まえがき
今回批評する映画はこちら
「悪は存在しない」
濱ちゃんの新作、やっときたね。
アカデミー賞、カンヌ、そして今作でベルリンを制覇。まさしく邦画界の大谷翔平と言いたくなるような現代の偉人。いや、言い過ぎかなw
とはいえ世界の濱口なことは間違いないですから、いざ新作を!と思ったのですが、、
都内で公開してる劇場はわずか2館。。。
しかも私が住んでる横浜は5/3から。。。
なんとも悲しい状況です。シネコンで濱口流しても儲かるだろっていうw
今後の邦画界のためにも、私が宣伝していきますのでよろしくです!!
それでは「悪は存在しない」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。
あらすじ
「ドライブ・マイ・カー」でアカデミー国際長編映画賞、カンヌ国際映画祭脚本賞、「偶然と想像」でベルリン国際映画祭銀熊賞(審査員グランプリ)を受賞するなど国際的に高く評価される濱口竜介監督が、カンヌ、ベルリンと並ぶ世界3大映画祭のひとつであるベネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員大賞)受賞を果たした長編作品。「ドライブ・マイ・カー」でもタッグを組んだ音楽家・シンガーソングライターの石橋英子と濱口監督による共同企画として誕生した。
自然豊かな高原に位置する長野県水挽町は、東京からも近いため近年移住者が増加傾向にあり、ごく緩やかに発展している。代々その地に暮らす巧は、娘の花とともに自然のサイクルに合わせた慎ましい生活を送っているが、ある時、家の近くでグランピング場の設営計画が持ち上がる。それは、コロナ禍のあおりで経営難に陥った芸能事務所が、政府からの補助金を得て計画したものだった。しかし、彼らが町の水源に汚水を流そうとしていることがわかったことから町内に動揺が広がり、巧たちの静かな生活にも思わぬ余波が及ぶことになる。
石橋がライブパフォーマンスのための映像を濱口監督に依頼したことから、プロジェクトがスタート。その音楽ライブ用の映像を制作する過程で、1本の長編映画としての本作も誕生した。2023年・第80回ベネチア国際映画祭では銀獅子賞(審査員大賞)を受賞したほか、映画祭本体とは別機関から授与される国際批評家連盟賞、映画企業特別賞、人・職場・環境賞の3つの独立賞も受賞した。
「悪は存在しない」のネタバレありの感想と解説(全体)
「#悪は存在しない」鑑賞!
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2024年5月2日
これぞまさしく結末はかくかくしかじかで。
やったな、やりやがったな。
田舎ハートフルな人間ドラマをプンプン匂わせておいて、予想もしない方向に舵を切る。
常識の柵をいとも簡単に越えてしまうスパイシーな濱口監督作品。
でも実は最初にヒントが隠されている。 pic.twitter.com/9qfrZ5DL0U
常識の柵を軽々しく超える、かくかくしかじかな物語
なんてこった。
なんちゅうこった。。
こんなの誰が想像したよ。。
田舎町で持ち上がったグランピング計画。
別荘地や住宅地の多い場所で謎の企画が立ち上がった。
しかし企画運営は芸能事務所。
前途多難としか言いようのない企画に住民は反対するが、「便利屋」と名乗る男は運営側に少し協力的な態度を取り・・・
あらすじはこんな感じですね。
まぁ、こんなあらすじ出したところで結末は誰も予想できないんですけどw
まさかまさかの結末でございましたw
濱口監督作品はトリッキーな部分が突出するように見える、作り手的には「見せている」んですよね。
演技もオーバーアクトじゃないし、メソッド演技のようなこともしない。
良い意味で平坦なんですよね。
どうでも良い討論会とか読書会のシーンが異様に長いし。
でも、そうやって油断してると、突然グイッと異世界に引き込まれてしまう。
「寝ても覚めても」の唐田えりか然り、「ハッピーアワー」の体の重心先生とあかりさんが朗読会を抜け出す件然り、「ドライブマイカー」では岡田将生が公園で突然・・。
突然展開が3段抜かしくらいでジャンプしていくあの感じ。
今作に用意されていても全然おかしくなかったのですが、最後の最後で畳み掛けてくるとは思っても見ませんでした。
言うならば「常識の柵を軽々しく超える、かくかくしかじかな結末」でした!
茶番としか思えぬワークショップ、からの芸能事務所視点でのフワッとした人間ドラマ、からのまさかの展開・・・。
刺さりましたねぇ!もう一度見たいです!
お気に入りは芸能事務所のマネージャーの高橋ですかねw
「俺もやってみて良いですか」は名言でしょう!
