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映画「アナザーラウンド」ネタバレあり感想解説と評価 人生をさま酔うマッツ・ミケルセンのよい演技に注目

 
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この記事では、「アナザーラウンド」のネタバレあり感想解説記事を書いています。
 
 目次
 

まえがき

 

 

今回批評する映画はこちら

 

「アナザーラウンド」

 
 

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(C)2020 Zentropa Entertainments3 ApS, Zentropa Sweden AB, Topkapi Films B.V. & Zentropa Netherlands B.V.

 

アカデミー賞国際長編映画賞、受賞!!
 
このフレーズだけで、期待値が最大限まで高まってしまう。
 
もちろん、アカデミー作品賞も注目すべきなのだが、冷静に考えると国際長編賞を受賞する難しさは計り知れない。
 
各国から評価の高い映画が選出され、英語以外の映画という世界的に見れば圧倒的多数派の作品の中から1本のみ選出される。
 
もはや、作品賞を撮るよりも難しいのでは?
 
ただ飲むだけの映画にも見えるが、そんな映画にこそ面白さがある。
 
同じヨーロッパ映画に、「ワールズ・エンド」という作品があった。イギリスのパブでビールばかりを飲むといった素っ頓狂な内容だったが、なぜか最後はホロリとした・・はずである。

 

 

 

とにかく、飲みまくる映画は成立させること自体が難しいはず。どんな映画になってるか非常に楽しみだ!

 

それでは「アナザーラウンド」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。

 

 

 

 
 

あらすじ

  
・デンマークを代表する人気実力派俳優のマッツ・ミケルセンが、アカデミー外国語映画賞にノミネートされた「偽りなき者」のトマス・ビンターベア監督と再タッグを組んだ主演作。冴えない高校教師のマーティンと3人の同僚は、ノルウェー人の哲学者が提唱した「血中アルコール濃度を一定に保つと仕事の効率が良くなり想像力がみなぎる」という理論を証明するため、実験をすることに。朝から酒を飲み続け、常に酔った状態を保つと授業も楽しくなり、生き生きとするマーティンたち。生徒たちとの関係も良好になり、人生は良い方向に向かっていくと思われた。しかし、実験が進むにつれて次第に制御がきかなくなり……。「偽りなき者」でもミケルセンと共演したトマス・ボー・ラーセンやラース・ランゼらがマーティンとともに実験を行う同僚教師を演じた。脚本に「偽りなき者」「ある戦争」のトビアス・リンホルム。新型コロナウイルスの影響で通常開催が見送られた2020年・第73回カンヌ国際映画祭のオフィシャルセレクションに選出されたほか、第78回ゴールデングローブ賞の最優秀外国語映画賞にノミネート、第93回アカデミー賞でも監督賞と国際長編映画賞の候補に挙がり、国際長編映画賞を受賞した。

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「アナザーラウンド」のネタバレありの感想と解説(全体)

 

 
 
 

 

予想の遥か斜め下を行く、酒の恐怖を味わう映画

 

予告編からは「いぇーーーい!!飲もうぜぇぇい!!」「ふぉおおおおお!!アゲ!アゲ!!」なノリノリな酒飲み映画かと思っていた。

基本的にはアッパーで、マッツ・ミケルセンが飲みまくって周りの人を全員幸せにするような、そんなポジティブな映画だと。

 

まるでデンマーク版「ハングオーバー」のような、アホな飲み方をする映画だとも。

 

 

 

が、全然違った。良い意味で予想の遥か斜め下を辿った。

 

酒のメリットもデメリットもすべて盛り込み、酒の恐ろしさもきちんと伝えている点が、他のアルコール映画とは一線を画すところだ。

 

マッツ・ミケルセンは歴史の教師で、仕事も家庭も何もかもがやる気のない生活を送っている。周りの教師たちも同じような境遇で、全体的に覇気が感じられない。

 

唯一の楽しみは美味い酒を飲むことで、その時だけは明るく陽気に過ごせる彼ら。

その時、「フィン・スコルドゥールという哲学者が、血中のアルコール濃度は0.05%が最適である」という謎の理論が仲間の哲学教師から放たれる。

 

既に酔いが回っているオヤジたち。ノリでその理論を実践しようと、まるで飲みサーのごとく定期的に集まって酒を飲み続ける。

 

