こんばんは! Machinakaです!
今回批評する映画は
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「ハドソン川の奇跡」
https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/storage.withnews.jp/2016/06/20/9/74/9743c4f0-l.jpg
よいしょーーー!!!!!
クリント・イーストウッド監督の最新作がついに上映だーーーい!!!!!
映画ファンなら必見ですよね!? いや、映画ファンじゃなくても気になるよね!?!?
2016年でなんと86歳!! 大ベテランの監督が作る映画は一体どんな内容なのか!?
期待しかしねぇぜ!!!!!!!!!
先に言っておくと、実は私一般公開より前に観てます。
配給会社から誘われた? いやいや、私は何もしてませんよ笑
映画ブロガーの仲間から、試写会に誘われたのです!!!
モンキー的映画のススメという映画ブログを運営しているモンキーさんから、試写会にお誘いいただきました!
モンキーさん、本当にありがとうございました!!!!
試写会の様子はこちらのブログで書いています。本記事と併せてご覧くださいませ!!!
ちなみに試写会では、主演のトム・ハンクス、アーロン・エッカートンさんが来日されました!!
生トム・ハンクスを観た時の衝撃は、、、今でも忘れられません!!!笑
www.machinaka-movie-review.com
それでは早速行ってみましょー!!!
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1.あらすじ
C・イーストウッド監督×トム・ハンクス主演『ハドソン川の奇跡』予告編
名匠クリント・イーストウッド監督がトム・ハンクスを主演に迎え、2009年のアメリカ・ニューヨークで起こり、奇跡的な生還劇として世界に広く報道された航空機事故を、当事者であるチェズレイ・サレンバーガー機長の手記「機長、究極の決断 『ハドソン川』の奇跡」をもとに映画化。09年1月15日、乗客乗員155人を乗せた航空機がマンハッタンの上空850メートルでコントロールを失う。機長のチェズレイ・“サリー”・サレンバーガーは必死に機体を制御し、ハドソン川に着水させることに成功。その後も浸水する機体から乗客の誘導を指揮し、全員が事故から生還する。サリー機長は一躍、国民的英雄として称賛されるが、その判断が正しかったのか、国家運輸安全委員会の厳しい追及が行われる。
はい、2009年にアメリカで起こった実話をベースにしています。
驚くべきは上映時間。
なんとエンドクレジットを含めて「96分」です!!!
前作のアメリカンスナイパーは132分! 比較すると前作より36分少ないんです。
イーストウッド監督の作品はそこそこ観てますけども、100分を切る映画って少ないんじゃないかなぁ、、、。
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2.監督・キャスト
監督はクリント・イーストウッド、2016年で86歳になる超ベテラン監督でっす!!
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/0/07/ClintEastwoodCannesMay08.jpg
まさに「生ける伝説!!!」
本気で一分一秒でも長生きしてほしい人物です! 俺の寿命が分けられるなら、喜んで差し上げるよ!!!!笑
もはや説明不要ですけども、、、
1959年の「ローハイド」から、俳優を続けて約60年!!
定年退職が特にない映画産業だからこそできる技ですね! というか、、この年齢で仕事できるのがすごいよww
60年代からは西部劇で活躍し、「荒野の用心棒」などの名作を残しています。
https://iwiz-movies.c.yimg.jp/c/movies/pict/c/p/1b/fa/7583view012.jpg
また、俳優だけでなく映画監督としても大成功!
1971年の「恐怖のメロディ」で初監督をしました。
そして、90年代から「ミスティック・リバー」などの文芸映画にも参加し、高い評価を受けます。
西部劇出身の俳優が文芸映画の監督までこなすなんて、聞いたことないですw
私の体験としては、2000年代のイーストウッド監督の作品に非常に思い入れがあります。
まず、2004年のミリオンダラー・ベイビー
2008年の「グラン・トリノ」
2009年のインビクタス
いずれの作品も、まず映画として非常に面白い! そして、社会的メッセージが込められている、そして最後に、カタルシスがある!
