- まえがき
- あらすじ
- 「ワイルド・スピード ジェットブレイク」のネタバレありの感想と解説(全体)
- 上質なおバカ映画、ここに極まれり
- ロケットは夢・想像力の結晶
- ハンの復活から考えるストーリーの意義
- 追記:ラストの打ち上げシーンで登場した車について解説
- まとめ
まえがき
今回批評する映画はこちら
「ワイルド・スピード ジェットブレイク」
夏の到来を告げるような、メガヒット超大作シリーズがついに劇場公開する。
最近は落ち着いた文体を心がけるようにしているのだが、「!」を出したくてウズウズしている自分がいる。
堅苦しい文章なんて、この映画には似つかわしくない。もはや、文章すらいらないのではないか。
今回は空に向かって車を飛ばす映画。
面白かった。
この二行で十分じゃないか。
公開前から、映画ドットコムの評価は4.6/5.0(2021.8.2)。異常だ。みんなどれだけ期待してるんだ。その評価、ちゃんと見た上での評価なのか?まだ国内公開されてないが。
ただ、そんな文句を言いながらも、私も興奮が止まっていない。
先日、私が出演する番組「おれなら」にてワイスピ特集を放送し、自画自賛だが抜群に面白い内容になった。
また、配給会社・宣伝会社の協力を得て素材を使わせてもらったこともあり、番組のロゴとワイスピの予告が流れた瞬間、思わず涙を流しそうになった。
#おれなら 7月号。
— おれなら (@movieoutlaw2018) 2021年7月31日
「ゴジラ&コング、 ワイルドスピード ORENARA MAX」特集#ワイスピ#映画好きと繋がりたいhttps://t.co/3Wnu0JMGdp
近年、真面目にバカをやる作品が少なくなっているように感じるが、ワイスピだけは信頼できる。バカみたいな力の磁石とカーアクションを組み合わせるなど、正気の沙汰じゃない。
もう堅苦しい挨拶は、止めにしよう。
これを見ずして何を見る!?
俺たちの夏の始まりだぁぁぁあああああああああああ!!!!!!!
フォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!
それでは「ワイルド・スピード ジェットブレイク」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。
あらすじ
・メガヒットカーアクション「ワイルド・スピード」シリーズの第9作。ドミニクはパートナーのレティや幼い息子ブライアンと3人で平穏な日々を過ごしていたが、否応なく自身の過去の罪と向き合うことに。ドミニクの実の弟ジェイコブの存在が初めて明かされ、その因果はファミリーを窮地に追い込んでいく。ファミリーは世界を揺るがす陰謀を阻止するため、凄腕の殺し屋で超一流の運転技術を持つジェイコブとの戦いに身を投じる。ビン・ディーゼル、ミシェル・ロドリゲス、タイリース・ギブソンらおなじみのメンバーに加え、「ワイルド・スピード ICE BREAK」に登場したシャーリーズ・セロン扮する悪役サイファーや、サン・カンが演じるハンも再登場。さらに新たな敵となるドミニクの弟ジェイコブ役でジョン・シナが参戦。監督には、シリーズ第3作から第6作を手がけたジャスティン・リンが復帰した。
「ワイルド・スピード ジェットブレイク」のネタバレありの感想と解説(全体)
「#ワイルドスピードジェットブレイク」鑑賞!
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2021年8月6日
バブリー!ラブリー!!お空へぶっとび!!
おっぱっぴぃぃぃいい!!
ハンドル付きのロケットで浪漫飛行へインザスカイ!
レティとミアの東京女子旅もサイコォオオ!!
サイファーは相変わらずテレワークかますZE!
もはや、SF。#ワイスピ愛をブチ叫べ pic.twitter.com/l2ec7yT5Gc
上質なおバカ映画、ここに極まれり
質の高い映画とは何だろう?
綿密な脚本、繊細な心理描写、儚く切ない結末の物語。。
カンヌで受賞するような、さりげないタッチで描かれる映画も良いだろう。映画を見てきた人なら分かる映画も良いだろう。
それが深い映画で、面白いだろう。
でも、どんな人が見ても「すげぇ」とだけ口にする映画は、質が高いのか?
