- はじめに
- あらすじ
- グレンラガンも、キルラキルも大好きだった
- 映画の感想
- 熱き炎を具現化する、素晴らしい熱血物語
- 奇抜な配色こそ、アニメでしかできない素晴らしい表現
- 極端な色指定は、僕の配色の価値観を変えてくれた
- 炎を赤で描かず、水色とピンクで描く理由
- 単純な図形で構成される美術は、舞台の抽象化を強調する補助線となる
- その他、色の子ネタ考察
はじめに
今回公開する映画はこちら!
「プロメア」
それでは「プロメア」、感想・解説、ネタバレありでいってみよー!!!!
あらすじ
・「天元突破グレンラガン」「キルラキル」を生み出した今石洋之監督と脚本家の中島かずきが再びタッグを組んで送り出す、完全オリジナルの劇場用アニメーション。突然変異で誕生した炎を操る人種「バーニッシュ」の出現をきっかけに、未曾有の大惨事である「世界大炎上」が起こり、世界の半分が焼失した。それから30年後、一部の攻撃的なバーニッシュが「マッドバーニッシュ」を名乗り、再び世界を危機に陥れる。これにより、対バーニッシュ用の高機動救命消防隊「バーニングレスキュー」の新人隊員ガロと、マッドバーニッシュのリーダー、リオという、それぞれ信念を持った熱い2人の男がぶつかり合うことになる。主人公ガロに松山ケンイチ、宿敵リオに早乙女太一、そしてガロの上司クレイに堺雅人と実力派俳優が声の出演。アニメーション制作は「キルラキル」も手がけたTRIGGER。
グレンラガンも、キルラキルも大好きだった
見る人は選ぶかもしれないけど、俺は大好きな中島かずきさんの脚本作品。
オリジナル脚本でやってくれることに、本当にありがたく感じます。
これまで中島さんの作品を見てきましたが・・
映画の感想
うおおおおおおおおお!!!!
熱き炎を具現化する、素晴らしい熱血物語
はい、やられました。もう頭の中はプロメアのことでいっぱいです。
もう色とか図形の話をしたくて仕方ないんですけど、まずは全体の話をしたいです。
中島かずきさん脚本の特徴を一言で表すのには「熱い」とか「燃える」など「炎」を表す言葉が便利ですけども、今作はそんな炎をメインにした、まさしく燃えるお話でありました。
とうとう自身のテーマである(と個人的に思ってる)「炎」を、作品にここまで盛り込んできたかと嬉しい気持ちでいます。
自然と発火してしまう種族バーニッシュを題材に、人間との対立を熱く描くには、まさしく炎というオブジェクトがピッタリくるでしょう。だからこそ、中島かずき脚本である理由がある。
バーニッシュという言葉に、なぜか「アーミッシュ」が重なって、虐げられてきた種族というメタファーを感じてしまいました。どれくらい意識されてるのか、分かりませんが。
決して悪気があって炎を出してるワケじゃないバーニッシュと、それを利用する悪しき人間。その間で揺れ動く炎のような主人公ガロ。
結末わかっちゃいるけど、最初から最後まで全力疾走で全てがクライマックスという、まるでマッドマックスのような構成に、ただただ驚かされました。
最後まで熱量が落ちないんですよ? 常に絵が動き続けて、休むところを知らない。こんな映画ってありますか!?
しかも、マッドマックスよりも色使いが派手だからね!?
正直、見た後めっちゃ疲れたよ!!!なんちゅうもの見せるんだって思ったよ!!! でも感動したよ!!
まぁね、物語のことは、物語の専門家がきちんと説明してくれると思いますから、感想はこの辺にしておきます。
奇抜な配色こそ、アニメでしかできない素晴らしい表現
正直言って、物語よりも僕は配色・デザインの素晴らしさに涙を流して感度してました。
この映画、最初からすごい違和感があったんです。なんかおかしいと思いませんでした?
ネットで探してもカラフルな画像しか見つからないんですけど、本編を見てまず驚かされるのが・・・
色の種類が極端に少ない
いわゆる色指定において、使われている色の種類が異常に少ないんです。
基本的に今作の大部分を占める色は、水色とピンクなんです。
しかも、ただの水色とピンクではありません。
HSVの色空間で説明するならば、彩度は低くても明度が高い色を使ってるんですよ。
もっとポピュラーな表現をするならば、パステルながらもビビットな、パステルビビットな色使いをしてるんですよね。
この配色に、本当に驚きました。
なぜなら、こういった色は現実世界にはほとんどなく、仮に存在したとしても当該色が大きな面積を占める物体は、まずありえない。
似てる色であれば、子供向けの三輪車くらいですよ!!
