- まえがき
- あらすじ
- 「ワンダヴィジョン」は予習必須!?
- アイアンマンが復活!? イルミナティの可能性は
- 「ドクター・ストレンジ2 マルチバース・オブ・マッドネス」のネタバレありの感想と解説(全体)
- サムライ味満載の骨太人間ドラマ
- 論理性と連続性のあるマルチバースの旅に大興奮!
- ラストのストレンジの変貌ぶりに大歓喜
- ワンダもストレンジも退役軍人のよう
- まとめ
まえがき
今回批評する映画はこちら
「ドクター・ストレンジ2 マルチバース・オブ・マッドネス」
もう興奮が止まりません。
それでは「ドクター・ストレンジ2 マルチバース・オブ・マッドネス」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。
あらすじ
・元天才外科医で最強の魔術師ドクター・ストレンジの活躍を描くマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)の「ドクター・ストレンジ」シリーズ第2作。2016年に公開されたシリーズ第1作以降も、「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」(18)、「アベンジャーズ エンドゲーム」(19)、そして「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」(21)など一連のMCU作品で活躍してきたドクター・ストレンジが、禁断の呪文によって時空を歪ませてしまったことによって直面する、かつてない危機を描く。マルチバースの扉を開いたことで変わりつつある世界を元に戻すため、アベンジャーズ屈指の強大な力を誇るスカーレット・ウィッチに助けを求めるストレンジ。しかし、もはや彼らの力だけではどうすることもできない恐るべき脅威が人類に迫っていた。その脅威の存在は、ドクター・ストレンジと全く同じ姿をした、もう一人の自分だった。ドクター・ストレンジを演じるベネディクト・カンバーバッチをはじめ、ストレンジの盟友ウォン役のベネディクト・ウォン、元恋人クリスティーン役のレイチェル・マクアダムス、兄弟子モルド役のキウェテル・イジョフォーら前作のキャストが再結集。物語の鍵を握る新キャラクターのアメリカ・チャベス役でソーチー・ゴメス、ワンダ・マキシモフ/スカーレット・ウィッチ役でエリザベス・オルセンも出演。「スパイダーマン」3部作(02、04、07)を大ヒットさせたサム・ライミが監督を務め、「オズ はじまりの戦い」(13)以来となる長編映画のメガホンをとった。
「ワンダヴィジョン」は予習必須!?
アイアンマンが復活!? イルミナティの可能性は
ドクターストレンジMoM パトリックスチュワート登場、イルミナティを明言したことで、このメンバーが集まる日が来るのではないかと淡い期待を込める アイアンマンは出る訳がないと思ってるが、マルチバースということもあり、妄想してしまう https://t.co/OIMvwZE1gw
「ドクター・ストレンジ2 マルチバース・オブ・マッドネス」のネタバレありの感想と解説(全体)
「#ドクターストレンジ MoM」鑑賞 サムライ味が色濃く反映されたダークストーリー。ストレンジとワンダの闇の側面を描きつつも、血の通った人間の業の深さが根底にあることを見せ、ヒーローである以前に1人の人間としての苦悩と葛藤を見事に… https://t.co/UWT7tgDd1w
サムライ味満載の骨太人間ドラマ
いやぁー、ワックワクした。
前作ノーウェイホームでは非常に軽いノリで発動してしまったマルチバースへの扉。こんな簡単に出来てしまって良いのかと、少し疑問に思ってしまう自分がいました。
しかし今作はマルチバースの危険性を、本当に開けてはいけない扉としてシリアスな語り口で描かれていたのが◎でした。
サムライミ版「スパイダーマン」の名言を借りれば、「大いなる力には大いなる責任が伴う」マルチバースではなかったでしょうか。
描くヒーローがスパイダーマンからドクター・ストレンジに変わったとしても、監督のまなざしは初志貫徹としていました。
無限の可能性を持つマルチバースによって、「なりたかった自分」と「なれなかった自分」を別次元から探すことが可能になった世界。
ストレンジは恋人クリスティーンを、ワンダは魔法で作り出した子供を求めて、マルチバースを使って最愛の人を強奪しようとする物語。
他のMCU作品とは異なり、新たなヴィランが登場し結託して戦う話ではありません。
有り体なことを言ってしまえば、アベンジャーズのメンバーがヴィランとして内紛を起こしてしまう話でもあり、そういう意味では「エイジオブウルトロン」と少し近いところがありました。ウルトロンも登場するしね。
