こんにちは! Machinakaです。
今回批評するのはこちら!!
「FAKE」
はい。公開前から大変話題になってましたけども、、、あの「ゴーストライター騒動」で話題になった佐村河内守さんを追いかけたドキュメンタリー映画になります。
監督は森達也さん。オウム真理教の内部を映した「A」1998年、「A2」2001年を撮ってから、実に15年ぶりとなる単独監督のドキュメンタリー映画作品です。
今回はまだ上映が都内でしかやっていないこと、上映を心待ちにしている人が多いことが予想されますので、まずはネタバレ無しの記事を書きたいと思います。
これから映画をご覧になる方も、ご安心を!
1.あらすじ
はい。佐村河内さんについては、日本では知らない方はいないと思いますが、念のためプロフィールを紹介させて頂きます。
佐村河内守さんは、1963年生まれ、広島県出身の人です。
作曲家としての仕事は1990年代からスタートしており、PS2ゲーム「鬼武者」の音楽も手がけていたみたいです。
世間が注目するようになったのは、2013年の3月。東日本大震災で被災した少女のために作成した曲「ピアノのためのレクイエム」が発表され、同月31日にはNHKスペシャルとして「魂の旋律~音を失った作曲家~」が放送されました。
https://fujio-dayori.up.n.seesaa.net/fujio-dayori/image/P1380366.JPG?d=a1
しかし、2014年2月に週刊文春が佐村河内氏の「ゴーストライター」を暴露してから、佐村河内氏=詐欺師のレッテルが貼られ、同年3月には謝罪会見が行われましたね。
https://getnews.jp/img/archives/imp/and_529052.jpg
この映画は、謝罪会見以降の佐村河内守さんを追っかけたドキュメンタリー映画になっています。
佐村河内さんは謝罪会見以降、全くテレビ取材をほとんど受けていません。一回テレビの取材を受けてはいますが、あまり話題にもなっていません。
念のため、載せておきます。フジテレビのニュース番組です。
実はこのインタビューの時も森達也監督は佐村河内さんの隣にいたんです。映画でもフジテレビの人がインタビューに訪れるところがカメラに収められてますが、フジテレビの人がキョドっているのがちょっと面白かったです。
つまりですね、この映画で今まで観たことない佐村河内さんが観れるわけです。ミーハーでニュースやスキャンダルが大好きな私は、もちろん公開初日で観に行ってきたわけであります!!
ちなみに、このラジオがきっかけで映画を知ることが出来ました。さすがは町山智浩さん。
町山智浩が佐村河内守のドキュメンタリー映画『FAKE』を語る
2.劇場鑑賞情報
公開館が非常に少なく、また公開時期も地方では遅いため、かなり観るのが大変な映画だと思います。ちなみに日本で一番早いのは、渋谷のユーロスペースです。
https://pds.exblog.jp/pds/1/201206/04/67/b0215567_223782.jpg
一見オシャレな映画館に見えますね。でもこの周り、クラブとラブホだらけです
まぁ何にもしなけりゃ何もないと思いますが、夜行かれる際は変な輩に絡まれないように、、、笑
初日の初回上映で鑑賞してまいりました。なんと、森達哉監督の舞台挨拶が付いてました!!
前にポスターの横でお立ちになっているのが森達也監督です。
かなり独特な舞台挨拶だったと思いますね。面白かったので良かったですが。。
お恥ずかしながら、私は森監督について何も知らなかったんですね。これが15年振りの監督作品だということも、日頃どんな思いで生きているのかも。
色々舞台挨拶観てますけども、強烈に心に残るモノとなりました。あまり言語化したくないですね。。
言い忘れましたが、私は立見席でした。覚悟してスクリーンに入ったら、立ち見席の中では順番が早かったらしく、通路に座らせてくれることになりました。なので結局座席があったので良かったです笑
お願いだから指定席にしてくれないかなぁー。上映の1時間前から並ぶの嫌なんだよ、、、笑
はい、監督の舞台挨拶も終わり、ついに映画上映!! 109分という短い上映時間でしたが、映画の感想は、、、、
2.映画の感想(ネタバレ無し)
この映画を観て、大きく分けて3つの驚きがありました。
・驚き① 映画として、、、
映画として、、、非常に面白かったです!!!!!
ドキュメンタリー映画だから、とか予算の割に、、、とかではなく、単純に映像として面白かった!!!
ネタバレは避けますが、、、
笑って、泣けて、ドキドキして、、、映画に必要なエンタメ要素が満載な映画でした!
