Machinakaの日記

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映画「精神0」ネタバレあり感想解説と評価 演出なしの究極ドキュメンタリーが映す「生の偉業」

 
こんにちは! 
 
Machinakaです!! 
 
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この記事では、「精神0」のネタバレあり感想解説記事を書いています。
 
 目次
 

まえがき

 

 

今回批評する映画はこちら

 

「精神0」

 
 

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©2020 Laboratory X, Inc,「精神0」,2020.5.2仮設の映画館にて公開

 

 

皆さん朗報です!!!

 

 

コロナウイルスの影響によりほぼすべての映画館が閉まっている中、、

 

開いている映画館があるんですよ!!!!

 

しかも絶対にコロナウイルスの影響が及ばない感染ゼロの映画館、都道府県知事や自粛警察野郎にも邪魔されない休業ゼロの映画館を見つけちゃったんですよ。。。

 

その映画館の名前は、、

 

「仮設の映画館」

 

www.temporary-cinema.jp

 

 

はい、Webの映画館でございます。

 

え?動画配信とどこが違うの?って思うかもしれませんが、こんな時期だからこそ新作映画を公開し、鑑賞できる媒体に「映画館」と付いているだけで本当にありがたいと感じます。

 

鑑賞したら映画館にお金が入るので、映画館を応援したい私としてはこうした上映形式は大賛成なのです。

 

しかもニクいのが全国の劇場から好きな劇場を選んでから鑑賞料を払うという、ふるさと納税的なシステムになっているのもポイント!!

 

普段お世話になってるイメージフォーラムもいいんですけど、せっかくだから地方の映画館を選ぼうかなぁと目移りしてしまうのも仮設の映画館ならではの選択肢だと思います!!

 

 

 

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http://www.temporary-cinema.jp/seishin0/

 

 

はい、それでは想田和弘監督の新作「精神0」を、仮設の映画館で楽しんでまいります!!!!

 

 

 

 

 
 

あらすじ

  
・ドキュメンタリー監督の想田和弘が「こころの病」とともに生きる人々を捉えた「精神」の主人公の1人である精神科医・山本昌知に再びカメラを向け、第70回ベルリン国際映画祭フォーラム部門でエキュメニカル審査員賞を受賞したドキュメンタリー。様々な生きにくさを抱える人々が孤独を感じることなく地域で暮らす方法を長年にわたって模索し続けてきた山本医師が、82歳にして突然、引退することに。これまで彼を慕ってきた患者たちは、戸惑いを隠しきれない。一方、引退した山本を待っていたのは、妻・芳子さんと2人の新しい生活だった。精神医療に捧げた人生のその後を、深い慈しみと尊敬の念をもって描き出す。ナレーションやBGMを用いない、想田監督独自のドキュメンタリー手法でつくられた「観察映画」の第9弾。

eiga.com

 

 
 
 
 
 
 

「精神0」のネタバレありの感想と解説(全体)

 
・テロップなし
・作り手の介入なし
・長回しカットで編集も極力なし
 
これぞ真の記録映像=ドキュメンタリー! 
 
「観察映画」によってありのままに暮らす老夫婦を映し出す。 
 
「長い間生活を共にするおしどり老夫婦の幸せな生活を切り取った・・」といった特定のキャッチコピーはこの映画には存在しない。
 
極限まで作者の介入がない映像により、見る人によって映画の印象も見る目もストーリーも変わる、すべては味付け自由な新感覚のドキュメンタリー。
 
簡単な作業も難しい、正直見ていて常に不安になる老夫婦の生活を、この目で見届けよ。
 
 

 
 
 
 
 

 

これぞ老夫婦のリアル

 

2008年の「精神」にて精神科医の山本医師とその患者たちを、今作「精神0」は山本医師と妻の夫婦生活を中心に描いている。

 

80を超えても患者の前では気丈に振る舞う山本医師だが、病院から出ると普通の老人として生活する様子が垣間見えてくる。

  

ドキュメンタリー作品では近年、老夫婦にフィーチャした作品が発表されている。

「さよならテレビ」や「ヤクザと憲法」を製作した東海テレビの「人生フルーツ」や、韓国のドキュメンタリー「あなた、その川を渡らないで」など、老夫婦の心温まる生活といった特定のテーマ・切り口を持って作られている。

 


心温まる夫婦のドキュメンタリー!映画『人生フルーツ』予告編

 

 


映画『あなた、その川を渡らないで』本編映像

 

 

しかし、今作はそのようなドキュメンタリーの作り方の一切を撤廃し、特定のテーマ・ストーリーを決めずに撮影されている点で独特だ。いや、独特すぎると行った方がいいかもしれない。

 

 

 

 

 

今作の山本医師の夫婦も仲睦まじく、おしどり夫婦のように見えるのだが、妻の芳子さんはボケが進行しており、そもそも普通の生活を送るのが難しい状況になっている。もちろん、コミュニケーションを取るのも難しい。

 

「愛してますよおじいさん」といったセリフも出てくるわけもなく、意図的に仲良いイメージのシーンを見せることもない。

ドキュメンタリーとしては真っ当な作りなのだが、あまりに生の映像すぎて

 

 

「一体俺は何を見てるんだろうか」

「この映画は何が目的なんだろうか」

 

と、映画の着地点や着眼点が全くわからない状態で、鑑賞を試されるのが最も独特なポイント。

 

劇映画ばかり見ている人や普段ドキュメンタリーを見ない人、普段映画を見ない人には、「?」が浮かぶ映像になっていることは間違いない。

 

もはや監視カメラと言っても過言ではないような、極めて作り手の意図がカットされた撮影手法によって作られている。

作り手から質問したりはせず、被写体に声をかけられた時だけ答えるスタイルによって、出来るだけ被写体の生の姿を描こうとする。

また、テロップやナレーションも全くなし。

あまりにも生々しい描写によって、単に映像を見ても特定のテーマが分かるわけでもない。

 

しかし、その「?」の状態を観客が穴埋めすることで、どんな作品にも仕上がるようになっている。

味付けは観客自身によって決定される、極めて想像の余地が大きい作品になっている。

 

こうして書いていくと、本作は既存の老夫婦ドキュメンタリー作品のカウンター的な位置付けのようにも感じるのだが、監督がどれだけ意識して作ったのかは分からない。

 

 

 

生きることの大変さが、切実に確実に伝わる

 

特定のテーマを決めつけない作風によって、観客一人一人の解釈や印象が大きく異なる作品であることは先に伝えた。

 

では、私はどう感じたのか?

