- まえがき
- あらすじ
- 「スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース」のネタバレありの感想と解説(全体)
- スパイダーマン作品群の物語的運命性を逆手に取った傑作
- 新キャラと新しく生まれ変わったキャラクター
- アニメと実写の枠を横切った作品
- まとめ
まえがき
今回批評する映画はこちら
「スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース」
それでは「スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。
あらすじ
・ピーター・パーカーの遺志を継いだ少年マイルス・モラレスを主人公に新たなスパイダーマンの誕生を描き、アカデミー長編アニメーション賞を受賞した2018年製作のアニメーション映画「スパイダーマン スパイダーバース」の続編。
マルチバースを自由に移動できるようになった世界。マイルスは久々に姿を現したグウェンに導かれ、あるユニバースを訪れる。そこにはスパイダーマン2099ことミゲル・オハラやピーター・B・パーカーら、さまざまなユニバースから選ばれたスパイダーマンたちが集結していた。愛する人と世界を同時に救うことができないというスパイダーマンの哀しき運命を突きつけられるマイルスだったが、それでも両方を守り抜くことを誓う。しかし運命を変えようとする彼の前に無数のスパイダーマンが立ちはだかり、スパイダーマン同士の戦いが幕を開ける。
オリジナル英語版ではシャメイク・ムーアが主人公マイルス、ヘイリー・スタインフェルドがグウェン、オスカー・アイザックがミゲルの声を担当。
「スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース」のネタバレありの感想と解説(全体)
「#スパイダーマン :アクロス・ザ・スパイダーバース」鑑賞!!
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2023年6月13日
今年のアカデミー賞はこれで決まりか。
アニメ・実写の枠を「アクロス=横切る」ことにより無限の可能性が生まれる。
何度となく見てきたスパイダーマンの「運命」を「アクロス=超える」瞬間に心震えた。
新たな歴史の目撃者になった。 pic.twitter.com/36F5NOtxQM
スパイダーマン作品群の物語的運命性を逆手に取った傑作
個人的には前作を遥かに上回りました。
これだけマルチバースが先行していて、前作に引き続きマルチバースの話。
今回はマイルスがマルチバースの世界に向かう立場となり、二転三転する展開と倍々増するキャラクターの魅力に心奪われました。
今作は続編には付き物となる「インフレ」も起きていました。
1回見ただけでは把握できない膨大なスパイダーマンの数々は正直面くらいましたが、スパイダーマンという共通項と求心力の高い物語にグイグイ引っ張られ、スパイダーバースの世界の虜になりました。
ここまで面白いとは、正直思ってませんでした。
たかが続編。しかも俺たちは既にノーウェイホームを観ている状態で、マルチバースによって起こされた悲劇を知っている。
どうせ同じようなタッチの違う絵を混ぜ込んで、マルチバースに行ってわちゃわちゃして終わるんだろうと(言い方が酷い)、そう思ってましたよ。
全然違ってました。久しぶりにこんな素晴らしい続編に出会えて、心から拍手を贈りたい。
そもそもスパイダーマンだけのマルチバースが成立してこんなにも面白いんですよ。MCUでは多彩なキャラクターが出てきて、全く違う特殊能力でバックボーンで。権利の都合上、ソニー制作の場合はスパイダーマンしか深掘りできないわけですよ。
でも、かえってスパイダーマンに絞ったマルチバース作品が成功しているんですよね。
同系列のキャラクターを出すことによって、どれだけスパイダーマンが増えようが、まとまりが良くなりキャラを覚える時間も最小限で済む。
前作で何度も各スパイダーマンが「説明しよう・・・」、以下略。と繰り返すように、スパイダーマンの生い立ちはどれだけ省略しても問題ないんですよね。
単一のキャラクターのマルチバースで映画を撮ることって、実は非常に難しいですが夢がありますよね。よっぽどキャラクターの魅力がないとできない芸当です。
アイアンマンのマルチバース、バットマンのマルチバースが出ても劇場で流れるのか、売れるのか。スパイダーバースに続く単一キャラマルチバースは現れるのでしょうか。
