- まえがき
- あらすじ
- 「82年生まれ、キム・ジヨン」のネタバレありの感想と解説(短評)
- あくまで「キムジオン」の話として捉えたい
- メインテーマを描こうとするあまり、不自然なシーンが目立つ
- フェミニズム、なんて括りはしたくない
- まとめ
まえがき
今回批評する映画はこちら
「82年生まれ、キム・ジヨン」
ただ、「EXIT」も公開規模がかなり大きかったので、もうシネコンで韓国映画がバンバン流れることは当たり前になってきているのでしょうかね。
それでは「82年生まれ、キム・ジヨン」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。
あらすじ
・平凡な女性の人生を通して韓国の現代女性が担う重圧と生きづらさを描き、日本でも話題を集めたチョ・ナムジュのベストセラー小説を、「トガニ 幼き瞳の告発」「新感染 ファイナル・エクスプレス」のチョン・ユミとコン・ユの共演で映画化。結婚を機に仕事を辞め、育児と家事に追われるジヨンは、母として妻として生活を続ける中で、時に閉じ込められているような感覚におそわれるようになる。単に疲れているだけと自分に言い聞かせてきたジヨンだったが、ある日から、まるで他人が乗り移ったような言動をするようになってしまう。そして、ジヨンにはその時の記憶はすっぽりと抜け落ちていた。そんな心が壊れてしまった妻を前に、夫のデヒョンは真実を告げられずに精神科医に相談に行くが、医師からは本人が来ないことには何も改善することはできないと言われてしまう。監督は短編映画で注目され、本作が長編デビュー作となるキム・ドヨン。
「82年生まれ、キム・ジヨン」のネタバレありの感想と解説(短評)
#82年生まれキムジヨン 鑑賞
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2020年10月9日
metoo運動が盛んな現代に一石を投じる、ニューノーマルな社会派映画。
決して専業主婦の生きづらさだけを描くのではなく、なぜ生きづらくなったのかを彼女の全人生をかけて訴える。
誰が善人でもない、悪人でもない。キムジオンを生み出したのは、社会そのものなのだ。 pic.twitter.com/uqkdOCK8VH
あくまで「キムジオン」の話として捉えたい
そういう意味では、今作と似ている作品としてはアメリカのドラマで大流行した「THIS IS US」が挙げられると思います。
勝手な先入観でカテゴライズせずに、私自身をちゃんと見てほしい、今作はそんな願いが込められているように感じました。
メインテーマを描こうとするあまり、不自然なシーンが目立つ
フェミニズム、なんて括りはしたくない
こう思うようになったのも、ミートゥー運動が起こり女性の平等が叫ばれる現代に生きる私だからこそ、感じた違和感なのかもしれません。日本も女性の社会における活躍が乏しいと言われて久しいですが、いち社会人である私にとっては、今作に出てくるような女性蔑視を普段見かけることがないんですよ。
もしくは、子供の頃から生きづらさを味わってきたキムジオンの目線で描かれている映画だからこそ、あらゆる人間が女性を攻撃するような作りになっているのかもしれませんが。
私は男で、女性の生きづらさに共感する!なんてことは決して言えません。実際に体験したことがないので。
女性の目線からしたら共感する作りになっているのかもしれませんが、どうしても違和感がぬぐえなくて、仕方ないのです。
女性の生き辛さを映画で描くことは大事だし、社会の価値観をアップデートすることは必要不可欠です。
ただ、女性の生き辛さというテーマを描くために、ただただ主人公を攻撃するキャラクターばかり作るのは、映画という多様なメディアとして相応しくないような印象があるんですよね。
要は、映画的に上手くないところが目立ってしまっているんですよ。
キムジオンを攻撃するモブキャラ達は、女性蔑視だった韓国社会の歴史を物語るための装置であることは間違いありません。映画的には必要なキャラクターです。
でも、この映画の描き方では単にキムジオンを攻撃するような人間にしか見えなくて、描き方が単純すぎるんですよ。
キムジオンを攻撃するキャラクター達を見ていると、そのキャラクター達に対してヘイトが溜まってきませんか?憎くありませんか?少なくとも私にはそう見えてしまったのですが。
今作が韓国ではフェミニズム小説というジャンルに分類されており、映画もこれに準ずる作りになっているのでしょう。
女性蔑視をする人間たちを許せないのも分かります。でも、だからといって対立構図を生むようなキャラクターを作るのは、いかがななものかと思います。
対立は新たな対立を生む。「ドゥ・ザ・ライト・シング」のラストを思い出してしまいました。対立を生むようなキャラの描き方は、あまり共感できるものではありませんでした。
キムジオンは単に女性の生き辛さを象徴するキャラクターとしてのみ描いてしまっては、もったいないように感じるんですよ。
先程もお伝えしたとおり、今作は「社会的孤立」が大きなテーマだと考えている私としては、今作を単にフェミニズム小説として描いてほしくはないんですよ。
女性が主人公で女性の生き辛さを描くのがメインテーマではありますが、本当に女性蔑視社会を変えたいのであれば、もう少し多様性のあるキャラの描き方をしてほしいと思いました。
まとめ
色々書いてきましたが、私の主張に強く反発する方も大勢いらっしゃると思います。
女性蔑視を生んだ韓国社会を描くことがメインの映画であることは間違いないのですが、丁寧にキムジオンの人生を描いてくれたことを考えると、モブキャラの描き方に納得がいかないのです。
キムジオンと母親の「わが娘よ・・」と掛け合うシーンだったり、本当に素晴らしいシーンがあるだけに、少し残念に感じます。
40点 / 100点