- まえがき
- あらすじ
- 「ラストナイト・イン・ソーホー」のネタバレありの感想と解説(全体)
- 僕らは観る前から夢を見ていたんだ
- 「鏡」の使い方で監督のシフトチェンジがよく分かる
- アニャテイラーという興奮剤、トーマシンという安定剤
- 監督の60年代への想い、もはや殺人的
- まとめ
まえがき
今回批評する映画はこちら
「ラストナイト・イン・ソーホー」
それでは「ラストナイト・イン・ソーホー」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。
あらすじ
・「ベイビー・ドライバー」のエドガー・ライト監督によるタイムリープ・ホラー。ファッションデザイナーを夢見て、ロンドンのソーホーにあるデザイン専門学校に入学したエロイーズは、寮生活になじめずアパートで一人暮らしを始める。ある時、夢の中できらびやかな1960年代のソーホーで歌手を目指す美しい女性サンディに出会い、その姿に魅了されたエロイーズは、夜ごと夢の中でサンディを追いかけるようになる。次第に身体も感覚もサンディとシンクロし、夢の中での体験が現実世界にも影響を与え、充実した毎日を送れるようになったエロイーズ。夢の中で何度も60年代ソーホーに繰り出すようになった彼女だったが、ある日、夢の中でサンディが殺されるところを目撃してしまう。さらに現実では謎の亡霊が出現し、エロイーズは徐々に精神をむしばまれていく。エロイーズ役を「ジョジョ・ラビット」「オールド」のトーマシン・マッケンジー、サンディ役をNetflixの大ヒットシリーズ「クイーンズ・ギャンビット」のアニヤ・テイラー=ジョイがそれぞれ演じる。
ラストナイト・イン・ソーホー : 作品情報 - 映画.com
「ラストナイト・イン・ソーホー」のネタバレありの感想と解説(全体)
「#ラストナイトインソーホー」鑑賞!
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2021年12月10日
60年代の旋律に乗せて、現代を戦慄させる。想像の100倍怖かったサイコスリラー。マジか、こんなに怖いなら先に言ってよ!
トーマシンちゃんの天使の声に癒されて、アニャちゃんに振り回され、自分まで迷宮に入った気分に。
監督の60年代への想い、もはや殺人的。 pic.twitter.com/rt8kJqN6nU
僕らは観る前から夢を見ていたんだ
いやぁ、予想の100倍怖かった。本当に途中から苦しくなった。
本当に予想外で、未だに驚いてる。
だってだよ?あのエドガーライト監督だよ?
たしかにデビュー作は「ショーンオブザデッド」ではロンドンを巻き込んだゾンビものだったけど、全く怖くないじゃない!むしろ笑えたじゃない!
その次の「ホットファズ」も、田舎村で起きた惨劇がメインになってるし、でも笑えるし!
その次の「ワールドエンズ」でさえも、ビールを飲み歩きながらも宇宙人が街に侵略される話だし!でも笑えるし!
って待てよ、、、
、、、え?
エドガーライト監督って、実は超怖い話ばっかとってたの!?
これまでサイモンペッグとかニックフロストのコメディ演技にカモフラージュされてきたけど、実はすんげぇ怖いの作る人だったんじゃないの!?
今作で監督の本当に怖いところが全開になった、今までは全て隠されていた、あるいは分かりづらかったのかもしれない。
サイコホラーと聞いていた通り、最後の最後は人怖モノだった。しかし、そんなことは想像も付かなかったんだよね。
なぜなら、俺たちは鑑賞前からずっとアニャ・テイラー=ジョイとトーマシン・マッケンジーにばかり目がいって、他は何も気に留めなかったから。
俺はてっきり、アニャが60年代に殺されてしまって、誰に殺されたかをトーマシンが追いかける映画かと思っていた。事実、中盤まではその筋で話が進んでいた。
だって、そっちの方が「性に合う」じゃない。「似合ってる」じゃない。
アニャとトーマシンが一心同体で、共に助け合って、60年代と今を繋げて、最後には敵を倒すみたいな。
まさか後半、あんな展開になるとは。。。
俺たちはまるで催眠にかけられていたかのように、物語の核心を気付けずにいたんだ。
トーマシンの可憐であどけない少女像、アニャの美しく妖艶な女性像。そのイメージが常に付き纏って、途中までヒントが色々あったのに、気づけなかった。。
まぁとにかく!俺たちは見る前から夢を見ていたんだ!!
