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映画「ミラベルと魔法だらけの家」ネタバレあり感想解説と評価 全ての持たざる者に捧ぐミラクルストーリー

 
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この記事では、「ミラベルと魔法だらけの家」のネタバレあり感想解説記事を書いています。
 
 目次
 

まえがき

 

 

今回批評する映画はこちら

 

「ミラベルと魔法だらけの家」

 
 

 

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(C)2021 Disney. All Rights Reserved.
 
底抜けに明るそうなミュージカル映画。
同日公開の「ディア・エヴァン・ハンセン」とは大違いな予感がする。
 
同じ週に大作のミュージカルが流れるって珍しく、今週は完全にミュージカル映画のみ劇場で鑑賞しそうだ。
 
監督はパイロン・ハワードとジャレッド・ブッシュ。特にパイロンは「ポカホンタス」からクレジットが刻まれ、「ムーラン」「ズートピア」「塔の上のラプンツェル」といったメガヒット作を手がける現代ディズニー映画の担い手。
 
そして音楽は「インザハイツ」や「ハミルトン」の楽曲を手がけたリン=マニュエル・ミランダが担当。
 
ディズニープラスの新作動画配信騒動で多くの劇場でディズニーの映画を流さない事態が起こったが、今回は大手を含む多くの劇場で公開が決定した。
 
なんだかんだ劇場でディズニーを見ることがルーティンになっているのだが、ディズニーに肩入れしているつもりはない。ただただ映画ファンの一興味として、最も金と労力が掛かったアニメ映画の最前線を追いかけたくて仕方がない。ただそれだけだ。
 
対象年齢が低いうようにも見える、可愛すぎな印象もする。そんなの分かってる。
ただ私は映画ファントして、ディズニーを追いかけてるだけ。。
 

それでは「ミラベルと魔法だらけの家」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。

 

 

 

 
 

あらすじ

  
・ディズニー・アニメーション・スタジオによる長編アニメーションで、南米コロンビアを舞台に、魔法にあふれた家に暮らす少女ミラベルの活躍を描いたミュージカルファンタジー。コロンビアの奥地にたたずむ、魔法に包まれた不思議な家。そこに暮らすマドリガル家の子どもたちは、ひとりひとりが異なるユニークな「魔法の才能(ギフト)」を家から与えられていた。しかし、そのうちの1人、ミラベルにだけは、何の力も与えられていなかった。力を持たずとも家族の一員として幸せな生活を過ごしていたミラベル。ある時、彼らの住む魔法の家が危険にさらされていることを知った彼女は、家族を救うために立ち上がることを決意する。監督は「ズートピア」のバイロン・ハワードとジャレッド・ブッシュ。ミュージカル「イン・ザ・ハイツ」や「ハミルトン」でトニー賞、グラミー賞など数々の賞を受賞しているリン=マニュエル・ミランダが音楽を担当。

ミラベルと魔法だらけの家 : 作品情報 - 映画.com


 

 
 
 
 
 
 

「ミラベルと魔法だらけの家」のネタバレありの感想と解説(全体)

 

 
 
 

魔法とプリンセス。ディズニーの二大代名詞を欠落させた主人公造形に感服!

 
魔法、プリンセス。
約100年にも及ぶディズニー映画の歴史の中で常に用いられてきた、もはやディズニーの二大代名詞。
 
今作はその二つを後も簡単に欠落させ、特別な何かを持ち合わせていない凡庸な少女に主人公という大役を託した。
 
主人公ミラベルはマドリガル家という、彼女の祖母から始まった魔法使いの一家に生まれ育つ。しかし、彼女だけは何の能力も生まれず、露骨なイジメは無いものの彼女を軽んじる家族と周囲の民。
持たざる者として生まれた主人公というのは、実はディズニー映画の定石でもある。
シンデレラや白雪姫や美女と野獣。
 
確かに白く透き通った美人ではあるが、それ以外は特にこれといった才能を持ち合わせていない。しかし、彼女たちのそばには必ず魔法が寄り添っていた。
何かトラブルがあっても、魔法がなんとかしてくれる。キャラ造形が革新的と言われた「アナと雪の女王」でも、自ら魔法を放って強い女性を物理的に表している。
 
しかし、今作のミラベルは本当に何も持っていないし、魔法が彼女を助けるわけでもない。むしろ逆だ。周囲に魔法があるせいで、魔法を持たない彼女の劣等感が形成されていく。
 
魔法に助けられることはあっても、魔法に苦しめられるディズニーの主人公。
こんな設定、今まであっただろうか?
 
子供の頃から、ずっと魔法のせいで劣等感を味わってきた。日々の生活では気丈に振る舞っても、魔法を授かる儀式に参加する時には彼女の表情が曇る。
ミラベルは一人だけ劣等生で、言わば「みにくいアヒルの子」の物語だ。
 
もしかしたら、今作はみにくいアヒルの子をモチーフにして作ったのかもしれない。
 
いつか魔法が救ってくれる、という安直な期待はこのディズニー映画には通用しない。
 
魔法に頼らず、彼女が持つ身体能力や根性、持ち前の明るさや度胸で家族に訪れる危機に立ち向かっていく。
 
ある意味、子供だましではないリアルな作品に仕上がっている。
 
ミラベルのひたむきさと明るさに、きっとみんな涙するだろう。ここまで現実味のある主人公はいなかった。誰これの姫でもなく、魔法使いでもなく、一般人としての位置付けが強い。もはやミラベルを「プリンセス」と呼ぶ人など存在しない。
「アナと雪の女王」では、王子様と恋しないディズニープリンセスを描いたのが革命的だったが、今作ではプリンセス自体を否定しているようにも見える。
 
