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映画「るろうに剣心 最終章 The Final」ネタバレあり感想解説と評価 アニメともマンガとも違う、「誰もが分かる」ことの素晴らしさ

 
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この記事では、「るろうに剣心 最終章 The Final」のネタバレあり感想解説記事を書いています。
 
 目次
 

まえがき

 

 

今回批評する映画はこちら

 

「るろうに剣心 最終章 The Final」

 
 
 

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(C)和月伸宏/集英社 (C)2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会
アニメ放送時に小学生で、私を含め全国の小学生たちは、るろ剣の虜だった。
 
掃除の時間など長い棒を持つときには、自己流の飛天御剣流と牙突を繰り出し、技を競い合っていた。
 
雨が降った時は、傘を使って剣戟を披露しあっていた。
牙突零式で友人の恥部を突き合っていたのも、今では大切な思い出。
 
二重の極みなら楽勝だろうと、石を小刻みに二度殴る特訓もしていた。
やりすぎて、拳にヒビが入った。
 

 確か映画「学校の怪談3」では、小学生たちがほうきを持って「天翔龍閃!!」と遊ぶシーンが映っていたと記憶している。

 

脚本の島田満さんは、アニメるろ剣の脚本も担当しており、ふざけて脚本に「九頭龍閃」と書いたら金子修介に「天翔龍閃の方にしましょう」と言われたらしい。

 

学校の怪談3

学校の怪談3

  • 発売日: 2015/08/01
  • メディア: Prime Video
 

実は、この「学校の怪談3」を書いていた頃、わたしは「るろうに剣心」も書いていました。それで、映画の主人公の少年が、掃除中に、友達とホウキでチャンバラするシーンの中に、剣心の技を入れちゃったんです。比古清十朗が好きだったわたしなので、迷わず「飛天御剣流・九頭竜閃!」とシナリオに台詞を書いておきました。ところがその後、撮影現場に遊びに行くと、金子監督がなんと!「るろうに剣心」のコミックをにらんで唸っているではありませんか。そして、「島田さん、この九頭龍閃は、すごすぎます。子供には演技できません。天翔龍閃でいきましょう」とおっしゃったではありませんか。そこで剣心の技は「天翔龍閃」に決定!
 実際、「学校の怪談3」の中で、このシーンのチャンバラがどうなったか、確かめてみては?

nisoku2.tumblr.com

 

そんな全国的な流行の最中にあった私にとっては、るろ剣とは遊びの一環であり、剣心は憧れの的だった。

 

今では「けんしん」と入力すれば「健診」が真っ先に検索候補になり、立派なおじさんになってしまった。

 

本作は、少年だったあの頃の思い出を蘇らせてくれるのだろうか。

 

それでは「るろうに剣心 最終章 The Final」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。

 

 

 

 
 

あらすじ

  
和月伸宏の人気コミックを佐藤健主演&大友啓史監督で実写映画化した大ヒットシリーズ「るろうに剣心」の完結編2部作の第1弾。原作では最後のエピソードとなる「人誅編」をベースに、剣心の十字傷の謎を知る上海マフィアの頭目・縁との戦いを描く。日本転覆を企てた志々雄真実との死闘を終えた剣心たちは、神谷道場で平穏な日々を送っていた。そんなある日、何者かが東京中心部を相次いで攻撃。やがて剣心は、ある理由から剣心に強烈な恨みを持つ上海の武器商人・縁との戦いに身を投じていく。キャストには緋村剣心役の佐藤健、神谷薫役の武井咲、相楽左之助役の青木崇高、高荷恵役の蒼井優、斎藤一役の江口洋介らおなじみの俳優陣が再結集。新たなメンバーとして、シリーズ史上最恐の敵となる縁役を新田真剣佑、かつての剣心の妻で、剣心が不殺の誓いを立てる理由となった女性・雪代巴役を有村架純がそれぞれ演じる。

eiga.com

 

 
 
 
 
 
 
 

「るろうに剣心 最終章 The Final」のネタバレありの感想と解説(全体)

 
 

 
 
 

逆さの刃 無限列車編

 
まず冒頭のシーンで驚いた。
今回のヴィラン的存在となる新田真剣佑演じる縁が列車で職務質問を受け逮捕される場面。
 
マンガ版でも最強と言われた、冷酷かつ無類の強さを誇る縁の強さを説明するために、次々と警官を蹂躙していく。
 
るろ剣シリーズではお馴染みである、高低差を使ったアクションは、列車が舞台でも存分に発揮されている。
剣を使わず純粋な身体能力だけで、列車の上を走りながら次々と警官を倒していく。
 
唯一の武器は、けん玉。けん玉の針で急所を突き、捕まってもなお笑い続ける縁。
 
徹頭徹尾、悪ふざけで人を殺し、ピエロを演じているような印象さえ覚える。
 
縁の恐ろしさを伝えるには十分すぎる内容だった。
 
このシーンで、観客の心は真っ先に奪われるだろう。この列車のシーンだけで、スピンオフを作っても良いくらいだ。
 

 

 

もしもNHKがるろ剣を実写映画化したら

 

そんな見事な冒頭から始まった本作は意外な手法で話しを語りだす。

 

一般的なアクション映画とは打って変わって、ドラマパートが多く、そして長い。

 

縁の列車のバトルから、どれだけの時間が経っただろうか、と思うほどひたすら会話劇が続く。

 

