- まえがき
- あらすじ
- 「フリー・ガイ」のネタバレありの感想と解説(全体)
- ゲームと映画の見事なハイブリット
- 自由の希求こそ、アメリカンドリームそのもの
- ハリウッドによる「なろう」系ストーリー
- 小ネタ解説
- まとめ
まえがき
今回批評する映画はこちら
「フリー・ガイ」
それでは「フリー・ガイ」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。
あらすじ
・「ナイト ミュージアム」のショーン・レビ監督が「デッドプール」のライアン・レイノルズとタッグを組み、何でもありのゲームの世界を舞台に、平凡なモブキャラが世界の危機を救うべく戦う姿を描いたアドベンチャーアクション。ルール無用のオンライン参加型アクションゲーム「フリー・シティ」。銀行の窓口係として強盗に襲われる毎日を繰り返していたガイは、謎の女性モロトフ・ガールとの出会いをきっかけに、退屈な日常に疑問を抱きはじめる。ついに強盗に反撃した彼は、この世界はビデオゲームの中で、自分はそのモブキャラだと気づく。新しい自分に生まれ変わることを決意したガイは、ゲーム内のプログラムや設定を無視して勝手に平和を守り始める。共演にテレビドラマ「キリング・イヴ」のジョディ・カマー、「ジョジョ・ラビット」のタイカ・ワイティティ。
「フリー・ガイ」のネタバレありの感想と解説(全体)
「#フリーガイ」久々!満席の劇場で観賞!
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2021年8月13日
レゴムービーのエメットのような超モブキャラがなぜか主人公に⁉️
モブを想う気持ちは他者を想う気持ちに繋がるハートフルなコメディ映画!
ディズニー資本だからこそ出来るマーベル&スターウォーズネタもアガる!
チャニングテイタムの使い方が抜群で爆笑w pic.twitter.com/w08sLmHcKh
ゲームと映画の見事なハイブリット
デッドプールの製作陣と主演で贈る夏休みに最適な一本!
ゲームが得意とする奇抜な設定を上手く映画に取り込み、ゲームと映画のハイブリットな作品に仕上がった。
冒頭のスローモーションや、本筋とはあまり関係ない謎のコントシーン、パロディネタの多用など、デッドプールでの演出を下敷きにしながらも、自由を求めて冒険するフロンティアスピリットに溢れたアメリカを象徴する映画だった。
褒めた直後にこんな発言をして申し訳ないが、この映画は、とにかくうるさい。
ゲーム用に味付けされた映像や音楽は映画用にしてかなり刺激が強く、まるでマイケル・ベイの映画のような派手さで、観賞後は疲労感を覚えるほどだった。
そもそも、描こうとしている世界観が非現実的なのだ。
グランドセフトオートのような何でもありの世界を映画で、しかも実写で描くのだから、街中で銃声は当たり前。
常に破壊と殺戮が繰り返されている街で、主人公のライアンレイノルズは飄々と生活を送る。このミスマッチ感が、意外にも爆笑を誘う結果となった。
どれだけ練習したか分からないが、「これが普通の生活ですけど、何か?」と言わんばかりに飄々としているライアンレイノルズの表情は見るだけで笑える。
ゲーム用の濃い味付けの映像と音響、役者は落ち着いた演技を見せることで、コメディ映画に必要なミスマッチ感が生まれており、ゲームと映画のハイブリッドが大きな効果を挙げている。
また、後半になると何でもありのフリーシティは、フリーライフという新しいジャンルのゲームに変えられる。
そのゲームのプレイスタイルは、ただ主人公ガイを鑑賞すること。
グランドセフトオートのような自由なプレイスタイルから一転して、ただ見るだけの世界に変わり、一見退化したようにも見える。
しかし、鑑賞に徹する行為は映画を鑑賞することに他ならない。ゲームを尊重しながらも、最後は映画を見ることへの賛歌にも繋げていたのが上手い。
ゲームで何でも出来る時代だからこそ、ただ観るだけの映画があってもいい。
ただ見守るだけで、こんなにも幸せな時間が流れる。
映画ファンで幸せだと感じたラストであった。
自由の希求こそ、アメリカンドリームそのもの
これまでも「モンスターハンター」や「名探偵ピカチュウ」などゲームが原作の映画はあったが、完全オリジナルのゲーム「フリーシティ」が舞台。