もうね、最高の映画体験が出来るんですよ!!
60年間映画を撮り続けて、なお進化し続けるクリント・イーストウッド監督なんです!!!
最近見た映画では、2014年のアメリカン・スナイパーです
「ハングオーバー」で売れたブラッドリー・クーパーをまさかの主役に抜擢!! 実在したクリス・カイル元米軍ネイビーシールズを主人公にして映画を作ってます。
イラク戦争の実情を描きつつ、スナイパー同士の対決という最高に盛り上がるシーンを演出し、最後にはPTSDに苦しむクリスカイルの最後まで描く! 銃撃戦に興奮していた私を一気に現実に引き戻し、「戦争って本当に良いものなのか?」と語りかけてきた。そして、衝撃のエンドロール、、、あんな映画体験は初めて。
後にも先にも、あんなエンディングは体験したことないですね。。。
と、記憶に残る映画を次々と量産する、驚くべき老練な監督なのです!!
そして主演はトム・ハンクス
https://livedoor.4.blogimg.jp/laba_q/imgs/d/d/dd93af00.jpg
This is Hollywood !!!
Foooo!!!!!
はい、押しも押されもしないハリウッドのエースで4番!!
トムクルーズがアクション映画のキングなら、トムハンクスは文芸映画のスターです!!!
と言っても、彼は初期はサタデー・ナイト・ライブやコメディ映画に出演してたみたいですけどね笑
1993年のフィラデルフィア、1994年のフォレストガンプで、なんと2年連続アカデミー主演男優賞を受賞している、恐るべし映画人!!!
今とは違ってすごく痩せてるトム・ハンクス。アカデミー賞を取ったこの2作を連続してみたんですけど、、、
演技が上手すぎて、演技してる感じがしないんです笑
もちろん役作りで見た目を変えたりもしてるんですが、それよりも内面からにじみ出る「演技に徹してる感」が凄い!
演技の事は詳しくは分かりませんけども、まるでドキュメンタリー映画を観ているような、あまりにもナチュラルな演技に脱帽です!!
個人的に一番面白かった映画は、2004年の「ターミナル」
スピルバーグ監督とタッグを組んだ作品。空港を舞台にしたドタバタコメディ&感動できる作品。本当に面白かった!!
あまりにも豪華な監督・キャスト。二人とも「アメリカを象徴する」映画人として有名で、影響力は計り知れません。そんな二人がタッグを組んだ映画ですから、上映前から超期待ですよね!笑
はい、というわけで概要はこれまで、、、、って長くなっちゃったね笑
それでは映画の感想いっきまーす!!!!
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3.映画の感想
丸の内ピカデリーで試写会での鑑賞
もちろん会場は満席。
トムハンクスとアーロン・エッカートンさんが来日し、会場は大盛り上がり。
映画を観る前に、最高にハッピーな気分だった。
言い方が悪いが、映画がどれだけダメでも最高な映画体験だったと胸を張って言うつもりだった。
しかし、本当に最高の映画体験を出来たのは、映画を見た後だった。
86歳のクリント・イーストウッド監督が、前作「アメリカンスナイパー」に引き続く実話ベースの映画を撮った。
この映画に、もはや言葉など不要。
ただ、あえて言わせてもらうとすれば、「最高」だった。
無駄な演出やセリフ一切なし。映画のコンセプトのみに焦点を当てた、非常にクールでスタイリッシュな作品であった。
そして、個人的にイーストウッド監督が大好きで、今回も恐ろしいほどナチュラルでスムースなカット割りに大興奮した。
乗客は155人にも関わらず、全員無事。インターネットで検索したが、死者数0人の数字に改めて震えることとなる。
まさしく「ハドソン川の奇跡」としか言いようがないこの出来事。
実は、日テレの「世界仰天ニュース」でドラマ化されていた。
上の見出しには「ハドソン川の奇跡」と書いてある。まさしく「奇跡的なストーリー」である。そして、「感動的である」
https://i.ytimg.com/vi/yUOCx0eYcdU/hqdefault.jpg
「奇跡」「感動」
映画にするにはもってこいのテーマだ。まさしく「全米が泣いた!」のキャッチフレーズにふさわしい。
映画もそんなハリウッド映画なんだろう、と私は思っていた。
が、私の予想の遥か上を、イーストウッド監督は考えていた。
この映画は「奇跡的な話」でも「感動的な話」でもない。むしろ、それらの成分を極力控えめにした「静」の映画に徹したのだ。
「アルマゲドン」のように、ロックスターが叫ぶエンディングを作るわけでもない、非常に淡々とした映画なのだ。
ただ、時には演出も控え目な方が映画の出来栄えを向上させることもある。
映画は「引き算の美学」とも言われる。本作は、旨味のみを抽出して、糖分や塩分を極力制限した「究極の味噌汁」のような映画とも言える。
何故こんな感動的で奇跡的な話を、あえて淡々に作ったのか?