時にはおバカ映画と揶揄されながらも、我が道を進んできたワイルドスピードシリーズ。
今朝のニュースで、アメリカのバイデン大統領が「CO2排出量削減のため、2030年までに電気自動車の比率を50%にする」と発表があったばかりなのに、今作のワイスピではCO2の何十倍も有害なニトロエンジンを宇宙から撒き散らす。
これぞマイウェイ。ワイルドなのはスピードだけじゃない。バイデン大統領の政策も、SDGsのことも、ファミリーには心底どうでもいい。
物理法則、社会規範など関係ない。
色々と世知辛いご時世でがんじがらめになった我々を、浪漫飛行に連れてってくれるのが今作ジェットブレイクの最大の魅力だ。
おバカに映るかもしれないが、一体何が悪い? 映画の良し悪しは俺が決める。
バカでもいいんだ、夏だから!! これは上質なおバカ映画なのだ。
外出が出来ない、騒げない全世界の我々こそ見るべき映画なのだ。
この世のあらゆる贅沢と無駄を詰め込んだ、最高にバブリーな二時間を、是非とも楽しんでほしい。
ロケットは夢・想像力の結晶
今作で最も強烈な空飛ぶロケット車。予告編では空から飛び立つ場面しか映らないが、今作では行くところまで行ってしまう。
どこまで行くかは劇場で確認してほしいが、私は007のとある作品を思い出した。どのボンドの作品かは、もはや言うまでもないだろう。
ロケット車が象徴するように、今作は「あんなこといいな♪ できたらいいな♪」の連続で、もはやSFの境地に達している。
いつでもどこでも白Tのダッチチャージャー。いつ見ても代わり映えのしないドミニクが、今作ではまるでドラえもんのようにも見えてくる。
今作の隠れたテーマは、「夢を叶えること」であったように感じる。あんなこと、こんなこと、想像するだけで実際にはできないことを、今作では全て即物化して見せる。
まず冒頭に自己紹介代わりのカーレース。どの作品でも冒頭にレースシーンを持ってくるが、今作はドミニクの父親が現役レーサーだった頃のシーンが入る。
インディレースのような、単純にグルグルと高速で走り続ける車。何かの伏線が、ここに刻まれると想像してもらって構わない。
そして話は現代に戻り、ミスターノーバディが乗った飛行機が墜落するモンテキントという謎の僻地へと向かう。
相変わらずのファミリーたちの謎の強さ。軍隊経験もなく、防弾チョッキを着たローマン以外は全員私服。ドミニクに至っては相変わらずの白Tシャツ。正直、狂っている。
ただ、これはファンタジーなのだ。ドムの全身には見えない壁が付いているのだ。
案の定、無敵の強さを誇るドムファミリー。このシーンで奇妙だったポイントは、なぜか脇役ローマンのアクションに多くの時間が費やされていること。
シリーズを見てきた人なら分かるだろう。ローマンは特別に強い訳ではない。ただ、喋りが達者な男だ。
そんなローマンが縦横無尽に駆け回り、最後は地雷でサヨウナラしそうな場面も、何故か無事に生き残る。テズも思わず「なんで死なないの?」と疑問を呈するシーンがあるが、そのセリフは俺たち観客に言わせて欲しかった。何故お前らは死なないのだ、と。
このように、今作では、何故ドムファミリーが無敵で死なないのかがメタ的に露出するシーンが非常に多く散りばめられている。不要不急とも思えるローマンのシーンは、実は伏線だったのだ。
死んだハズのハンも生き返り、「何故死なないのか?」が今作で非常にキーとなる部分だ。
そして、その答えは前述したとおり「夢を叶える」ことへと繋がる。
実際は死んでしまった仲間が、もし生き返ったらどうなるだろう?
一生仲間として暮らせたら、どんなに幸せだろう?
敵だった奴が味方だったら、世界って幸せじゃないか?
そんな夢が詰まった作品なのだ。
そして、その夢は空飛ぶロケットや、最強磁石などバカげたガジェットにきちんと内包されている。
バカだけの映画はたくさんある。しかし、バカと夢が詰まった作品はそうそうないのではないか?
希望を与えてくれる映画なのだ。
ワイルドスピードは夢が詰まっている。そんな夢を、宇宙よりも広い想像力で描いてくれるのが、ワイルドスピードなのだ。彼らには現実など見えてない。
だからこそ、ワイルドスピード3では非現実的な東京が出てきたし、柴田理恵も小栗旬よりも早くハリウッド進出を果たせた。割烹料理のような給食も出せた。
そしてスカイミッションでは、交通事故で亡くなったブライアンを追悼するために、本編の時間を割いてまで最高の弔いシーンを想像した。
ワイルドスピードがここまで人気を博したのも、全ては製作陣の想像力の賜物だ。
単におバカな映画だったら、ここまで続いていない。
ワイルドスピードのエンジンは、想像力なのだ。
そして、ラストの打ち上げシーンは想像力の賜物だ。無きブライアンをどう映画に登場させるのか、考えに考えた感涙のラストを、是非とも見届けてほしい。
ハンの復活から考えるストーリーの意義
今作で最も注目されるハンの復活。
彼がスクリーンで登場するのは東京で、レティとミアが女子旅をする道中で遭遇する。
一度死んだキャラが復活するのは、ユーロミッションのレティの前例もあり、ハンが初めてではない。しかし、ハンが出てきた時、思わず涙が溢れてしまった。
ジゼルを亡くし、東京で暮らすもデッカードに殺され、ハンの復活よりも先にデッカードのスピンオフが公開されてしまい、憤慨していた私にとっては、やっとハンが復活してくれて嬉しい限りだった。
しかし、脚本的にはモヤっとする人も多いのではないか。
話の整合性が合わない、後出しジャンケンにも程がある。
今回は相応の時間を使って、何故ハンが生き返ったのか説明をしてくれる。それでもまだ、違和感が残る人も多いのではないか?