グランドセフトオートのような、何をやっても許されるオープンワールドなゲームで、オンラインで複数のプレイヤーが縦横無尽に遊べるゲームとなっている。
何をしてもお咎めなしの世界だからこそ、あえて品行方正に行動するモブキャラを主人公に置き、ゲームであっても人として正しく行動することが根底に描かれている。
アメリカでゲームを扱う映画の場合は、必ずと言っていいほど倫理教育的なメッセージが描かれていることが多いのだが、今作も子供たちに向けて優しく作られている。
そんな作り手たちの想いを背負う主人公は、品行方正とは言えない「デッドプール」で制作・主演を務めたライアン・レイノルズ。
彼が演じる「ガイ」はまるで「レゴムービー」のエメットのごとく、フリーシティ上で完璧すぎるほどのモブキャラを演じる。
毎朝同じ時間に、同じ服を着て、同じコーヒーを頼み、いつもニコニコ笑っている。彼の役割は銀行員。ゲームのミッションの地点になっている関係で、毎日のように銀行強盗に遭う。
意味が分からないかもしれないが、これが彼の日常。
しかし、ある日突然、ガイの日常に変化が訪れた。
あるプレイヤーの女性に一目惚れしてから、いつもの日常が劇的に変化していく。
宣伝では「ヒーロー」と言われているが、彼の行動原理はあくまでも他者への興味だったり想いやりに基づいており、ヒーローになりたいという願望は明言されない。
あくまでも彼は「フリー」になりたいだけ。モブキャラが持つボンクラな発想。これで週人口が務まるのかと不思議に思うが、プログラムで決められた行動や言動しかできないモブキャラにとっては、彼の自由願望は最高の幸せ。
また、イギリスから締め付けられ、自由を求めて独立したアメリカの姿と重なる。
ガイの夢は、アメリカンドリームそのものなのだ。
オンラインゲームが舞台で超現代的な内容に思えるが、テーマはアメリカ建国時に通じるものとなっている。
ハリウッドによる「なろう」系ストーリー
滅多に取り上げられないモブキャラを主人公にした作品は、日本では主にアニメで注目を浴びている。
「転生したらスライムになった件」や「この素晴らしき世界」など、勇者以外のキャラクターを主人公に設定し、いわゆる「なろう系」とも言われている。
今作の物語も、モブキャラから主人公に「なろう」とするものになっており、日本で流行っているなろう系と近い。
ゲームで全世界中が主人公になれる時代だからこそ、なろう系の映画が作られるのも当然なのかもしれない。
日本との親和性が高いこともあってなのか、それともお盆休みが影響してるのか分からないが、劇場は満席だった。
小ネタ解説
デッドプールよろしく、今作はパロディネタが散りばめられているので、少しばかり解説したい。
・40歳の童貞男
主人公ガイをイジる謎のこのワード。
実は2005年にスティーブカレルが主演した映画のタイトルに基づいている。日本語吹き替えはどうなっているか分からないが、タイトル通りに言ってくれることを願う。
・チャニングテイタムいじり
隠されたコードを見つける道中、長めの尺を取ってイケメンのマッチョをイジるシーンがある。まるで従順な犬を見ているようだった。
彼はチャニング・テイタムという役者で、イケメンにも関わらず何故かいろんな映画でイジられまくっている。
今作も彼のイジり芸が炸裂していて、相変わらずのイジられ方で爆笑を誘っていた。
ちなみに、彼のイジられ芸で一番好きなのは「This is the end」で悪役の犬と成り下がるシーン。犬というのはメタファーでも何でもなく、文字通り「犬」となっている。
・スターウォーズ、マーベル映画のモロなパロディ
ラストでスターウォーズやキャプテン・アメリカの盾が出てくるシーンを見て、一瞬驚いた人も多いのではないか。
デッドプールを製作した当時は20世紀フォックスが配給していたが、ディズニーに買収され20世紀スタジオとなった現在では、今作もマーベルやスターウォーズと同じ配給会社になった。
公式のパロディとなっているのだ。
まとめ
ハリウッドによる「なろう」系ストーリーのような、我々一般人=モブキャラにも刺さるお話。
少々冗長な印象があるが、それもデッドプール製作陣の印だろう。
冷静に考えればチャニングテイタムのシーンなど必要ない。
が、無駄にも見えることがコメディとしては大事な要素になる。
次回作があるとは考えにくいが、これからもデッドプール製作陣、ライアンレイノルズに期待したい。
91点 / 100点