まえがき
今回批評する映画はこちら
「憐れみの3章」
ランティモス、最新作ッ!!!!
なんだかんだ毎回見に行ってます。
不条理コメディでお馴染みですが、今回はポスターがより一層奇特な感じ。
俗な言い方だけども、不条理な作風である以前にエログロ描写が特徴的ですよね。
人の目を奪うのが上手い。だからこそ、ここまで売れっ子になってると思うのですが。
さて、今回エマストーンはどこまで見せてくれるのか!
それでは「憐れみの3章」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。
あらすじ
「女王陛下のお気に入り」「哀れなるものたち」に続いてヨルゴス・ランティモス監督とエマ・ストーンがタッグを組み、愛と支配をめぐる3つの物語で構成したアンソロジー。選択肢を奪われながらも自分の人生を取り戻そうと奮闘する男、海難事故から生還したものの別人のようになってしまった妻に恐怖心を抱く警察官、卓越した教祖になることが定められた特別な人物を必死で探す女が繰り広げる3つの奇想天外な物語を、不穏さを漂わせながらもユーモラスに描き出す。
「哀れなるものたち」にも出演したウィレム・デフォーやマーガレット・クアリーのほか、「パワー・オブ・ザ・ドッグ」のジェシー・プレモンス、「ザ・ホエール」のホン・チャウ、「女王陛下のお気に入り」のジョー・アルウィンが共演。3つの物語の中で同じキャストがそれぞれ異なる役柄を演じる。
「ロブスター」「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」でもランティモス監督と組んだエフティミス・フィリップが共同脚本を担当。2024年・第77回カンヌ国際映画祭でプレモンスが男優賞を受賞した。
「憐れみの3章」のネタバレありの感想と解説(全体)
「#憐れみの3章 」鑑賞!
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2024年9月27日
これぞまさしく3連勝ならず。1章、2章ともにランティモスらしい不条理なサスペンス。しかし3章はちょっともう...限界です。
人生、欲望、生死を過剰にコントロールしようとす人間の愚かさと恐怖が滲み出る。
...けど、2つで充分ですよ! pic.twitter.com/RjagOeJNEF
2つで充分ですよ!
いやー、長い。わかっちゃいたけど長かった。
流石に2時間40分越えはしんどかった。
同じく短編3部作でいうと濱口竜介の「偶然と想像」があるけども、こちらは121分。
エンドロールを除けば1本あたり40分未満。
これくらいがちょうどいいんだよなぁ。
ランティモス作品の中でも一番長い上映時間。ここまで長いのやれるなんて、よっぽどの信頼があってこそなんだろうけども。
ただ、私は少し頭を抱えてしまった。
1章、2章までは面白かった。
ただ、3章は流石に長かった。
単に上映時間の問題じゃない。映画で大事なのは体感時間で、次第に没入度が下がっていったのが原因なんだと思う。
全章を通してエマ・ストーン、ジェシー・プレモンスがメインキャラとして出ずっぱり。
ある時は夫婦、ある時は共犯者、ある時は・・・ビジネスパートナー?
設定は違えど、同じ役者が演じることで3章に共通点が浮かび上がってくる。
これが映画に良い影響を与えたかは別として、オムニバスならではの楽しさを満喫できたのは確か。
例えばジェシー・プレモンス。最初はガリガリで髪もフサフサだったのに、章が変わると急に太ったり坊主頭にしたり、変幻自在とはよく言ったものだが監督のオモチャにされているような笑。
頭髪はともかく、体型は特殊メイクじゃ難しいところ。
実際の肉体であるならば、特定の体型の時に複数の章を同時に演じたことになる。
そっちの方が効率的だもの。
そう考えると、役者というものは本当に恐ろしい。
どの章も同じ役どころではなく、それぞれの役でバックボーンも仕草も目的も違う。
なのに、なぜここまで完璧にこなせるのだろうか。
IMDBの情報によると、ジェシー・プレモンスの役をクリスチャン・ベールも狙っていたらしい。激痩せ・激太りを自由自在にこなす彼だからこそ、狙っていたのだろうか。
余談だが、2章はマット・デイモンにしか見えなかった。
一方のエマストーンは、全章を通して男性に虐げられる役になっている。
特に1章ではウィレム・デフォーに操られているところから、「哀れなるものたち」を思い出さずにはいられない。というか、同じじゃないか笑
よく言えば拡張、悪く言えば重複。過去作との共通点もガッツリ見えてくる。
そして2章は夫のジェシー・プレモンスを誘惑・挑発し、カニバリズムを使って彼の自制心を破壊しようとする。まぁ素っ頓狂な話だったけども、短編ならではのスピード感とカニバリズムも手伝って、画的な衝撃性が高評価に繋がったのかも。
3章は、、、ミッドサマーのような設定で面白さはあったけども、短編の割に情報が少し多かったようにも思える。
人々の罪深き欲望
全章にわたって描かれていた通り、今作は人々の愚かなまでの欲望を非情に描き切っている。
1章は権力者ウィレム・デフォーが他人の人生をコントロールしようとする「支配欲」
2章はエマ・ストーンの「色欲」、ジェシー・プレモンスの「破壊衝動」
そして3章は生死を操ろうとする「傲慢さ」と言えるのかも。
キリスト教の7つの大罪はあまりにも有名だが、もしかしたら今作でも引用しているのかもしれない。
例えば1章では、より強烈に7つの大罪との関係が大きい。
ウィレム・デフォーは、プレモンスに「太れ」、「セックスしろ」と指示するが、物語的な必然性は全くない。
7つの大罪でいうところの「暴食」や「色欲」を表現しているのかもしれない。
ウィレム・デフォーに見放されたあと、「傲慢」な態度で妻に本音をあっさりとぶちまけてしまう。
妻が消えた後、「怠惰」な生活を過ごしてしまうも、「貪欲」に彼の元へアタックする。同じくウィレム・デフォーに指示されるエマ・ストーンに「嫉妬」する。
ランティモス監督は、欲望の赴くままに行動した人間の末路をユーモラスに描く天才なのかもしれない。
7つの大罪といえば、デビット・フィンチャーの「セブン」があまりにも有名だが、似たような題材を扱っているのに全くテイストが異なるのも面白い笑。
まとめ
3章は多いですよ!2章で充分ですよ!
95点 / 100点