まえがき
今回批評する映画はこちら
「エジソンズ・ゲーム」
大作大作ぅぅ!!!
「イミテーションゲーム」の時はコンピュータの礎を作りナチスの空襲を防いだアラン・チューリングを演じました。
そして本作ではなんとエジソン!! なんかどんどんスケールが大きくなってまいりました!
エジソンといえば電球を開発した人で有名ですが、実は「映画の父」としての側面を持っていたことをご存知でしょうか?
撮影機器や映写機の特許を持っていたのですが、、それがないと今の映画って絶対に成立しないですし、というか映像自体があったか分からないし、、
偉大です!!
これ以上情報がないのでせめて文字おっきくしてみました。
はい、今度はどんなゲームを見せてくれるんでしょうかね。
それでは「エジソンズ・ゲーム」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。
あらすじ
・発明王エジソンとライバルたちがアメリカ初の電力送電システムをめぐって繰り広げたビジネスバトル=電流戦争を映画化。「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」のベネディクト・カンバーバッチがトーマス・エジソン、「シェイプ・オブ・ウォーター」のマイケル・シャノンがライバルのカリスマ実業家ジョージ・ウェスティングハウスを演じ、共演にも「女王陛下のお気に入り」のニコラス・ホルト、「スパイダーマン」シリーズのトム・ホランドら豪華キャストがそろった。19世紀、アメリカは電気の誕生による新時代を迎えようとしていた。白熱電球の事業化を成功させた天才発明家エジソンは、大統領からの仕事も平然と断る傲慢な男だった。実業家ウェスティングハウスが交流式送電の実演会を成功させたというニュースに激怒したエジソンは、ネガティブキャンペーンで世論を誘導。事態は訴訟や駆け引き、裏工作が横行する世紀のビジネスバトルへと発展していく。監督は「ぼくとアールと彼女のさよなら」のアルフォンソ・ゴメス=レホン。
「エジソンズ・ゲーム」のネタバレありの感想と解説(全体)
文芸映画をよくぞここまで
いやぁ、、、大満足です!!
大満足です!!
エジソンとライバルのジョージを巡る電力争いを描いた電気の伝記映画。
エジソンもジョージもお互い経営者ということもあり、インテリ層ということもあり、派手なアクションはなく会話劇が中心。
エジソンで、しかも電気を発明する映画と聞いてたので・・・
「エジソンズ・ゲーム 〜発明王エジソン、爆誕!!」
と勝手にサブタイトルを付けておりました。
が、本作は電気を作る話ではなく、電気を作った後の話だったんですね。僕の勝手な期待は完全になくなってしまったわけです笑
せっかく電気が街中に灯るシーンも、過度に盛り上げず派手にすることもなし。
あんだけ人が集まってたのに、初めて電気が付くのに・・「アルマゲドン」みたいにド派手な歓声を上げる演出もないんです。
が、そんな派手な演出は本作には無用の長物でございました!
後述しますが、カメラワークや印象的な色の使い方で映画に良い意味で「不安定さ」や「違和感」、そして「躍動感」を与えて、場面としては物静かな会話もシーンとして見ると非常にワクワクする映画となっていたのです!
これだけ画の演出が上手いと、変に盛り上げる必要はないんですね。
エジソンとジョージの電気シェアを巡る争いを、2人のそれぞれの事情を濃厚に描写しながらも説明過多になることなくスムースに物語っていくんですが、それだけでも十分に面白い!
マイケル・シャノンがライバルと聞いて、「シェイプオブウォーター」ばりにエジソンに非道の限りを尽くすと思ってたんです。
だけど、この映画を見る限りエジソンもジョージもどっこいどっこい。
というか・・・エジソンの方が悪どいじゃん!?
