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映画「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」ネタバレあり感想解説と評価 心の目で見よ、魂の声を聞け

 
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この記事では、「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」のネタバレあり感想解説記事を書いています。
 
 目次
 

まえがき

 

 

今回批評する映画はこちら

 

「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」

 
 

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園子温監督は、昔から好きな監督だ。
 
学生の頃に見た「自殺サークル」から存在を知り、「冷たい熱帯魚」や「愛のむきだし」など、他の人には撮り得ない名作を作ってきた。
 
そんな監督がなんと、ハリウッドデビュー。どうしても期待してしまう。
胸の高まりを抑えられない。

 

前評判は非常に低い。一体、何がどうして低評価なのだろう。

 

気になって仕方がない。

 

それでは「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。

 

 

 

 
 

あらすじ

  
鬼才・園子温監督がニコラス・ケイジを主演に迎えて描いたハリウッドデビュー作。悪名高き銀行強盗ヒーローは、裏社会を牛耳るガバナーのもとを逃げ出した女バーニスを連れ戻すよう命じられる。特殊なボディスーツに身を包んだヒーローは、東洋と西洋が混ざり合った美しくも暴力的な世界「ゴーストランド」にたどり着く。混沌に包まれた町で、定められた時間内にバーニスを探し出すべく奔走するヒーローだったが……。共演に「キングスマン」のソフィア・ブテラ、「悪魔のいけにえ2」のビル・モーズリー、「きみに読む物語」などの監督として知られるニック・カサベテス。日本からは「RE:BORN リボーン」のTAK∴(坂口拓)、「愛なき森で叫べ」の中屋柚香らが参加。

プリズナーズ・オブ・ゴーストランド : 作品情報 - 映画.com


 

 
 
 
 
 
 

「プリズナーズ・オブ・ゴーストランド」のネタバレありの感想と解説(全体)

 
 
 

本当にひどいのか?今年ワーストと評される理由とは

 
一体何が起きていたのだろうか。。
 
喜怒哀楽、あらゆる感情が一瞬湧き上がってくるも、すぐに消えてしまう。
一体何を見させられているんだろう、と常に疑問符が浮かぶ。しかし、その疑問符も感情と同様、即座に消えていく。
 
園子温のハリウッド映画デビュー作。
 
Patient Film、SATURN Filim、その他たくさんのの耳慣れない会社のクレジットが流れる。インド映画ほどではないが、複数の制作会社・配給会社が目に入る。
 
当然ながら、スタッフやキャストに外国人が激増している。
 
普段の映画より明らかに多くの人が介入し、国際色豊かで異国情緒に溢れた内容になっているかと思えば、何といつもの園子温映画だった。
 
ニコラスケイジが主演であっても、全くブレない園子温の姿勢。
まずこの点を褒めなければいけないだろう。そして、その点が仇になったことも語らないといけないだろう。
 
話のスジは、銀行強盗によって逮捕・拘留されたニコラスケイジが町の権力者ガバナーから「娘を探してくれ、そうすれば開放する」と交渉され、娘のバーニスを探すべくゴーストランドと言われる僻地に旅をする内容だ。
 
ニコラスケイジが拘留された町は、吉原のような江戸文化、そして西部劇のような欧米文化が混ざり合っている。侍のような刀を持った、ガンマンのような銃を持った男たちがニコラスケイジを取り囲む。
 
「どや!これが日米合作や!!!!」と言わんばかりの異文化のサラダボウル。
 
この冒頭だけでも、頭がクラクラしてる人が多くいたはずだ。脳が理解することを拒み、思考停止に陥ってしまうかもしれない。
 
そんな異文化が混じり合う世界で、いざゴーストランドへ颯爽と旅立つはず・・・が、中々前に進めない。
 
依頼主のガバナーは、ニコラスケイジが逃走しないように、彼に爆弾付きの拘束具を取り付け、「女に暴力を振るったら爆発する」と説明するのだが、この下りが信じられないほど長い。
 
拘束具の特徴を、ガバナーとニコラスケイジの一問一答形式でひたすら会話していくのだ。何なんだ、これは。一体何を見せられているんだ。
 
その後も、よく分からん不毛な会話劇がぼっとん便所の糞のように積み上がり、気付けば便器から糞が露出している。明らかな刺激臭が劇場を包み、早々に席を立つ人がいてもおかしくない。
 
予告編からはアクションのようなジャンルに見えたが、実は会話劇がメインになっている。が、その会話が面白くない。理解しようにも、途中で見えない壁にぶつかって、神経伝達が止まる。
 
ソフィア・ブテラや坂口拓を擁しながらも、我々が見たいようなアクションは全く見えず、カタルシスも何もない。
 
異文化な謎の世界設定もダメ。
アクションがダメ、会話劇もつまらない。
 
映画の魅力が、まるでない。
 
あまりに単純な結論になってしまったが、あらゆる映画の魅力が欠落しているのが「今年ワースト」と言われる理由だろう。
 
 
 

 

 

ゴーストランドの正体とは、今作のメッセージとは?