あとはなんたって、小学生ブランドで有名だった「エンジェルブルー」の配色ですよね。でもこれだと、ピンクの彩度が少し高すぎる。
まとめると水色とピンクの組み合わせって子供向けであることが多いんですけど、これをあえて熱血男の物語に使用したという、物語と配色のギャップにセンスを感じたんですよね。
こんな色使い、滅多に現実ではお目にかかれることはないんです。
ただ、アニメだとこんな奇抜な色でもしっくりくる。むしろイイ!!
つまり、アニメでしかできない表現ってのを配色できちんとやってくれてるじゃねぇかよってことですよ!! フォオオおおおお!!!!
上映が終わった後、一緒に見た観客が「すごい情報量だった。。。」と言っていましたが、物語の量もさることながら、一番影響を与えたのは配色だったのではないでしょうか?
極端な色指定は、僕の配色の価値観を変えてくれた
さて、具体的にどんな水色とピンクを使ってたのかというと、
私なりの表現をするならば「2000年代初頭のExcelでグラフを作る時にデフォルトで配色されていた水色とピンク」
だと思います!!!
え? ピンとこないって?
っていうか例えが古くないかって?
百聞は一見にしかずということわざもありますから、こちらの画像をご覧ください!!!!!
左の画像:(C)TRIGGER・中島かずき/XFLAG
絶対に誰も共感してくれないと思うけど、映画「プロメア」におけるメインカラーの水色・ピンクの配色は、15年前くらいのExcelの折れ線グラフのデフォルト色と酷似している。
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2019年5月24日
「誰がこんなダサい色使うかよ!」って当時は思ってたけど、プロメアでは絶妙な配色に見えるんだよなぁ。#プロメア pic.twitter.com/LXyVThemTZ
懐かしいでしょ? このExcelのグラフ!!!
完全には一致しないにしても、非常に似てると思いました。一応言い訳しとくと、プロメアだと色をつけた後に白系で滲ませているから、元の色はExcelのグラフと近いでしょ!?笑
こんな見方するの、多分僕くらいしかいないけど笑
でも自分に正直に生きなきゃね!!! どうせ検索順位も低いんでしょ、このブログ!!!
なんで僕がここまでExcelにインスピレーションを感じたかというと、この青とピンクの配色のExcelグラフを、僕はひどく嫌ってたんです。
パステルでビビットな色って、やたらと目立つんですよ。ただ、グラフの色としてはどう考えても不適切。
だって派手すぎて水色とピンク以外の色が目立ちにくいですもん。
デフォルトのまま色を変えずに貼り付けられているグラフを見ると、すごく苛立ちを覚えてたんです。
おまけに、「なぜデフォルトの色を使うの? なぜ色で自分を出さないの? 思考停止なの?」って憤慨してた時期があったんですよ。
今考えれば、昔の俺って相当病んでたなぁと思ってます。
とにかく、こういう色使いは毛嫌いしてたんですよ。だから絶対に自分がデザインの仕事をするときは使わないようにしてたんです。
まじで生理的に無理だったんで(謎の嫌悪感)
ただ、今作で改めて水色とピンクのパステルビビットな配色パターンを見て、「今までの俺のうがった見方を見直そう」と、配色の価値観を考え直す機会になったんですよ。
要は地味な色の中で水色とピンクを使うと浮いちゃうんですよね。ただ、今作のようにパステルビビットな色ばかりで構成されてる場合、何も違和感がなく、美しささえ感じる。
僕の中では、デザイン性を高めるためには「大胆さと統一感を兼ね備える」ことが大事だと思ってるんですけど、今作は見事にそれをやってのけました。
普通、こんな色使いすることはないですよ。だって、パステルって普通は目立ちにくいですもん。いくら明度をあげて派手にしようとしたって、結局はパッとしない。
でも、これを映画の最初から最後までやってのけることによって、唯一無二の配色になるんですよ。
パステルカラーばかり使って、一個一個は派手さはない。
でも、そういった色で束ねて統一感を出すことで、個々の色が協調して、一つの美しい彩りになっていくんです。
このパステルビビットの協調・統一こそ、「毛色が違う相棒と最終的には協力し、敵を打ち破る!」というメタファーにもなってるような気がしてならないのです。
炎を赤で描かず、水色とピンクで描く理由
今作ではバーニッシュの炎が水色とピンクで表現されますけど、これはなぜでしょうか。不思議ですよね?
