- まえがき
- あらすじ
- 「キングスマン3 ファースト・エージェント」のネタバレありの感想と解説(全体)
- 予想も付かなかった歴史ファンタジージャンルへの転換!
- ペンパイナッポーアッポーペンな魅力に惹かれて
- ドラマパートが弱いのは否めない
- まとめ
まえがき
今回批評する映画はこちら
「キングスマン3 ファースト・エージェント」
初期作「キングスマン」も真面目なテイストではなくブラックジョークを入れながらもカッコ良いスパイ像を提示した。
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そして次作「キングスマン ゴールデンサークル」ではまさかのエルトン・ジョンがサプライズ登場で観客を沸かせた。
今回はどんなサプライズがあるのか、俺たちを沸かせて楽しませてくれよマシュー・ヴォーン!!
それでは「キングスマン3 ファースト・エージェント」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。
あらすじ
・スタイリッシュな英国紳士が過激なアクションを繰り広げる人気スパイアクション「キングスマン」シリーズの3作目。第1次世界大戦を背景に、世界最強のスパイ組織「キングスマン」誕生の秘話を描く。表向きは高級紳士服テーラーだが実は世界最強のスパイ組織という「キングスマン」。国家に属さない秘密結社である彼らの最初の任務は、世界大戦を終わらせることだった。1914年、世界大戦を裏でひそかに操る闇の組織に対し、英国貴族のオックスフォード公と息子のコンラッドが立ち向かう。人類破滅へのカウントダウンが迫るなか、彼らは仲間たちとともに闇の組織を打倒し、戦争を止めるために奔走する。「ハリー・ポッター」シリーズでも知られる英国の名優レイフ・ファインズがオックスフォード公、「マレフィセント2」「ブルックリンの片隅で」の新鋭ハリス・ディキンソンが息子のコンラッドを演じた。彼らの前に立ちふさがる敵でもある怪僧ラスプーチンには個性派俳優のリス・エバンスが扮した。監督、脚本、製作はシリーズ全作を手がけるマシュー・ボーン。
「キングスマン3 ファースト・エージェント」のネタバレありの感想と解説(全体)
「#キングスマンファーストエージェント 」鑑賞!
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2021年12月24日
「第一次世界大戦をスペクターのような悪の組織が操っていたら?」というIFの世界線で繰り広げられる歴史ファンタジーアクション!
歴史上実在した偉人たちがマシューヴォーンの味付けによって絶妙な珍味に!
あの曲とアクションの組み合わせは最高! pic.twitter.com/1bmSMmkkeK
予想も付かなかった歴史ファンタジージャンルへの転換!
予告編をちらっと見ただけ。ポスター見ても特に何も分からない。
いつもの鑑賞前は何も調べないスタイルで見に行くと、思わぬ恩恵が得られることがある。
映画には3つの坂があると言われている。
上り坂
下り坂
そして、
まさか
もちろん、ソースは「カルテット」だ。。
今作は「まさか」の歴史ファンタジーものに仕上がっていた!!
前作・前々作の英国紳士スパイアクションとは全く異なり、歴史上の実在した人物を使ってファンタジーに仕上げた一種のジャンルものになっていた!
ただ、これまでのシリーズと傾向が違うと言っても、マシュー・ヴォーンの特性は十二分に発揮されていて、「(イギリスから見た)他国を小馬鹿にしてエンタメにするブラックユーモア力」は今作にも通底している。
今回は第1次世界大戦のトリガーとなるサラエボ事件(のような事件)が起こり、皇帝夫妻が銃撃される。
しかし、この事件を操っているのは007のスペクターのような謎に包まれた闇組織という設定で、第1次世界大戦を仕掛けてイギリスを征服する企みを持っている。
このように、実は今作でも007のオマージュのようなシーンはいくつもあって、それにマシュー・ヴォーンの毒っ気たっぷりのヴァイオレンスな演出と歴史ファンタジー要素が加わり、唯一無二の娯楽作になっていた!!
歴史ファンタジー娯楽作としては愉しい!!
これに尽きる!!
