- まえがき
- あらすじ
- 「マトリックス レザレクションズ」のネタバレありの感想と解説(全体)
- 往年のマトリックスが文字通り「再生」する物語
- 没入感と引き換えに、犠牲となった時間
- 純粋に考えれば、実は観る前からネタバレしていた
- 答えはマトリックスの外側にある
- まとめ
まえがき
今回批評する映画はこちら
「マトリックス レザレクションズ」
昔見たファンは必ず食い付くだろうし、マーケティング的には鉄板なんだろうね。
ただ、大体そういう類の作品は全然知らない監督が担当して過去作の監督ではないことが多くって、つまらないことが多いんだよね。
ただ、今回は初期作と同じくウォシャウスキー兄弟(今は姉妹といった方が良いのか?)のラナ・ウォシャウスキーが監督を務めているので、かなり期待したいところだ。
今になって一体、マトリックスの歴史に何を刻もうとしているのか!?
それでは「マトリックス レザレクションズ」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。
あらすじ
・1999年に公開され、革新的な映像技術とストーリーで社会現象を巻き起こしたSFアクションの金字塔「マトリックス」。2003年に公開された続編「マトリックス リローデッド」「マトリックス レボリューションズ」で3部作完結となった同シリーズの新たな物語を描く、18年ぶりとなるシリーズ新章。主人公ネオを演じるキアヌ・リーブスが過去作と変わらず同役を担当するほか、トリニティー役のキャリー=アン・モス、ナイオビ役のジェイダ・ピンケット・スミス、メロビンジアン役のランベール・ウィルソン、エージェント・ジョンソン役のダニエル・バーンハードらが続投。ネオを救世主と信じ、世界の真実を伝え、彼を導くモーフィアス役を「アクアマン」のブラックマンタ役で知られるヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、ネオの宿敵エージェント・スミス役をドラマ「マインドハンター」のジョナサン・グロフが新たに演じ、ニール・パトリック・ハリス、クリスティーナ・リッチらが扮する新キャラクターも登場する。シリーズの生みの親であり、過去の3作品を監督しているラナ・ウォシャウスキーがメガホンをとった。
「マトリックス レザレクションズ」のネタバレありの感想と解説(全体)
#マトリックス の新作「#マトリックスレザレクジョンズ 」深夜最速で鑑賞!
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2021年12月16日
赤か青か、否定か肯定かの二択で評価すべきでない。特にストーリーは非常に物議を醸す可能性大。
しかし、広い視点を持って見て欲しい。マトリックスの世界だけで考えないで。
とにかく楽しめ!この素晴らしき世界を!! pic.twitter.com/kiz8aQJlXn
往年のマトリックスが文字通り「再生」する物語
何ということだ。。
一体どんな話かと思いきや、本当に想定外だった。
マトリックスレボリューションズよりも昔の話なのか、それとも未来の話なのか。
もしくは、全く別の話なのか。
予告編を見ている分には、何も予想が付かなかった。
どんな世界でもあり得るマトリックスだからこそ、何がどう作用するか分からない。
これまでの世界が壊れるかもしれない。
しかし、さすがはマトリックス。
同じキャスト、同じ監督。オープニングとエンドロールも全くもって同じ。
そして、劇中には何度もマトリックス三部作の名シーンが流れる。。
中学生の時に見たあの感動がスクリーンに蘇る、同窓会のような映画だった!
これまでの世界観や設定を全く壊さずに、正当な続編として見事に舵を切ってみせた!
最初に言っておくけど、予習は必須だ!!
さすがにね、「あっ!すいません!今回はマトリックスの世界は用意してないんでぇ、あくまでゲームのマトリックスって設定でよろしくお願いしゃーす!!」
とはいかないよね。返金騒動になるよね。
Twitterではそれすらも言いづらいので伏せていたけど、もう我慢できない。
絶対に、絶対に過去の三部作は見ておいてほしい!!
「俺あのシーン知ってるよ?荒川静香みたいにのけぞって弾を回避するやつでしょ?」
それだけじゃ全然足りない!! ちゃんと復習してくれ!!
特に今回はネオとトリニティの愛が1番のテーマで、アクションシーンでは無条件に驚けるとして、ドラマ部分は復習してないと分からない!!
