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映画「流浪の月」ネタバレあり感想解説と評価 残酷なことに、世界はたった1つしかない

 
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この記事では、「流浪の月」のネタバレあり感想解説記事を書いています。
 
 目次
 

まえがき

 

 

今回批評する映画はこちら

 

「流浪の月」

 
 

(C)2022「流浪の月」製作委員会

 

李相日監督の久しぶりの新作。

 

広瀬すずは「怒り」に続いての出演。松坂桃李さんは同年代とは思えないほど若く純白のように見える。とにもかくにも、二人ともほかの作品では見せないような影を落としている。

 

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映画ファンにとっては、年間ベストに食い込むのではないかとの呼び声が高い作品。どんだけ期待されてんだ、、、

 

それでは「流浪の月」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。

 

 

 

 
 

あらすじ

  
2020年本屋大賞を受賞した凪良ゆうのベストセラー小説を、「怒り」の李相日監督が広瀬すずと松坂桃李の主演で映画化。ある日の夕方、雨の公園でびしょ濡れになっていた10歳の少女・家内更紗に、19歳の大学生・佐伯文が傘をさしかける。伯母に引き取られて暮らす更紗は家に帰りたがらず、文は彼女を自宅に連れて帰る。更紗はそのまま2カ月を文の部屋で過ごし、やがて文は更紗を誘拐した罪で逮捕される。“被害女児”とその“加害者”という烙印を背負って生きることとなった更紗と文は、事件から15年後に再会するが……。更紗の現在の恋人・中瀬亮を横浜流星、心の傷を抱える文に寄り添う看護師・谷あゆみを多部未華子が演じる。「パラサイト 半地下の家族」のホン・ギョンピョが撮影監督を担当。

流浪の月 : 作品情報 - 映画.com


 

 
 

「流浪の月」のネタバレありの感想と解説(全体)

 

 

 

形而上的な絆で結ばれた2人の美しき世界

大の大人が、小さな子供と共同生活。

 

どう弁明しても釈明しても、言い逃れのできない悪行。

 

しかし、2人にしか分からない世界がそこにはあった。

 

とても幸せに見えた。

 

我々が社会生活を送る上では、様々な規則や社会規範が欠かせない。

誰もが幸せに暮らせるように、健康で文化的な生活を送れるように。

 

我が国は人々が家族になることを応援して止まない。結婚すれば、子供を産めば、血と血が繋がった者同士が同じ部屋で暮らせば確実に降り注いでくると思っている。

 

しかし、一見安心で安全にも思える家族という共同体は、時に地獄の道をひた走ることもある。

 

松坂桃李演じる文、広瀬すず演じる更紗。

2人とも家族という地獄の中で育ってきた。

 

そんな中、偶然にも出会った2人。今までが嘘だったように、とてもとても幸せに過ごす。

 

2人しか分かり得ない世界がそこにあった。しかし、2人以外は知り得ない世界。

 

偶然にも、その共同生活を覗くことができた我々には2人に感情移入できるが、劇中の市井の人々には到底理解出来ない。

「万引き家族」を思いだした。

 

鑑賞中、様々なことが頭をよぎった。仮にニュースで、今作と同じような出来事が流れたら、犯人を文のように思えるだろうか。そして、更紗を可哀想な子と思わないだろうか。

 

世界はたった一つしかない。でも、2人の中には我々が到底理解できない世界が広がっていて、決して触れることが出来ない。まるでマルチバースのように、我々が到達することが出来ない領域に。

 

観る人によっては気持ち悪い、ありえないと思う人もいるかもしれない。

 

今作は、決して文と更紗を「可哀想な人」だとか「社会的弱者」であるように見せないために、2人の過去については最低限の説明に留めている。過去を説明しすぎると、どうしても2人に加担してしまうからだ。

 

そうはさせまいと、文には亮という共同生活者がいて、結婚も間近な関係を設定させる。

 

社会一般には、亮と結婚して暮らした方が幸せだと思えるが、そんな彼の内実はモラハラとDVのオンパレード。一見露悪的で安っぽいキャラクターに見えるが、彼はこの規範的な社会の象徴であると思うと合点がいく。

