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映画「サマーフィルムにのって」ネタバレあり感想解説と評価 誰かの「好き」に周波数を合わせることの大切さ

 
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この記事では、「サマーフィルムにのって」のネタバレあり感想解説記事を書いています。
 
 目次
 

まえがき

 

 

今回批評する映画はこちら

 

「サマーフィルムにのって」

 
 

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(C)2021「サマーフィルムにのって」製作委員会

 

夏休みらしい映画を探していたところに、バッタリ出会った今作。

 

Amazonプライム×テレビ東京のオリジナルドラマ「お耳に合いましたら」が大好きで、特に伊藤万理華さんにに夢中になってしまった。

 

今作でも主演を務めるということで、鑑賞するに至った。

 

 

Twitterでは「新たな青春映画が生まれた」、「とにかく見ろ!」など熱いコメント達が集まっており、いったいどんな青春のカタチが見えるのか、非常に楽しみである。

 

「アルプススタンドのはしの方」のような衝撃を、今作でも感じたい。

 

  

 

それでは「サマーフィルムにのって」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。

 

 

 

 
 

あらすじ

  
元「乃木坂46」の伊藤万理華が主演を務め、時代劇オタクの女子高生が映画制作に挑む姿を、SF要素を織り交ぜながら描いた青春ストーリー。同じく伊藤主演のテレビドラマ「ガールはフレンド」を手がけた松本壮史監督が伊藤と再タッグを組み、長編映画初メガホンをとった。高校3年生ハダシは時代劇映画が大好きだが、所属する映画部で作るのはキラキラとした青春映画ばかり。自分の撮りたい時代劇がなかなか作れずくすぶっていたハダシの前に、武士役にぴったりの理想的な男子、凛太郎が現れる。彼との出会いに運命を感じたハダシは、幼なじみのビート板とブルーハワイを巻き込み、個性豊かなスタッフを集めて映画制作に乗り出す。文化祭での上映を目指して順調に制作を進めていくハダシたちだったが、実は凛太郎の正体は未来からタイムトラベルしてきた未来人で……。主人公ハダシを伊藤が演じるほか、凛太郎に金子大地、ビート板に河合優実、ブルーハワイに祷キララとフレッシュなキャストがそろった。

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「サマーフィルムにのって」のネタバレありの感想と解説(全体)

 
 

 
 
 
 

 

「好き」の周波数を合わせることの大切さ

 

噂に違わぬ優れた作品。

 

まず言わせてほしい。この映画、尊い。

これが私が目指していた、憧れていた高校生活だった。

 

青春映画のキャラクターは、キラッキラに眩しい雲の上の存在であることが多い。

現実では絶対にありえない言動、行動。可もなく不可もなくな高校生活を過ごした私にとっては、非現実的な眩しさが溢れている。眩しすぎて、直視できないことが多い。

 

しかし今作は、私との距離感が近すぎる。少し手を伸ばしたら肩が触れそうな、半径1メートル以内の実在感だった。

 

伊藤万理華さん演じるハダシをはじめとした寄せ集めの即興映画部は、お世辞にもイケイケな高校生には見えない。かといっていじめられっ子でもない。

 

他の青春映画では描かれないような、普段はスポットライトが当たらない「じゃない方」のキャラクター達は、同じく「じゃない方」の私に急接近で寄り添ってくる。

 

特に映画を撮る前のハダシ、ビート板、ブルーハワイの3人が隠れ家で座頭市を観ながら会話するシーンは、少し涙がこみ上げてくるほどだった。

 

何か特定のものを好きになることは、誰でもできる。

しかし、好きを誰かと共有することは意外と難しい。

 

テレビドラマや人気YouTuberなど、流行のカルチャーであれば難しくないだろう。

映画なら、ジャニーズが出ているキラキラ青春映画なら話の合う人も見つけやすい。

 

だが、ハダシが好きなのは勝新太郎の座頭市。

 

絶望的だ。

 

高校生で勝新を好きな人を探すのがどれだけ難しいか。容易に想像できるだろう。

 

しかし、ハダシは何故か最初からビート板、ブルーハワイと当たり前のように勝新の話をしていて、彼女たちもそれなりに話を合わせてくれる。

 

ハダシに比べれば好きの度合いは低いし、ブルーハワイに関しては興味がないようにも見えるが、彼女の周波数はハダシにピッタリ合わせている。

後半で彼女は実はキラキラ映画が大好きと暴露するところからも、分かるだろう。彼女にとって時代劇が一番ではないにしても、ハダシに寄り添っているのだ。

 

こういう仲間がいる事自体、奇跡だと思う人が多いだろう。ハダシのように熱量が強くテンション高めな人の話だから、耳を傾けている訳ではない。おそらく、ハダシもハダシでJKのノリに合わせている可能性もある。

 

こうして、相互的に誰かの「好き」に周波数を合わせることは、本当に奇跡のなせる業なのだ。

 

個人的な話になるが、私はTBSラジオが大好きで、今作のハダシのように自分の好きを放送内でアツく語る番組が多いのが特徴だ。

 

