- まえがき
- あらすじ
- 「ディア・エヴァン・ハンセン」のネタバレありの感想と解説(全体)
- 心の悲痛を叫ぶ異色ミュージカル
- 切なくも、バランスが取れたラスト
- 突然歌うミュージカルの違和感を逆手に取った
- まとめ
まえがき
今回批評する映画はこちら
「ディア・エヴァン・ハンセン」
東京国際映画祭でいち早く鑑賞してきた。
それでは「ディア・エヴァン・ハンセン」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。
あらすじ
・トニー賞で6部門を受賞し、グラミー賞、エミー賞にも輝いたブロードウェイミュージカルを映画化。監督を「ワンダー 君は太陽」のスティーブン・チョボウスキーが務め、音楽を「ラ・ラ・ランド」「グレイテスト・ショーマン」「アラジン」など大ヒットミュージカル映画に携わってきたベンジ・パセック&ジャスティン・ポールが担当。学校に友達もなく、家族にも心を開けずにいるエヴァン・ハンセンが自分宛に書いた「Dear Evan Hansen(親愛なるエヴァン・ハンセンへ)」から始まる手紙を、同級生のコナーに持ち去られてしまう。後日、コナーは自ら命を絶ち、手紙を見つけたコナーの両親は息子とエヴァンが親友だったと思い込む。悲しみに暮れるコナーの両親をこれ以上苦しめたくないと、エヴァンは話を合わせ、コナーとのありもしない思い出を語っていく。エヴァンの語ったエピソードが人々の心を打ち、SNSを通じて世界中に広がっていく。エヴァン役をミュージカル版でも主役を演じたベン・プラットが演じるほか、ケイトリン・デバー、ジュリアン・ムーア、エイミー・アダムスらが脇を固める。
「ディア・エヴァン・ハンセン」のネタバレありの感想と解説(全体)
#TIFFJP で「#ディアエヴァンハンセン 」鑑賞
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2021年11月8日
自殺したクラスメイトは親友だと偽った事から始まる、孤独に苦しむ人を応援する異色のミュージカル。
突然歌い出しても周りが無反応なミュージカル映画独特の設定も、彼の隔絶された世界を強調する不可視な壁となる。
こんな切ないミュージカル、初めて。 pic.twitter.com/dtCmZoitNt
心の悲痛を叫ぶ異色ミュージカル
主人公のエヴァンは友達がおらず、内なる感情を歌にぶつける。
また、彼の周囲のキャラクター達も、直接は言えない悲痛な叫びを歌にする。
歌詞とキャラクターのセリフがリンクしているのは、これまでのミュージカル映画でも見られた当然の傾向だが、今回は曲調にまで心情がリンクした点が素晴らしい。
しかも今回は悲痛な叫びばかりが曲に現れるのだから、一つ一つの曲がボディブローのように効いてくる。染みる。
暗く悲しい曲ばかりではないのだが、「もっと○○出来たら良いのに!」「なぜ分かってくれないんだ!」といった歌詞がサビに入っていて壮大に歌われると、音楽の枠を超えた、とてつもない感情と感動が押し寄せてくる。
そもそも、どんな音楽も作り手・歌い手の想いが込められており、聞き手である我々はその想いを受け取った方が感動もひとしおだ。しかし、全ての曲で受け取れるわけではない。ただの「音」や「詩」としてしか受け取ってない音楽は多い。
しかし、今作のように悲痛な叫び=心からの想いを歌にされると、ただのミュージカル、ただの音楽だなんて思えない。
例えば、冒頭に流れる「Waving Through A Window」には、「誰か気づくだろうか誰か僕に手を振り返してくれるだろうか?」という歌が流れる。このような曲でミュージカルが流れること自体、珍しくないだろうか。
「ララランド」のように辛い気持ちをあえて明るく歌うような逆説的な演出はない。
今作にあるのは、ただただストレートなキャラクターの気持ちだ。
【日本語字幕】Waving Through A Window / Dear Evan Hansen - YouTube
このような選曲によって、観客はストレートに歌の裏側にある想いを理解できる。音楽の芯から味わうために、今作は最適な作品だ。
- 自殺したクラスメイトの理由を探る
- キャラクターがある秘密を抱えながら高校生活を生きていく
といった点で、今作はNetflixドラマシリーズ「13の理由」がミュージカルになったような、そんな映画である。
ドラマを見た人であれば、今作がいかに異色なミュージカルかお分かり頂けるだろう。
切なくも、バランスが取れたラスト
突然歌うミュージカルの違和感を逆手に取った
www.machinaka-movie-review.com
そんな彼が、登校中に突然歌い出す。
ミュージカル映画ではお約束の演出だ。突然歌う人をギョッとした目で見るエキストラなどいない。
しかし今作では特別な意味を持つ。
エヴァンは友達がおらず、学校でもまるで空気のような存在。
学校で歌を歌えば、まるで彼と彼以外の世界が隔絶されたかのような効果をもたらす。
つまり、ミュージカル映画のお決まりのルールによって、エヴァンが学校で孤立している様子がより強調されるのだ。
これを冒頭一発目に持ってくるのだから、エヴァンの悲痛な気持ちが伝わって泣いてしまった。
まとめ
自分でも驚いているのだが、ブログを書く前はさほど評価していなかった。
曲の一つ一つが悲痛な叫びで、決して底抜けに明るくないミュージカル。
鑑賞後にテンションが上がるかといえば、そうではない。
しかし、記事に書いた今作の巧さ一つ一つが染み渡って、、、、
私は今、猛烈に感動している・・・
配信で始まったら、もう一度見たくなってきた。
最後に、「ピッチ・パーフェクト」でも虐げられてきた方のキャラだったベン・プラットが見事に主演を努め、素晴らしい作品を作ってくれたことに感謝している・・
あの作品ではアナ・ケンドリックやアダム・ディバイン、レベル・ウィルソンなど多くの役者が映画に出演しているが、ベンも売れてくれて本当に良かった。。
ただ、某大手サイトには「ピッチ・パーフェクト」の出演記録はないことになっているので、是非とも追加登録をお願いしたい。。
「#ディアエヴァンハンセン」 で主役を務めたベン・プラットさん。なんと彼の出世作である「ピッチ・パーフェクト」の出演記録が某大手映画サイトに存在しない。。なんて可哀想なんだ!!
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2021年11月25日
頼むからピッチ・パーフェクトを追加してくれ!彼が隠れた主役だよ!! pic.twitter.com/FsQUOl8Bp1
95点 / 100点