しかし、アベンジャーズとかMCUとかのヒーロー側の都合を全く感じさせずに、あくまで「禁じられた方法によって失った恋人を取り戻そうとする男女の話」として昇華していたのがサムライミ監督の最大の功績ではないでしょうか。
ストレンジがどうとか、スカーレットウィッチがどうとか、これまでのMCU作品を意識させずに見られたのも珍しいと思います。
パッケージとしては紛うことなきMCUのフェイズ5として位置付けられ、話を前に進ませないといけない。しかし、これほどまでに深い人間ドラマとして描くことに成功するとは、さすがサムライミです。
「死霊のはらわた」しかり、「スペル」しかり、「人間の業の深さをトリガーに、人知を超えた超常現象によって悲劇的結末が待ち受ける」展開は監督作として通底していましたね。
ドクター・ストレンジやワンダはMCUの中でも「何でもあり」のチート的存在でもあります。特に今作のマルチバースを操る能力は、過去を帳消しにする恐ろしい力です。
これまで単一宇宙の作品ばかり見てきた我々にとっては、「今まで見てきたのが台無し」になる可能性だってあります。
それほどの大きな力を、サムライミ監督は完璧に操って見せました。
そう簡単に過去は変えられない。変えられたとしても、あまりに大きな犠牲が伴う。
今作はノーウェイホームとは比べ物にならないほどの大きな犠牲が明らかになるのですが、それは本編を見て確認してください。
論理性と連続性のあるマルチバースの旅に大興奮!
マルチバースだと色んな世界線の展開に疲弊してしまうんじゃないかと思っていましたが、むしろマルチバースが増える度に映画の面白さも増し、深みに入れる作りとなっておりました。
冒頭はいきなり、宇宙空間のような世界で、髪を後ろに結んだストレンジと謎の少女が走っているシーンが映ります。
「ヴィシャンティの書」なる謎のアイテムを目指して走る二人。それを追いかける魔物。何の説明もなく、ただひたすら走る二人を追いかけることしかできません。
走るのを止めない二人と同じように、ワクワクが止まりませんでした。
しかし、この一連のシーンは悪夢だったことが明らかになり、ストレンジは日常に戻る。クリスティーンの結婚式に出席し、どこか悲しげな目をしているストレンジ。
悲しみに浸るのも束の間、街を謎の魔物が襲います。颯爽と魔物を倒しに行くストレンジとウォン。そこにはスパイダーマンはいません。完全に魔術側だけで片付けなければいけない相手であることが伝わります。
魔物から一般市民を助けるストレンジですが、その中には悪夢の中にいた少女も含まれていました。
魔物を倒して、彼女に事情を聞くストレンジ。「アメリカ・チャベス」という名前と、マルチバースを行き来できるという超能力を持つことを明かし、ストレンジとの本格的な旅が始まります。
チャベスの能力を狙う魔物たち。助けを依頼しようと、ストレンジはワンダのもとを訪れます。見たところ、「ワンダヴィジョン」のラストと同じ場所に一人暮らしています。
意味ありげにリンゴの木を植え、一人で余生を暮らしているワンダ。
リンゴは旧約聖書ではアダムとイブが食べてしまった禁断の果実としてのモチーフがあり、ダークホールドという禁忌の魔法をワンダヴィジョンで使ってしまったことが暗喩されていると思います。
そんなことはつゆ知らず、ストレンジはワンダにチャベスを守ってくれないかとお願いをする。しかし、ワンダは逆にチャベスを利用しようと画策し、ストレンジにチャベスを引き渡すように交渉を持ちかけます。
チャベスを利用する目的は、「ワンダヴィジョン」でも明らかになったように、魔法で作り出した子供達と再び暮らすため。子供がいるマルチバースに移動しようと画策したのです。
もちろん答えはノー。ストレンジ率いる魔術会と、ワンダもといスカーレットウィッチとの対峙が明示されます。
チャベス率いるカマータージを襲うスカーレットウィッチ。抵抗もやむなく、ダークホールドを使って子供達がいるマルチバースへと向かおうとしますが、マルチバースに入ったのはストレンジとチャベスの方でした。
ここで多次元宇宙の旅が少しばかり描かれ、実写だけでなくペンキだけで塗られた世界や漫画の世界へと旅します。
前作のドクター・ストレンジのようなトリップ感は控え目でしたね。
そして、別次元のニューヨークへ辿り着いたストレンジとチャベス。
少し近未来にも見えるのですが、建物に大量の植栽が付いているのと信号の緑と赤が真逆の意味に使われているのが特徴的なだけで、そこまで変化はありません。
街を歩いていると、その世界線のモルドとバッタリ出会いお茶をいただくことに。
マルチバースだから、モルドは改心して仲間になっているのかと思いきや、全くそういったことはなく・・・
モルドに連行され、ストレンジとチャベスはとある施設に幽閉されてしまいます。
その施設で二人が見たものとは、、、
はい、これ以上は言えません。
色々調べてきた人は、分かるかもしれませんが、、、、
あの人たちが出てきます!!!!!