ワイスピ3で流した涙はどうすればいいんだ? と思う人もいるかもしれない。
そして、今後誰かが死んだ時に、「どうせまた復活するんでしょ?」と、人の死が軽く感じてしまうかもしれない。
キャラの生死を逆転させるのは、相応のリスクがある。
しかし、それでも何故ハンを復活させたのか? 噂によると、ファンからの要望に応えたのが直接的な原因らしいのだが、個人的にはそんなご都合主義で終わらせたくない。
繰り返しになってしまうが、ワイスピは想像力の賜物だ。
実際には死んだ友も、もし生きていたらどれだけ素晴らしいだろう。
ブライアンの死もあり、これ以上キャラクターを死なせたくないと思ったのではないか?
ファン優先というよりも、ファミリーの絆を大切にしたかったのではないか?
ファミリー至上主義の映画の前では、どんな理もひれ伏すのだ。
全ては、ファミリーの幸せのためにストーリーがある。
ファンムービーと言っちゃそれまでなのだが、ワイルドスピードはそれくらい剛腕な物語の方が、ちょうど良い。
追記:ラストの打ち上げシーンで登場した車について解説
あまりに客観的な感想ばかり書いていたので、最後くらいは感情的な感想を言わせてもらう。
ネタバレでもないと思うが、ファミリーの慣習に従い今回もラストは打ち上げシーンがある。もちろん、大量のコロナビールをグビグビ。
前作ではエレナの息子を「ブライアン」と命名したドムの超サプライズに泣かされた。
エレナが命名した名前はどこいった? ちゃんとレティと相談したのか? あと、、監督に相談したのか?
「おお!」じゃなく「え?」が一瞬頭をよぎったが、映画というものは恐ろしいものだ。Gイージー、ケラーニのgood lifeが流れると、気付けば涙が出ていた。色々考えることはあるが、とりあえずその場では大号泣してしまう豪腕ネーミングに、世界中が感動したはずだ。
前作で味をしめたのだろうか、今回も打ち上げシーンでブライアンについて言及するシーンがある。
息子ブライアンにお祈りをさせようとするが、席が1つ空いてることに気づきドムにツッコむファミリーたち。
そして、ドム宅に向かう青いスポーツカーの姿が映る。
このリアウイング、どうみても日本車だ...!!
...日本車だ!!
調べたところ、日産GTRを撮影に使用した模様。
SEO的に改めて言わせもらうと、
ワイルドスピードジェットブレイクのラストで、遅れてドムの自宅に向かう車は青い日産GTRで、ブライアンの来訪を伝えるものだった。
ここでまたニクいのが、CGを使って顔を写さずに、あくまで車だけを写して姿を想像させる手法。
どんな顔してるんだ、ブライアン。姿を見せておくれよ..!
続くボーナス映像でデッカードがサンドバックに人を入れてタコ殴りしてるシーンを観ながら、ずっとブライアンのことを考えていた。
ニクイね、ワイスピ!
まとめ
夏の到来を告げる上質のおバカ映画。
色々ツッコミどころはあるかもしれないが、ローマンとテズがそのことにも触れているので、薄々本人たちも気付いてることを暴露してくれる。
何故彼たちが死なないのか?何故無敵なのか?
ヴィンディーゼルが制作に関わっているからなのか?
色々言いたいことはあるが、ファミリー至上主義のストーリーに俺たちが口を出すのも野暮だろう。スクリーンから覗かせてもらっているだけ、ありがたいと思わないと。
唯一不満があるとすれば、ハンを探しにレティとミアが東京女子旅に行く際の食事シーン。
「養老の月」というどっかで見た居酒屋的な名前だが、実際はラーメン屋である。
ここでラーメンを食べると思ったのだが、麺の上にある謎の緑黄色野菜だけ口にして、後は会話に夢中になる。そして何か思い立ったように走り去る2人。。
ラーメンを食べてない。
麺が啜れなかったからなのか、実際は食品サンプルだったのか、理由はよくわからないのだが、麺を全く食べずに店を後にする2人に怒りを感じた。
ワイスピ3でもそうだが、このシリーズの食事シーンは実にお粗末なことが多いのだが、これだけは日本人として許せない。
せっかく日本に来たんだ!!ラーメンくらい食べてけ!!!!!!!
95点 / 100点