だからこそ、イザベルのような一般にイメージするプリンセスを脇に添えているのだろう。
 
今後はさらに、もっと日常にありふれた主人公になっていくのかもしれない。ディズニー映画は日々進化し、革新を続けていくことに驚きを隠せない。
 
 
 

同日公開のあの映画と共通点多数

 
また、楽曲の使い方にも非常に特徴がある。
ザッツ・ディズニー映画と言わんばかりに明るい曲調が多く、コロンビアのラテンノリでイケイケな曲も多いのだが、注目すべきはキャラクターの心の叫びを歌で代弁させている点。
 
ミラベルには多くの姉妹がいるのだが、彼女たちの本音を歌によって見事に引き出している。普段は魔法使いの一家として、村民からプリンセスのように扱われる彼女たち。当然ストレスが溜まる。言いたいことも言えない。
 
しかし、何も持っていないミラベルと接している時こそ、本当に言いたいことが言える。
 
特に、姉妹の中でも最もプリンセスらしい出立ちのイザベラが歌う「What else can I do ?」は、ハイスクールミュージカルにも流れそうなディズニーど定番な曲なのだが、実はイザベラが抱える日々の不満を歌っている。
 
また、姉妹だけでなく祖母のアルマ、厄災のように扱われているブルーノに対しても、ちゃんと歌う場面が用意されており、個々人の心情を吐き出すかのように歌い上げている。
 
ここまで書けばピンと来た人がいるかもしれないが、今作のミュージカルシーンは同日公開の「ディア・エヴァン・ハンセン」と多くの共通点がある。
 
「実は私は◯◯だと思っている!」と、世間のイメージとは違う本当の自分を曝け出すためにミュージカルを使用しているのだ。あまりにも偶然だが、もしかして今後は似たようなミュージカルが増えていくのだろうか・・
 
 

 

持たざる者の物語として切なく苦しい場面も

 

ミラベルを見ていて、本当に胸が苦しくなった。

 

前述した通り、ミラベルは魔法一家の中で唯一、何の魔法も持ち合わせておらず持たざる者の代表格として扱われている。

 

ミラベル自身、魔法が無いことに常に悩んでいるようには見えない。周囲の人も気にしていないように思える。

 

しかし、魔法の話題になった時、魔法関連のイベントがあった時、確実にミラベルの表情は険しくなる。

ミラベルの年下の従兄弟が初めて魔法を授かる行事では、不安な様子で待つ従兄弟に「大丈夫大丈夫よ!もし魔法が持てなくても私とずっと一緒だよ!」と緊張を紛らわせる素敵な一言を投げかける。

 

なんだ、こういうキャラか。

その時は楽観的に思っていた。

 

しかし、いざ従兄弟が行事に参加している最中には、ミラベルの弱々しい表情が映し出される。そしてミラベルが過去に魔法を授かれなかった回想が交互に映されていき、魔法を得るトリガーである特殊なドアの前に従兄弟が立った瞬間、ミラベルの顔がすっぱ抜かれる。。

 

下を向いている。目が泳いでいる。明らかな不安が付き纏っている。

その不安は、決して従兄弟だけに向けられたものではないのは明らかだ。

自分自身が一番不安になってるんだ。

 

もし従兄弟も魔法を持ったら、もっと自分の肩身は狭くなってしまう。

また、一人になってしまう。

 

この時のミラベルの絶望感を秘めた不安な表情が絶妙で、悲しくて泣くわけでもなく、あくまで通常通り気丈に振る舞うミラベルの所作が泣けて仕方ない。。

なんてリアルなんだ。。

ミラベルは、俺そのものだ。。

 

まさかディズニーの主人公に同調してしまうとは。こんなことも初めてかもしれない。

 

ミラベルのような立場の人は、数多くいる。

一人だけ巣立てずに、前に進めず。

ずっと同じ位置に居続けることの地獄を、ディズニー映画が見せてくれるのだ。

 

ここで、映画とは全く関係ない自分の昔話をしたい。

 

私は大学に10年在籍していた。博士後期課程も含めているので、決して留年や勉強不足ではない。

多くの仲間たちや後輩が就職を決める中、私は大学院生の道へと進んだ。その時は何の後悔もなかった。院生に進むのは珍しいことじゃないし、仲間たちもたくさんいる。

 

苦しくなってきたのは博士課程に入ってからだ。友達も社会に出て、誰一人として大学に居残ってる人はいない。

 

次々と前へ進んでいく学生。自分だけ一人ぼっちで、新しい生活ができなくて。

巣立っていく後輩におめでたい気持ちと、お前も離れていくのか、と焦燥感にかられいた気持ちを思い出す。

 

自分だけが取り残されたような気がして、本当に苦しくなった。

 

今作は、そんな過去のトラウマを思い出させるほど強烈だった。

 

 

 

 

まとめ

ディズニーらしからぬ主人公に泣かされた。

 

そして、まさかディアエヴァンハンセンと共通点が多いとは。これも劇場が仕組んだ何かなのだろうか。

 

あまりにお行儀がよくハッピーエンドも少し微妙ではあったが、それでも序盤にミラベルが見せた表情は忘れられない。

 

ミラベル、ありがとう。そして、さようなら。

 

94点 / 100点 

 

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 以上です! ご覧いただきありがとうございました!
 
 
 
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