- はじめに
- あらすじ
- 映画の感想
- いつ起きてもおかしくない、未来の日本を襲う社会派SF!
- 戦争ダメ、絶対!でも日本負けるのもダメ、絶対!
- 自衛隊の演技は実に素晴らしい!
- 映画におけるA級戦犯は、翼の折れたエンジェル!
- 市民描写が実に下手くそである
はじめに
今回公開する映画はこちら!
「空母いぶき」
それでは「空母いぶき」、感想・解説、ネタバレありでいってみよー!!!!
あらすじ
・「沈黙の艦隊」で知られるかわぐちかいじ原作のベストセラーコミック「空母いぶき」を、西島秀俊と佐々木蔵之介の共演で実写映画化。国籍不明の軍事勢力から攻撃を受ける中、それぞれの立場で国民の命と平和を守るため奔走する者たちの姿を描く。世界が再び「空母の時代」に突入した20XX年。日本の最南端沖で国籍不明の軍事勢力が領土の一部を占拠し、海上保安庁の隊員を拘束する事態が発生。未曾有の緊張感に包まれる中、政府は初の航空機搭載型護衛艦「いぶき」を中心とした護衛艦群を現場に派遣するが……。西島が、航空自衛隊のパイロットとしての実績を買われていぶき艦長に抜擢された秋津竜太、佐々木が、海上自衛隊の生え抜きながら副長に甘んじる新波歳也を演じる。監督は「沈まぬ太陽」「ホワイトアウト」などの大作を手がけてきた若松節朗。脚本は「機動警察パトレイバー」の伊藤和典と「亡国のイージス」の長谷川康夫。「ローレライ」「亡国のイージス」などで知られる作家の福井晴敏が企画に携わっている。
映画の感想
日本vs東アジアの仮想敵国との武力衝突を描いたある意味問題作!? まるで仮想北朝鮮vs日本!?いつ起きてもおかしくない、未来の日本を襲う社会派SF!
北朝鮮によるミサイル発射のニュースが飛び交いすぎて、もはやJアラートに驚きもさえしなくなった日本人を直撃する、設定的には非常にリアルな社会派エンタメでございました。
今作とは決して北朝鮮などとは言っていませんが、仮想敵国「東亜」の戦闘姿勢をみれば、どう考えてもあの国を思い出すことは必至。
しかも、尖閣諸島や竹島を彷彿とさせるような、日本領海の先端島を奪い合う領土・領海の奪い合いを絡めたのも、やはり現代日本に生きる我々からしたら、何かを思案せざるを得ません。
後でたっぷり書きますけども、映画としてのクオリティは低いです。
俳優と設定を除いて、この映画は私の心に全く「いぶき」を与えてくれなかったです。
日本の非常事態を自衛隊はじめ政府や民間が一丸となって守り抜く映画として、「シンゴジラ」がありますけど、これと比べると役人の立ち回りとか、情報量の少なさとかが本当に今作は目立ちます。 まぁ、比べるのも可哀想なんですけどね。
www.machinaka-movie-review.com
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じゃあ「シンゴジラ見とけばいいじゃん?」って思うかもしれませんが、そういうわけにもいかない。
日本人が不安に感じる国難を怪物としてメタファーとしたのがゴジラ。そう、あくまでゴジラはメタファーなんです。
メタファーを使って、あくまでSFとして国難を描く映画もいいです。
でも、
「領海侵犯による武力衝突」
「軍艦と戦闘機によるリアルな戦闘」
というあまりにリアルな設定の今作は、私の感情を揺さぶるには十分すぎるほどの力を持ってました。
この設定は、原作者「かわぐちかいじ」さんの歴史SFという作家性の賜物だと思います。
第二次世界大戦中に自衛隊のイージス艦が迷い込むことで、戦況が大きく変わってしまう「ジパング」も、僕が大好きな作品です。
もちろん、実際に起こったことじゃないのでSFというジャンルに入りますけども、決して「ディストピア」などという言葉を使いたくないです。
なぜなら、いつ某国が日本に戦闘を仕掛けるか、分からないから。
戦争ダメ、絶対!でも日本負けるのもダメ、絶対!
