸透・導入の進化はめざましいものがあり、もうLGBTQがキャラクターとして存在することは特異ではない→当たり前だという考え方があります。その証左として「ブックスマート」では、バイセクシャルである主人公に対して、その性指向について深堀りすることなく「当たり前」として描いていくのです。
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最近のLGBTQ映画の風潮を踏まえると、今作で草なぎくんが演じたトランスジェンダーの役は少し古いとも言えますが、この性に対する価値観の古さ自体が、日本の性に対する理解への浅さに直結している構図になっているんですよね。
ちなみに「ブックスマート」の舞台はカリフォルニアという極めてリベラルな価値観の元にある高校で、今作の東京・広島とはかけ離れている場所。
島国ニッポンの価値観の古さが如実に現れたのが、今作のLGBTQ描写なんですよね。
LGBTQの人にとっては、日本はまだまだ暮らしづらい。
リベラル色が非常に高いハリウッド映画とは対極的な、日本の遅れている現状を伝えるためにも、この映画は必要だと思います。
まとめ
LGBTQが浸透するハリウッド映画ばかり観ている私にとっては、今作を観て本当に衝撃を受けました。
日本の遅れた性に対する価値観が如実に現れていて、日本ではまだまだ見た目で差別する文化=異物を徹底的に差別する文化があるなぁと。
こういった難しい役どころを演じられる草なぎ剛くんは本当にすごいし、新人の服部樹咲ちゃんの今後の活躍が楽しみです!!
そして最後に、日本映画もまだまだやれるぞ!世界に引けを取らないぞ!!と気概に満ち溢れる作品でございました!!
95点 / 100点