- はじめに
- あらすじ
- 福田雄一は吉と出るか凶と出るか
- 映画の感想
- 吹替え問題よりも映画の質が目立った
- 蛇足すぎる132分、シットコムで2時間越えはキツい
- 菅田くんの演技は結果的に、緒方恵美さんの天才っぷりを強調する結果に
- マス層を狙いすぎた宣伝と主演声優。なぜ緒方恵美を推さなかったのか
はじめに
今回公開する映画はこちら!
「シャザム!」
それでは「シャザム!」、感想・解説、ネタバレありでいってみよー!!!!
あらすじ
・「スーパーマン」や「バットマン」と同じDCコミックスのヒーロー「シャザム」を映画化。見た目は大人だが中身は子どもという異色のヒーローの活躍を、独特のユーモアを交えて描く。ある日、謎の魔術師からスーパーパワーを与えられた少年ビリーは、「S=ソロモンの知力」「H=ヘラクラスの強さ」「A=アトラスのスタミナ」「Z=ゼウスのパワー」「A=アキレスの勇気」「M=マーキューリーの飛行力」という6つの力をあわせもつヒーロー「シャザム(SHAZAM)」に変身できるようになる。筋骨隆々で稲妻を発することができるが、外見は中年のシャザムに変身したビリーは、悪友のフレディと一緒にスーパーマン顔負けの力をあちこちで試してまわり、稲妻パワーをスマホの充電に使ってみるなど悪ノリ全開で遊んでいた。しかし、そんなビリーの前に、魔法の力を狙う科学者Dr.シヴァナが現れ、フレディがさらわれてしまう。遊んでいる場合ではないと気付いたビリーは、ヒーローらしく戦うことを決意するが……。シャザム役はTVシリーズ「CHUCK チャック」のザカリー・リーバイ、監督は「アナベル 死霊人形の誕生」のデビッド・F・サンドバーグ。
映画『シャザム!』本編映像(魔術師のせいでこんな姿に!編)吹替版【HD】2019年4月19日(金)公開
福田雄一は吉と出るか凶と出るか
www.machinaka-movie-review.com
日本のマス層に向けて福田雄一という名前はブランドかもしれない。でも映画ファンにとってはもう髪の毛が逆立つほど嫌気のさすものなんですよ。
僕はアメコミ映画よりもコメディ映画が大好きで、福田監督によってなんとか笑わせようって心意気があるとしたら、すごく嬉しいんですよ。
でも、コメディ要素も大事ですがアメコミ映画はそれだけじゃダメなんです。マイティーソー・バトルロワイヤルみたいなお笑い格闘映画みたいになってほしくないんですよ。
あとは何より、日本吹替えんオリジナルによって、オリジナルの音声とは明らかに異なるセリフを喋らせたりわざとおどけられたりすると、もう途中退場してしまうかもしれません。
オリジナルにアレンジを加えるのはいいんです。日本っぽいですよ。
シンゴジラで竹野内豊は「日本はスクラップ&ビルドでのし上がってきた」と言いましたが、俺は「日本はアレンジでここまでのし上がってきた」とも思います。
ただ、あくまでアレンジはオリジナルを踏襲してオリジナルを崩さずにやって欲しいんです。
奇抜な調味料もいいけど、いろんなものを混ぜすぎてマズい料理になってしまうのが怖いんですよ。
福田雄一演出はシャザム!にとって絶妙なスパイスになるのか、それともクソミソになってしまうのか・・・
映画の感想
見た目はオトナ、中身はコドモ!!!