僕自身、北朝鮮のミサイル発射のニュースや尖閣諸島・竹島を巡る領土・領海争いには、酷く杞憂していた時期があったんですよ。というか、まだ不安ですね。
そんな不安を「もし本当に起こったらどうなるか」という仮説に基づき具現化する、それだけで僕の不安は一層強くなりました(褒めてます)
そうなんですよ、領土問題は金で買えないんですよ、武力による衝突も十分あり得るんですよ。ねぇ、元都知事さん?
「尖閣諸島を買います」石原都知事が米での講演で(12/04/17)
日本で最高の武力を持つ自衛隊。
その中でも最も攻撃・防御能力の高い巨大な空母「いぶき」と仮想敵国「東亜」による戦闘は、とても他人事とは思えず見入ってしまいました。
もちろん、僕は戦争には反対ですし、武力による解決なんてありえないと思ってます。
戦争、ダメ、絶対
という信念は、死ぬまで変えないです。
しかしながら、日本の領土が向こうの勝手な都合で侵略されて、自衛隊が攻撃されるシーンを見ると、「お前ら!!いつまで黙ってるつもりだ!!!日本を守ってくれ!!」と心の中で叫んでる自分もいて。
そして、敵国の艦隊を攻撃し撃沈したシーンでは「おおおおお!!!!!よしよおおおし!!!!」と心が高まっていました。
戦争は絶対にダメだけど、日本がなす術なく負けてしまうのも絶対にダメ。
この相反する感情に揺れ動きながら、映画を見ることになりました。
戦争はダメと思いながら、戦争映画はすごく面白いしテンションが上がってしまう私。
しかも今回は外国の戦争じゃなくて、日本の戦争に関する話だから、余計に肩入れしてしまう。
最初は日本を守るために頑張る自衛隊に興奮し、褒め称えたくなるような気持ちになってたんですよ。でも、これって冷静に考えると武力に武力で対抗してるってことで、自衛隊にとっては一大事で。
西島秀俊演じるいぶきの艦長は、攻撃命令を出す時には必ず最後に頬が緩むんですよ。そんな彼をしばらく見ていると、なんだかスカッとしてしまう自分がいたんです。
まとめると、
武力で武力に対抗している様子に、カタルシスを感じている自分が本当に怖くて。
俺、今まで戦争映画で何を学んできたんだろう。なんでこんなに気分がスッキリするんだろう。
この感情は、日本を守ってくれたことへの表れなのか?
それとも、日本が反撃してくれたことへの表れなのか?
非常に複雑な感情が、うずまきました。
他の戦争映画では絶対に持たない感情を持ってしまいました。こんな感情を持たせるだけでも、現代日本で戦争映画を取ることの意味があるなぁと思っています。
正直言って、こういう感想を書くのは非常に勇気のいることでした。
でも、書かずにはいられませんでした。自分の気持ちに、嘘はつきたくない。
皆さんは自衛隊と東亜の戦闘シーンを、どうご覧になりましたでしょうか?
自衛隊の演技は実に素晴らしい!
上に書いたように、僕をこんな気持ちにさせたのは自衛隊役の熱演によるものが大きい。
まず艦長の西島秀俊さんの、冷静ながらもほくそ笑んでる表情がスッゲェ怖い。。
実際はこんな自衛官はいないと思いますけど(と願いたいですがw)、非常に好戦的な思考の持ち主。これを日本映画ではおハコの叫ぶような演技ではなく、あくまで冷静沈着に攻撃命令を出す演技に、心底恐ろしさを感じました。
攻撃命令を出した後、毎回頬が緩むように演技してるんですよね。。
こいつ、防衛学校時代はルサンチマン溜めてたんだろうなぁ。。
あと、出番は少ないものの高嶋政宏さんの豪胆そうな自衛官の役。一瞬で「こいつ、命令出せば躊躇なく攻撃しそうだな」と一瞬で思わせてくれる。オーラってすごいね。。
何より、いぶきの指揮下にある護衛艦「いそかぜ」の艦長である浮船を演じた山内圭哉さんには、非常にテンションをあげてもらいました。関西弁になると、感情が乗りますよねぇ。。
他の自衛官とは違って、非常に熱い人間を演じ、人間味が出ていたのもよかったです。
映画におけるA級戦犯は、翼の折れたエンジェル!