スパイダーマンは、これまで多くの役者が同じ結末を辿ることで、既にマルチバースのような現象を起こしてるんですよね。
それを映像化したのがノーウェイホームで、観客があれだけ感動できたのもスパイダーマン作品群自体がマルチバースとの親和性が高く、「過去に○○ができていれば・・」と切望する感情も高ぶるわけです。
換言すればスパイダーマン作品群の物語的運命性が非常に高いわけです。
我々映画ファンは、2000年以降からスパイダーマンの悲劇を何度となく見てきました。
育ての親が死ぬ、恋人が死ぬ、そして存在を忘れ去られる・・・。
どうやっても悲劇的な結末になってしまうことを、我々は経験的に知っている。
自然とマルチバース的な要素にタッチしていたわけです。
今度こそはスパイダーマンに幸せになってほしいと願っていたわけです。
そして、今作で遂に運命を破壊する突破口を作りました。
運命性を逆手にとって、見事な逆転劇を作ったのです。
今作をどんなマルチバースで見たとしても、絶対に感動してしまう自分が容易に想像できます。。
スパイダーバース作品単体ではなく、これまでのスパイダーマン作品群全体に対する願望を実現した作品でもあるのです。
とにかくありがとうとしか言えないし、続編が期待できるのです。。。
新キャラと新しく生まれ変わったキャラクター
今回は100や200じゃ足りないようなスパイダーマンが登場してきて、本当に覚えるのが大変でしたね・・・笑
マルチバースを統括管理するミゲル・オハラ。いつものスパイダーマンのように軽口を叩かない、真面目で威圧的。だが、バックボーンを知ると魅力的。
ピーター・B・パーカーのように、家族に関して暗い影を落とすスパイダーマンは多いのですが、彼の抱える闇は誰よりも深く感じました。
まさかのロックアーティストになったスパイダーマンであるホービー・ブラウン。今回マイルスがマルチバースを脱するために決定打を放ったキーキャラクターですね。これはファンが増えるんじゃないかなぁ。
インドのムンバイに模した街でヒーローを務めるパヴィトル・プラパカール。
まさかインドのスパイダーマンが出てくるとは思ってなくて、髪型も戦い方も独特で面白かったですw
あとは小ネタ的に、レゴの世界でのスパイダーマンも登場してましたねw
脚本と制作を担当したクリストファー・ミラー、フィル・ロードは過去にソニーで「レゴムービー」を監督しており、その縁で出ているのだと思いますw
他にも新しいキャラクターはいろいろ居るのですが、今回新たに生まれ変わったキャラクターという意味でグウェンの存在は言及しておかなければなりません。
もう一人の主役、と言っても過言ではないでしょう。
モラリスの父親・母親との対峙と呼応するかのように、グウェンの父親との物語も進行していきます。どのスパイダーマンも同じ家庭環境ではあるのですが、グウェンとモラリスの環境を重ねることにより、2人の距離がグッと縮まります。
急接近する2人。先にマルチバース世界を行き来するグウェンはモラリスのことが気になって仕方ない。
ドキドキワクワクが止まらない展開にニヤニヤしましたねw
そして、後半にモラリスに関する驚きの事実が明らかになりますが、ここで今までの仲睦まじい関係が一変してしまうわけですよね。
モラリスはもともとクモに噛まれる存在ではなかった。そもそもモラリスの世界では、スパイダーマンは存在しなかった。
ミゲルはスパイダーバースの頃から仕事をしていたわけで、そう考えるとなぜモラリスの世界に多くのスパイダーマンが入ってきたのか理屈が通りますよね。
モラリスが異分子だからですよ。もしかしたら、ミゲルから指示があったのかもしれない。
全てが崩れてしまうわけですよ。グウェンとモラリスの仲も、スパイダーマンたちとの仲も。
絶対に運命を変えてはいけない世界観で抵抗するグウェンとモラリス。
グウェンの身を案じるが故に保守的な面を見せる一方で、運命を変えてほしいとも願う。非常に難しい役どころでした。。。
アニメと実写の枠を横切った作品
また、今回の映像演出で一番驚いたのは実写のスパイダーマンも登場したことです。
トビー・マグワイア、アンドリュー・ガーフィールドがチラ見えして、トム・ホランドはいませんでしたがドナルド・グローヴァーが出てきましたねw
ドナルドが一番登場シーン長かったよww
まさか実写作品が出てくるとは思いませんでしたね。
まとめ
全スパイダーマンファンが願っていた運命への抵抗。
見事に映像化してやってのけました。
次回でどうなるかわかりませんが、きっと運命を変えて幸せな過去に修正できるように頑張ってくれるでしょう!!
96点 / 100点