普通の映画ならば飲んで騒いでを楽しく描くものだが、今作はそんな楽観的な映画ではない。

 

酒を飲んで飲んで飲んで飲んで。もともとの取り決めであった0.05%を完全に超えて、酒に溺れてしまうブルーな話になっていく。

水を飲むシーンなんて、ほとんどなかった。

 

一番思い出したのは、ビリー・ワイルダーの「失われた週末」。

アルコール中毒の男が店を見つける度に酒を買い漁り飲んでいく話で、酒の恐怖を味わえる一作だ。

 

失われた週末(字幕版)

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  • レイ・ミランド
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そう、今作は酒の怖さを味わう映画なのだ。

 

予告編やポスターからは想像がつかないが、今作は酒に対してきわめて真摯に向き合っている。

一人あたりのワイン摂取量は、なんと世界4位。

アルコール依存度が深刻な国だからこそ、このような映画が作られたのかもしれない。

 

デンマークの飲酒の習慣とアルコール依存 - 世界ランキング

  

また、今作はもう一つの恐怖を描いている。

それは、マッツ・ミケルセンたちオヤジ達が「中年の危機」に陥っていること。

中年の危機とは、中年の男性特有のうつ状態や不安障害のことであり、何をするにもやる気がなく、心が不安定になる症状のことを指す。

 

家事に、仕事に、ストレスの貯まる社会の中で、彼らは自身のアイデンティティを失っていく。

 

そんなところに、酒の魔の手が迫っていく。正直、彼らは酒以外でも良かったのだと思う。現実を忘れられる何かが欲しかったのだと思う。

 

ケビン・スペイシーが「アメリカン・クライシス」で若い女に溺れたように、彼らも何か「溺れる」ものが欲しかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

マッツ・ミケルセンに酔いしれる映画

 

酒に呑まれまくるオヤジたちの映画だが、素晴らしいのはマッツ・ミケルセンの酔い(良い)演技。

 

決して自分からグビグビ飲むわけではないのだが、仲間に勧められて無言で酒を飲む。

 

デンマークの習慣なのか、ハイボールやビールなど薄い酒は飲ませない。飲むのはワインかウイスキーロック。なんてハードなんだ。。

しかし、嫌な顔ひとつせず飲みまくるマッツ。そして次第に顔が赤くなり始め、、

 

何故か涙を滲ませる・・・

 

このときのマッツの表情に、思わず惚れてしまった。

涙をボロボロ流すわけでもなく、ただ瞳に涙を溜め、黙って酒を飲みつづけるマッツ。

色っぽくて淋しげなマッツがそこにいた。

 

「・・・マッツ、何があったんだい?」と思わず声をかけたくなった。

すると、横の仲間が既にそのような問いかけを始めていた。そうだよな、あんなマッツほっとけないよな?

 

マッツが酔いに酔いつぶれるほど、何故か美しさを増してゆくマッツ。

 

もしかしたら、彼の魅力に酔いしれる映画なのかも知れない。

 

 

 

 

まとめ

 

思ってたのと全然違った。

酒の恐怖とマッツに酔いしれる映画だった。

 

予告編にあった通り、湖でひたすら酒を飲むレースにマッツとクラスメイトが出場して優勝してめでたし、めでたしみたいな映画かと思っていたので、少し肩透かしを食らった感は否めなかった。

 

が、自分の予想と外れたからといって、低評価をつけたくない。

 

マッツ・ミケルセンの泥酔しながらも何故か美しさを保ち続ける名演技や、デンマークの知られざる飲酒事情が知れるのも素晴らしい。

 

驚いたのはオッサンではなく、未成年の方の飲酒事情。

デンマークは全体的に飲酒傾向が高いのだが、特に未成年の飲み方が「ひどい」。

 

なんと未成年で酒を飲まない人の割合は10%台。一気飲みをする人の割合は70%。。

一体全体、どんな国なんだ。それ以外にすることがないのか?

 

 

日本とは違い、北欧は日照時間も短く、部屋に籠りがちであることも、飲酒量を高める原因なのかも知れない。

 

ハイボールとチューハイで満足する自分としては、にわかに信じられない飲酒事情だった。。

 

90点 / 100点 

 

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