毎日のようにTBSラジオの周波数に合わせ、誰かの好きを夢中になって聴いてる私にとっては、今作の「耳を傾ける」イズムに共感しかない。

 

だからこそ、この映画は尊いとしか言いようがない。

 

自分の好きを熱く語るハダシは、現在アマゾンプライムにて放送中のドラマ「お耳に会いましたら」と似ている部分があり、しばらく伊藤万理華の沼から抜けれそうにない。

 

 

 

 

 

 

時代劇に乗せて映画の本質的な魅力が表出する

 

勝新を中心とした1950~60年代の時代劇は、ハダシの好きの対象物だけには留まらない。

 

凛太郎のセリフにもあるように、「映画は過去と今をつなぐもの」の象徴として時代劇が機能していると思われる。

 

映画は総合芸術と呼ばれ、物語や映像や音響や多種多様な芸術が組み合わさっているものだが、最も大切な要素は「時間」だ。

 

他の芸術には絶対にできない、「時間を自由に操れる権利」が映画の最大の魅力だろう。

 

凛太郎は未来からやってきた存在で、彼の「今」から見たらハダシのデビュー作は完全に「過去」のもの。しかし、ハダシにとってのデビュー作は、現在進行系の「今」の話であり、二人の今と過去の「時差」こそが絶妙な掛け合いを創出している。

 

ハダシと凛太郎が自然に距離感を詰めていくのは、その時差が次第に解消していくことを表す。

 

映画は時間を自由に操れる、だからこそ映画は面白い。映画の本質的な魅力を高校生ハダシと凛太郎の恋愛に投影していることも、巧みな脚本になっている。

 

 

 

 

 

誰もが生きやすい、素晴らしきこの世界

 

また、今作で最も象徴的なのは、学校生活の描かれ方だった。

 

今も昔も、学校はスクールカーストが当たり前。プロムとクイーンを頂点に、完全に序列のできた小世界が学校生活ではないだろうか。

 

私だけでなく、多くの人が学生時代に経験しているはずだ。ハダシのような趣味を持つ人は、「桐島」で描かれたようにクラスの上の存在からは陳腐な存在として扱われる。

 

昔に比べて幾分かましになったのかもしれないが、まだカースト制度は消えてないだろう。

 

 

 

このカースト制度に今作のキャラクターを照らし合わせると、同じ映画部でもキラキラ映画(バカすぎてタイトル忘れた)を撮っている人は「上」で、ハダシは「下」の存在にしか見えない。

 

そして、往々にして「下」は「上」の存在を恨み、妬んでいることが多い。

 

ハダシは文化祭でキラキラ映画を潰して自分の作品を上映しようとする破壊願望の持ち主で、正直感情移入できないレベルでひがんでいる。

余談だが、伊藤万理華さんほど、しかめっ面が似合う女優はいない。

 

一方で、「上」の人たちは下をどう見ているだろうか?

 

ビート板は風呂場でキラキラ映画監督に向かって「負ける気しないから」「争ってるから」と啖呵を切る。しかし監督の方は「眼中になかった」と言い返す。一見すると冷たい言い方に見えるが、あくまで売り言葉に買い言葉のようにも見える。

 

線香花火のような静かな火花が散り始めたかと思いきや、後半で驚きの展開を見せる。

 

キラキラ映画部の方でトラブルが起きたことを知ったハダシは、前半の恨みはどこにいったのか、キラキラ映画部に助け舟を出す。

 

そこから今作は、最高潮の盛り上がりを見せる。

 

結論から言えば、今作の学校生活に「上」も「下」もなかった。

 

眼中にないと言い放ったキラキラ映画監督の真意は、勝負や上下に関する意識に関して「眼中になかった」のではないだろうか?

 

このように、「下」が勝手に決めつけた「上」のイメージが完全に覆る瞬間は、昨年の大傑作青春映画「ブックスマート」に通じる部分がある。

今作は、日本版「ブックスマート」にも思える。

 

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現在、邦画の青春映画で最も引用されることの多い作品は「桐島」だと思うのだが、桐島のような痛々しいスクールカーストは、今作には存在しない。

 

今作で学園生活の描写を大幅にアップデートしてみせたのだ。

 

だれがどんなことをしても、嫌われずに尊重される世界が、そこにあった。

なんて素晴らしい世界だろう。生まれ変わったら、この映画の世界線に乗りたい。

 

  

 

 

まとめ

噂には聞いていたが、まさかこれほど素晴らしい作品だったとは。。

 

ラストについては深く語らないが、絶対にネタバレできないので劇場で確かめてほしい。

 

前述したように、上も下もない素晴らしい学園生活がそこにある。

桐島のようにゾンビ映画を使って気に入らない奴らを噛み殺す時代は、もう終わったのだ。

 

この映画で描かれていることが、実際の高校生活に反映されてくれると嬉しい。

切に願うばかりだ。

 

96点 / 100点 

 

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