と思えるシーンもたくさんあったのが意外で。
ジョージの勧める交流の送電方式を「人を殺しかねない」とネガティブキャンペーンを自ら実践し、何が何でも自身の直流を貫こうとするんですよね。
エジソンは直流送電のごとく真っ直ぐな人なんですよ。だけど真っ直ぐすぎるがあまり、すぐ訴訟やネガキャンに走ってしまうw
確かに電球や蓄音機や電話など、電気に関するあらゆる特許を持つエジソンが他者に技術を奪われていくのは可哀想でもあるんですが、あまり可哀想に見せないんですよ本作は笑
決してエジソンを善、ジョージを悪とすることなく、良い面も悪い面も両方見せてくれたのが史劇として正しい見せ方だと強く感じました。エジソンさん、結構クセの強い性格だったらしいですよ笑
一方のジョージは手を変え品を変え、会社をエジソンに売ると言ったり、最後にはエジソンに「君と組みたかった」と言ってみたり、、
こじつけかもしれませんが、ジョージは言うことや行動がコロコロ変わる変化球タイプで。まさに電圧・電流が変動する交流送電を勧める人物にピッタリなキャラをしてると思いました。
送電方法の違いとキャラの違いを結びつけ、対照的なイメージに仕上げていく演出をしてるように感じ、練りに練られた脚本だなぁと思わず唸ってしまったのです。
また余談ですが、蓄音機で録音された妻の声を聞くエジソンの姿が見てて実に切なかったです。何度も何度も同じ声を聞いて、、ねぇ。。
蓄音機で意中の女性の声を何度も聴くシーンって映画では珍しくて。個人的にはオードリー・ヘプバーンの「昼下がりの情事」を思い出しました。
エジソンが発明に挑む原動力は妻の病気が関係していたなんて、単にエジソンを字面で調べるだけでは決して見えてこないですよね。
私の知識不足もありますが、「発明王」という冠がついているだけあって、エジソンって破天荒で過激な性格で、独身なイメージがあったんですよ。
極端ですけど、エジソンはBTTFのドクみたいな人だと、人物像を勝手に描いてましたw
ちゃんと結婚して家族もいて、発明だけでなく経営もして。。
すごい人だったんですねぇ。
カメラワークで映画に躍動感を
あと目を見張ったのはカメラワーク。
カメラをまっすぐに構えることなく、基本的に斜めな構図で人物や風景を捉えておりました。斜めな構図って、どこか不安定な印象を与えるんですよね。
電気が世界で初めて発明・社会実装され、街に火が灯るというポジティブなイメージだけでなく、電気椅子といった死の道具にも使われるネガティブなイメージも本作では丁寧に描いており、電気の使われ方への危惧や、直流・交流の送電方式の覇権争いなど、本作におけるあらゆる不安定な要素をカメラワークで表現していたと思います。
また、目立ったのは上から撮影したり、下から撮影したりするカメラワークが多かった点。
上から人を撮ると、当然ながら人が小さく映り、また神の視点である事から写っている人間を丸裸にしているような印象を与えるんです。
エジソンという無敵感のあるキャラクターを上から撮る事によって無防備な瞬間も見え、蓄音機のシーンなどキャラの弱さを見せるための補助線になっているように感じました。
最後に、目立ったのはシンメトリーな構図。
本作は、
・電気の持つ負と正の側面
・
色めがね映画評論:「赤色と英題が示すもう一つの戦争」
はい、最近頻繁に書いております色めがね映画評論でございます。
本作を見ていて一番印象的だった色は、「赤色」
・マイケル・シャノンの赤い服
・モルガンの部屋は一面赤い壁
・赤いライトが全画面に照らされる独特な空間演出
・ビリヤードの玉の8割が赤色
などなど、本作で目立つ赤色の数々。。
この映画は明らかに赤色を強調しているのです。適当に赤色を使っているわけでなく、かなり意図的に赤を強調している。
先に書きましたが、本作は決して派手な演出をする映画ではないんです。
これは必ず意図がある。
赤色が何かを伝えようとしている。。
そう感じ、私は色の声を聞こうと思いました。
そして、ある仮説が浮かび上がりました。
Twitterに先んじて書きましたが・・・
#エジソンズゲーム 鑑賞
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2020年6月19日
以下、劇中で印象的な「赤色」の考察
・エジソンが黄、ジョージが赤で電気シェアを競う地図の赤分布がトランプ選挙の地図と酷似
・ジョージのテーマカラーは赤
・トランプも赤
・英題がCurrentWar→現代の戦争にも取れる
・ラストのフェンス発言→壁
赤のメタファー恐るべし pic.twitter.com/X3a2DlJM6r
本作の赤色によって電力戦争のみならず、2016年のアメリカ大統領選挙というもう一つの戦争のメタファーを表現しようとしたのではないか、と。
はい、これだけだと意味不明なので順を追って説明します笑
まず、気になったのは本作のこういった赤の使い方です。
(C)2018 Lantern Entertainment LLC. All Rights Reserved.
