[あらすじ]
・アメリカの辺境を舞台に現代社会が抱える問題や現実をあぶりだした「ボーダーライン」「最後の追跡」で、2年連続アカデミー賞にノミネートされた脚本家テイラー・シェリダンが、前2作に続いて辺境の地で起こる事件を描いた自らのオリジナル脚本をもとに初メガホンをとったクライムサスペンス。第70回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞。主演は「ハート・ロッカー」のジェレミー・レナーと、「アベンジャーズ」シリーズのエリザベス・オルセン。ネイティブアメリカンが追いやられたワイオミング州の雪深い土地、ウィンド・リバーで、女性の遺体が発見された。FBIの新人捜査官ジェーン・バナーが現地に派遣されるが、不安定な気候や慣れない雪山に捜査は難航。遺体の第一発見者である地元のベテランハンター、コリー・ランバートに協力を求め、共に事件の真相を追うが……。
[数奇な運命?のキャスト]
主演はジェレミー・レナー、そしてエリザベス・オルセン
もうお分かりですね?
アベンジャーズのアイツとアイツですよww
キャスティングするとき、絶対アベンジャーズのこと考えただろうなぁ、、、
ホークアイとスカーレット・ウィッチが並ぶと、一気にゴージャスな感じがするんですけども、なんと今作が全米で公開されたとき、なんと4館しか公開されてなかったんですって。
ジェレミー・レナーが主演なのに4館スタートって、、なんだかホークアイの扱いみたいに小さいよねww
実は、映画を見るまで主役がエリザベス・オルセンだとは知りませんでしたw だって映画の予告もほとんど流れないし、ジェレミー・レナーばっかり出てるし、エリザベス・オルセンを知ることが難しかったんですよ。だから、彼女が出てきた時は「はっ!?」って驚いたのが記憶に新しいですねw
[どんな話なのか?]
アベンジャーズの主要キャストを使って、今作ではジェレミー・レナーが野生生物局、エリザベス・オルセンがFBIの捜査官を演じています。
舞台はワイオミング州の田舎町、アメリカの先住民族の保留地であるウインド・リバー。
ジェレミー・レナーがいつものように肉食動物をハントしてると、珍しく人間の足跡を見つける。
足跡をたどっていくと、若い女の子が死んでいた。警察を呼んだジェレミー・レナーだったが、なぜか来たのはFBIの捜査官エリザベス・オルセンだった。
実は、ウインドリバー保留地は鹿児島県ほどの大きさがありながらも警察官が6人。さらに女の子が死んだ、死因を捜査するとなると、FBIを呼ばざるをえなくなる。
そんな警察機能が全く機能しない土地で、女の子の死因を探っていくうちに、物語は思わぬところに進んでいく・・・といった話です。
それでは映画の感想でっす!!
[映画の感想]
こんな映画見たことない!
冷たく重たい乾いた土地で、一人の女性の遺体捜査から始まった話で、、、、
まさか西部劇が始まるなんて・・・
監督の作家性全開の現代の西部劇を描きながらも、バックボーンには現代のネイティブアメリカンの過酷な現状を鋭く描く社会問題的な作品でもあり、、、
優れた脚本による優れた俳優による優れた編集による素晴らしい作品に、これぞ映画なんだと改めて実感できた。
重く辛い話なのに、誰一人泣きわめいたりしない、抑制の効いた演出が、逆に観客の心を突き動かす。。
女性が乱暴されるシーンの時には、あまりにリアルで絶望的な光景。
その光景に耐え切れず、飲みかけのペットボトルを握りつぶしながら頭の中が「怒り」に侵食されてしまった俺がいた。。。
そして、最後の最後に犯人に復讐するシーンに、さらにペットボトルを握りしめながら「ザマァぁぁぁぁぁぁ!!! これが因果応報だ!!! これが因果応報だ!!! 苦しめ!!!! そして一生悔いろ!!!」と嬉々して復讐シーンを楽しんでしまった俺がいる。
でも、最後は誰しも最初から悪者じゃなかったことに気づく。犯人をあそこまで底辺に陥れた奴は誰なのか? 何が元凶なのか?
