Machinakaの日記

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タイトルの意味は? 裏設定は? なぜあんな予告編を? 映画に込められた真のメッセージとは? 「リップヴァンウィンクルの花嫁」 ネタバレ全開で徹底解説!

移転しました。

 

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こんばんは! Machinakaです。 今回は岩井俊二監督の「リップヴァンウィンクルの花嫁」についてネタバレありで解説をしていきます。

 

 

1. 解説をしようと思った背景

 

yahoo映画での評価を確認したところ、非常に低く評価されていました。これに大変なショックを受けました。。 

 

movies.yahoo.co.jp

 

イメージキーワードとして「不思議」が入っていたんですが、これは単に「映画が理解出来なかった」から、とりあえず不思議って付けたんでしょうねー。

 

またテレビや新聞でも、岩井監督の「独特の世界観」とか、「独自の岩井ワールド」とか、「岩井美学」とかって宣伝しているんですが、、、

 

それ、何も説明になってねぇから!!! 

単に何を伝えているか分からないから曖昧な言葉でごまかしてるんでしょうが!! 

というわけで、本記事では出来るだけ具体的に解説していきたいと思いまーす。

 

 

 

 

注意!! 

これからネタバレありで解説していきます。まだ映画をご鑑賞でない読者様は、絶対に読まないでください!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はい、それではいきますよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2. タイトルの意味とは?

 

タイトルを考えるきっかけとなったのは、岩井俊二監督の体験談によるものでした。今お住いの家の近くにリップ・ヴァン・ウィンクルというアパレルメーカーを取り扱っているショップがあって、そこから取ったそうです(資料1より)。

 

https://ja.wikipedia.org/wiki/リップ・ヴァン・ウィンクル

 

https://www.ivory-store.com/img/brand/02061157_56b56110d17db.jpg

https://www.ivory-store.com/img/brand/02061157_56b56110d17db.jpg

 

また、監督が2015年に書いた「リップヴァンウィンクルの花嫁」があり、そこからの脚色で話を作っています。

 

 

 

 

3. 本作における「独特の世界観」とは?

 

まずこの映画を読み解く上で、本作で作られた世界観の話をします。

 

 

この映画は大きく分けて二つの世界に別れています。

 

①虚構の世界

・・・Coccoと生活を共にしたミステリアスな豪邸。

 

②現実の世界

・・・四谷駅や新宿駅であったり、七海が泊まっていたホテルの蒲田駅周辺であったり、とにかく地名が特定できる場所。

詳しくは前回の記事をご覧ください。

 

 

www.machinaka-movie-review.com

 

①の虚構の世界というのは、簡単に言えばおとぎ話に出てくるような、とても抽象化された世界です。

条件

・七海と真白以外に人がいない、隔絶された空間であること

・カメラのぼかしがきつく、白いスモークが掛かった幻想的な空間であること

・色調が統一されており、綺麗に見える

 

②現実の世界というのは、我々がいるような、ごくありふれた世界です。

条件

・メインキャスト以外にも多くの人がいて、物語に関係なく喋ったり行動したりしている。

・カメラのぼかしをなくし、遠くまで見通せる世界になっている。

・地名や店の名前などがくっきりと映り、どこにいるのかがよく分かる

・色調の統一はなく、雑多な印象を受ける

 

 

以上よりこの映画の世界観とは、、

「現実と虚構が織り交ぜられた、現代版おとぎ話」なのです。

 

これが本作における裏設定として活きてきます。

 

 

 

 

4. 安室は全く「人」として扱われてないのはなぜ? 裏設定から読み解く

 

 

まずは簡単な映画のあらすじです。

 

七海は最初、出会い系のSNSサイトで知らない人と出会うことから始まります。LINEみたいな、架空のSNS画面が映りますね。

 

そこで色々あって、付き合うことになります。そもそもが出会い系のサイトで知り合ったわけですし。

順調にいって結婚するわけですが、お母さんが安室

 

 

 

そんなことも知らずに、安室への依存を高める七海。ホテルでのアルバイトと掛け持ちで、自身が依頼した結婚式の代理出席のアルバイトをすることに。そこで初めて真白と出会います。

 

しかし安室は、ホテルの仕事を無理矢理やめさせて、七海にメイドの仕事に就かせます。月給はなんと100万円です。

 

 

 

ここから、現実の世界から虚構の世界へ七海が移り住む。

 

 

七海と真白は幸せな日々を送りますが、七海が眠っている間に真白は自殺してしまいます。

 

安室はすぐに葬儀を執り行い、七海の引越しのサポートまで丁寧に行って、映画は終了します。

 

真白の死により虚構の世界が壊れ、現実の世界へと戻ります。

 

 

七海は、本作の主人公です。意志が弱くて自己主張が少ない、とても弱々しい印象を受けますね。何故月給100万円の仕事など引き受けたのでしょうか?

