- はじめに
- あらすじ
- 長編アニメーション賞の大転換期
- 映画の感想
- アカデミー賞も納得の新感覚映像体験
- スピード感がおかしいドラッグムービー
- アニメと漫画の絶妙なミックス
- 作画の多様性が今年のアカデミー賞を物語る
- 絶望した!?シャフトのようなアニメ技法に震えた!
- レゴバットマンと笑いの質が似ている
- スタンリーとは?
はじめに
今回公開する映画はこちら!
「スパイダーマン:スパイダーバース」
それでは「スパイダーマン:スパイダーバース」、感想・解説、ネタバレありでいってみよー!!!!
あらすじ
・時空が歪められたことにより、異なる次元で活躍するスパイダーマンたちが集められた世界を舞台に、主人公の少年マイルスがスパイダーマンとして成長していく姿を描いた長編アニメーション映画。ニューヨーク・ブルックリンの名門私立校に通う中学生のマイルス・モラレス。実は彼はスパイダーマンでもあるのだが、まだその力をうまくコントロールできずにいた。そんな中、何者かによって時空が歪めらる事態が発生。それにより、全く異なる次元で活躍するさまざまなスパイダーマンたちがマイルスの世界に集まる。そこで長年スパイダーマンとして活躍するピーター・パーカーと出会ったマイルスは、ピーターの指導の下で一人前のスパイダーマンになるための特訓を開始する。ボブ・ペルシケッティ、ピーター・ラムジー、ロドニー・ロスマンの3人が監督を務め、「LEGO(R) ムービー」のフィル・ロード&クリストファー・ミラーが製作を担当。第91回アカデミー賞で長編アニメーション賞を受賞。
長編アニメーション賞の大転換期
映画の感想
なんという映像!! 何これ!? 今まで見たことないよ!!!!!
アカデミー賞も納得の新感覚映像体験
暫定ですが、今年ベスト1のアニメを今、見てしまいました。
スパイダーマンということで、何度もテレビアニメ&実写映画化されて、何度も何度も映像化されている中、いよいよ大傑作がやってきてしまったという印象です。
感動して、もう涙が止まりません。。
アカデミー賞に選ばれて、なんでこんな映画が選ばれたの? と違和感ある人いるかもですが、これは必然ですよ!!
今やスパイダーマンといえばディズニーのアベンジャーズ(実写)が大人気の中、ソニーピクチャーズの出した決断は「アニメ」
その采配が、他のスパイダーマン作品とは一線を画し、スパイダーマン映画としてもアニメーション映画としても他を寄せ付けない斬新な映画を作るに至ったのです。
予告編では絶対に分からなかった驚異のアニメーション体験が、あなたを待ち受けています。
詳しくは後で書きますが、この映画は映像なしには語れません。
逆に物語はと言うと、あまり目新しいものはありません。
主人公にノレるかと言うと、あまりノレません。
でも、パラレルワールドで別次元からやってきたスパイダーマンたちの共存をアニメーションで説明するという、これ以上ない映画的表現を達成したことの喜びに、体を震わせるしかありませんでした。
では、いかに今作の映像表現が素晴らしかったのか、書いていきます。
スピード感がおかしいドラッグムービー
まずですね、スピード感がおかしいんですよ。この映画。
どう考えても人の目が追いつけなそうなスピード感。瞬きしたら別の場所に飛んでいるようなスピードで、カメラが動きます。
だからドラッグムービーだと思ったんですけども。
私は何もしてないですよ!? 何も変な薬とか飲んだことないですが、まるで危ない薬を飲んでトリップしているような感覚に襲われるほど、画面の展開が早すぎる。
スパイダーマンのアクションの速度も大きいと思うんですけど、一番大きいのは「秒あたりのカット数」
アメリカのアニメーションはCGのため、1秒間に流れるカット数がすごく多い。まぁ、CGだから自由自在ですよね。
でも、手書きの多い日本では1秒間に24コマ流すのが普通。それでも十分に切れ味良いアクションが見れるんですよ!!!
でも今作は、さらにコマ数が少なくて驚きました。まるでストップモーションアニメのような、1秒あたり10コマ程度の絵しか流れない時もある。
ストップモーション的なアニメ表現もあれば、普通のCG的な映像も流れる。
この映画がよく評価される理由としては、作画の使い分けが凄いって言われてるんですけど、個人的にはこの秒あたりのコマ数を自在に操っているのが凄いって思いました。
アニメでも、スローモーションになったり早く動いたりにはなるんですけど、ここまで露骨にカット数の振り幅が大きいのは珍しい。
それでも見事なバランスで絵が動いていくので、目が幸せになるんですよ!