・・・と言ってしまうと往年のファンしか楽しめないと思うかもしれないけど、そうじゃない。
後で詳しく書くけど、ただのファンサービスに留まらず、新たな展開やアクションシーンにワクワクし、特にマトリックスの世界へと没入する度合いはシリーズの中でも屈指。
俺たちが予想していたマトリックスのその後の世界を見事に描いているし、ネオとトリニティを愛する人にはうってつけの映画だ。
没入感と引き換えに、犠牲となった時間
どんな展開か何も分からない序盤は本当にドキドキする。
「将軍」「バッグス」謎の単語。
ここはどこなのか、いつなのか、何も分からない状態から始まり、いきなり見知らぬ若い女がエージェントらしき男たちと戦いを始める。
このドキドキ感を味わえるのが、シリーズものの醍醐味だ。
そして、ネオは英雄という設定で、確かにレボリューションズの続きなんだなと判断が付く。
ついにネオのストーリーになるが、何と彼はゲーム会社で働く社員だった。
そして社員として作っていたゲームのタイトルは、、、、
こればかりは映画で確認してください!!
なんだ、どんな話なんだ。。俺たちが見てきたものは何だったんだ。。
頭が混乱する。ここは何なのか、現実なのか。
訳が分かってない状態でグイグイと話が進んでいく展開はマトリックス1と同じで、続きを早く見たい!と願うばかりだった。
しかし、ここから驚きの展開に入ってしまう。
ネオは過去の記憶が曖昧で、マトリックスの世界があるかどうかも判断が付かない状態になり、マトリックスの存在について否定と肯定のループを繰り返す。
これを、ネオの日々の生活(起床、仕事、トレーニング、食事)をループさせることによって、日常生活の中でマトリックスが頭から離れない様子が描かれる。
このシーンがまぁ長い。一体全体、何回繰り返すんだ。。
ここまで見せられると、観客も本当にマトリックスがあったのか疑問に感じてくる。つまり、ネオと同じ状態になってしまう。
ここで、あることに気づく。
マトリックスという世界への没入は、マトリックスに入る前から始まっていることを。
前作をきちんと見ている人ほど、今作のネオの迷いに共感し、没入度を増す。
「マトリックス」があまりに唐突にマトリックスの世界に入ってしまったのに対して、今回は非常に長い時間をかけてマトリックスの世界へと入り込む。
エージェントの執拗な追跡とハードなアクションに魅せられていた訳だが、今作では趣向を変えて、マトリックスの存在についてたっぷりと考える時間が用意されている。
ここまでの展開は、アクションというよりもミステリーだ。
マトリックスの英雄がその存在について懐疑的になることにより、さらにマトリックスの世界が神秘的になる。
ここの時間の使い方をどう解釈するかがミソになるが、「マトリックス」の仕切り直しとして、再度ネオがマトリックスに入る時の葛藤を感じてくれれば良いと思う。
ここまで散々褒めてきたが、少し言わせて欲しい。
没入感が得られるメリットは良いが、あまりにも多くの時間を犠牲にしてはいないか?
長い、長いんだよ。。。
ミステリーというジャンルで考えるならば、マトリックスに入るまでは必要な時間だったのかもしれない。しかし、序盤でバッグスやモーフィアスが話してる内容からすると、確実にマトリックスは存在するしその後の展開も分かる。
なのに、何でこんなに長いんだ。。。
最近の洋画大作は150分が当たり前になっているけど、正直長すぎる。
前作とは異なるアプローチでマトリックスに入らせたかったのかもしれないが、もう少しミニマムに描けないものなのか?
純粋に考えれば、実は観る前からネタバレしていた
レボリューションズから幾分かの時間がたった世界で、マトリックスは今もなお動き続けていた。
そもそも、グラサンを掛けてない素の状態でネオが写っていることに注目してほしい。
特に、レボリューションズで負傷した目が治っていることに気づいて欲しい。
彼は全てを出し尽くし、倒れた。そして英雄になった。
トリニティも彼と同じく、マシンシティの中に入って息途絶えた。
そう、二人はあの後に死んだのだ。
ネオの努力の甲斐あって、マトリックスの世界は機械と友好関係にあった。
そう、お気づきの方もいると思うが、これはレボリューションズで起きたことの「結果」であって、今作の物語で発生したものではない。
全てはレボリューションズを見れば分かることだった。なので予想外の展開、とはならなかった。
二人がどうやって再生したのかは映画を見てもらうとして、これはレボリューションズからの続編であることは間違いない。
前作を見ないと置いてかれるぞ!!
復習必須!!!!!