吹替え問題よりも映画の質が目立った
菅田将暉主演、福田雄一演出。吹替え問題で作品はどうなるかとヒヤヒヤしていたのですが、鑑賞した後ではそれが杞憂に終わったように感じます。
確かに笑えるところもあり、子供と大人の面を持つシャザムを魅力たっぷりに描けていたと思います。
良いところもあります。ただ、シャザム以外のところが悪目立ちしすぎて、どうしても総合的な満足度は得られなかったです。
私のこのテンションの低さを見ても、わかるでしょう。
これがシャザム!を見てきた人のトーンなのかwww
シャザムが変身する前のビリーの幼い頃を丁寧に描き、孤独な家庭環境を描き、ユーモアを交えながらビリーがどうやってシャザムになるのかを描く。そしてシャザムになりたてのビリーは、友達のフレディとスーパーヒーローごっこでキャッキャする。
この前半の40−50分までは100億点だったんです。
特にビリーとフレディの交流が実に素晴らしい! 銃弾にどれだけ耐えられるか試すために、「じゃあ今度は顔にも撃ってみて!お願い!」と強盗に被弾をせがむシャザムww
スパイダーマンのように親愛なる隣人的なヒーローを目指すシャザムですが、残念ながら彼は天才的な頭脳を「持ってない」普通の中学生のため、基本はノリで人々を救う的な発想で助けていく。なんだけど、チヤホヤされて嬉しくなっちゃって、ロッキーでお馴染みの博物館前で「アイオブザタイガー」に合わせて市民と一緒に踊ったりしてるw
そう、彼は普通の中学生。どうやったってヒーローの精神性は持ち合わせていない。
でも、「人を救いたい」という純粋な気持ちが、彼を動かしていく。
ここまでは面白かったんです。本当に。
ただ、ヴィランと対峙する後半は本当にクソで。孤児院の仲間と共に「シャザム!」と一緒に叫ぶことで、なぜか他の子供達もシャザムに変身。もちろん、この行為自体が「バラバラだった仲間と一つになる」というメタファーになってるのは良いと思うんです。
しかし、あんなに丁寧に描いてきたビリーのシャザムを軽視するかのようなシャザムのコピーたちに、萎えてしまったのが正直なところです。
そして戦闘シーンのショボさに加え、アホなヴィラン相手にどんだけ戦っても全てが蛇足と思えてしまう。
ご都合感が強すぎるんですよ、なんでこんなにシャザム達を待ってくれるの!? なんでこんなに簡単に杖を渡しちゃうの?
色々ツッコミどころが増えてしまうわけです。
加えて、人物描写があまりにも稚拙に感じてしまいました。
ビリーと実親のくだりはもちろんのこと、何よりビリーと里親の交流がなさすぎる。
子供の世界系だけで話を進めるのはいいと思うんですけど、ならなぜ最後に孤児だけで「シャザム!」を叫ばせたんだ?
実親とも復縁せずに、孤児院に頼らざるをえない孤児たち。里親と一つになってこそ、本当の家族になる要素なんじゃないですか。シャザムになれないっていうのなら、じゃあ里親はもう純粋じゃないってことですか?
他人同士の擬似家族が本物の家族になることを今作のゴールにするのなら、孤児院に住んでる人全員をシャザムにするとか、なんかしらの形で最終決戦に協力させるとか、なんでもいいから「初めての共同作業」をやり遂げて欲しかったのです。
・ヴィランがあまりにも弱く、ラストで全然盛り上がらないくだり。
・人間ドラマが稚拙
・過去曲の選曲センスがない
上記の点で、なんだか「キャプテンマーベル」を見ているような感覚さえしてきました。
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ただ、シャザム!の後はエンドゲームがないんだよなぁ・・・
蛇足すぎる132分、シットコムで2時間越えはキツい
つまらなくしてしまった一番の要因は、おそらく上映時間だと思うんです。
132分ですよ!? シャザム!って「!」マークが付いていてコメディだってわかるでしょ?
なのに132分も長ったらしいシーンを流して、、シャザム!の内容だったら100分でよくないですか?って思っちゃうんですが。
シャザム!はですね、主人公のザカリー・リーバイの演技を見ればわかるんですけど、すごくシットコムっぽいんですよ?シットコム。
シチュエーション・コメディの略がシットコムなんですけど、
・やたらと過剰な演技
・毒づいたセリフや攻めたセリフで捲したてる、笑いに特化した大味な演技が続く
のがシットコムの特徴なんですよね。アメリカで生まれたテレビドラマのジャンルなんですけども。
見た目は大人、中身は子供というシャザムのキャラ造形って、シットコムに出てくる大人キャラから来てると思うんですよね。
なぜなら、シャザム!が「iCarly」のスペンサーに見えて仕方なかったんですよね。まさにスペンサーこそシャザム造形そのまんまですよwww
小学生と同じような精神性を持つスペンサー、シャザムと髪も顔もにてるんで、ついついイメージを重ねてしまいました。
https://data.whicdn.com/images/75149055/large.jpg
iCarly Wake Up Spencer: The Closet
まさにシャザムの作風やキャラ造形が、シットコムのそれに類似してると思うんです。
ただ、シットコムは基本的に30分弱で非常に尺が短いんですよ。そりゃそうです。バカ演技をずっと見てたら飽きちゃいますもん。
そんなシットコム的な作風のシャザムの上映時間が132分、、、
そりゃ飽きるって!!!
