- ネタバレありで感想と解説を始めます
- あらすじ
- 映画の感想
- エグい!汚い!怖い!かつての東映を思い出すアングラな人間ドラマ!
- 石巻と川崎という立地
- 香取慎吾はこれでいい!
- ギャンブルで得られるものって何?
ネタバレありで感想と解説を始めます
今回公開する映画はこちら!
「凪待ち」
太っ!!!!
それでは「凪待ち」、感想・解説、ネタバレありでいってみよー!!!!
あらすじ
・「孤狼の血」の白石和彌監督が、香取慎吾を主演に迎えて描くヒューマンサスペンス。「クライマーズ・ハイ」の加藤正人が脚本を手がけ、人生につまずき落ちぶれた男の喪失と再生を描く。無為な毎日を送っていた木野本郁男は、ギャンブルから足を洗い、恋人・亜弓と彼女の娘・美波とともに亜弓の故郷である石巻に移り住むことに。亜弓の父・勝美は末期がんに冒されながらも漁師を続けており、近所に住む小野寺が世話を焼いていた。人懐っこい小野寺に誘われて飲みに出かけた郁男は、泥酔している中学教師・村上と出会う。彼は亜弓の元夫で、美波の父親だった。ある日、美波は亜弓と衝突して家を飛び出す。亜弓は夜になっても帰って来ない美波を心配してパニックに陥り、激しく罵られた郁男は彼女を車から降ろしてひとりで捜すよう突き放す。その夜遅く、亜弓は遺体となって発見され……。「くちびるに歌を」の恒松祐里が美波、「ナビィの恋」の西田尚美が亜弓、「万引き家族」のリリー・フランキーが小野寺を演じる。
映画の感想
震災後の石巻と臨海部の川崎。
エグい!汚い!怖い!かつての東映を思い出すアングラな人間ドラマ!
前回撮ったのが「麻雀放浪記」とは思えないほど、重厚かつエグい人間ドラマを描いた大傑作だと思います。
www.machinaka-movie-review.com
「孤狼の血」のようなグロい描写は控えめでしたけども、こっちは精神的にグロいのが多い。。大好物ですけど。
かつての東映のアングラな実録凶悪を思い出すほど、エグい描写がてんこ盛りでした。
これ私の勘違いだったら申し訳ないですが、香取慎吾がヤクザに「キ◯ガイ」って言われてませんでしたっけ? なにかぼかすこともせず、思いっきり「キ◯ガイ」って発するなんて本当に信じられないですよ。。
普通に放送禁止用語ですからねwww 言葉の暴力が酷かったなぁ、、
見ている途中、本当にしんどかった。。最初は単純なギャンブル依存症のクズ物語かと思ったんですよ。これまで白石監督って「日悪」とか「凶悪」とか、とにかく悪い方向に進んでいって人生台無しにしてしまう男の話をよく描いていたんで。
ただ今作の面白いところは、決してギャンブル依存症が主人公の人生を徹底的に狂わせるわけじゃない作りになっているところで。
彼が人生の中に一番大切にしてる人を失うのは、決してギャンブルが理由じゃないんですよね。僕ら観客も全く想定していなかった、偶然の出来事によるものなんですよね。
どれだけ香取慎吾が真面目に働いても、ギャンブルしてなくても、防げなかった事件だったんですよね。
ただ香取くん的には自分のギャンブル依存のこととかキレやすい性格とか、自分のせいにしてしまう。自分は「クズ」だと言っていましたが、その後悔ゆえにまたギャンブルに走ってしまう。。。
今作におけるギャンブルは人生の逃避行のように描かれていて、結婚からも仕事からも何もかも逃げたい香取慎吾の駆け込み寺のような場所になっていたのが特徴的でしたね。
石巻と川崎という立地
宮城の石巻と臨海部の川崎。
石巻では、震災後も思うように復興が進まず、過疎化する地方の閉塞感も加えてここで生きていくことの大変さを強調していたようにも思えます。
娘が引きこもってしまった理由が、「放射能がうつるから」というセリフに驚きました。これをちゃんとセリフにして言ってくれるのか、と。
震災で福島の原発が漏れてしまったことによって、福島を中心として放射能が東日本に拡散しましたよね。この影響で東北地方から首都圏へ引っ越す小学生が多かったようなんですけど、そこで震災いじめが横行したんですよね。。
震災による二次被害、三次被害をきちんと描いてくれたのも誠実な対応かと思います。今でも震災いじめって続いてるんですよ。
そして川崎。工場街を漂う灰色の町。こないだも殺人事件がありましたが、大麻、半グレ集団、被差別部落、暴力団で有名で、臨海部の川崎の治安は悪い。
あまりメディアに出ない日本の闇が、川崎に凝縮されていると感じました。
川崎競輪場が出てきましたが、あの辺りは特に治安が悪いそうで。香取慎吾をそこに住まわせることで、ドヤ街の中で巣食うくすぶる主人公を上手く描いていると思いました。
香取慎吾はこれでいい!
そういった一癖も二癖もある土地でギャンブル狂の男を演じたのが香取慎吾。SMAPから新しい地図へ変わり、新たな役者魂を見せてくれたと思います。
ポスターで分かると思いますが、まぁポッチャポチャですよねぇ
香取くんって体重の増減が激しい人ではあるんですけど、今までだと太ってても可愛らしくてよかったんですよ。でも、今回は無精髭や暗めの撮影方法も相まって、実にだらしない体に見えてしょうがない。全然清潔感がないんですよ。
だからただのポッチャポチャじゃなくて、ギットギトしたポッチャポチャというか、、、つまり最悪ってことですけどw
わざと肌にテカリ感を出して、脂感を出してるのもニクい作りだなぁと。。エグイ、エグすぎるよ、香取くんw
ギャンブルに溺れ溺れ、いろんな人からお金をもらうたびに、石巻のノミ屋に行って全部溶かしてしまう。私はギャンブルは一切やらないので、競輪になぜはまってしまうのか理解できませんが、ギャンブル関係なく何かに溺れる人間という点では非常に共感することがありました。
何かに没頭し、何かを得ようとする行為は、何か失うことにもつながる。やめよう、やめようと思っていても、止めることはできない。
自分が好きなもの、得意なこと、没頭できることが、彼にとってはギャンブルだっただけで。。
彼はとにかく逃げたかったんです。人生から逃げたかった。
とにかく彼は劣等感の塊で、自分を最低だと思っている人間。そんな彼の周りも、同じようにクズが集まる。
川崎で同僚だった渡辺さんも、同じクズの一人でした。彼らにとっては、ギャンブルは生きる希望だった。
香取慎吾も渡辺も、居場所がないんです。
恋人には娘がいるし、結婚しようにも養育費の問題もあるし、とてもじゃないけど一人で支えられない。だから、結婚できない。
仕方なく石巻に越してきたけど、余計に居場所がない。恋人の実家に居候し、とにかく立場がない。あんなこと私の身にあったら、本当に地獄ですよ。どこか居心地の良い場所を見つけますよ。
ギャンブルのときだけは、嫌なことも忘れて一人でいれる。そして何より、人生逆転のチャンスがそこにあると感じてしまったんですよね。。
ギャンブルで得られるものって何?
今作は何かを失い、何かを得る。喪失と再生の物語という触れ込みでしたが、そういう文脈を踏まえると、ギャンブルって何を失い何を得るんでしょうね。
高いお金を払い、得られるのは同じお金。
結局全部お金じゃないですか。