ペンパイナッポーアッポーペンな魅力に惹かれて
今作の特徴は、実在した人物をキャラクターとして登場させておいて、随所で史実に従うも、史実に行き着くまでの過程をファンタジーとして面白おかしく描いてくれている点だ。
先ほども書いた通り、今作は第1次世界大戦が舞台で、イギリスのジョージ5世やドイツ帝国のヴィルヘルム2世、ロシア皇帝であるニコライ2世という凄すぎる偉人たちが顔を並べる。
彼らの人生を描くだけで立派な歴史大作が生まれそうだが、マシューヴォーンはただの偉人には興味がないようだった。
今回、監督が最も興味をもった歴史上の人物は、ロシア皇帝に仕えるグレゴリー・ラスプーチンだった。
勉強不足で申し訳ないのだが、今回ラスプーチンの名前を初めて知った。
どうやら奇怪な逸話をいくつも持っていて、祈祷僧という肩書きを持っていて、オカルトな生き方を貫いていたという。
ロシア帝国を崩壊させたのも、彼の奇行が原因だとか。なんて興味をそそる人物なのだろう。あとで調べてみるか・・
ともかく、今作で最も評価すべき点は、マシュー・ヴォーンとラスプーチンの掛け合わせが抜群に良かったことだろう。
あえてヴァイオレンス描写を強調し、正直「キモい」(でも凄い)と思えるシーンを連発することでお馴染みのマシュー・ヴォーン。
そして、奇行が目立ったラスプーチン。
例えが古いが、アップルとペンでアッポーペン、ぺんとパイナッポーでペンパイナッポー。アッポーペンとペンパイナッポーでペンパイナッポーアッポーペンの組み合わせのような化学変化が起きているのだ!!
・・・つまりどういうことだ!?
要は、奇妙なモノ単独では特に価値を見いだせないが、奇妙なモノを二つ掛け合わせれば思わぬ良い結果が生じる、ということだ。
今作におけるラスプーチンは、正直オックスフォード親子のドラマや第1次世界大戦を止める使命感がどうでも良くなってしまうほど強烈なキャラだった。。
オックスフォード親子とラスプーチンが出会う場面はマシューヴォーン作品の中でも非常に奇妙な絡み方を見せてくれる。
なんと、冒頭で負傷してしまったオーランドの脚を何故かラスプーチンが治すという謎展開になり、絶対に怪しいと分かっているのにオーランドはラスプーチンと個室で二人きりになる。
「キングスマン」もそうだったけど、なぜ主人公は悪玉の誘いにやすやすと乗ってしまうんだ。これ、気になる人には大きなノイズになる。
そして、治療するためにズボンを脱ぎパンツ姿になるオーランド。
次の瞬間、、、
ペロペロ〜
ペロペロ〜
・・・なんということだ。
なんとラスプーチンがオーランドの脚をペロペロしてるではないか。
あまりの衝撃で絶句した。そして、腹を抱えて笑った。。
ダメな人はダメだろう、このシーン。でも俺は断固として支持する!!!
その後、ラスプーチンが怪しいことに気づきコンラッド一行が個室に突入するが、そこで一気に変態コメディからハードなアクションに切り替わる。
めちゃくちゃ強いラスプーチン。オックスフォードとも十二分にやりあえる実力を持っている。
がしかし、それは杞憂に過ぎなかった。
突如、ロシアのクラシック・バレエとして著名な「くるみ割り人形」の曲が流れる。
そしてクラシック・バレエのごとく舞いながら剣戟を繰り出すラスプーチン・・・
飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで〜
回って回って回って回るぅ〜〜〜
このサプライズ感、過剰に回って攻撃する展開・・・
・・・マリグナントだ!!!
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私の記憶が間違ってなければ、確かマリグナントでも同じようなアクションを見せていた。
本当にこのシーンは記憶に残る。くるみ割り人形に合わせて動くアクションを、ラスプーチンにやらせている・・・
最高、としか言いようがない!!
珍味だってのは分かってる!
でも、マシュー・ヴォーンの出す料理はいつも珍味ばかりだ!!
とびっきりの珍味だ!
ロボットレストランがオーガニックな野菜サラダを出してくるみたいな、そんな感じだ!
もちろん、戸惑う人はいる。気持ち悪いと感じる人もいる。
でも、食べてみれば美味しいかもしれない。
常に珍味は奇妙な見た目だったり匂いだったり、五感を狂わせるようなものばかりだ。
個人的には、ぜひこの珍味と向き合ってもらって、味わってみて欲しい。
マシュー・ヴォーンは、やはり変なものと変なものを掛け合わせることに長けたペンパイナッポーアッポーペンな監督だ。
「キック・アス」でも可愛らしいクロエ・グレース・モレッツが殺人鬼という変な人に、「バナナスピリッツ」という一見奇妙な曲を掛け合わせてある意味映画史に残る名シーンを作ってのけた。
今作といい、珍味なシーンを堪能するのがマシュー・ヴォーンの映画なのだ!!