答えはマトリックスの外側にある
ネオとトリニティの関係深化が核になっている今作。
マトリックスの世界はすっかり平和で、新たなる反乱分子が二人を蘇生させたことから始まる話ではあるが、正直レボリューションズのようなスペクタクルな展開はない。
前半はミステリーだと言ったが、後半はまるでドラマのようだ。
もちろん、後半のアクションは凄まじいものがあり、プログラムに操られた人間たちがマンションから飛び降りて雨のように降ってくるシーンはえげつないしゾワゾワした。
が、今作の肝はそういった点に関心するものではなく、あくまでネオとトリニティの再会に着目すべきだ。
「マトリックス リローデッド」でも二人の関係が深く描かれていたように、マトリックスは愛の物語だ。ロボットにはない感情である愛の力が、人間を強くするという普遍的なメッセージが込められている。
ここで、一旦マトリックスの世界を離れて、キアヌ・リーブスとキャリー=アン・モスの人生に着目して欲しい。
今作は、マトリックス三部作以降のキアヌの人生が凝縮されているように思える。
「Sad Keanu」という写真があまりにも有名だが、彼の私生活はハリウッドセレブと思えぬほど質素で、なぜか暗い影を落としている(ように見える)。
彼は1999年に恋人との間に子供を授かったが、妊娠8ヶ月で子供が死産。そして恋人も交通事故で死亡。彼は一人ぼっちになってしまった。
その後、リローデッドとレボリューションズが公開される。彼の人生をどれだけ汲み取ったか分からないが、船内とはいえ運転中に事故死したトリニティにキアヌの実の恋人の人生を重ねることは、あながち的はずれな考えでもない。
マトリックスという架空の電子世界は、常に実世界とリンクしている。
それはネオとトーマスの関係性だけでなく、キアヌ・リーブスもその中に含まれている。
ネオ=トーマス=キアヌ・リーブスという図式が成り立っている。
ちなみに、序盤のトーマスの服装は↓の画像とそっくりだった。特に上半身。
一方のキャリー=アン・モスは、キアヌと同じく1999年に恋人がおり、結婚している。
その後2003年に長男、2005年に次男を産んでいる。
今作でトリニティ(ティフ)に子供がいるのも、キャリーの人生を反映したものではないだろうか。
同じ1999年に恋人がいたが、二人の人生は全く正反対のものになってしまった。
確かに、映画としてはレボリューションズでは完璧に終了している。映画単体の完成度としては、レボリューションズの方が圧倒的に上かもしれない。
しかし、もう一度言うが、マトリックスの外側で考えてみて欲しい。
序盤、ネオとトリニティがカフェで世間話をするシーン。
愛する人を失った者と失わなかった者が再会し、互いの人生を話し合う。
子供がいること、順風満帆な生活を送っていることをトリニティは話すが、それを聞いてネオはただ愛想笑いをするだけだ。
そりゃそうだよ。彼には愛する人はもうこの世にいないのだから。
あの愛想笑いが、泣けて仕方なかった。。
そして、ネオ=キアヌは再びマトリックスの世界に入り、復活したトリニティの命を必死で守り抜く展開になる。
これは、実世界では恋人を失ったキアヌが、マトリックスという架空の世界では恋人を守り抜いた証を作りたかったのではないか。
どう足掻いても、現実は変えられない。しかし、架空の世界なら恋人と再び出会える。
これはキアヌの人生にとって大切な瞬間なんだ。だからこそ20年経った今に公開する意義があるんだ。
今作によってキアヌの人生が少しでも晴れやかになったら、映画ファンとしてこれほど嬉しいことはない。
これはマトリックスのリザレクション=蘇生でもあり、キアヌの人生の再生でもある。
まとめ
最後は思った以上に真面目に考察を書いてしまった。
今作のストーリーに関してはかなり非難を浴びるかもしれないと危惧してのことだ。
レボリューションズよりかは盛り上がる展開が少ないし、なぜ今になってこんな話をやるんだと思えるかもしれない。
マトリックスの中だけで考えるんじゃなくて、外側で見れば見方が変わるはずだと思ってのことだ。
最後になったが、今作は過去三部作にないコメディ演出が効いていて、思わず爆笑した。
レボリューションズに登場するメロビンジアンが登場し、「スピンオフに出せ!!!」と叫んだ後に消え去ってしまい、ネオ一行は「じゃあ行くか」とあまりに素っ気ないセリフを吐くところは腹を抱えて笑えた。
あとはネオが飛ぼうとしたら全然飛べなくてただジャンプするだけとか、過去を知っている人なら爆笑するシーンも良かった。
これまでのマトリックスとは似ているようで全然違う、新たなマトリックスだった!
レボリューションズを見た人は、絶対に見てくださいね!!!
88点 / 100点