こんばんは! Machinakaです!
今回批評する映画はコチラ
「スポットライト / The spot light」
https://www.asianews.it/files/img/iraq_bambini_prima_comunione.jpg
はい、2016年度アカデミー賞作品賞を受賞した作品がいよいよ日本にやってきました!!
アカデミー賞を生で見ていたMachinakaとしては、「マッドマックスが作品賞じゃないのかよー」とボヤいていたのですが、この映画を見てどう変わったでしょうか?
1.あらすじ
新聞記者たちがカトリック教会のスキャンダルを暴いた実話を、「扉をたたく人」のトム・マッカーシー監督が映画化し、第88回アカデミー賞で作品賞と脚本賞を受賞した実録ドラマ。2002年、アメリカの新聞「ボストン・グローブ」が、「SPOTLIGHT」と名の付いた新聞一面に、神父による性的虐待と、カトリック教会がその事実を看過していたというスキャンダルを白日の下に晒す記事を掲載した。社会で大きな権力を握る人物たちを失脚へと追い込むことになる、記者生命をかけた戦いに挑む人々の姿を、緊迫感たっぷりに描き出した。第87回アカデミー賞受賞作「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」で復活を遂げたマイケル・キートンほか、マーク・ラファロ、レイチェル・マクアダムスら豪華キャストが共演。
アメリカのボストンで起こったカトリック教会での児童に対する性的虐待事件を摘発する地方新聞ボストングローブ紙の「スポットライトチーム」を描いた、実話ベースの作品です。
2.(解説の前に)映画の感想
まずは一言。
「映画にした意義があったなーーー!」
ボストンとはいえ一つの都市で起こった事件が、社会を動かし、世界を動かすことになったとは、、、
もちろん新聞で何百回も記事にされたことだし、多くのニュースにもなったし、本も出版されてます。カトリック教会が盛んな国では、誰でも知ってる話題ですが、日本ではまだまだ知名度が低い事件でしょう。
それが「映画館」という非常にエンタメ性の高い施設で、映像として皆に公開できたのは意義があると思うのです。「アカデミー作品賞」とブランドがつけば、絶対面白いと思ってみんな見に行くでしょう。
しかし、実際の映画は非常に真面目で、大人しい映画でした。他のブログの記事にもコメントしたのですが、鑑賞後の印象はブリッジオブスパイを見た時と同じようなものがありました。
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むしろ、本作の方がより重い話だったかも。映画的にはハッピーエンドなのですが、「よく考えたらこれって実話だよな? だったらまだ完全に終わってないじゃん!」と考えてしまう自分がいるのでした。
ただ、知っておいてよかったなぁーと思った作品でした。キリスト教はおろか、カトリックなど自分には関係ない話だと思っていたら大違いです。
あなたの身の回りにも、不条理で不公平な体験ってありふれていると思うんです。巨大な悪に勇気を振り絞って立ち向かった人々の実話を映画にしたのですから、感動しないはずがありませんよ。
ほとんどがセリフの映画なので、意義はあるけど映画的に真面目すぎるなぁーと思ってましたけど、、最後の最後ですごい演出が!
スポットライトの記者が教会を訪れるシーンがあるのですが、これは泣くしかない。
「この子供達の中で、どれだけ被害を受けたのだろう」
「笑っている神父は、どんな目で子供を見てるんだろう(てか笑ってるんじゃねぇよ!)」と心の中で叫びました。
ブリッジオブスパイと比べても映画的な仕掛け(笑いとかアクションとかストーリーの爽快感とか)はほとんどないのですが、本当に見てよかったと思います。
3.本作を楽しむためには、、、
大変意義深い映画ではありますけど、本作を鑑賞するためにはカトリック教会のシステムをある程度理解してないといけません。何せ、これはアメリカ映画です。アメリカ人にとっては当たり前な話を、映画では省略するに決まっています。
それに加えて、この映画はほとんどキリスト教の解説描写がありません。同じく実話ものでも、マネーショートみたいにお色気を使った説明もありません笑
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ほとんどがセリフの映画で、最後の最後しか映画らしい演出はありません。むしろそこがないと、映画としては評価が低くなったのかも知れません。
なので、もしかしたら観ている人の中には、、、「凄いのは分かるけど、退屈だった」と感じる方もいらっしゃるのでは?
見る客層によっても影響するかもしれませんけどね。しかし、本ブログを最も観ている年齢層は20代から30代前半の日本人の方が多いですから、しっかり解説しておく必要があると思ったのです!
4.この名解説で、カトリック教の背景をスッキリ理解
自分で頑張って画像を作ったりして、解説しようと意気込んでもいましたけども、、まずは前例を探そうと思ってネットサーフィン。
まずは公式ホームページを探しました。
「アホかい、こんな文字ばっかなの、誰も見ねぇわ!!」
まるでセリフばかりの本作を象徴するかのような、文字ばかりの酷い公式ホームページでした。 いや、もしかして意図して作ってるのか?笑
公式がダメならどうするか、、、と思ってYouTubeを探すことに。そしたら、、、ありました!