さて、ここまで褒めて来ましたけども。。。
事前に言った通り、この映画のクオリティについては、非常に残念に感じざるをえません。
正直、見ていてキツいシーンが何個も何個もありました。
なんだろうなぁ、良いシーンもあっただけに、余計に粗が目だったんですよね。
今作には戦犯なんていないって思いたいですけども、一人いたんですよ。しかもA級戦犯クラスの人が。。。
はい、もう皆さんお分かりかと思いますが、叩かれるのが怖いんであくまでメタファーにして名前をお伝えしますね!
今回のA級戦犯、それはキャラクターに生命の「いぶき」を与えられなかった、翼の折れたエンジェルさんです!!
Tジョイプリンス品川にて「空母いぶき」鑑賞
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2019年5月24日
キャラクターの生命に「いぶき」を吹き込めなかった、翼の折れたエンジェルことWingHondaさんには目をつむる。
日本人として、日本vs東アジアの仮想敵国という題材に、心がザワザワしながら鑑賞。戦争は絶対反対、でも向こうが仕掛けてきたら、どうするか?
はい、翼の折れたエンジェル、「翼折れ天使」さんとでも名付けましょうか。
翼折れ天使さんねぇ、、黙ってたら本当に可愛くて天使みたいなんですよ。でも喋ったらダメなんですよ。
あと、2秒以上アップにしたらダメです。顔の演技が全くできてないってのが分かっちゃうから。。
ただ、監督も何か忖度したんですかねぇ、今回一番顔のアップが多かったのは、おそらく翼折れ天使なんですよ。
まぁこれが、本当に見てらんなくてねぇ。。
自衛隊の初めての武力衝突の現場にいて、混乱して表情が失う気持ちも分かりますよ。いや、わかんないけど。
でもね、勇気を振り絞ってビデオカメラ持って外へ出て行くシーンとかあるでしょ?
その時、もう一般人の感情・思考ではなくなってるでしょう?
なのに、なぜあんなに無表情なんだよ!?
あそこまで感情を出さないのは、何かバックボーンがあるのかい?
あるのなら、是非とも劇中に説明してほしかったですね。
そしてラストの謎のアナウンサー読みは、一体なんだったんだろう。。
市民描写が実に下手くそである
あとは自衛隊シーン、政府の会議シーンの合間になぜか挿入される市民描写。
今作では片桐仁・斉藤由貴が出る出版社のシーンと、中井貴一が出るコンビニのシーンの二つがありました。
正直、この二つのシーン、マジでいらない
変なところでぶつ切り編集してさ、いきなりコンビニに行ったり出版社行ったり。一体どうなってるんだよ。
百歩譲ってだよ? 出版社のシーンは本田つば・・・翼折れ天使さんが在籍している出版社だから、入れてもいいでしょう。
でもね?コンビニのシーン、いる!? いらないでしょ!?
しかも、コンビニを入れる意味はクリスマスプレゼント商品に入っていた店長オリジナルのメッセージ「世界は一つに」という文言を主張したいがためにでしょう!?
漫画だったらもっとうまいことやってくれたと思いますけど、にしても編集が下手だって。。。
本当にいらないなぁ、いらないよ。
コンビニのシーンをカットしたら、110分くらいになってちょうどいいんじゃないの?この映画、異様に長いんだよ。
他にも言いたいことはいっぱいあります。
・エンドクレジットにて、監督の名前で止めないでほしい
とか、
・もっとBGMや挿入歌を入れてくれよ
とか、
・主題歌とかないんかい
とか、
・市原隼人がルーキーズのアイツに見えてしょうがない
とか、
いろいろ言いたいことはありますが、まぁこの辺で。
非常に粗が目立つ作品でしたけども、一見の価値ありです。