 
 
一体何が魅力なのか、何に重きを置いているのか。
 
これを理解できないと、即「今年ワースト」と烙印を押されても文句が言えない内容になっている。
 
今作で伝えたいこと、最も重きを置いていること。
 
それは「東日本大震災を風化させない」という至極真っ当なメッセージに尽きる。
 
園子温監督は、東日本大震災を間接的に、あるいは直接的に捉えた映画を何本も制作している。
その中でも、今作の元となっている作品は「ひそひそ星」だろう。
 

 

 
近未来の世界。アンドロイドの主人公は宇宙船に乗り様々な星に荷物を届けるのだが、そこで地球と思しき惑星に辿り着き、日本の東北と思しき場所に辿り着く。
 
街は廃れ、常に灰色の空気が漂う。東日本大震災を思い出す風景。
この設定はまさに、今作におけるゴーストランドそのものだ。
 
核によって破壊された街、露骨な原爆雲のインサート、放射能というワード、誰がどう見ても東日本大震災の福島原発を思い出させる。
 
これが今作のメッセージ。主張したいこと。
 
アメリカ人であるニコラスケイジに核の恐ろしさを体験させ、核を否定する論調に持っていくことは、イデオロギーの観点で見ると攻めた内容になっている。
 
が、このメッセージを伝える箇所以外のシーンが、あまりにも大味で、やっつけ仕事のように思えてしまって、あまりにも芸がない。
 
東日本大震災、核の恐ろしさを伝えることは、被爆国である日本の映画にとっては宿命と言ってもいいだろう。
 
バイオレンス映画とは異なる、もう一つの園子温監督の作家性だろう。
 
しかし、その作家性に重きを置くあまり、映画の面白さが犠牲になっていく。
自分の主張に映画を利用するのは、何の文句もない。ただ、今作に関しては映画を犠牲にしてまで作家性を貫こうとしているのだ。
 
もっと言えば、園子温監督作品の初志貫徹されたメッセージは、「俺は園子温だ!」という一言に尽きる。
これは、監督が映画監督の道を進むきっかけとなった、ぴあフィルムフェスティバルに入選した作品名でもある。
 
映画を通して、俺自身を表明したい。俺がここに存在していることを表したい。
常に園子温作品は、「俺」がつきまとう。
 
そんな俺の俺による俺のための映画に付き合えるかどうか、そのためにあらゆる犠牲を許容できるか。
 
かなりの無理ゲーであることは間違いない。
 
スクリーンに映る映像、スピーカーから流れる音だけを拾っていては、今作を評価することは難しい。
 
今作を見る前に、これだけは伝えたい。
 
心の目で見よ、魂の声を聞け。
 
 
 

  

 

爆笑できる点は最も評価したい

 

散々こき下ろしてしまったが、今作が大嫌いかと言えば、そうでもない。

 

ニコラスケイジがゴーストランドへと旅に出かけてすぐに、車を使わずになぜかママチャリを選択し、必死にペダルを漕ぐ。

 

ニコラスケイジとママチャリという相性不抜群な組み合わせも面白いのだが、必死に漕ぐあまり、ママチャリにしては妙に速度が早いのだ。。しかも、立ち漕ぎをせずに座って漕いで、妙に早い。絶妙なシュールさを醸し出している。

 

この妙な速さがギャップとなり、爆笑を生み出す。

「デッド・ドント・ダイ」でアダム・ドライバーが乗るエコカーが素早く駐車するシーンを思い出した。乗り物の見た目と速度のギャップは、コメディ描写では鉄板だ。

 

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そのほか、実にしょうもない下半身ネタが炸裂するのも園子温映画の特徴だろう。

ニコラスケイジに付いた爆弾付き拘束具は、実はゴールデンボール×2のあたりにも備えられており、映画中盤で片方の拘束具が爆発してしまう。もちろん片玉は全壊。

そのまま気絶してしまうのだが、抑えた爆発音と一歩引いたカメラワークによって、爆笑の渦に巻き込まれる。

 

また、ラストの坂口拓との対決でも、剣vs剣の勝負のはずが、なぜか途中から金的攻撃の応酬が挟まれている。

 

坂口拓の金的攻撃を食らい、ニコラスケイジからついに放たれる「Fxxx!」という言葉で、我々の腹筋は崩壊する。

 

「TOKYO TRIBE」のラストでも描かれたように、園子温監督は本当に下半身のネタが大好きで大好きで仕方がないようだ。

 

何度も笑わせてもらった以上、今年ワーストとは言えない。

 

むしろ、ありがとう。

 

 

 

まとめ

ザ・園子温映画であることは間違いない。主張もよく伝わってくる。

 

だが、あまりにも映画の完成度として低い、低すぎる。

 

江戸時代と西部劇が入り混じった世界にも関わらず、なぜかスマホや車そしてママチャリが混在する謎の舞台設定は、それだけで見る者を困惑させる。

 

万人に勧める映画ではないが、園子温監督が本当に好きな人は見るべきだろう。

 

園子温監督の真骨頂は、良くも悪くも「自分の主張を喧伝する」こと。

おそらく、いや間違いなく寺山修司に憧れて、彼と同様に東京を舞台にゲリラ活動をする「東京ガガガ」を敢行していたに違いない。

 

個の力は弱い。普通に言っても主張が通らない。

だからこそ集団の力で、声高らかに、声だけでなく体全体を使って、全身全霊を持って表現するのが彼のスタイルなのだろう。

 

これは映画というより、映画の皮を被った一種のパフォーマンスだ。

 

そう考えると、幾分か映画の評価が変わりはしないだろうか?

 

今年ワーストと言うのは簡単だ。だが、それだけでは表層的とも思える。

 

この記事が、今作を理解するための補助線となれば幸いだ。

 

40点 / 100点 

 

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 以上です! ご覧いただきありがとうございました!
 
 
 
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