菅田くんの演技は結果的に、緒方恵美さんの天才っぷりを強調する結果に
今作を語る上で、どうしても切っても切り離せないのがタレント吹替え問題。
普通なら、演技力のないお笑い芸人やタレントをむやみに主演に起用し、作品の質を著しく下げる問題ですが、今回は一般的な吹替え問題とは違っていて。
菅田将暉と佐藤二朗というプロの役者に任せるのはいいんですけど、何より「演出:福田雄一」を全面に出した宣伝方法を取ったんですよね。
そりゃ「銀魂」であれだけ売れた福田監督ですから、全面に押し出すのも悪くはない。
ただですね、演出:福田雄一というのはあまりにも福田色が強すぎるんじゃないかと、すごく心配してしまうわけです。
そんな心配に拍車をかけたのは、佐藤二朗ナレーションによる映画予告編。
これを見たとき、もう映画を見るのをやめようかとも思いました。
福田作品で福田演出をやるのは全くもって問題ない。でも、外様のシャザム!で演出をするのは如何なものか。
タレントが映画を壊すのではなく、演出が映画を壊す可能性に、映画好きの俺としては頭を悩ませることになったのです。
とまぁビビりながら映画館に向かったわけですが、実際に吹替え演出は普通にやってくれましたよ。確かに「同じことを二回言う」みたいな演出は合ったっちゃあ合ったんですけど、そこまで福田色を感じなかったのは事実。
ただ、シャザム役の菅田将暉くんが周りの声優と浮いてしまって、そしてその浮き具合も映画にはプラスにはならず、結果的にはいつものタレント吹替え問題と同じような印象を受けてしまったのです。
菅田くんの声はどう考えても地声で、プロの声優のように声を作ることは一切しない。それに、どう考えても心がこもってなかったようにも聞こえてしまいました。
なんというんですかね、一発撮りしたような印象が拭えないんですよw
切羽詰まってるようなシーンでも妙に間延びしたような声になってるし、声に高低や大小も抑揚もない。ただ平行線のように棒演技する菅田将暉くんが、そこにはありました。
菅田将暉くん史上、一番ひどかったと思ってます。
このことからも分かると思うんですけど、福田監督が演出ってなってますけど、実際には全く演出やってないんじゃないのって思うんですよ。演出やってないというか、演出できないって言った方が良いかもしれませんが。
マス層を狙いすぎた宣伝と主演声優。なぜ緒方恵美を推さなかったのか
映画を見た私の感想としては、菅田将暉くんと同じくシャザム!、の変身前のビリー役を演じた主演の緒方恵美さんがあまりにも素晴らしかった!!
これは声を大にして言いたい!!
福田監督が全く演出しなかったせいなのか、緒方恵美さんは新世紀エヴァンゲリオンの碇シンジのような声質で、意気地なしで内気な少年を演じていました。まぁ、シンジくんと同じく中2だしねw
ビリーのはしゃいでる姿とか、ビビってる様子とかを繊細な声の使い分けで上手く演じ、ビリーの心理描写が非常に伝わる演技だったと思います。
俺的には緒方恵美さんをもっと推せばよかったのに、と切に願います。だってねぇ、今や緒方恵美さんを宣伝に推してもなんの問題もない、むしろ良いでしょ!!!
菅田将暉というマス層を狙う主演起用&宣伝は、どうにかシャザム!をメディアに残すためには必要なことかもしれません。
ただ、マス層を狙ったからといって映画の収入が上がるわけではないと思うんです。
ビリー役が緒方恵美、返信したシャザムが神谷浩史、的なコンビだったらどれだけよかったか・・・
配給の方、アニメファン、声優ファンは今やもっとも映画館に通う人たちですよ?
アニメファンに向けて、宣伝すべきだったんじゃないですかね?