反面、「1917」を思い出すような全力疾走シーンは凄く真面目に撮ってるんだけどね・・・
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ドラマパートが弱いのは否めない
これまでのキングスマンのおふざけ感満載のコメディは激減し、かなり戸惑った人もいるだろう。なんか真面目じゃない?って。
特に気になったのは、冒頭から時間を掛けて醸造していたオックスフォード親子のドラマが弱かったこと。
妻エミリーを冒頭で失ってから、息子に対して保守的な態度を貫き通すオーランド。とにかく息子をイギリスから出したくない。
しかし時は経ち、第1次世界大戦へとイギリスが進みゆく中で息子は戦争に参加したいと申し出る。まるで「キャプテン・アメリカ ファーストアベンジャーズ」のスティーブのように、実践経験はなく気弱な面はあるものの国を守る意識だけは高い。
この親子の対立と融和、そして別れが非常に弱い。弱すぎる。
一つ一つの画の作り込みは凄いし、「1917」を思わせるシーンは素晴らしい。
しかし、個々のシーンが連続的でなく親子の絆の深化には至らないのが至極残念なのだ。
例えば、第1次世界大戦から生きながらえたリードがオーランドの元を訪ねて、コンラッドの訃報を伝えるシーンは、まるでワンピースのような長い回想になっていてオーランドの存在を忘れるほど。
回想が終わっても、そりゃお父さん辛いわな・・としか思えなくなる。
回想があまりに長すぎて、オーランドの存在が脳内の片隅に追いやられてしまっているせいだ。
要は編集がぶつ切りなんだ。
あれだけの時間を使っておいて、親子との絆が深く見られないのは勿体ない。オックスフォード一家の話は完全創作なので、史実にも縛られない自由に出来る物語なのに、なぜ柔軟に話を作らない?
「キングスマン」もそうだったが、主要人物が死ぬ時には必ず単独行動の状態であることが多い。そのクセは分かってはいるが、どうにかならないものか?
第1次世界大戦の最中、コンラッドが苦しんでいるところをオーランドが助けるような展開はあまりに強引すぎだとしても、それでも観客はオックスフォード親子がいつかどこかで一緒になることを望んでいる。
それなのに、コンラッドの墓を見せるシーンですら強調度が低く、もはや彼は終わった存在かのように軽く扱われているような気がしてならなかった。
今作のジャンルはアクションだ。でも、良いアクション映画は良いドラマ映画でもあるはずだ。
こればっかりは頂けない。もちろん、これを差し引いても有り余るほどの素晴らしいシーンの連発だったので、大満足しているんだけども。
まとめ
最後には色々言ってしまったけども、なんだかんだ大好きな作品だ。
その要因はラスプーチンにあると言っていい。ただ、苦言というか指摘なんだけど、ラスプーチンだけにあのシーンはラストに持ってって欲しかったなと強く感じる。
クラシックの楽曲とヴァイオレンスな画という見せ方は、やはりラストが締まる。
それはマシュー・ヴォーン自身が「キングスマン」のラストでよく理解しているはずだ。
威風堂々と首チョンパと花火を掛け合わせるなんて、誰が思いついただろう。
これからも、「鬼才」マシュー・ヴォーンの作品には期待したい。
あと最後になるが、今作では
「Manor makes man」=「マナーが人を作る」や、
「Oxfords not brogues」=「オックスフォードではなく、ブローグ」
といったシリーズを通して使われる言葉の起源は明らかになる。
ファンサービスといえばそれまでだが、前作を見ていれば気になる名言の起源が解き明かされるのは良いことだ。
最後の最後に、ラスプーチンのあのシーンを見て思い出したのは、熊川哲也だった。
わかる人にはわかるかな?
#キングスマンファーストエージェント
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2021年12月24日
を見て真っ先に思い出したのは芸術監督である熊川哲也Kバレエカンパニー代表の後ろ姿であった。 pic.twitter.com/3SrIsvEFqd
90点 / 100点