それは七海が、「不思議の国のアリス」の主人公のような、おとぎ話の主人公のような設定になっているからです。本人の意思とは関係なく、虚構の世界へ連れられてしまうのは、このためです。

 

真白はAV女優という職業を隠して、七海と楽しく生活をします。AV女優の仕事に負い目があったのでしょうか? それとも母親の影響でしょうか? とにかく酒を飲んで、七海と夢の世界を楽しんでいます。もちろん真白は現実世界で仕事をしていますが、豪邸に帰ったらAV女優の欠片もなく、七海とイチャイチャしているばかりで、とても楽しそうです。つまり、現実世界よりも虚構の世界に価値を見出してしまった人なんです。

 

そして、最も謎の多いのが安室。名前もそうですけど、赤の他人である七海にいろいろお世話をしますね。結婚代理の話を持ちかけた時は、単なる金ヅルかぁと思っていたのですが、どうやらそれだけはないようですね。

映画を見た人は安室の行動原理に疑問を持つ人が多いと思います。

ハッキリ言って、安室は普通の人間ではありません。もっと言えば、人間ではなく何かの機械のようなものです。

 

この映画で安室は、現実世界で苦しむ七海と虚構世界で生きる真白のつなぎ役に徹している機械のようなもの。

 

安室の心理描写が一切描かれないのは、そのためです。七海や安室の家庭環境はたっぷりと説明されるのに、安室の家庭環境や生い立ちが全く描かれないことに、違和感を感じませんか? どこに住んでるかも分からない、胡散臭いやつですよね。

 

そんな胡散臭いやつに、どうやって真白は「七海と住みたい=一緒に死にたい」って交渉しますか? 仲は良さそうですけど、普通に考えたら無理ですよね。

だから便宜的にお金を使ってるんです。お金を払うのが、最も合理的に仕事を進められる手段だからです。もしお金を使わなかったら、安室が仕事を引き受ける理由を説明しなくてはなりません。これは脚本の妙ですね。

 

安室は七海を現実世界から虚構の世界へと誘い、真白が死んでからは、七海を現実世界へ連れ戻す。おそらくここまでが安室が真白から引き受けた1000万円の仕事なのでしょう。

 

 

 

 

 

 

5. 予告編から見た映画のテーマとは

 

 

 

 

予告編を今一度確認してみましょう。

 


『リップヴァンウィンクルの花嫁』予告編

 

 

 

開始6秒後のシーンです。何かを見つめる黒木華さん。

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すぐに、Coccoさんが所有する不思議な豪邸のシーンが映ります。

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予告最後のシーンです。正面を向いて映画を画面を見詰める七海。

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わかりづらいのでもっとズームします。

 

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最初のシーンと比べるとわかるんですが、七海が笑ってるんですよ。

口角が上がっていることからもわかりますよね。

 

 

 

 

単刀直入に言えば、映画のテーマは、、、

 

「見通しの出来る(と思っている)幸せより、見通しの出来ない幸せの方が自分を救ってくれることもある」

です。

 

 

これだけではちんぷんかんですから、詳しく解説していきます。。

 

予告編のあの白い被り物は、虚構の世界へ行くフィルターの様なものなのです。深く被りすぎて目が見えないのは、見通しの出来ないことを意味しています。つまり、、、

 

白い被り物=見通しの出来ないもの=虚構の世界

なのです。

 

予告編の意味は、「見通しの出来ないもの」に対して幸せを感じているというメッセージなのです。

 

では、目に見える幸せってなんでしょうか? それは映画冒頭に出てきた、SNSで知り合った男性と結婚することですよね。結婚して、子供を産んで、教師の仕事を辞めて専業主婦として、そこそこの生活を送る。これが目に見える幸せ=一般的な幸せなんです。

でも映画では、安室に離婚させられて、結婚は失敗しますよね。

これは、「目に見える幸せを求めても失敗する」ってことを意味するシーンなのです。

 

そして、何故被り物を取ろうとしてるんでしょう?