こんなに怖いと思わなかったし、街ぐるみで主人公が襲われるとは思わなかったし、ズーーと地獄の迷宮に迷い込んでいるような感覚があるんだよね。
思えば、エドガーライト監督は街ぐるみで主人公が襲われる映画ばかり撮っていた。
彼の映画には、常に恐怖が隠されていたんだ。
俺たちがずっと抱いてきたコメディ監督エドガーライトというイメージすらも、完全にぶち壊した。今回は、おそらく意図的に爆笑するシーンを見せずに、トーマシンがソーホーの街に飲み込まれていく恐怖ばかりを描いている。
これ、よく考えれば「ホット・ファズ」でサイモン・ペッグが見知らぬ田舎町に行って奇妙な殺人事件に遭うような話と遠からずリンクしている。
コメディから離れつつあるエドガーライトだし、巷では「ホットファズの方が良かった」とかって意見もある。
でも、監督の気持ちは違うんだ。もっと前へ、別の方向に進みたいんだ。
もちろんエドガーライトの新作コメディも見たいよ?でも、彼の興味は別にあるんだ。
俺はこの映画を全力で支持する。
「鏡」の使い方で監督のシフトチェンジがよく分かる
細かいところなんだけど、今回は「鏡」の使い方がエドガーライト的には印象的だった。
エドガーライトは「ショーンオブザデッド」で意味ありげに鏡が写るシーンを連発している。主人公ショーンが鏡をじっと見ているシーンがあり、後ろを振り返るけど誰もいない。
そして、もう一度鏡に目を移すと、、、
誰も、いない。
と、ホラー映画のあるあるを逆手にとってコメディ演出をやってのけた。俺も爆笑した。
でも、今回はホラー映画の王道的な鏡の使い方をしているシーンもあって、鏡を見てからカメラがパンすると幽霊がドン!と出てきてジャンプスケアを発生させている。
まじか、こんなことやるんだ・・!
普通のホラー映画なら、当たり前の演出なんだけど、エドガーライトがやると全然違った印象に見えるんだよね。これは、本気で怖がらせにきているな、と。
鏡といえば、アニャとトーマシンを繋げるものとして使われているけど、実は一心同体を表してるんじゃないんだよね。そこが上手い。
鏡はあくまで、反射なんだよ。
つまり、左右反対で本人と似てるように見えて正反対な存在なんだ。
だからアニャが殺人鬼だったというオチは、純粋トーマシンと正反対な関係になっているんだよね。
鏡は実像じゃなく、虚像を写すもの。
鏡の特性を使って、本人の生き写しなようなで正反対の虚像(別人)を見事に演出してたと思う。そりゃ騙されるよね。
そもそも、冒頭から監督は今作の鏡の持つ意味について丁寧に説明していたよね。
だから最初のシーンで、トーマシンが見ている鏡にはお母さんが映ってるんだよね。
最初から、鏡には本人以外のものが映っているし、鏡の中の世界は自分の生き写しってわけじゃないんだよね。
あまりにもアニャとトーマシンが共鳴しているように見せて、どんどん顔が似てきて(トーマシン側が似せてくる)、まるで同じ人かのように思えてくるんだけどね。
アニャテイラーという興奮剤、トーマシンという安定剤
もう、この二人の力に尽きるよね今作は。
60年代のソーホー。街の映画館では「007サンダーボール作戦」が上映されていて、レトロな街にたたずむアニャ。
トーマシンが劇場に迷い込み鏡に映ると、トーマシンからアニャが出てくる。
最初に断っておくけど、ここからは映画の考察でもなんでもなくて、ただ二人の可愛さを愛でるだけになる!
