まえがき
新作映画を映画館で見ることもかなわず、今は自宅で思い思いの時間を過ごしている。
映画とはもう一つのライフワークとして、ラジオ視聴が趣味の私。
普段はTBSラジオばかりだが、ニッポン放送もオードリーのANNだけは欠かさず聞いている状態だった。
しかし、昨日になって「ナインティナイン岡村隆史のオールナイトニッポン」(以下、99ANN)が話題になっていることに気づいた。
どうやら、先週の99ANNにて、コロナと女性に関する不謹慎発言で大炎上しているようで、深夜ラジオを愛する私はいてもたってもいられなかった。
深夜ラジオを守りたい立場として
もうこれ以上、大好きなラジオを汚されたくない。
99ANNという伝統的な深夜ラジオが、深夜ラジオリテラシーを持ち合わせない正義の暴徒に攻撃されている。
許せない。
ラジオの言葉狩りが、また起こっていると危機感を覚えた。すぐさまTwitterで岡村隆史の擁護と深夜ラジオとは何たるかを投稿し続けた。無我夢中だった。
ラジオ好きとしては、ネットニュースとラジオの噛み合わせが実に悪いことを改めて実感してしまう記事。
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2020年4月30日
もう、ラジオを記事にしないでくれ。
岡村隆史氏「『困っている女性が風俗に』大変不適切で深く反省」遅すぎる見解表明と問題意識の希薄さ(藤田孝典) - Y!ニュース https://t.co/fF8W6NEpU1
岡村さんの風俗トークは今に始まった話じゃないし、ずっと前から取り上げている。
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2020年4月30日
この時期に不謹慎だと言う人もいるだろう。でも、そんな不謹慎さを味わうのが深夜ラジオの醍醐味じゃないのか?
俺の価値観、古いのか?
ラジオはテレビと違う。
ラジオはフリートーク中心でパーソナリティが考えていることを好き勝手しゃべれる場所なんだ。
今回の岡村隆史の発言内容は、公共の場では決して許されるものではなく、口に出すべきものでもない。しかし、不謹慎な発言も含む「個性」を出していくことが、ラジオのパーソナリティとしては正解だし、今後も深夜ラジオの勢いを止めないでほしい。
岡村隆史の風俗ネタは今回に限った話じゃなく、ずっと前から半ばライフワーク的に発言しているものだ。それが岡村のパーソナリティなのだから。
今回の不謹慎な発言もラジオ番組のネタとして、かつ岡村隆史のパーソナリティとして、どんな発言であろうと守られるべきだと思っているくらい、俺はラジオの表現の自由を信じている。
コロナでみんな苛立ちを感じているのは分かる。しかし、そのフラストレーションを岡村隆史と深夜ラジオ特有の空気感にぶつけるのはおかしい。
PV稼ぎのネットニュース、叩くネタを探し続ける正義の暴徒たち、ただ炎上ニュースに便乗する輩たちを、俺は許さない。
また、気になるのは今回の案件で叩いてる連中の大半は、おそらくちゃんとラジオを聞いていない。
映画を見ずに叩く奴と同じで、ラジオを聞かずに岡村を叩く奴も相当数多いのではないか?
岡村を叩くのも個人の自由だとは思う。ただ、叩くならちゃんと発言をラジオで聞くべきだ。それが叩く人間にとっては最低限の礼儀だろう。
5/1のANNは、岡村と矢部のパーソナリティを深掘りする神回に
そして、世間が注目した5/1の99ANN。
冒頭から謝罪する岡村隆史。
その声は芸人らしい力強いものではなく、弱々しく細った中年の声だった。
ここまでは予想通りの放送。しかし、放送開始30分後ほどで相方の矢部が登場。
最初は岡村の不謹慎発言を非難し説教をするも、途中から毛色が変わってきた。
なぜ岡村が件の発言をしてしまったのかを、岡村の過去の発言や行動を振り返ることで探っていくという、矢部にしかできない切り口でトークしていったのだ。
放送では、岡村に女性蔑視の傾向があったこと、女性蔑視をするようになったのは岡村個人の恋愛経験が背景にあること、女性に対して極度に距離を置いてきたこと、などなど岡村の女性観を深掘りしていた。
さらに、岡村が2010年にうつ病で休んだ後、病気の症状もあってか、岡村に対して誰も指摘できる者がいなくなったことで慢心が生まれてしまったと矢部が語っていた。
そして、矢部のトークは岡村の件の発言に留まらなかった。
青木裕子との結婚後99ANNを辞めて、テレビでも岡村と距離を置くようになった矢部。放送とハッキリと「仲が良くない」と発言し、ナインティナインのコンビ不仲についても語り始めたのだ。
ネットニュースでは岡村の件の発言しか話題にしていないが、実は放送の大半は岡村と矢部の関係性についてのトークが中心だったのだ。
矢部本人は「良い機会をもらった」として、これまで岡村に言えなかった不満を爆発させ、件の発言に至った岡村のパーソナリティを赤裸々に語っていった。
こんな矢部を見たことがない。こんな岡村も見たことがない。
テレビではタレントは演技をしていると、改めて感じさせられる放送だった。
笑いを取りに行く姿勢も全くなしで、すべて本音の大勝負。
聞いてるこっちがヒリヒリするくらいパーソナリティを突いた放送は、近年稀に見ぬ神回のラジオとなった。
こじらせ中年の危機が顕在化した瞬間
今回の岡村の発言は、矢部の解説を聞くとこの一言に尽きると思う。
こじらせ中年の危機が顕在化した瞬間であった、と。
過去には恋愛経験があるものの、大人の恋愛をせずに女性から距離を置き続けてきた中年男性が、女性に対して差別的とも取れる発言をしてしまったのが今回の事の本質なのだろう。
青木裕子アナと結婚し子供を授かった矢部。女性との本気の恋からは距離を置き続けてきた岡村。
お互い齢50手前にして、女性に対する考え方に差がありすぎるのだ。
これがパパになった男とおじさんになっても中二のままでいる男との差なのだろうか。
今回の問題は、単に女性蔑視だとか風俗業界への理解不足だとかで片付けて良い問題ではない。問題の本質は、こじらせ中年の危機をどう考えるかにあると思う。
個人的には、男も女も結婚する義務もないし恋愛する義務もないと思う。
生涯独身を貫く人の気持ちも分かるし、尊重したい。
しかし、異性と距離を置くあまり、異性に対して偏った価値観を持ってしまうのは危ない。偏った価値観は、時として人権を侵害してしまう。
過去に女性に対して辛い経験があり、以降女性との距離を置き続けてきた中年男性は、岡村以外にもいっぱいいるに違いない。
プライベートで女性と一切の接点がない中年男性は、女性を神格化したり自分と同じ人間ではないかのように捉えてしまうことも往々にしてあると思うのだ。何故なら、女性と真剣に向き合ったことがなければ、その本質も分かるわけがないのだから。
そして、岡村のようにこじらせてしまった中年と、今の時代どうやって付き合っていくのかが最も重要な議題ではないだろうか。
今回の問題を発端として、こじらせ中年と社会との関わり方について考えるべきだ。
岡村を降板すれば良い問題なのだろうか?
違う。
岡村を罰しても、こじらせ中年は世界にいくらでもいる。
人を切り捨てても社会は何も変わらない。
性善説を信じる私としては、今の岡村に寄り添い、何故このような発言をしてしまったか背景を知るべきだと強く感じる。
ネットニュースで偏向報道が強いが、どうかバランスの良い情報収集を願うばかりである。