- まえがき
- あらすじ
- 「モンスターハンター」のネタバレありの感想と解説(全体)
- 何かを「貫く」ことの尊さを描いた良作
- 2Lのコーラをガブ飲みしたような映画
- YouTuberも舌を巻く鬼テンポ編集
- 謎の長尺夫婦漫才
- 映画史を変えた伝説の「火花」
- まとめ
まえがき
今回批評する映画はこちら
「モンスターハンター」
あらすじ
・2004年の第1作発売以降シリーズ累計6500万本を売り上げるカプコンの大ヒットゲームシリーズ「モンスターハンター」を、ハリウッドで実写映画化したアクションアドベンチャー。同じくカプコンの人気ゲームを原作に大ヒットを記録した「バイオハザード」シリーズの主演ミラ・ジョボビッチ&監督ポール・W・Sアンダーソンが再タッグを組んだ。エリート特殊部隊を率いる軍人アルテミスは砂漠を偵察中、突如発生した超巨大な砂嵐に襲われ、必死に逃げるものの一瞬にして巻き込まれてしまう。強烈な突風と激しい稲光の中で気を失ったアルテミスが目を覚ますと、そこは元いた場所とは違う見知らぬ異世界だった。その世界には近代兵器の通用しない巨大なモンスターが跋扈(ばっこ)し、そんなモンスターの狩猟を生業とするハンターがいた。アルテミスは元の世界に戻るため、次々と迫りくる巨大モンスターと激闘を繰り広げていく。「ワイルド・スピード SKY MISSION」などのハリウッド作品でも活躍するタイのアクション俳優トニー・ジャーや、「ヘルボーイ」のロン・パールマンが共演。日本からも山崎紘菜が参加し、ハリウッドデビューを飾った。
「モンスターハンター」のネタバレありの感想と解説(全体)
#モンスターハンター 鑑賞!!
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2021年3月27日
マジかよ!超面白かったよ!
・点と点を結んでも線にならない散文的な展開
・YouTuberも舌を巻く鬼テンポ編集
・謎の長尺夫婦漫才
・0か100かの過激音響
・映画史を変えた伝説の「火花」
2Lのコーラをガブ飲みしたような映画でした。たまんねぇ、500000000点で!! pic.twitter.com/Ub1et29M4c
何かを「貫く」ことの尊さを描いた良作
最初に言いたい。本作は決して駄作ではない。
ただし、映画技法的に優れているとか、役者の演技が見事だとか、そういうことを言いたい訳じゃない。
むしろ、ダメな所はたくさんある。ありすぎる。
本作についてなぜ平静を保っていられるのか、自分でも不思議なくらいだ。
しかし、本作に存在する無限大のダメさが、むしろ本作にプラスを与えたと思っている。
本作の感想は、純粋に「面白かった」としか言いようがない。見ていて本当に楽しかった。エンタメという揺りかごに乗っているような、そんな気分さえ感じた。
決して泣きはしなかったが、大いに笑わせてもらったし、ドキドキ・ハラハラもさせてもらった。
おそらく本作は、プラスかマイナスでいうと、マイナスの要素が多い。むしろ、マイナスばかりなのかもしれない。
一般的な駄作はプラスとマイナスが同等程度存在し、結果としてプラマイゼロとなる。つまり、記憶には残らない。
しかし、本作は違う。徹底したマイナスの要素が積み重なり、無限のマイナスが生じている。
すると、映画にある化学反応が起こる。
無限のマイナスが、むしろプラスに見えてくるのだ。
つまり、映画に絶対値を意識してしまう。無限のマイナスでも、絶対値を付ければ良い映画に転じてしまうのだ。
|-∞|=∞と、マイナスが転じてプラスになっているような、そんな映画があっても良い。
2017年、ジェームズ・フランコ主演で「ディザスターアーティスト」という映画が公開された。
「駄作界の市民ケーン」と称される、伝説のカルト映画「ザ・ルーム」の製作過程を描いたものであるが、駄作と称された映画で、観客は大爆笑の嵐。間違いなく、映画を楽しんでいるのだ。
本作はまさに、「ザ・ルーム」を見た時の観客の反応に近い。本当に楽しませてもらった。
徹底した夫婦による製作体制、先が見えすぎる展開、爆音と静寂の二音しかない極端なサウンドエフェクトなど、本作は全てが徹底して、何かが突き抜けている。
何かを貫くことの尊さを、本作から学んだ気がする。
以降、映画本編に対してアレコレ語っていくが、人によっては酷評しているように見えるかもしれない。
が、 信じてほしい。
本作の評価と同じく、どんな酷評≒マイナスの要素が積み重なっても、絶対値を付ければ絶賛の嵐と捉えられるのだから。
2Lのコーラをガブ飲みしたような映画
本作を例えるなら、2L のコーラをがぶ飲みしたような印象がある。
甘くて美味しいが、体には悪い。そんな劇薬を豪快に摂取したような、そんな映画だと思う。
軍規は何処に
冒頭から、本作の劇薬っぷりは群を抜いている。
砂漠に落ちている缶を踏み潰し、砂漠の上を走る車。構図やカメラワークは、まるでマッドマックスのようだ。
テロップに「国連」と書いており、ミラジョボを始めとした兵士たちは国連軍なのだろう。しかし、どこかおかしい。
軍規とはどこに行ってしまったのだろう。マッシュとは言わないまでも、ルールがなさすぎる。雑と言ってしまえばそれまでだが。
0か100かの極端な音響設計
本作を監督したポール・W・S・アンダーソンは、ミラジョボ主演で「バイオハザード」を映画化した人で有名だ。
ゾンビが活躍することから、ジャンルとしては「ホラー」と言っていいだろう。
ホラー映画を監督した名残だろうか。本作の音響設計はまるでお化け屋敷のような、0か100しかない極端な音響によって構成されている。
静寂な室内。カメラをパンすると急にモンスターがドオオオオン!!!
