まえがき
今回批評する映画はこちら
「怪物」
かいぶつだ~れだ!!!!
かいぶつだ~れだ!!!!
クレジット、バンッ!
初めて予告を見たのは劇場内で、衝撃を覚えました。
こんなにスリリングな是枝作品予告はいまだかつてあっただろうか、と。
恐るべし坂元裕二、そしてカンヌ脚本賞おめでとう。
「カルテット」を引用すれば、「まさか」の予告でした。
それからというもの公開をずっとずっと待ちわびておりまして、ついに公開!
豪雨ですが、関係なく行ってきます!!
それでは「怪物」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。
あらすじ
・「万引き家族」でカンヌ国際映画祭パルムドールを受賞した是枝裕和監督が、映画「花束みたいな恋をした」やテレビドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」などで人気の脚本家・坂元裕二によるオリジナル脚本で描くヒューマンドラマ。音楽は、「ラストエンペラー」で日本人初のアカデミー作曲賞を受賞し、2023年3月に他界した作曲家・坂本龍一が手がけた。
大きな湖のある郊外の町。息子を愛するシングルマザー、生徒思いの学校教師、そして無邪気な子どもたちが平穏な日常を送っている。そんなある日、学校でケンカが起きる。それはよくある子ども同士のケンカのように見えたが、当人たちの主張は食い違い、それが次第に社会やメディアをも巻き込んだ大事へと発展していく。そしてある嵐の朝、子どもたちがこつ然と姿を消してしまう。
「怪物」とは何か、登場人物それぞれの視線を通した「怪物」探しの果てに訪れる結末を、是枝裕和×坂元裕二×坂本龍一という日本を代表するクリエイターのコラボレーションで描く。中心となる2人の少年を演じる黒川想矢と柊木陽太のほか、安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太、高畑充希、角田晃広、中村獅童、田中裕子ら豪華実力派キャストがそろった。2023年・第76回カンヌ国際映画祭コンペティション部門に出品され脚本賞を受賞。また、LGBTやクィアを扱った映画を対象に贈られるクィア・パルム賞も受賞している。
「怪物」のネタバレありの感想と解説(全体)
「#怪物」鑑賞
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2023年6月2日
10回絶句して5回泣いて1回叫んだ。
想像の範疇を超えて絶対不可避の衝撃が襲う。
これまでの是枝裕和作品でも、坂本裕二作品でもない新境地に震えた。
怪物は誰なのか、その答えが分かった時にあなたはきっと顔をうずめる。
これは対岸の火事ではない。 pic.twitter.com/9D7hRuwbaD
怪物は俺だった
喰らいました。。
是枝裕和、坂元裕二。どちらも非常に個性の強い作家です。
どちらの持ち味も活かしつつ、二人の作品を見ていると「あぁ、あのテイストか」と感じる場面もある。
でも、圧倒的に何かが違う。
これぞ「化学反応」と形容すべきなのでしょうが、鑑賞中はそんな言葉すら出てこないほどスクリーンのことで頭がいっぱいでした。
まずは構成ですね!
まさかの「羅生門」形式でした。最近だと「最後の決闘裁判」と言った方が分かりやすいかもしれない。
最初は湊の母親の視点、次は担任の保利の視点、最後は湊と星川の視点と、大きく分けて3つの視点から同じ時系列を見る構成だったんですよね。
本当に「まさか」でした。はい、何度もカルテット引用しますよw
予告を見ていたのと、最初に母親の視点が映るので、まさか教師の視点から描かれるとは、、、そして教師がああいう人だったとは・・・
はい、本当に驚きました。
母親の視点は、本当に坂元裕二節がビンビンに伝わってきました。
映画が始まって、火事が起きて、早々に湊から「人に豚の脳を入れたら、それは人間なの?」的な質問を母親に投げかけますよね。は、意味が分からんと。
でもこれこそ坂元裕二脚本ですよね!
一見意味が分からない、日常会話では絶対出てこないような問いかけをしておいて、これはフィクションですと言わんばかりにセリフを吐き出させる。
ここからドンドン物語に引っ張られていくわけですよ!!