物語の根本を突き詰めると、アメリカの先住民迫害にたどり着く。そして今もなお、西部開拓時代は続いてると実感する。
アメリカは今も弱肉強食の世界なんだと改めて気づく。
西部劇というエンターテイメント要素と先住民迫害という社会問題要素が見事に両立した作品。。
今年ベスト級の大傑作でした。
しばらく、休日はウインドリバーのTシャツ着ると思います。
[抑揚的な演出に、観客はむしろ感情的になる]
はい、すでに鑑賞を終えたMachinakaです。
映画を見る前に評判は聞いてたのですが、まさかここまでよく出来た作品とは思いませんでした。
アメリカとはとても思えない白銀のワイオミング州ウインドリバーという舞台に加えて、一人の女性の遺体調査から徐々に主人公の過去が明らかになっていくクレバーな脚本。美しい白と銀色のデザインの映像。先住民の悲痛とも思えるうめき声的なBGM。
もう映画を見終わった時すぎに思いましたよ。「パンフを買わねば!」って。
ゆっくりロビーに移動していた俺がバカでした。パンフを買いたいと考えていた人は俺の他にもたくさんいたようで、パンフを買う列とチケットを買う列でロビーは大混雑でした。
それほど観客の心を鷲掴みにした作品ですが、決してエンタメ要素がある映画ではないんです。
西部劇が主体になってますが、ドンパチがずっと流れるわけでも勧善懲悪な話でもない。
むしろ、良い意味で盛り下がる部分が多い。
冷たく重苦しいシーンが多いにも関わらず、喜怒哀楽の感情を全て吐き出させてくれた、稀有な映画でありました。
白銀の世界で西部劇をやるという斬新な世界観に目から鱗だったのは間違いないですが、それだけじゃない。
あたかもフィクションに思えるサスペンスが、これは実話なんだと冒頭に明示され、最後に社会問題の重さを痛感させられる。もうどう形容していいか分からない作品でした。
映画の演出は非常に抑揚的で、誰も泣き叫んだり変に怒りをぶつけたりしない。劇場版コードブルーなんかとは違って、インスタント的な即興的な感動はない。
ある一つの方向に向かって、物語が進んでいく。しかし、決して単純な謎解きサスペンスにしないで、物語が進みながら主人公ジェレミー・レナーの過去が明らかになり、冒頭の事件と自然にリンクしていく。
そんな脚本の巧みさに感心しながらも、極寒の自然風景と重ねるようなキャラクターたちの冷たく静かな怒りに、観客の血管はグツグツと煮えたぎり、ついに事件の全貌が明らかになる時にはもうフーリガンのように「ウォォォォォォォ!!!」と叫びたくなるような、感情を引き出されることになってしまったのです。
あくまで自然に事件の顛末を語っているのですが、元々の話が非常に重苦しい話であるため、見ている俺の頭の中に鈍痛が走るほどの衝撃が叩きつけられる。
しかし、映画は抑揚的な演出のため、衝撃的なシーンとギャップが生じる。そのギャップを埋めるために、見ている間は口を開きながら無言で「ウォォォォおおおおおお!!!!」って頭の中で言ってました。本当に応援上映してほしいよ、この映画w
女性が死んでしまった原因が何なのか? 事件の顛末は何だったのか? そして、ジェレミー・レナーが抱える過去とは何だったのか?
そもそも、何故野生生物局のジェレミー・レナーがFBIの捜査なんかに協力するのか?