それは、映画の結末通り、虚構の世界から現実の世界に戻ることです。

現実世界に戻った七海が幸せそうにしている理由は、この予告編からも明らかです。

 

 

※hkr様のコメントでご質問を受けて気づいたのですが、白い被り物は真白のメタファーかもしれません。真っ白な被り物=真白。ただのオヤジギャグに聞こえなくもないですが笑

 

 

 

6. 映画の元ネタからストーリーの背景を探る

 

岩井俊二監督は、なぜこんなストーリーを作ったのでしょうか? それは、タイトルに意味が込められています。

 

「リップヴァンウィンクル」という、同じ名前の小説があるのをご存知でしょうか?

 

アメリカのワシントン・アーヴィングが、1820年に書き上げた短編集「スケッチブック」の中に入っているストーリーなのです。話の内容は、「アメリカ版浦島太郎」なのです。竜宮城に行く前と後で、全く時代が変わっていたという話。

 

 

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簡単なあらすじを、、、

 

 

アメリカ独立戦争から間もない時代。呑気者の木樵リップ・ヴァン・ウィンクルは口やかましい妻にいつもガミガミ怒鳴られながらも、周りのハドソン川キャッツキル山地の自然を愛していた。ある日、愛犬と共に猟へと出て行くが、深い森の奥の方に入り込んでしまった。すると、リップの名を呼ぶ声が聞こえてきた。彼の名を呼んでいたのは、見知らぬ年老いた男であった。その男についていくと、山奥の広場のような場所にたどり着いた。そこでは、不思議な男たちが九柱戯ボウリング原型のような玉転がしの遊び)に興じていた。ウィンクルは彼らにまじって愉快に酒盛りするが、酔っ払ってぐっすり眠り込んでしまう。

ウィンクルが目覚めると、町の様子はすっかり変っており、親友はみな年を取ってしまい、アメリカは独立していた。そして妻は既に死去しており、恐妻から解放されたことを知る。彼が一眠りしているうちに世間では20年もの年が過ぎ去ってしまった。

https://ja.wikipedia.org/wiki/リップ・ヴァン・ウィンクル

 

赤字で書いたところが重要ですよ。

 

酒盛りをして、酔っ払って寝てしまったシーンが本作にもありましたよね?

 

あの豪邸で、真白と七海が結婚式ドレスを着て、お酒を飲んでいるシーンです。あの後、酔っ払ってベッドに眠ってしまいますが、真白は死んでしまいますよね?

七海がお酒を飲んで、眠りにつく前と後では、まるで世界が変わっています。

ワシントン・アーヴィング版の「リップ・ヴァン・ウィンクル」と本質的な話は変わってないんですよ!!

 

つまり、この映画は浦島太郎のような話だとも言えるのですが、、、。

 

映画で「リップヴァンウィンクル」と、「・」が抜けているのは、ワシントン・アーヴィングの小説と差別化を図るためでしょう。

監督が最初にインスピレーションを受けたアパレルメーカーの名前は「ripvanwinkle」となっていて、途中に「・」が入りません。最初にインスピレーションを受けた名前を大切にしてるんだと思います。。

 

 

それにしても、、店の名前からぼんやり考えて映画を作るって、どんな発想だよ!!!笑

 

 

 

 

 

 

 

7. 終わりに

 

さて、ここまで読んでくださってありがとうございます。

 

本来であれば、もっと詳しい考察をしたいところです。

 

例えば、真白の生活や死に方に関しては多くの疑問が残ります。

 

・なぜ真白はクラゲやタコや貝など、海産物を飼っていたのか?

・なぜ死んだ真白には貝の様なものが握られていたのか?

・なぜペット屋さんは七海に二つの金魚を与えたのか?

 

これについては一定の考察は出来ているのですが、あまりにもブログが長くなりすぎたため、今回は書くのを控えたいと思います。

 

この記事が好評なら、続けて本作の疑問に答えていきたいと思います。

 

誰でもコメントを書けるようになってますので、本記事の感想や何か質問があれば、お気軽にコメントください。よろしくお願いします。あなたの一声が、新しい記事を作ります。

 

 

 

参考となった資料一覧。

資料1

www.youtube.com

 

資料2

www.youtube.com

 

資料3

www.youtube.com

 

 

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