ついに出ます!!!
・・・これ以上は言えませんが、衝撃的な展開が待ち受けてますので楽しみにしてくださいね!!
ラストのストレンジの変貌ぶりに大歓喜
そんなこんなで、マルチバースの旅を続けるストレンジとチャベス。
一方のワンダは、ウォンとカマータージの魔術師を人質にとって、一旦は破壊されたダークホールドを再び取り戻そうとワンダコアなる禁忌の施設へと向かう。
ワンダコアにはダークホールドの原本が壁面に書かれているのです。
ダークホールドの能力は分かりやすく極悪で極上。
人の心を操る能力と、「ドリームウォーク」という、マルチバースにいる自分を遠隔操作する能力を持ち合わせており、チャベスの能力と合わせて、子供のいるワンダを乗っ取ろうとしているのです。
ストレンジは、ダークホールドを持っている次元のストレンジと対峙し、ダークホールドを手にします。ややこしいですが、ストレンジvsストレンジってことです。
元の世界には戻れないストレンジ。そこで、ダークホールドを使って元の世界のストレンジを遠隔操作しようとするのですが、元の世界のストレンジはひょんな理由で死体となっている。
しかし、そんなことはお構いなしに死体の自分を操るストレンジ。謎の悪霊にやめろと言われながらも、腐れ切った体を操るストレンジ。
このストレンジのルックスが、「死霊のはらわた」に出てきそうなゾンビなんですよね!!
これがダークで最強にカッコいいんだ。。
ゾンビになり、最強の魔女に戦う勇姿をとくとご覧あれ!!!
ワンダもストレンジも退役軍人のよう
今回の物語で一番のネックになるのは、ワンダの行動原理かと思います。
現実にはいない子供をさも本当の子供のように扱い、一緒に暮らそうとするワンダの姿こそマッドネスに思えるかもしれません。しかし、同時にサッドネスでもあります。
弟のクイックシルバーを失い、最愛の人ヴィジョンを失い、サノス亡き後も過去に囚われ続けるワンダ。
サノス戦は紛れもなく、宇宙存亡をかけた大戦。
その後のアベンジャーズ達は退役軍人のようです。
1970年代のアメリカ映画は、ベトナム戦争の退役軍人を取り扱ったものが多く、そのどれもが戦争が終わった今も後遺症に苦しむ人々を描いていました。
今回のワンダはヴィランという立ち位置ですが、私としては大戦が終わっても後遺症に苦しむ退役軍人の暴走、という目線で見ていました。
サノスの大戦後、様々なMCU作品が公開され、そのどれもが過去に大きな傷を受けた人々の物語です。
その中でもスカーレット・ウィッチの受けた傷はあまりにも大きく、妄想を現実にしてしまうほどの過去の遺恨があったのです。
ストレンジもストレンジで、クリスティーンを取り戻せなかった後悔がいまだに残っていて、別次元ではありますがダークホールドの魅力に取り憑かれてしまっていました。
なりたい者になれる、過去を帳消しにできる魔法はSF作品に多く登場しますが、ここまで現実世界とのバランスを勘案し、魔法の光と影、そして魔法に取り憑かれる人間の業の深さを描いた作品も珍しいのではないでしょうか。
まとめ
かなりハードルが上がっていたのですが、それでもなお予想の遥か上を行く傑作でございました。
ワンダの心情を理解するためにも、必ず「ワンダヴィジョン」はご覧になってください。
今作を踏まえると、ワンダヴィジョンはSFサイコホラーというか、「ローズマリーの赤ちゃん」のような話にも見えますよね。
実は、すごく怖くて悲しい話なんですよね。。
しかし表向きはみんな大好きMCUの作品ということで、ド派手なアクションと見果てぬマルチバースの冒険へと誘ってくれました。
大大大満足です!!!!
96点 / 100点