ジェレミー・レナーは聖人だ!とてつもなく優しい人だ!! って訳じゃないんです。ちゃんと協力する理由があるんですけど、この理由を話すところがあまりにもサラっと流れていくから、ビビりますよもうwww
とにかく、抑揚的な演出であるにも関わらず、キャラクターの感情や考えてることをセリフではなく映画的に見せていくところが、本当に映画らしいというか、映画でしかできない表現であると思いました。
やっぱり映画って間接話法だから非日常感があるし、面白いって改めて実感出来ると思いました。
[なぜ監督は境界ばかり描くのか?]
そして、現代にこんな西部劇をやる理由ってのが、「現代のアメリカでも西部劇はあるんだ」という社会問題に切り込んでいくのもテイラー監督の手腕だと思います。
テイラー監督は、前作「最後の追跡」でも現代の西部劇を撮っていて、「現代社会的な問題を交えて西部劇を描く」のが本当に上手い人というか、ライフワークとしてる人なんですけども。
そして、「ボーダーライン」ではアメリカとメキシコの国境の麻薬戦争を描いて、今作でも州法が適用されるアメリカと州法が適用されないウインドリバーという境界における事件を描いてました。
なぜここまで監督は「境界」ばかり描くのでしょうか?そこに何があるのでしょうか?
私が思うに、監督は「白黒ハッキリさせることで逆に分からなくなってしまうことがある。白と黒の境界を描くことで世に出ないグレーゾーンな人々をあぶり出す」ことが監督のテーマなのかなぁと思いました。
白黒ハッキリ線引きさせて、役割を明確にすることは一見して効果的にも思えます。しかし、世の中コンピュータみたいに白黒ハッキリしすぎると、かえって分からなくなってしまうことがある。
例えば、今作のウインドリバーは保留地内は州法が適用されない、ある意味無法地帯な場所で、外は州法が適用される。
じゃあ、その境界線上では何が起こっているのか?中と外の中間ではどんな世界が待っているのか?
それを象徴的に描いたのが、冒頭の女性の死亡なんだと思います。
他殺か自然死かでFBIが動けるのかどうかといった線引きが左右される、線引きに左右される人間達に、観客はどう見たって「お前らアホか」とつっこみたくなる。
線を引いたところで限界はある。白と黒の間にこそ、世の中の本質が描かれているし、勧善懲悪なんて完全なフィクションなんだと痛感させられる作りになっているのが良かったですね。
確か、ボーダーラインでも正義のはずのFBIがメキシコ警察と衝突して、右往左往する様が描かれます。
メキシコ警察に任せるしかない、という現状であるのに、肝心のメキシコ警察はマフィアと癒着して誰も助けてくれない状況に陥ってしまう。だから「カルテルランド」のような自警団が生まれてしまう。
そして、FBIもメキシコ警察も助けてくれないような世界こそ、かつての西部時代の無法地帯につながるし、つまり境界を描くことで西部劇の世界にピッタリな舞台が合理的に構築されていくんですよね。
だから監督は境界ばかりを舞台にした映画を撮るのかなぁと思いました。
[白銀のデザインにうっとりする]
あとはデザインの話。白銀の世界の中に、さらに白い帽子と白い服と白いグローブ。そして銀の銃を持つ白人のジェレミーレナー。
もう白と銀で固められたデザインにうっとりして仕方ありません。
驚いたのは銃だけじゃなくてスコープも白いのが素晴らしいんですよ!! 白銀の自然風景に白装束のジェレミー・レナー。なんて美しい白の統一感なんだ!!
こんな白に統一された映像なのに、西部劇で使われてるような昔ながらのリボルバーを携えてるんですよ!?
どんだけかっこいいんですか!?
どんだけ新しいんですか!?
ジェレミー・レナーの格好良さに改めて気付ける素晴らしい映画であること間違いなしです!!!!
というのはあくまでオマケで、アメリカの先住民の現状を知れる社会派作品でありながらも、うまく西部劇の復讐劇に社会問題を取り入れ、唯一無二の作品になっておりました。
もう、とにかくネタバレできないけど絶対に見て欲しい作品でございます!!!!!!
頼むから見てくれ!!!!