とても分りやすい解説がありましたのでリンクを貼っておきます。
NHKニュース特集の映像のクリップです。全て見る必要はありません。4:56当たりで止めて頂いて結構です。まずは騙されたと思ってみてください!
映画を見た人ならわかると思いますけど、、メチャクチャ分りやすい解説です。
受信料払っておいてよかったな! と感じるのでした笑
ちなみに冒頭でキャスターの方が、「アメリカの宗教史上最大の危機」と言っています。非常に的を得ている言葉だと思いましたね。
それでは、この動画を元にこれから解説していきます。分りやすく箇条書きにしていきます。
①アメリカ人にとっては、とても他人事とは思えない恐怖
アメリカにはカトリック信者は4人に一人です。総人口3億人とすると、約7500万人がカトリック信者ということになります。なお、子供の頃は親に「教会に行きなさい」と言われるので、この7500万人のカトリック信者はほとんど教会に行った経験があるということになります。
つまり、7500万人ものアメリカ人が高い確率で、男性女性に関わらずレイプに遭う恐れがあったということです。
これはもう、他人事じゃありません。
②なぜ神父は子供を襲ったのか?
子供を襲った犯人のほとんどは、「司祭」と呼ばれる聖職者たちでした。この司祭という職以上の階級の人間は、とある堅い誓いを守らねばなりません。
それは、、、
生涯独身を貫き、性行為(自慰行為も)絶対禁止なのです!!
大事なのでもう一度言いましょう。
性行為(自慰行為も)絶対禁止なのです!!
そんな禁欲状態の中で、最も触れ合いの多い人達は信者である子供なのです。もちろん、児童の性的虐待などあってはなりませんが、昔からの鉄の掟のせいで神父達が狂っていたのです。
映画でも出てきましたが、司教の中で性的虐待を犯した人は、司教全体の6%です。これは人数に対する割合なので、回数で換算すれば、子供が被害に遭う確率が非常に高いのが分かるでしょう。
性に対して奔放な日本人からすると、ありえない地獄ですよ。
もちろん犯罪を犯した司教が悪いし全く同情しませんが、こういった性事情があるのも事実。今回の映画で大変勉強になりました。
5.アカデミー賞を取った理由とは
この映画はアメリカを舞台に、もっと言えば、人口が60万人少しのボストンを対象に話が進んでいくので、あまりスケールが大きくないようにも見えます。
しかし、ボストンで起きたこの事件がいかに世界中に影響を与えたのかは、Wikipediaを見ても明らか。
アメリカに続いて、アイルランド、メキシコ、オーストリアといった国々でも訴訟が起き、イギリス、オーストラリア、オランダ、スイス、ドイツ、ノルウェーにおいても行われてきた性的虐待が問題となっている[3][4][5]。アメリカやアイルランド、スコットランドでは教区司教が引責辞任に追い込まれるという異例の事態となった。
https://ja.wikipedia.org/wiki/カトリック教会の性的虐待事件
アメリカのみならず、カトリック信者の多い欧米諸国でも、性的虐待が明らかになったのです。
ボストンだけだと小さな光のように思えますが、その光を見つけた被害者が勇気を振り絞って、大きな光へと昇華させたのです。
神父が性的虐待を犯す確率は、アメリカに限らずどこの国でも非常に高かったことがわかりますね。
そして、カトリック信者は世界で12億人もいるのです。
https://afpbb.ismcdn.jp/mwimgs/e/8/500x400/img_e857315926388242b751d20801a9404c184558.jpg
これでもうお分かりかと思いますが、この映画は12億の人間に関係がある話なのです。日本の10倍の人口ですよ。想像がつきませんね。
上の画像で、紫になっている地域の人にとっては、この映画はとてつもなくリアルなのです。
しかもこれは過去の問題ではなくて、カトリック教が続く限り現在進行形で続く問題なのです。
過去の問題に見えて、現在も続くリアルな問題にまさしく「スポットライト」を当てた映画なのです。
また、非カトリック教の国の人々にも、「アカデミー作品賞!」とブランドを作っておけば観に行く人も増えるでしょう。
https://stat.ameba.jp/user_images/20160409/02/eigajikou/2b/f6/j/o0550078013615333232.jpg
アカデミー作品賞は最高の娯楽作品ではなくて、「後世に伝えるべき名作」が選ばれるべきなのです。
もちろんマッドマックスは最高ですし、ファンとしては作品賞も取って欲しかった。でも、そういう意味でスポットライトこそアカデミー作品賞にふさわしいのではないでしょうか。
6.最後まで席は立たないで!!
私がこの映画で最も衝撃的だったのは、エンディングのクレジットです。映画で描かれていた内容の後日談が、文章で流れてきます。
絶対にこれを観てから劇場を後にしてください。
単なる文章と侮ることなかれ! このボストンでの事件が、いかに世界中に影響を与えたのかがよく分かる演出になっています。
エンディングでの衝撃を味わって欲しいので、ここでは詳しく述べませんが、、、
日本語字幕が出ない部分に注目ですよ!!
ここはじっと画面を眺めてください!!!
というわけで、結構なボリュームになってしまいましたが、これを読んで少しでも本作の理解が深まると幸いです。
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