普通に考えて、炎って赤でしょ!?
ただ、今作ではこんな奇抜な色を使ってるんです。
(C)TRIGGER・中島かずき/XFLAG
こんな色使いにした理由は、なんでしょうか?
個人的には、上にも書いた通り
パステルビビットの協調・統一こそ、「毛色が違う相棒と最終的には協力し、敵を打ち破る!」というメタファー
という主張を、この炎の色は裏付けてくれると思ってます。
主人公のガロは熱血漢、一方のリオは冷静沈着でクール。
水色とピンクって、相反する色なんです。昔書いた記事で「補色」について書きましたけど、まさに水色とピンクは補色関係にあるかと思います。
www.machinaka-movie-review.com
最初はガロとリオはまさしく水と油。全く協調しないわけです。
でも最後は二人で協力しあって、敵を倒す。
補色という配色は一見すると相反する色に見えて、お互いの色を引き立たせる効果もあるんですよね。
補色同士の色の組み合わせは、互いの色を引き立て合う相乗効果があり、これは「補色調和」といわれる
つまりこの水色とピンクの組み合わせは、ガロとリロの色(キャラクター)を引き立たせる色彩的効果があるんですよ!!!
ガロとリロは最初は、ぶつかり合う。まさしく水と油の、水色とピンクのように。
でも、本気でぶつかり合った結果、二人の熱い気持ちは「一つの炎」となって敵を討つんです!!!
配色の工夫によって、ガロとリロの関係性を表してるんですよ!!
映画のストーリーを語るためには、まず脚本が大事かと思います。
映画を観る人の大半は、ストーリーを追いかけるでしょう。それも素晴らしいです。
ただ、色で映画を観る方法もあるんです。
映画はセリフや文字による直接表現ではなく、文字以外の間接表現の芸術だと思っているので、そういう見方をしてしまうんです。
時には意外な発見もあるので、よかったらお試しあれ!
・・・ちなみに、なぜガロは熱血漢に「赤」を使わないのかってツッコむ人もいると思うんですが、それにはちゃんと理由があります。
今作において「赤」は、敵を表す色になっています。
単純な図形で構成される美術は、舞台の抽象化を強調する補助線となる
今作は四角■と三角▲と円●
で、基本的に美術が構成されます。
例えば太陽の日差しを表す時には、白っぽいオレンジの四角■を使ってます。
あとは何より、プロメアのエネルギーを表す時には三角▲を使ってます。
普通のアニメと比べて、幾何情報が極めて単純なんです。
キャラクターデザインとかロボデザインは細かくデザインされてますが、こと美術において、今作は基本的には四角形より複雑な図形が出てくることは、相対的に少なく感じます。
四角形は何度も見たけど、五角形や六角形はほとんどないはず。。
こういった単純な図形ばかりで美術が構成されると、どうなるか?
今作はアニメで、なおかつSF的な世界観。時代がいつかも分からない、極めて抽象的な世界なのです。
これを単純な図形で表すことによって、舞台美術が具体的にならず抽象的な表現に留めることに成功してると思うのです。
つまり、「単純な図形で構成される美術は、舞台の抽象化を強調する補助線となる」ことを証明してくれたなぁと思うのです。
その他、色の子ネタ考察
主要キャラの髪の色(青→ガロ・黄緑→リオ・ピンク→アイナ・金→クレイ)の4つで構成されてませんかね?
(C)TRIGGER・中島かずき/XFLAG
あと、プロメアのポスター、ボヘミアンラプソディのグラデーション意識してるよなぁと漠然と思いました。
これまで水色とピンクとかばっかり語ってきましたけど、実は今作は流行色なグラデーションが非常に多く使われてるんですよね。
特に目立ったのは、これまた水色とピンクの面的なグラデーション。Apple Musicで使われて、かなり流行してますよね、このグラデーション。街中で看板とか見ても、結構使われますよねー。
流行に乗った色使いというのも、好きなところです。
以上、長くなりましたが映画の感想でした!!!