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映画「ディア・エヴァン・ハンセン」ネタバレあり感想解説と評価 心の悲痛を叫び続ける異色ミュージカル

 
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この記事では、「ディア・エヴァン・ハンセン」のネタバレあり感想解説記事を書いています。
 
 目次
 

まえがき

 

 

今回批評する映画はこちら

 

「ディア・エヴァン・ハンセン」

 
 

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(C)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.
「ワンダー君は太陽」のスティーブン・チョボウスキー監督の最新作。
前作は、今作と同じく学校を舞台として、孤独な少年が徐々に心を開いていく作品だった。そして、主人公を中心に周囲のキャラクターが光り輝いていく、主人公=太陽と捉えられるのが特徴でもある。
 
今作では、「ピッチ・パーフェクト」で非常に印象的だったイケイケ男性アカペラグループ、の中でも超地味なキャラだが歌はべらぼうに上手いベン・プラットが主人公。
 
彼が主役だと聞いて、期待しかしなかった。

 

東京国際映画祭でいち早く鑑賞してきた。

 

それでは「ディア・エヴァン・ハンセン」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。

 

 

 

 
 

あらすじ

  
・トニー賞で6部門を受賞し、グラミー賞、エミー賞にも輝いたブロードウェイミュージカルを映画化。監督を「ワンダー 君は太陽」のスティーブン・チョボウスキーが務め、音楽を「ラ・ラ・ランド」「グレイテスト・ショーマン」「アラジン」など大ヒットミュージカル映画に携わってきたベンジ・パセック&ジャスティン・ポールが担当。学校に友達もなく、家族にも心を開けずにいるエヴァン・ハンセンが自分宛に書いた「Dear Evan Hansen(親愛なるエヴァン・ハンセンへ)」から始まる手紙を、同級生のコナーに持ち去られてしまう。後日、コナーは自ら命を絶ち、手紙を見つけたコナーの両親は息子とエヴァンが親友だったと思い込む。悲しみに暮れるコナーの両親をこれ以上苦しめたくないと、エヴァンは話を合わせ、コナーとのありもしない思い出を語っていく。エヴァンの語ったエピソードが人々の心を打ち、SNSを通じて世界中に広がっていく。エヴァン役をミュージカル版でも主役を演じたベン・プラットが演じるほか、ケイトリン・デバー、ジュリアン・ムーア、エイミー・アダムスらが脇を固める。

ディア・エヴァン・ハンセン : 作品情報 - 映画.com


 

 
 
 
 
 
 

「ディア・エヴァン・ハンセン」のネタバレありの感想と解説(全体)

 

 
 
 
 

心の悲痛を叫ぶ異色ミュージカル

 
こんなミュージカルがあっただろうか。
 
ミュージカルは明るくて陽気。最後は必ずハッピーエンドと、相場は決まっている。
 
曲調もアッパーなものからバラードまで様々な種類のものが用意されており、大人数でのダンスが見もの、というのがミュージカル映画の定説ではないだろうか。
 
しかし今作では、そのようなミュージカルの定説を壊し、唯一無二の作品に仕上がっている。
 
その最たる特徴は、ほとんどの曲がキャラクターの心の悲痛を叫ぶ内容であり、壮大に歌い上げているものの底抜けに明るい曲は僅かである点。
 
その理由は、主人公の心情と曲調がシンクロしている点にある。

 

主人公のエヴァンは友達がおらず、内なる感情を歌にぶつける。

また、彼の周囲のキャラクター達も、直接は言えない悲痛な叫びを歌にする。

 

歌詞とキャラクターのセリフがリンクしているのは、これまでのミュージカル映画でも見られた当然の傾向だが、今回は曲調にまで心情がリンクした点が素晴らしい。

しかも今回は悲痛な叫びばかりが曲に現れるのだから、一つ一つの曲がボディブローのように効いてくる。染みる。

 

暗く悲しい曲ばかりではないのだが、「もっと○○出来たら良いのに!」「なぜ分かってくれないんだ!」といった歌詞がサビに入っていて壮大に歌われると、音楽の枠を超えた、とてつもない感情と感動が押し寄せてくる。

 

そもそも、どんな音楽も作り手・歌い手の想いが込められており、聞き手である我々はその想いを受け取った方が感動もひとしおだ。しかし、全ての曲で受け取れるわけではない。ただの「音」や「詩」としてしか受け取ってない音楽は多い。

 

しかし、今作のように悲痛な叫び=心からの想いを歌にされると、ただのミュージカル、ただの音楽だなんて思えない。

 

例えば、冒頭に流れる「Waving Through A Window」には、「誰か気づくだろうか誰か僕に手を振り返してくれるだろうか?」という歌が流れる。このような曲でミュージカルが流れること自体、珍しくないだろうか。