アニャはピンクのドレスで踊って、妖艶なダンスを。お目めが大きくて本当に吸い込まれちゃいそうなようなんだよな。
彼女が何者かなんて、どうでもよくなる。ただ彼女だけを見ていたくなる。
どうやら歌手を目指していて、彼女を支える男がいて、まるで「ララランド」じゃないかって思ったよね!
60年代の世界で、二人が頑張ってショーの世界で生き抜いていく話かと!
でもそーじゃない。アニャの人生は波乱に満ち溢れていたんだよねぇ。
残酷。
彼女が出てくるととにかく画面が赤色になって、常に警告を促しているような絵になるんだよね。
ただし、彼女が男に食い物にされようになるシーンばかり見ているから、その赤色は彼女の危機であるかのように見せているのがミソ。まぁ、彼女も危ない目にあってるんだけど、超えてはいけない一線があるでしょうに。。
そしてトーマシンは本当に純粋で、その割にはバストがまぁバスバスしててわぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあああって感じでした!あと声が可愛いね!!!
ウィスパーボイスで、声が高いのよ!もう最高!!!!!
あの声でASMRやって欲しいのよ!「オールド」の時は全然気にならなかったんだけど、今回はしゃべる機会が多いからかな?
すごく声が高くて細くて、本当に好みの声でしたぁぁぁ!!
キュンキュン!!しゅき!!!!!!
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監督の60年代への想い、もはや殺人的
エドガーライトは過去作にも、自分が影響を受けた作品を参考文献かのように露骨に出してくるんだ。
今作も最初の最初のシーンで、「ティファニーに朝食を」のポスターが写っていた。
おそらく、この作品に一番影響を受けていたのだろうか。
そして、最初に掛かる曲はPeter & Gordonの「A World Without Love」。
60年代の二人組バンドで、まるでビートルズのような楽曲。
それもそのはず、曲はポールマッカトニーが書いているそうだ。
あくまで個人的な意見だけど、ビートルズだと露骨に60年代ですって意識させちゃうから、あえてこのバンドを選んだように思えた(あるいは、ビートルズの権利が厳しいのかもしれないけど)
もう、60年代を完全に意識したオープニングだよね!
そして「ティファニーで朝食を」の引用についてだけど、オードリー・ヘプバーンの役は完全にアニャだよね。正直いって、娼婦のように金持ちの男と付き合って生計を立てているオードリーの姿は、アニャと重なるのよね。
しかも、あの髪型も、どことなくオードリーを意識してるような。。
あと、この作品で有名なのはオードリーがティファニーの店をガラス越しに覗くシーン。
おそらく、ラストナイトインソーホーの元ネタは、このガラスに写った自分を見ているシーンなんじゃないかな。いや、絶対そうだよ!!
監督はあの鏡に映っていたシーンを、まるで自分が鏡に映っているかのような錯覚に陥るくらい見入っていたんだと思う。
でも、これだけ好きなのに60年代に行くことはできない。悔しい。だからこそ、映画で60年代を再現したかったんじゃないかな?
そう考えると、監督の60年代の想いが切ないくらいに伝わってくるよね。
まとめ
エドガーライトの新境地、という見方もできるんだけど、実はやってることは「ショーンオブザデッド」から変わってなくて、
街を巻き込む狂気入り混じる惨劇を見せてる映画なんだよね
だからこれからもホラーを撮ろうがアクションを撮ろうが、コメディに戻ろうが、彼の作家性は変わっていかないんだよね。
見る前からハードルがかなり上がっていたんだけど、本当に楽しめる作品で何よりです!!!!
良かった良かった!!
94点 / 100点