全画面が真っ赤。まるで「パリ、テキサス」の全画面緑色のような、非常に目立つ赤色の使い方です。
加えて、ジョージの服も赤色に染められており、最初は赤色=ジョージのテーマカラーかと思っていたんです。
(C)2018 Lantern Entertainment LLC. All Rights Reserved.
が、黄色と赤色に照らされるアメリカの地図を見て、赤は単にジョージのテーマカラーじゃないと感じました。
これはエジソンとジョージの電力シェアを表した地図ですけど、この画がすごく違和感があったんです。
エジソンの勢力分布は電力を表す黄色なのに、なぜジョージのは黄色と類似した赤色なんだろうって。黄色と赤色、どちらも危険を表す色です。
対立関係を表すのであれば、正反対の色を使ったほうが分かりやすいのに。
なぜこの画で、赤色を使う必要があったのだろう、と。
(C)2018 Lantern Entertainment LLC. All Rights Reserved.
この赤の分布を見て、思い出す地図が一つありました。
それは2016年アメリカ大統領の選挙結果を表した地図。
赤色がトランプ大統領の獲得した地区なんです。トランプが赤色のネクタイや帽子を被るのは、共和党や自身の選挙カラーを表す色なんですよね。
この画を見て、↑に示した劇中の地図と、赤色の分布が似ているように感じました。
(C)2018 Lantern Entertainment LLC. All Rights Reserved.
エジソンとジョージ、2人の対立する主張、からの電力シェア争い。
そして、英題が「Current War」であり、本来の意味では電流戦争。
しかし、Currentは現代という意味でもあるので、「現代の戦争」とも捉えられる。
最後にエジソンとマイケル・シャノンとで、2人の争いを「フェンス」に例えて、壁を作ることを否定する。
なぜ最後の最後に壁の話をするんだ、、
これはもう、偶然ではないと感じました。
再掲しますが、
本作の赤色によって電力戦争のみならず、2016年のアメリカ大統領選挙というもう一つの戦争のメタファーを表現しようとしたのではないか、と感じたのです。
エジソンとジョージがやってることって、一種の選挙なんですよね。
直流と交流。それぞれのマニフェストがあり、相手に対して徹底したネガティブキャンペーンを行って、マスコミ向けの記者会見シーンもふんだんにある。
一見すると伝記映画で今更エジソンかよって思うんですが、ちゃんと現代にも通じるメッセージが、この赤色のメタファーに込められていたように感じます。
作り手がどれくらいメッセージを込めたか分かりませんが、最後の「フェンス」の下とかも、トランプ大統領の「壁」を意識したように感じたんだよなぁ。
信じるか信じないかはあなた次第ですが、私にはトランプ大統領選に思えて仕方ありませんでした。
余談ですが、ジョーダン・ピールの「Us」でも最後にトランプ大統領の「壁」を匂わせるシーンがありましたね。
まとめ
はい、やはりカンバーバッチの伝記映画にハズレなしの大満足できる作品でございました。
皆さんも次回ご覧になる際は、「赤色」を中心に見ていただければと思います。
90点 / 100点