 

世間一般には幸せに見えることが、当事者にとっては不幸せなこともある。というか、物事の真理は全てそうだ。

 

他人が他人の関係に簡単に介入するのは、決して良いことではないのは分かっている。 

 

しかし、身の回りの人がとんでもない危険に巻き込まれそうになるのだとしたら、話は別だ。本人の意思を直接確認することなく、助け舟を出すことだってある。

困っている人がいたら助ける。当たり前のことだ。

 

しかし、それは我々のエゴでしかないことを今作は鮮やかに見せつける。

 

2人を助けるための選択肢は、ただ放って置くこと。ただ見ていれば良いだけのこと。

 

ただそれだけのことが、我々が生きている社会の中でいかに難しいがよく分かる作品だった。

 

人は1人では生きていけない。だからこそ愛し合い、お互いを求め合い、誰かが誰かと一緒に時を過ごす。

 

そんな当たり前のことが尊く思える、2人だけの美しい世界を覗かせてもらった。

 

 

ネクストレベルに達した役者の演技を目撃した

ここからは堅苦しい書き方はせず、いつもの調子で書かせてもらいます。

 

「怒り」の時も感じたのですが、いつもテレビで見る役者たちがいつもとは違う表情や演技を見せてくれて、それだけで本当に満足度が高い作品だったなぁと。

 

まずは広瀬すずさん。

少女時代に文と暮らしたことで、社会から「被害者」というレッテルを貼られて、常に誰かに噂され、常に監視されているような状態。

 

誰にも悟られないように慎ましく生活し、常に笑顔を振り撒きながらも、どこか闇を抱えているように見える。冒頭、飲食店でアルバイトをしているシーンから衝撃を受けました。

屋上でどこか遠くを見つめるような暗くて底が見えないようなドス黒い瞳。一体彼女は何を見てきたのだろうか。どんな地獄を味わったのだろうか。そんな想像が容易に出来てしまうほどのファーストインパクト。

 

そして今回は横浜流星さんとの濡れ場もありましたが、、これが全く濡れ場に見えないんだよね。。恋人の関係に見えるし、仲睦まじく見えるのに、性暴力としか思えない一方的な性交。

松坂桃李さんのシーンもそうなんですが、今作は一切挿入がないんですよね。

濃厚なキスは見せるけども、一線は超えない。

広瀬すずさんも多部未華子さんも絶対にオールヌードは見せられないという点もありますが、かえってその制限が作品に活きたと思っております。

 

少し脱線しましたが、文以外の人と暮らしている更紗は常に宙を浮いているような、「ここは私の世界じゃない」という空気を常に醸し出している。

 

演技力は高く評価されてますが、ネクストレベルにいったなぁと感じた瞬間でした。

 

松坂桃李さんは感情を表に出せない難しい役所でしたが、細かい心理描写を頬の動き方一つで表したり、直接セリフで言わなくても何かとてつもない感情が伝わってきました。

背中で語れる男っていうのかな。半端ない役者になったなぁとただただ味わうばかりでした。

 

あと横浜流星さん!おめでとうございます!!

 

あなたは今年でもトップクラスのヴィランですwww

てのは冗談だけど、序盤の更紗への接し方は本当にサイテーだった!!

男のサイテーな成分を抽出し、濃度100%のモラハラ男子になってましたねw

  

 

 

まとめ

未だにこの映画から抜け出せそうにありません。

 

どうしたらあの2人は幸せに暮らせるんでしょうね。どうすれば他人が介入しない世界で生きることができるのでしょう。

 

2人だけが隔離された世界で暮らせればどれだけ幸せなんだろう。

でも、我々が生きている世界は一つだけ。

 

色んな価値観の人たちとぶつかりあって、生きていくことしか出来ないんです。

人生は辛く、苦しい。人は1人では生きていけない。

 

だからこそ、文と更紗のように惹かれあい、他人には疎まれながらも、生きていくしかないんです。

 

誰にも左右されず、強く生きていく2人を観ることができて幸せでした。

そして、勇気をもらいました。

 

95点 / 100点 

 

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 以上です! ご覧いただきありがとうございました!
 
 
 
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