まるで連続ドラマ小説や大河ドラマを見ているような感覚に陥るほどの、偏重したドラマパート。まるでミーティングか朝礼のように、微動だにしない役者。立ち止まって、あるいは座って静かに話をするシーンが非常に多いのだ。

 

別に、映画的にダメだと作風を否定したい訳じゃない。ただ、あまりにも静かなドラマパートを映画館で眺めていて、少し違和感を感じただけだ。と同時に、監督の経歴を調べたくなった。

 

大友監督はNHK職員で、ドキュメンタリーから始まり「ちゅらさん」などの連続テレビ小説、「秀吉」や「龍馬伝」などの大河ドラマを撮っている。

 

これで全ての合点がいった。既にフリーになった監督には申し訳ないが、私には「もしNHKがるろ剣を実写映画化したら」というキャッチコピーが思い浮かんだ。

 

テレビで流すドラマ、特に連続ドラマ小説のような平日朝の時間帯は、忙しい主婦や会社員のために何度も同じ説明を繰り返し、いつどこで見ても話の内容が分かるようになっている。

 

本作のるろ剣も、監督のNHK時代の経験が存分に生きている。いつ、どこで誰が見ても、何をしているのかよく分かる。

 

総合的に、セリフの情報量が映像の情報量に勝っているのは、そのためだろう。

 

これを悪いと言っている訳ではない。

 

映画館のような集中して映像を見る場所にとっては、その演出が少しやぼったく感じるのも事実だが、本作のような大作がテレビで公開されることを考えると、この配慮は頷けるのかもしれない。 

 

 

 

 

 

 

本作が提示したるろ剣は、現代邦画の代表的事例

 

普段は映画・映画館寄りの発言ばかりする私だが、ここまで本作を肯定するのには訳がある。

 

これまでるろうに剣心は、人誅編以降は媒体ごとに様々な展開を見せてきた。

 

縁が最初は憎悪の塊。薫との交流を通じて融和し、最後の剣心との闘いで生き方を変えるといった基本の筋は存在するのだが、その過程は複数パターン存在する。

 

例えば漫画版では、剣心が過去を思い出し縁に全力を発揮できなかったことによって、薫が刺殺され剣心の心が崩壊するといった陰鬱な展開に、当時の読者たちは絶句した。

(結局、薫は殺されず生きているのだが)

 

 

そして、アニメ版るろうに剣心のOVAである「星霜編」では、本編中の回想として人誅編が描かれる。ちなみに本作は漫画原作にはない完全オリジナル作品であり、本作の陰鬱な展開を巡っては度々議論が重ねられている。

 

薫が刺されることはなく、薫の母性を強調したシーンが随所に流れる。剣心を殺そうとする刹那に薫が剣心を守り、縁が巴を思い出して殺すのを留める。

 

 

この2つの作品に共通するのは、「読者の予想を裏切るような展開」や「謎の多い部分」が設けられていること。

 

作品のテーマである「贖罪」や「死の価値観」を伝えるには、陰鬱な展開を設けるのも手法の一つであり、仕方ないことだ。

 

また、余白をあえて作って人によって解釈が異なるのも、物語の大きな魅力だと思う。

 

しかし本作は、上記のマンガ・アニメにはない「圧倒的な分かりやすさ」をもって、るろうに剣心を語っている。そして、観客の期待を裏切らないハッピーエンドで有終の美を飾っている。

 

「プロフェッショナル」で庵野秀明も語っていたが、今の時代の映像作品は全て説明しないと見てくれない、という事実を監督は知っているのだろう。

 

 

www6.nhk.or.jp

 

マンガ・アニメ版のように謎を含むような展開にせずに、全てを説明することを本作は徹底している。

 

まるで朝ドラ受けのように、映像で見せた後にそのシーンを役者に説明させるのも、「説明しないと分からない」人を大切にするためだろう。

それが観客のメジャー層だと、作り手は信じて疑わないからこそ、本作のような作風が生まれたに違いない。

 

100年を超える映画史において、映像や音響だけで語ることが正とされてきた。

 

しかし今は、新たな展開を見せている。本作で「日本映画史を変えた」という触れ込みがあるが、ある意味本当に変えた部分はあると思う。

 

映画ファンとしては、このような作風に一石も二石も投じたくなる。怒る人もいるだろう。

 

しかし、これが今の時代のるろうに剣心なのだ。

 

誰も傷つけない、傷つかない。裏切らない、騙さない。

 

限りなく多くの観客に受け入れてもらうために、全力を尽くした作品だと思う。

 

これこそが、本作のような商業映画に求められた必要十分条件なのだろう。

 

 

 

 

まとめ

 

るろうに剣心を子供時代から親しみ、楽しませてもらった側からすると、新たなるろうに剣心のカタチが出来て嬉しく感じる。

 

映画的に見ると、アレコレ文句を言う人もいるだろう。

 

しかし、映画ファン以外の多くの市井の人々にるろうに剣心の魅力を伝える場合、最もふさわしいのは本作だろう。

 

本作をきっかけにマンガやアニメにハマり、るろうに剣心の多用な世界に入り込んで欲しい。

 

少なくとも作り手たち(製作委員会)としては、そう願っているだろう。

 

監督のこれまでの経験が活かされ、その実力を存分に発揮した本作。今度はテレビで見てみたい。どんな環境で見ても楽しめる作品、それが本作の最たる魅力だろう。

 

余談だが、ラストで左之助が志々雄誠のような包帯姿になったのは、腹を抱えて笑わせてもらった。

 

80点 / 100点 

 
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