特に、劇中のとあるシーンでは大爆笑しました。
同じドキュメンタリー作品で単館上映だとイメージフォーラムで観た「カルテルランド」を観ていますが、この映画とはまた違った面白さがありました。もちろんドキュメンタリー作品といっても全くジャンルが違うので、比較しがたいのですが、、、
ただ、私の中ではこの二作は非常に近い満足度があったのです。
www.machinaka-movie-review.com
この映画評の中でも、「ドキュメンタリー映画なのに見せ場があって非常に面白い!」と絶賛した覚えがあります。なんせ、題材が「戦争」ですから、銃火器でドンパチもあるし、緊迫感もあるのです。
一方で、この「FAKE」は、シーンのほとんどが佐村河内さんの自宅を映すだけです。謝罪会見以降、ほとんど外出はしていないのですから。
ただ自宅にいるだけで、森監督や奥さんや取材の記者と喋っているだけです。
なのに「カルテルランド」と同じくらい、、、いやそれ以上に「緊迫感」や「見せ場」が多い映画でした。
これは森監督の手腕によるモノが大きいと思いました。監督の過去作も観たいと思いました。
・驚き② 見方が大きく変わった
「佐村河内さん」と「新垣隆さん」の見方が大きく変わったこと。
ネタバレは避けたいので、言葉には気をつけたいんですが、、、
とにかく言えるのは、「週刊誌やテレビで伝えていた内容にかなりの嘘・FAKEが含まれていた」ということ。
ゴーストライターが露出する前までは、佐村河内さんを褒めて褒めて、褒めちぎってました。なんたって、国営放送が先んじて大絶賛してましたから。
しかし、週刊文春の神山典士が「ゴーストライター」を報じてから、一転。詐欺師だペテン師だと騒ぎ立てるマスコミ。
マスコミの情報を鵜呑みにして、「佐村河内はペテン師だったんだ、我々を騙したんだ」と受け取る一般市民の我々。
この大絶賛から大批判の流れが、今考えるとバカバカしかったんです。マスコミの扇動に、まんまと乗っているんですよ、我々は!!
つまり、マスコミの視点は佐村河内さんという人間ではなく、佐村河内というコンテンツを我々に売ったんですね。感動を売るマスコミにとっては、「難聴の作曲家」で「現代のベートーベン」と称される佐村河内さんという存在は、非常に価値の高いコンテンツに見えたのでしょう。
でも佐村河内さんはマスコミに嘘を付いていた。そこで一気に叩かれた。マスコミに復讐されたんですよ。
でも、だからってあそこまで徹底的に叩く必要はあったのか? とこの映画は投げかけるワケです。
つまり、佐村河内さんの視点に立ったドキュメンタリー映画で、擁護派とも言い換えられるんですね。だからマスコミの「佐村河内は悪だ」という視点とは正反対なモノなんです。
そして、佐村河内さんと取って代わって、「ゴーストライターの被害者、に見える」新垣隆さんをかなり懐疑的に描いているのもこの映画の特徴です。
https://blogs.c.yimg.jp/res/blog-4e-c3/aokurodesu/folder/1254068/56/39576256/img_1?1429346237
映画では、こんな新垣隆さんがバンバン登場します笑
もちろん、佐村河内さんサイドとしては非常に腹ただしい雑誌記事ですが、映画の観客としては「爆笑シーン」の何者でもなく、初めて新垣さんでこんなに笑いました。
新垣さん、色々言いたいことはありますけど、超面白かったです笑
・驚き③ 奥さん視点のストーリー
この映画の凄いところは、佐村河内さんのみでなく、奥さんや両親を含めた「佐村河内一家」のストーリーなんです。もっと言えば、「佐村河内さんと奥さんとの愛の話」になっています。
佐村河内さんは現在横浜市で奥さんと二人暮らし。子どもはいません。
映画の中でも、奥さんはずっと佐村河内さんのために手話をしていて、料理も作って、献身的にサポートする姿が描かれます。NHKスペシャルでも奥さんの姿って1秒とか2秒とかしか映ってなかったと思います。もちろんテレビのインタビューでも音声出演(手話通訳のため)しかないので、世間の人は佐村河内さんの奥さんのことを知らないと思います。
騒動の後も、佐村河内さんのことを献身的に支えていたみたいで、非常に好感がモテる奥様でした。佐村河内さんよりも奥様にカメラを向けることもおおく、森監督は奥様の視点で何か新たな発見がないのかと模索していたようです。
3.佐村河内さんの聴覚障害の真実
読者というか、佐村河内さんに当てたメッセージのようなものですね。佐村河内さん、ネットは使えるみたいですから、このブログも観て頂けると嬉しいです。
佐村河内さんについて、色んな感情はありますし、全てを好きになれたわけでもありません。ただ、これだけは言いたい。
「聴覚障害」に関しては、アナタの言っていることは間違いない。そして、マスコミが隠していた「真実」を暴いてくれたこの映画に感謝したい。
確かに、マスコミや関係者に嘘を付いたことは酷いことかもしれません。
でも、だからといって謝罪会見で「難聴」という障害をからかうのはおかしい!!
https://www.hiroiro.com/wordpress/wp-content/uploads/2014/03/samuragouchi.png
この写真を観て「クソワロタww」とか「ヤバww」とかほざいている奴ら!!
お前らはマスコミに飼い慣らされた豚なんだよ!!!! 佐村河内さんの障害をバカにした奴は、マスコミと同罪なんだよ!