テレビマンがこの映画を見たら、「何でこんなにアッサリしてるんだよ!!!!」と怒るかもしれないw
ただ、分かってほしい。こんな映画も大いにアリなのだ。
非常に素晴らしい映画を見せてもらった、イーストウッド監督に感謝である。感謝してもしきれない。
間違いなく、アカデミー作品賞候補に入るだろう。そう予言する。
詳しくは、次章で述べたい。
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4.映画の解説 イーストウッドはサリー機長に自己投影している
この映画の恐るべきところは、「奇跡のような実話」という感動的なストーリーに疑問を投げかけた点にある。
イーストウッド監督は、「この救出劇は奇跡なんかではない」と言い放ったのだ。
そして、当時機長だったサレンバーガー機長も「これは奇跡ではない」と言っている。
何故この救出劇が「奇跡」と呼べないのか?
それは、サレンバーガー機長にとっては「日々の訓練の賜物だ、奇跡と呼ばれたら、これまでの仕事を否定された気持ちになる」と言っている。
つまり、これは奇跡ではなく「必然的」に救出できた、と言っているのだ。
ちなみに、当時のサレンバーガー機長は58歳。ベテランの機長ある。
もちろん機長としてはベテランで、あらゆる飛行機事故のシミュレーションや対処法を熟知している。しかし、彼の凄いところは「非常事態の対応」の徹底ぶりである。
ウィキペディアを探したら、こんな文章が。
コロラド州の空軍士官学校を首席で卒業後、パデュー大学で産業心理学の修士号及び北コロラド大学で行政学の修士号を取得した。1973年にアメリカ空軍に入隊し、1980年に退役。最終階級は空軍大尉。同年、USエアウェイズに入社。非常事態に対応するため心理学を学んだ。
詳しくは英語版ウィキペディアに書いてあった。
In addition to his Bachelor of Science from the U.S. Air Force Academy, Sullenberger also holds a Master's degree in Industrial Psychology from Purdue University and a master's degree in Public Administration from the University of Northern Colorado.