 

率直に言って、老夫婦の仲睦まじく愛らしい生活が伝わる映像というよりは、老夫婦の生活の大変さが目に染みる作品だった。

 

妻の芳子さんは自宅のドアを開け閉めすることも時間がかかり、夫の山本医師は少し歩いたり床の荷物を取ろうと屈むだけで息が上がってしまう。

 

普通のドキュメンタリーなら絶対にカットするところを、あえて見せることで「観察映画」としての純度を高めているのだが、見ているこっちは正直言って可哀想になってくる、見ているのが辛くなってくる。

 

ドアの前でしばらく立ち往生しているおばあさん、少しの運動で「ハァァァ」と息も絶え絶えになっているおじいさんがひたすら映る絵面になっているのだから、私の見方も概ね間違ってはないと思う。

 

しかし、どれだけ老夫婦が苦労していても、撮影をする想田監督は観察映画の作風を徹底するために老夫婦を助けることは基本的にしない。

 

正直、「監督、助けてやれよ!! 辛そうじゃん!!」と想田監督に対して怒りの念さえ感じる瞬間も、多々あった。

 

これほどまでに観察映画とは残酷無比なものなのか、、と思っていたのだが、映画後半になって想田監督の断固たる意思が揺らぐ瞬間がある。

 

山本医師と芳子さんと想田監督の3人で、山本医師の祖先の墓参りをするシーンがある。

 

山本医師が運転する車から降りる芳子さんが、家のドアよろしく車のドアを閉めるのを忘れてしまったのだ。

さらに、そのミスを山本医師も見抜くことが出来ず、「どうぞ車上荒らししてください」と言わんばかりの無防備状態になってしまう。

 

さすがに見るに見かねた想田監督が、「ドア・・」と言ってしまう瞬間だけは、作り手が唯一映画に介入したシーンだと思う。

 

監督の心情の変化というか、どこまでを線引きして映画に介入しているのかが見極められるシーンでもあり印象的だった。

 

 

 

前作との対応関係を探る

 

前作の「精神」は、精神科医とその患者たちの様子を中心に描き、ドキュメンタリー作品としては一定のまとまりを持っていたように感じる。

 

しかし今作は、率直に言って何をテーマにしているのかが実に分かりづらい。

もっと言えば、前作と今作との対応関係が分かりづらい。

 

単に山本医師と妻の生活を追いかけているだけなら、精神科医としての山本医師を描いた前作との関係はほとんど希薄になる。

 

なぜここまで老夫婦の辛そうな生活ばかりを描くのだろうか? 

今作の、監督なりのテーマは何だったのか?

 

それは映画冒頭、山本医師が病院で働いている時に患者に言った

「生きているだけで大変なんじゃ」

というセリフが大きなヒントになっていると感じた。

 

前作「精神」にて、山本医師の元へ訪れる患者のほとんどが自分の今の人生を否定し、命を絶とうとしている。ただただ生きることに喜びを感じていない人が多いのだ。

自分の人生を呪い、命を絶とうとしている患者と向き合うことに、山本医師はその人生をかけてきた。

 

 

生きるだけでも大変で立派だということを、山本医師は患者に伝えたい。

そこで、今作「精神0」によって自分が必死に生きているシーンを見せることによって、生きることの大変さと喜びを伝えたかったのではないか?

 

前作「精神」では、患者中心を描くことで「生の否定」が目立った。特にラストシーンにて、患者がスクーターを危なげに運転する様子は、患者が生を否定しているように感じてしまったからだ。

 

しかし今作「精神0」では山本医師が中心となり、「生の肯定」が強調される作品となったように感じる。ラストシーンは2人が手をつなぎ、一歩一歩確実に歩みを進んでいくところからも、これからも2人で強く生きていく意思の強さを感じた。

 

今作に山本医師が患者に言い続けてきたメッセージが内包されていると私は思う。生きてるだけで大変で、生きているだけで偉業なのだ。

 

ただし、観察映画のため想田監督と山本医師がどういう意図を持って撮影に臨んだかは、分からない。あくまで私の解釈である。

 

 

 

 

 

まとめ

 

ドキュメンタリー作品を見続けていると、時に作り手の演出が垣間見える瞬間がある。

ヤラセだと感じてしまうドキュメンタリーほど興ざめするものはないが、一方で演出のないドキュメンタリーは単なる記録映像で面白みに欠ける。

 

作品にどれだけ演出をつけるのか、劇映画と記録映像とのバランスが、ドキュメンタリーの面白さを左右すると言ってもいい。

 

その中で本作は極限まで記録映像の方に舵を取り、唯一無二の作品を作った。

 

見る人の中にはあまりに生々しい映像で驚いてしまうかもしれないが、これぞ真のドキュメンタリー=記録映像なのだと思う。

 

ぜひとも前作「精神」と合わせてご鑑賞を。

 

 

85点 / 100点 

 
関連画像

 

 

 
 
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