はい、かくいう私も、当時は佐村河内さんネタで笑っていた豚であります。でも、私は一生豚で生きるつもりはありません。
劇中でも佐村河内さんが、ゴーストライターとか新垣隆さんとかの話の前に、この聴覚障害について主張しているのを観て、思わず涙してしまいました。
NHKでは「音を失った作曲家」と称されて、あたかも全く聞こえないような人に写りましたけど、佐村河内さんは「後天的な感音性難聴」なんですね。
感音性難聴とは、、、
方の耳が、軽度から中等度の感音性難聴の方には、補聴器が効果的な場合がほとんどですが、難聴の程度が重いと、補聴器が十分役に立たないことがあります。感音性難聴の方には、音が歪んで聞こえるからです。
スポーツ新聞ですが、横浜市の病院の診断書に基づいた記事ですので、掲載します。
公表した診断書の右48・8デシベル、左51・3デシベルの聴力は「中度難聴」の域にあり、普通の会話が聞き取りづらいとされる。都内の耳鼻咽喉科専門医によると「補聴器をつくるかどうかのギリギリのレベル」で、補聴器をつけることで問題なく会話できる人もいるという。
つまりですね、音は聞こえるけど、音が曲がって聞こえるんですね。
例えば、「カニ」というのが「ワニ」に聞こえたり、微妙に聞こえる音が変化するんですよ。
実は映画の中でも、森達也監督が佐村河内さんにテストするシーンがあるんです。
「え!」と大きな声で叫ぶんですけど、佐村河内さんの答えは「て?」
母音は合ってるけど、子音までは分からないんですよ。つまり、音自体は聞こえるんですが、手話なしでは会話は成立しないんです。
つまり、佐村河内さんの場合は、補聴器を付けて音が聴きやすくなっても、「音が曲がる」ことは変わらずに、日常生活が不自由するんです。
つまり、「音が聞こえるから障害者じゃないじゃん!」 っていう叩きは、意味を成さないんですね。
音は聞き取れても、「言葉」が聞き取れなかったら会話が成立しないでしょう。会話が成立しないのは立派な障害でしょうが!!!
ここで、再度スポニチの記事を引用させて頂きます。
10時40分過ぎに障害者手帳を交付した横浜市の求めで受けた聴力の再検査の診断書が配布。「感音性難聴」と記され「身体障害者福祉法に基づく聴覚障害者には該当しない」とされていた。診断書によれば、聴力は右が48・8dB、左が51・3dBで、語音による検査では、最良語音明瞭度は右が71%、左29%と記されていた。
大事なのは、聴力よりも「語音明瞭度」という指標なんです。左は29%ですよ!! 足して2で割って平均すると、ちょうど50%ですよ! つまりですね、言葉の半分が聞き取れないんですよ!!!!!
半分が聞き取れないと、会話が成立しますか!?
例えば、以下の文章の半分しか分からない時、ちゃんと会話できますか?
「まだ、手話通訳が終わっていませんよ。もう、目と目を見て話しましょう」
難しいですよ、これは。日常生活は困難を極めます。
つまりですね、全く聞こえない訳ではないけど、日常生活には支障をきたすんです。
だから国としても、障害者手帳を渡すことは出来るけども、等級は全く聞こえない難聴者よりは低いんです。
実は、国に指定されていないだけで、認められていないだけで、障害を持っていてもハッキリ「障害だ!」と宣言できずに苦しんでいる人がいっぱいいます。
佐村河内さんのように、「聴覚」に関する障害だけでなく、「視覚」だったり、色んな障害のケースに適用できます。
私にとっては、佐村河内さんが「障害者だ!」とは言いづらくて悩む障害者の代弁者に写りました。
実はですね、、、
かくいう私も、国からの補助をもらうほどではないけど、「ある障害」を持ってるんですよ。「ある障害」は何か言えませんけど、、、まぁ佐村河内さんよりも分かりづらい障害ですかね。自分から言い出さない限り、絶対普通の人には分からないような障害です。念のため言っておくと、うつ病とかの精神的な障害ではありません。佐村河内さんの逆バージョンと言っていいのかな、、、ま、そんな感じです。
いつも世間から誤解されることが多いので、私の苦労と佐村河内さんの苦労が重なったような感覚があって、非常に感動したんです。
だから、この映画では佐村河内さんが頼もしく見えたし、「格好良く」写りましたね。
はい、ちょっと遠回りしましたけど、言いたいのは「佐村河内さんの障害は嘘じゃなかった」ということ。
もう一回言いますが、、、
「後天的な感音性難聴」
なんです。
明瞭に喋れる理由は、30歳までは何も不自由なく話せたからです。つまり、発音はこれまで出来ていたので、先天的な難聴の方と比べると、どうしても「普通に喋れる」ように見えるんですよね。
すいません、映画とはちょっと関係ないことを書きましたけど、、、、
今までのブログ史上の中でも、大変多い文量になってしまいました、、笑
というわけで、森達也監督「FAKE」は大変オススメです!!!