完璧に掴まれた私は、母親視点で映画を見ることになり、、、
校長先生とか担任の先生とか周りの先生とかワザとらしく悪役やってんなぁって思いはしましたけどね。。
そして次に担任の視点。これも坂元裕二味を感じる内容でした。
二転三転する物語、死を匂わせる場面の数々。徹底的にスリリングでドキドキハラハラする、一番エンタメ性のある回だったのではないでしょうか。
そして最後、湊と星川の視点。
まぁ〜〜、実に素晴らしかったです。。。
是枝裕和監督の集大成と言っても良いんじゃないでしょうか。
いじめ、毒親、シングルマザー、そして性自認。
子供の視点によって全てが見えてくる。
社会問題を内包しながらも、決してそれ自体が主題ではない。
これまでの是枝裕和監督作品は、ドキュメンタリー出身ということもあり社会問題が大きく主題となる(ように感じる)映画でした。
特に今作の最後のパートを見て思い出したのは「誰も知らない」でした。
湊と星川はいじめっ子、いじめられっ子の関係ではなく、友達だったんですよね。
そして、友達の範疇を越えるようなシーンもいくつかありました。
衝撃を受けました。クィアパルム賞を獲ったのは、このシーンがあったからなのか。
これまで是枝裕和監督の作品には、同性愛の描写はなかった(はず)ですが、ここにきて初めて出てきましたね。
子供の視点を通じて、大人の愚かさが随分よく分かる内容になっていたなぁと。
すぐに人にレッテルを貼り付けて、それこそ星川をいじめていたクラスメイトの発言のように「アイツが怪物だ!悪者だ!」と決めつけてしまう。
母親の視点、担任の視点のどこを切り取っても真実は見えてこない。
そう、この映画の主演は子供なのですから。当事者なき論争ほど意味のないものはありません。
3つの視点の最後で、怪物は俺=大人なんだなと改めて感じました。
最初から疑ってかかって、小学生たちを主役から除外してしまっているような見方をしてしまった。映画というものは本当に恐ろしいもので、大人の視点にしてしまうと子供の気持ちというのが中々見えてこなくなってくるんですよね。
ラスト、本当に悲しい気持ちになる人もいると思うんですけども、私としては生きていてほしいと願うばかりでした。
怪物探しではなく、自分探しの旅でした
予告を見た方は大体のあらすじは把握されていると思います。
子供がいじめられて、教師や校長がダメダメで、でも子供たちも何か闇を抱えていそうで。。
親、教師、子供。そのうち誰が怪物なんだと考えさせられるような予告でしたね。
しかし、今作はそれが本質じゃないんですよ。
氷山の一角の先端くらいなもんでした。
日本で公開前にカンヌで上映されて、クィアパルム賞を獲得したというニュースが流れてきました。
なんぞやこの賞は、と。
調べてみるとLGBTQに関する映画に与えられる賞らしく、映画を見る前からそういうメッセージを含んだ映画なのかなと自分の中で先入観が生まれました。
もちろん、そのような設定はありますが、監督も話されてましたがLGBTQの映画ではないように感じました。
それがメインではない、型にはめないでほしい、と言いたかったのだと思いますが。
そして、TBSラジオで放送されている「武田砂鉄のプレ金ナイト」6/2の放送では、なぜ「この映画はLGBTQではない」と発言したのか、本人自ら説明を行なっていました。
是枝監督は様々な施設を訪問して、実際にLGBTQについて悩む子供たちに取材して話を聞いたそうなんです。その結果、「LGBTQ」という言葉にしてしまうと子供たちが抱える「自分は怪物なのかもしれない」という感情が全面に出てこない。
と話していました。
つまり、タイトルにある通り「怪物」が主題なのです。
自分を怪物と考えてしまっている当事者たちにスポットライトを当て、抱える問題をありのままに曝け出していく。
前半から、母親の安藤サクラは校長先生に言いますよね。
「あなたは人間ですか?」と。
そう、この映画は「怪物」に関する映画なんですよ。
厳密には「怪物」だと自認してしまっている人のための映画。
そして、
「あなたは怪物なんかではない。当たり前の幸せを掴め。」といったニュアンスの発言を、と非常に遠回しな言い回しで湊の背中をそっと撫でるのは、最初はあれだけ悪党だった校長先生なんですよね。。
私の解釈あってますかね?
「自分だけが得られる幸せなんて幸せじゃない、誰もが得られる幸せが幸せなんだよ」と言うのは、湊くんを肯定する発言ですよね?
はい、なんだかんだ最後は校長先生が持っていくんですよねw
そして、湊と星川くんは自分探しの旅に出かけるわけですよ。
犯人探しに奔走する大人とは違ってね。
大人は怪物探し、子供は自分探し。
この映画を端的に説明するなら、この言葉が一番しっくりきます。
ラストはねぇー、本当に
「栄光に向かって走る〜〜あの列車に乗っていこう〜〜♪」
でしたよねww
おい裕二さんよぉ!絶対意識したっしょww
まとめ
年ベス級ですね。
もう一度見たいです。
今度は最初から全ての顛末を知った状態で、もう一度...!!
99点 / 100点