つまり、産業心理学と行政学の修士号を有しているのである。
もちろん、パイロットは研修で心理学についての触りは勉強しているし、一般人と比べれば豊富な知識や経験があるだろう。
しかし、このサレンバーガー機長は勉強に留まらず、修士号を取れるレベルになるまで「研究」をしたのである。
研修を受けるパイロットは大勢いても、それらを「研究」する人はまれだろう。
彼の経歴を見ると、ますます今作の「ハドソン川の奇跡」を「奇跡」と呼べなくなってきた。
彼の素晴らしい救出劇は、起こるべくして起こったのである。「奇跡」などという理由などないのだ。
ちなみに、サレンバーガー機長がバードストライクからエンジン事故に気づき、空港に戻らずにハドソン川に着水することを判断した時間は、わずか208秒である。恐るべき即決である。これも、日々の努力や経験の結果であり、
話は変わって、クリント・イーストウッド監督の話をしよう。
イーストウッド監督は、ハリウッドで「早撮りの名手」と言われている。
https://image.eiga.k-img.com/images/special/1513/invictus1_01.jpg?1264589683
早撮りとは、映画のクランクイン・クランクアップまでの時間が異常に早いことを指している。
何故彼が早撮りなのか? それはサレンバーグ機長と同じく「これまでのキャリアで培った経験」が悩む時間を短縮させ、即決に至っているのだ。
まさに「熟練」と呼ぶにふさわしい、監督の職人芸なのである。
映画は見る人によって評価も違う。いかに監督が優れていてもヒット作を連発したり高評価を続けられる人などいない。映画産業はそれだけ複雑で未知に溢れているのだ。
しかし、イーストウッド監督はそれでも自分の「経験」を信じ、次々と良作な映画を作り続けている。だから、どんな状況でも「即決」が出来る。
イーストウッド監督とサリー機長の仕事っぷりは非常に重なる部分があるのだ。
さらに、もっと驚くべき共通点がある。
イーストウッド監督は俳優になる前、米軍として朝鮮戦争に出兵し、飛行機を運転したことがある。飛行機の腕前は抜群。上司から見ても難しい「着陸」をやってのけた過去も持っている。
そして、サリー機長も航空会社でパイロットをする前は米軍の空軍に属し活躍した。
つまり、二人とも天職に就く前は米軍に属していた元軍人であり、退役した後は転職していない。お互いに長い経験に裏打ちされた、「ベテランの仕事術」を発揮しているのである。
サリー機長は、イーストウッドそのままなのである。
本来であれば、イーストウッドがサリー機長を演じるべきだった、と感じる人も多いだろう。
しかし、イーストウッド監督が機長として飛行機を運転していたら、ハッキリ言って見るからに危ないww
年齢が離れすぎているので、トム・ハンクスにバトンを託したのだろう。
前作の「アメリカンスナイパー」に引き続き、「アメリカのリアルヒーロー」を作ったのだ。
また、前作のクリス・カイルはイラク戦争で160人を殺したと言われている。一方、サリー機長は155人の命を救った。ほぼ同じ数値であることに、何か運命的なものを感じる。
つまり、160人殺した男の映画を撮ったと思いきや、本作では160人を救った男の映画を作っているのである。振れ幅が大きすぎるww
ただ、どちらもアメリカのヒーローなのである。しかし、これはアベンジャーズとは異なるリアルヒーロー映画である。
クリス・カイルもサリー機長も、最初はアメリカンヒーローとしてニュースで話題になり、持ち上げられた。しかし、騒ぎが収まったと思いきや、手のひらを返したように「人殺し」や「容疑者」の汚名をかけられる。
クリス・カイルはアメリカからすればイラク戦争で活躍したヒーローだ。しかし、戦争後には「イラク戦争は愚かだった」と酷評され、自分の仕事を否定される。
一方のサリー機長は、最初は155人の命を救ったヒーローとしてニュースで大きく持ち上げられる。しかしその後は政府の取り調べを受けて「乗客を危険にさらした」として汚名を着せられる。
この二人は非常に共通点があるのだ。
イーストウッド=サリー機長の図式に加えて、クリス・カイル=サリー機長でもある。
二人とも、アメリカのために、そして国民のために戦ったリアルヒーローなのである。
そういう意味では、作り物のヒーローであるアメコミ映画とは一線を画す感動がこの映画にはある。
テレビ版「ハドソン川の奇跡」を見た方は、もはや映画で見なくてもいい、と言うかもしれない。
しかし、私がこれまで批評したように、内容はテレビと映画では全く異なる。そして、映画の出来栄えは折り紙付きだ。
真のアメリカン・リアル・ヒーロー映画である。
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傑作としか言いようがない、オススメ。
参考動画
町山智浩 映画「ハドソン川の奇跡」C.イーストウッド監督 たまむすび