アニメと漫画の絶妙なミックス
最初はすごくスコットピルグリムみたいな世界観だなぁと思いました。
だってねぇ、漫画的な世界が急に実写の世界に入ってくるのはスコット・ピルグリムだよね。
ただ、ピルグリムはゲームの世界なんですよね。
漫画ではなく。
実写とゲームの組み合わせって、ありっちゃあアリなわけです。
でも、アニメと漫画の融合って合いそうで合わないんですよ。
なぜなら、アニメは動的で、漫画は静的だから。
動的なものに静的なものを入れる事の難しさがあるんです。
アニメの流れるような絵と、漫画のような止め絵。
これをどうやってミックスさせるのか、てか、ミックスなんて無理に近いだろうに。
ただ、今作ではいとも簡単にアニメと漫画を融合。
これには、先に挙げた秒単位のカット数の少なさが大きく起因してると思います。
例えば、日本のように秒単位カット数が24のアニメの場合だと、その中に漫画のワンカットを入れようとすると、すごく違和感があるんですよ。
普通のアニメーションなら24カットのうち1カットずつ動いてるはず。でも漫画で同じことをやろうとすると、24カット中全て静止画になってしまう。
漫画を入れる分絵が止まってしまうわけです。なので、漫画を入れるとどうしてもテンポが悪くなってしまう。
しかし今作は、極端に秒あたりのカット数が少ないんです。
そう、どう考えてもアニメーションのカットじゃない。
まるで、パラパラ漫画のような・・・
ここで、ある仮説を思いついたんですが、今作のアニメーションは従来の王道たるアニメを目指したのではなく、パラパラ漫画的なアニメーションを目指したんじゃないのでしょうか?
今作で多用されるスパイダーマンの漫画と合わせるために、CGを少なく手書きが多め。まるで漫画がパラパラ動いてるようなカット数の少なさ。
漫画と親和性を高めるために、ここまでカットを削ぎ落とし、違和感なくしたのだと思ってます。
作画の多様性が今年のアカデミー賞を物語る
スパイダーバースといえば、それぞれの次元から来たスパイダーマンの作画が、それぞれの作画で描き分けられているのが最大の特徴ですよね。
CG、手書き、漫画風、平面的、モノクロ。色んな作画のスパイダーマンが一つのスクリーンの中に収まっている。
なんて無茶なマネを!!!!
最初はそう思ったんですけど、これがまた新鮮で面白いんですよ。
特にスパイダーロボを操る女の子と、モノクロのスパイダーマンがあまりにも違いすぎてて、スイカと天ぷらみたいな食べ合わせの悪さが起こると思ったんですけどね。でも、そんなのは関係なかった。
肌の色も作画のスタイルも全く異なる人々が一緒にいると、それだけで愉しい。ユートピアを感じられるんですよ。
今作は2019年アカデミー長編アニメーション賞に選ばれました。
今年のアカデミー賞のキーワードは、間違いなく「多様性」
人種問題、男女差別、LGBT。受賞した作品には必ずと言っていいほど、多様性について言及していました。
一方のスパイダーマンに多様性があるかといえば、黒人のスパイダーマンが主人公だったという点はすぐに見つけることはできるでしょう。
しかし、大事なのはそこじゃないんです。今作は別の方法で、多様性を表現していました。それは、、
作画の多様性自体が、今年のアカデミー賞を象徴していた
と思うのです。
普通は世界観が崩れないよう、同じようなタッチで統一する。
でも、今作ではあえてバラバラに。
線の太さや、数。
平面的か立体的か。
線的か円的か。
淡い色かビビットか。
みんな違ってるんです。
でも、その違いこそ人の多様性を表しているし、それが移民の国アメリカでしょ!!!
絶望した!?シャフトのようなアニメ技法に震えた!
スパイダーバースの作風として、一番似てるなぁと思ったのは「ひだまりスケッチ」、「物語シリーズ」などのシャフトですね。
つまり、新房昭之監督っぽいとも言える。
あまりに斬新で奇想天外なアニメーションで話題となったシャフト。
僕はそのときリアルタイムで見てて、本当に大好きな作品ばかりでした。
特に今回のスパイダーバースは、すごい「ひだまりスケッチ」っぽいんですよ!!! ちなみに私、ひだまりスケッチが大好きで!!
ひろさえ卒業式のブルーレイ、卒業証書が付いてくる特典付きのバージョンを買いましたよ。
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スパイダーバースは以下のような特徴があって
・テンポの良すぎるカメラワーク
・アニメの中にアニメ以外の要素を入れる
・ドアが開くシーンをズームで撮る
・きゃりーぱみゅぱみゅ的な奇抜な色使い
・ドット柄の多用
どれも「ひだまりスケッチ」に近い。。
・ドット柄の多用
全身にも、背景にもドットばかりが描かれてるんですよ。
背景もドットばかり。
よーく見ると、細かいドットが。
基本的にひだまりスケッチのドットって、ポップな印象を感じる大きめで明るい色の円の集合体であることが多いんです。
ただ、以下のさえさんの画像は、かなりスパイダーバースと近い
© TBS, ひだまり荘管理組合
スパイダーバースの背景って、こういうドット柄の背景が本当に多いんです。カラフルなんですよね。一方のひだまりスケッチのドットは、モノトーンが多いですが。
・アニメの中にアニメ以外の要素を入れる
アニメに漫画を入れるのも、すごいスパイダーバースっぽい。
何より極め付けはこれ。
アニメの中に、実写の写真を入れたり、モノクロを入れたり、とにかく多様性のある絵作り、これがひだまりスケッチの真骨頂なんです。
このような絵の多様性が、スパイダーバースに通底するものがあると思います。
レゴバットマンと笑いの質が似ている
オープニングのセルフパロディは激似ですね!
スタンリーとは?
最後のエンドロールでスタン・リーのセリフが流れましたが、スタン・リーとはスパイダーマンの生みの親であり、伝説の編集者です。
昨年に惜しくも他界されました。