「ララランド」のように辛い気持ちをあえて明るく歌うような逆説的な演出はない。

今作にあるのは、ただただストレートなキャラクターの気持ちだ。

 

【日本語字幕】Waving Through A Window / Dear Evan Hansen - YouTube


 

このような選曲によって、観客はストレートに歌の裏側にある想いを理解できる。音楽の芯から味わうために、今作は最適な作品だ。

 

  • 自殺したクラスメイトの理由を探る
  • キャラクターがある秘密を抱えながら高校生活を生きていく

といった点で、今作はNetflixドラマシリーズ「13の理由」がミュージカルになったような、そんな映画である。

 

ドラマを見た人であれば、今作がいかに異色なミュージカルかお分かり頂けるだろう。

 

 

より多くの人が知っている作品で言えば、「ブレックファスト・クラブ」と近い部分はある。スポーツマン、真面目ちゃん、不良。勝手に貼られたレッテルではなく、その人の本性を見せていく展開などは近い。

 

ブレックファスト・クラブ (字幕版)

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切なくも、バランスが取れたラスト

 
自殺した少年コナーのことを、とあることをきっかけに親友と偽らざるを得なくなった主人公エヴァン。
 
主人公と同じく、コナーにも友達はいない。彼の家族は親友と聞かされたエヴァンに頼るしかない。次第にエヴァンとコナーの家族と親睦を深め、コナーの妹とも恋仲になっていくのだが、今作は安易なハッピーエンドは選択しなかった。
 
理由はどうであれ、嘘をついたことには変わりないエヴァンに訪れる結末は、これまでのミュージカル映画にはないレベルの切なさと悲しさが同時に訪れる。
嘘をついた罰、という表現はあまりに短絡的だが、自業自得にも見える結末が待っている。
 
しかし今作は、前作「ワンダー君は太陽」と同様に、主人公によって照らされた周囲のキャラクターの「気づき」によって、「誰のせいでもない」とバランスの取れた結末になっているのが絶妙なポイントだ。
 
 
確かに嘘をついたエヴァンは悪い。
しかし、彼の嘘によってコナーに対するイメージが変わり、本当の彼を見つけることが出来たのは、紛れもなくエヴァンのおかげだ。
 
誰にもエヴァンを断罪することなど出来ない。最初は消極的だった彼が必死になって付いた嘘によって、エヴァンと周囲を明るく照らすことが出来たのだから。
 
つまり、エヴァンは月でもあり太陽でもある。
 
前作「ワンダー..」のタイトルを引用するなら、
「エヴァン 君は太陽と月」といった言い方になるだろうか。
 
前作に加えて、さらに複雑なキャラ造形をやってのけた監督には頭が下がる。
 
最後に、少し感情になってしまうのだが・・・
 
エヴァンは悪くないのよ!!!!誰も悪くないのよ!!!
 
 
 

突然歌うミュージカルの違和感を逆手に取った

 
突然歌うミュージカルの違和感を逆手に取った
 
主人公のエヴァンは内向的で友達がいない。直近に見た映画だと、「ロン」の主人公と同じくらい極端に友達がいない。

 

www.machinaka-movie-review.com

 

そんな彼が、登校中に突然歌い出す。

ミュージカル映画ではお約束の演出だ。突然歌う人をギョッとした目で見るエキストラなどいない。

 

しかし今作では特別な意味を持つ。

 

エヴァンは友達がおらず、学校でもまるで空気のような存在。

学校で歌を歌えば、まるで彼と彼以外の世界が隔絶されたかのような効果をもたらす。

 

つまり、ミュージカル映画のお決まりのルールによって、エヴァンが学校で孤立している様子がより強調されるのだ。

 

これを冒頭一発目に持ってくるのだから、エヴァンの悲痛な気持ちが伝わって泣いてしまった。

 

 

 

 

まとめ

自分でも驚いているのだが、ブログを書く前はさほど評価していなかった。

 

曲の一つ一つが悲痛な叫びで、決して底抜けに明るくないミュージカル。

鑑賞後にテンションが上がるかといえば、そうではない。

 

しかし、記事に書いた今作の巧さ一つ一つが染み渡って、、、、

 

私は今、猛烈に感動している・・・

 

配信で始まったら、もう一度見たくなってきた。

 

最後に、「ピッチ・パーフェクト」でも虐げられてきた方のキャラだったベン・プラットが見事に主演を努め、素晴らしい作品を作ってくれたことに感謝している・・

 

あの作品ではアナ・ケンドリックやアダム・ディバイン、レベル・ウィルソンなど多くの役者が映画に出演しているが、ベンも売れてくれて本当に良かった。。

 

ただ、某大手サイトには「ピッチ・パーフェクト」の出演記録はないことになっているので、是非とも追加登録をお願いしたい。。

 

 

95点 / 100点 

 

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 以上です! ご覧いただきありがとうございました!
 
 
 
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