- まえがき
- 2000年-2015年興行成績
- 監督の生い立ちと作風
- 日本の刑事映画ではありえない違和感
- ナッツリターン事件との関係
- 映画の内容
- 下ネタ・暴力ネタなんでもあり! 腹から笑えるサイコーな映画!
- 映画のMVPは、、、やっぱりこの人!
- 日本アクション×刑事モノ映画へ向けて
まえがき
今回批評するのはこちらの映画
「ベテラン Veteran」
はい、韓国映画にて大大ヒットを重ねている作品でございます。
なんと韓国の歴代興行収入(韓国映画のみ)で第3位を獲得しているという、なんとも恐ろしいヒット作品でございます!!
2000年-2015年興行成績
韓国映画データベース 観客動員数(2月12日現在のデータ)
まずは予告をご覧ください、見て損はありませんよ!!
[動画]ファン・ジョンミン&ユ・アインら主演映画「ベテラン」ティーザー予告編公開
久しぶりの韓国映画です。一番最近見たのがキム・ギドク監督なので、どんな変な映画が来ても大丈夫! と覚悟して干渉してまいりました笑
主演は「国際市場で会いましょう」でタッグを組んだファン・ジョンミンさんとオ・ダルスさんです。
監督の生い立ちと作風
監督はリュ・スンワンさん! 監督だけでなく俳優としても活躍されているオールラウンダーです。
http://img.cinemacafe.net/imgs/zoom/188309.jpg
・ベルリンファイル
・生き残るための3つの取引
などで刑事ドラマものを扱っている方です。
10代の頃はジャッキー映画に夢中になり、アクションには特に強いこだわりを持っているそうです。
日本の刑事映画ではありえない違和感
日本の刑事モノのドラマは、各局がこぞって製作していますよね!
フジテレビなら「サイレーン」、TBSなら「MOZU」など。日本にもまだまだ根強い人気があるジャンルだと思います。
しかし、この映画は日本で見かける刑事アクションものとは一線を画します。というか、違和感すら覚えるでしょう。
それは、、、
「シリアスな銃撃シーンが一切ない」ということ。
警察の特権であり、刑事モノでは必ずと言えるほど使われる銃。
日本の刑事ドラマでも映画でも見ない日はありません。
しかし、この映画にはほとんどといっていいほど銃が出てきません。
特に衝撃的なのは、「銃」では誰も殺さない、ということ。
リュ監督は徹底したアクション描写を好み、銃撃を徹底的に排除した結果、非常にいびつな刑事アクション映画が誕生したのです。
よくよく思い出してみると、いろいろおかしな設定や演出がなされてます!
・映画のラスボスは財閥企業の息子。その息子は格闘技マニアで、警備スタッフと日夜スパーリングを繰り返している。普段銃を持っていない。
・とにかく役者を「走らせる」! 大きい倉庫での追走劇は「メイズ・ランナー」!?と思ったほど
・ラスボスとの対決シーン。「銃を出せ!」という上司からの命令に部下は硬直する。「いや、今日は持ってないです」との一言に上司は唖然。そして観客は爆笑(私も含めて)
・最後のラスボスとの戦いには銃撃戦、、、かと思いきや繁華街で血みどろの総合格闘技!!
とにかく、どんな見せ場でも銃は使わずに肉体だけで表現しています。ましてや「銃」を笑いにするという、日本では考えられない離れ業をやってのけています。
韓国映画こえぇーーーーー!
日本ではこんなこと何十年たったらできるんでしょう?
「肉体は俳優の言葉」と故・高倉健さん、千葉真一さんも仰っています。その言葉通り、セリフでなく体一つですべてを表現しているのです!
ナッツリターン事件との関係
この映画を見た人なら必ず思う構図。それはナッツリターン事件へのオマージュなのかどうか。
この映画のラスボス(黒幕)が韓国では有名な財閥企業の息子で、とにかく悪事を働くわがままボーイなのです。
それはナッツリターン事件で有名になった、財閥企業社長の娘を彷彿とさせますよね!!
調べたところ、監督がナッツリターン事件を思い浮かべて映画を作ったことは一切なく、ただの「偶然」であったみたいです
リュ:ナッツリターン騒動は、この映画が完成した後に出てきました。編集も終わって、テスト試写をしようとしていたその日に話題になって。そんなことが起こっていたことは知りませんでした。後になって反響の大きかった理由がわかったんです。
韓国では昨年公開された映画ですから、ちょうどナッツリターンの事件と重なったみたいです。また、この事件以外にも財閥企業の娘・息子が悪事を働いていることは韓国では有名な話だったので、取り上げようとしたみたいです。
映画の内容
下ネタ・暴力ネタなんでもあり! 腹から笑えるサイコーな映画!
アクション・ナッツリターン事件などいろいろ述べてきましたが、本作の魅力はやっぱりコメディ!!
日本では絶対にできないような下ネタや理不尽な暴力で笑わせるシーンがちりばめられています!
前のほうの席で鑑賞したのですが、周りには私を含めたオジサンばかり。映画を見る前はムスッとしていたのですが、見始めたら「この人、こんな高い声出るんだ」と感心するほど高笑いの連続!
日頃のストレスを解消できること、請け合いです。
映画のMVPは、、、やっぱりこの人!
そんなコメディ演出の最大の功労者は、主役でもなく、ライバルでもなく、主役の上司を務めたオ・ダルスさん!
http://pbs.twimg.com/media/CUvcLirUsAAnz5q.jpg
この人がいなければ、間違いなくこの映画は鈍重なものになっていたでしょう!
どんな場面でも笑わせてくれるので、中盤の中だるみもこの人で乗り切ることができたと思ってます!
彼の発言・行動にはぜひ注目してください!
日本アクション×刑事モノ映画へ向けて
間違いなくこの映画は傑作でした。刑事モノとしても、アクションものとしても、そしてコメディとしても!!
日本の刑事モノは、最近シリアスなものばかりで面白くないような印象があります。しかも、不謹慎なネタは封印し、「感動」の押し売りをするような作品が多いように感じます。
絶対と言っていいほど、予告では誰かが銃に撃たれて倒れるシーンがあったり、それがヒットの方程式と言わんばかりにお決まりのシーンが挿入されているだけで、まったく目新しさがない。
私の主観ですけど、「感動」を押し付けられると泣けるものも泣けないんですよ。正直言って萎えるんです。かといって激しいアクションも規制が厳しくてできない。笑いのセンスもまるでない。
こうなっている原因って、スポンサーの意見ばかりまかり通って、監督をはじめとした作り手側の権力がなくなってるんじゃないかと感じるんです。
本作なんて、監督の異常なまでのアクション好きをモロに反映させて大成功したわけですし、監督のやりたいことを尊重してあげるのも、結果として興行の成功に結び付くわけです。
というわけで、日本はもっと監督に好きなようにやらせましょうよ!
洋画ばかりレビューしている私ですが、もちろん邦画も何本か見てますし、現役の監督で好きな方も何人もいます。そういった監督たちは、職業監督ではなく、自分の人生体験を映画に投影している人たちばかりなんです!
自分の人生を映画にすると、とにかく面白いものが作れます。「ロッキー」シリーズだって、俳優として売れなかった自分を「負け犬ボクサー」に投影したわけです。
自分が楽しめなきゃ、観客だって楽しめません。
というわけで、自分のやりたいことを映画に反映できている素晴らしい本作「ベテラン」
超超超超超おススメでございます!!!
日本のドラマ見るよりこっちを見ろ!!!!