まるでバイオハザードをプレイしているような、そんな印象さえ感じる。
純粋に観客を喜ばせようと、振り切った音響にしているのだろう。
ただ、この極端な音響が何回も何回も続くため、少し食傷気味にはなってくる。
ド迫力のモンスターやエフェクト、砂漠のロングショットなど、映像が素晴らしいだけに、より音響のインスタント感が露出してしまうのだ。
YouTuberも舌を巻く鬼テンポ編集
今回は編集の何かがずば抜けている。
特にミラジョボとトニー・ジャーが戦うシーン。
どんなアクションも素早すぎて目で追いかけられない。
自分の目が愚かなのだろう。
アクションをしている時、トニージャーの顔は見えてもミラジョボの顔の一切が見えない。
主人公の戦いを常に背後から見るしかないのだ。
これ以上は言えないが、何か事情があるのだろう。
YouTuberでも、あんな編集はできない。目で追いかけられないほどのスピード、ワンカットずつ丁寧に見ないと分からないだろう。
そして、アクションシーンに留まらず、本作全体を通じてテンポが良すぎるせいで、一つ一つのシーンが何の意味があるのか分からないものが多かった。
例えば、ミラジョボがモンスターの巣窟に閉じ込められるも脱出方法を模索するために、洞窟を探索するシーン。
カメラはミラジョボを捉えながらも、上へ上へと進んでいく。
何を意図しているのか、とても気になるショットだった。
カメラの上昇と共に、私の期待もどんどん上昇した。
カメラが上がる!上がる!上がって何が見えるんだ・・・
しかし、カメラが上がり切ったところで、カメラは正面を向く。
え?
さっきまでのシーンは、いったい何だったのだろう。ただ単に、ミラジョボを上から撮りたかっただけだったのだろうか。
どんな映画でも上から人を撮影するシーンがあるが、本作ではあまりにも唐突にカットが切り替わってしまい余韻が残らず、あのシーンが何を意味したのか分からない。
そういうシーンのオンパレードによって、どこかコミカルな印象さえ持ってしまう。
ちなみに、私は件のカメラワークで大爆笑した。
謎の長尺夫婦漫才
初めは喧々諤々としたものの、すっかり意気投合したミラジョボとトニージャー。
まるで夫婦漫才を見ているような、2人の会話シーンが多く映る。
例えば、ミラジョボがトニージャーにチョコレートを渡すシーン。異世界から来たため、チョコレートを知らないトニージャー。
ミラジョボは丁寧にチョコの説明を行うが、あまりにもそのシーンが長すぎるのだ。
間違いなく、2人がバトルしたシーンよりも長い。
チョコレートにどんな意味があるのだろうと深読みしてしまったが、おそらく二人の関係性を描きたかったのだろう。単に栄養補給するシーンには見えなかった。
それ以降も、こうした二人の会話シーンが異様に長い。常に二人の関係性が本作のメインに鎮座しているような、そんな印象さえある。
監督はトニージャーに自身を投影したのだろうか。そんな夫婦漫才を、本作では何度も目撃することが出来る。
映画史を変えた伝説の「火花」
ミラジョボがケガを直すために、薬莢を分解し火薬を傷口に塗るシーンがある。
そして石と石とをぶつけ合い、火をおこそうとする。
驚くほど簡単に火花が出る。偶然にも火打石を手に入れたのだろう。
しかし、その後の展開に思わず舌を巻いた。
その火花が奇跡的に火薬に移り、炎が燃え盛る。
その瞬間、ミラジョボの顔かどうかも分からないほどカメラが激しく揺れ、もはや振動しているようにも見えるシーンが映る。
お分かりいただけただろうか。
一体、何が起こったのだろう。意味が分からない。なぜカメラを激しく揺らす必要があったのか。
プレイステーションのデュアルショックコントローラーを表現した、とでも言うのだろうか。
全く意味が分かっていない状態だったが、その時、何故か大爆笑してしまった。
あんなに笑ったのは、いつぶりだろう。
人は理解不能なモノに対して自然と笑ってしまう習性があるが、映画でも同じ現象が起きるとは思わなかった。
この火花は、映画史を変えた。
まとめ
もう一度言う。
本当に面白かった。
2000年代に見た大味アクションを、令和の時代に見れるとは思わなかった。
ローランド・エメリッヒの後継者は、もう決まったのではないだろうか。
こういう映画があっても良い、だからこそ映画は面白い。
ずっと大切にしたい。
ただ、しばらくは見なくて良い。
きっと誰かと話したくなる、素敵な映画でした。
80点 / 100点