なんか分かるわ〜、仕事が辛くてつまらないと、何故か全く関係ないことに興味を持ち始めて救いを求めてしまう。サラリーマンが急に蕎麦屋に転職するあの感じですよw
特に都心で働く人は田舎に救いを求めるんですよね〜〜。田舎の大変さも知らないくせにw
私もですね、社会人2年目3年目はよく「農家っていいよなぁ」と思っておりました!
分かるよ、分かるよ高橋ww
でもその願望ってバブルみたいにすぐ弾けるからなw
あと、友人のTさんから「マッチングアプリの描写はすごい」と聞いてたのですが、まさかあそこで出てくるとはなぁ〜〜〜〜〜。
分かってますわぁ。でも通知オフにしないとこが高橋なんだよなぁ。普通に考えて通知切っとくでしょwww
ってまぁ、、もうやめときますが笑
ラストの意味は
はい、そして肝心のラストについて話してまいります!!
娘の花が行方不明になり、地域住民も高橋たちも協力しての捜索。
高橋と巧がやっと花を見つけるのですが、花の目の前には2匹の鹿。
親子のように見え、親の方は怪我をしている。
そして巧が突然・・・これは内緒にしておきます。
なぜあんなことが起きたのでしょうか。
2つの側面から探っていきましょう。
1つ目は、劇中で巧が語っていた話の伏線回収といったところでしょうか。
ここの鹿は人間を攻撃しない。攻撃するとしたら怪我をして逃げれなくなった時だ。
と話しますが、まさにラストの鹿の状態ですよね。
また、グランピング会場を作ることで鹿が通る道がなくなってしまうと話してる場面がありますが、これも大きなヒントになっています。
鹿=地域住民なんですよね。そしてグランピング会場は芸能事務所。
芸能事務所側は「鹿が攻撃しないなら触れ合うこともできるのではないか」と話しますが、これは地域住民と共存したい旨を暗喩しています。
鹿は絶対に人を攻撃しない。ただし、怪我を負ったら何をするか分からない。
おそらく巧も、何か怪我を負っていたのでしょう。
物忘れが激しかったり、頭痛?に苦しめられたり、妻の姿がなかったりと、色々と不思議な描写はありましたよね。
勝手に開発を進めやがって、、、もう容赦しないぞ!というスタンスが最後の最後になって現れたのです。
そして、時折り姿を見せる鳥の羽。特に1番気になったのは、高橋と先生が話してる途中に花ちゃんが割り込んできて鳥の羽を見せること。
・・・あれ、結局何に使うんでしょう?
先生は楽器に使うと話してましたね。確か何かの鍵盤に使うとか。。
花が落ちているということは、鳥が何らかの理由で怪我をした=傷を負ったことが可能性もありますよね。
巧は一貫して鹿の立場であり、共存などあり得ないというスタンス。鹿を隠れ蓑にしていますが、実は一番反対している方なのかもしれません。
そう考えると、「先生」と呼ばれるおじいちゃんがなぜ巧と連絡を取ることを推奨したのか、そして「便利屋」と呼ばれる所以は何なのか。。。
きゃーーこわwww
そして2つ目は、タイトルクレジットのデザインです。
原色の青と赤を使い、一度に全てのタイトルを出さず単語ごとに順出しするあの感じ。
かなり明確ですが、ジャン=リュック・ゴダールの「気狂いピエロ」を引用しているのでしょう。
「気狂いピエロ」はフランス版ニューシネマ運動「ヌーベルバーグ」の代表的な作品です。
誰もが予想できるようなハッピーエンドではなく、犯罪を絡めたり、破滅的な展開を入れてくるテイストが特徴なのですが、今作のラストもまさに犯罪ありの破滅的な結末でしたよね!!
まさかゴダールを引用するなんて思ってもみませんでした!!
ファンサありがとうございます
あとは今作が「ファンサ」である点ですね。
2015年の濱口監督作品の「ハッピーアワー」に対するファンサですよ!!
まず目についたのは芸能事務所側の黛さん。芸名は渋谷采郁。
「ハッピーアワー」で看護師やってた人ですよね!!!
昔と変わらない喋り方に、もうこれはあの人しかいないと笑
そしてうどん屋を営む女性は桜子さん(菊池葉月)ですよ!!
一瞬ちょっと分かりづらかったけども、佇まいでバッチリでしたww
最後に、巧と一緒に水を汲みに行った男性。
これも「ハッピーアワー」で出てきた、編集者のロン毛くんですよねw
あそこまで「ハッピーアワー」のキャストが出てくるとは・・・
最高のファンサでしたw
まとめ
鑑賞1回じゃ足りませんねw
特に結末に至るまでの話は、ラストを知ってから再び味わいたいものです。
なぜ巧が「便利屋」と呼ばれているのか・・・w
大満足でございました!!!
97点 / 100点