目次
- まえがき
- あらすじ
- 「かそけきサンカヨウ」のネタバレなしの感想と解説(全体)
- 世界観を浸透させる抜群の冒頭
- 今泉監督が、ついに家族の「愛のカタチ」を描く
- 「家族愛」と「恋愛」を描くハイブリッド・ラブストーリー
- 志田彩良ちゃんの透明感にズキュン
- 世界は「愛」と「好き」にあふれている
- まとめ
まえがき
今回批評する映画はこちら
「かそけきサンカヨウ」
今泉力哉監督最新作。
直近は、「街の上で」、そして「あの頃。」を鑑賞し、良作とも楽しんだ私としては、今泉監督作品にはもう目がない状態。
どんな映画も過度に期待したり、何かしらの先入観を持って見るといけないというのは分かっているが、今度はどんな愛の映画なんだろうとか、よからぬ思いを持ってしまう。
初心に戻って、今泉作品を堪能したい。
それでは「かそけきサンカヨウ」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。
※公開前ということもあり、ネタバレ「なし」での感想となります。
あらすじ
・人気作家・窪美澄の同名短編小説を「愛がなんだ」「街の上で」の今泉力哉監督のメガホンで映画化。高校生の陽は、幼い頃に母の佐千代が家を出て、父の直とふたり暮らしをしていた。しかし、父が再婚し、義母となった美子とその連れ子の4歳のひなたとの4人家族の新たな暮らしが始まった。そんな新しい暮らしへの戸惑いを、同じ美術部に所属する陸に打ち明ける。実の母・佐千代への思いを募らせていた陽は、絵描きである佐千代の個展に陸と一緒に行く約束をする。陽役をドラマ「ドラゴン桜」「ゆるキャン△2」などで注目され、今泉監督の「パンとバスと2度目のハツコイ」「mellow」にも出演した志田彩良、直役を井浦新が演じるほか、鈴鹿央士、石田ひかり、菊池亜希子らが顔をそろえる。
「かそけきサンカヨウ」のネタバレなしの感想と解説(全体)
10/15公開「#かそけきサンカヨウ」試写にて鑑賞。
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2021年7月13日
様々な愛のカタチを描いてきた今泉力哉監督の新作。今回は「家族」に光が当たる。
女子高校生の陽を中心に、半径2メートルの揺れ動く人間関係を描く、純度1000%な愛のイニシエーション映画。
観た後に改めて気付く。
間違いない、世界は愛で溢れてる。 pic.twitter.com/E02cWBmOpe
世界観を浸透させる抜群の冒頭
良い作品は決まって冒頭が素晴らしいと思うのだが、今作も見事な始まりだった。
黒髪の美女のインタビューから、今作は始まる。
喫茶赤い風船という喫茶店にて、男女の学生が雑談をする。
用事があると帰宅した少女は、自宅で餃子を作っている。
その時、突然サンカヨウの花を母に教えてもらった記憶がフラッシュバックし、タイトルクレジットに入る。
映画を最後まで見た人にしか分からないが、この数分間に今作の大事な要素全てが含まれている。
今泉監督が、ついに家族の「愛のカタチ」を描く
これまで、様々な「愛のカタチ」を描いてきた今泉監督。
今泉監督作品を見ると、いつも「今度は何の愛を語るのか」とワクワクしてしまう。
特に、「あの頃」を見て以降は、どんな愛が描かれても驚くことはなかった、はずだった。
他の映画ではありふれた、ある愛を描いていたのだ。
それは「家族の愛」。
これまで今泉作品は、独身の男性・女性を主人公に、片思いや好きに至る前の段階を描いてきたように思える。
つまるところ、今泉監督作品の多くは「恋愛映画」と言ってもいいだろう。
しかし今作は、恋愛映画に通じる要素は多くあるものの、「家族の愛」が大きな軸となっていた。
今泉監督作品を追いかけてきた身としては、それだけで衝撃だった。
父と娘の二人暮らしから始まり、父が再婚の話を持ち掛けることから、娘の心情が揺れ動く。
映画でもドラマでもよく描かれる再婚問題を、娘の視点から描いているのが非常に新鮮に見えた。
今泉監督作品はいつも家族が不在だったり、いたとしても物語の中枢には食い込まなかった印象だったが、今作ではむしろ家族が主軸となっているのだ。
「家族愛」と「恋愛」を描くハイブリッド・ラブストーリー
通常であれば、いかにして家族が結束していくかが焦点となるが、今作はそれだけに固執しない。
志田彩良さん演じる娘の陽を主人公としており、同級生の人間関係も描かれるため、これまでの今泉監督作品で見た恋愛映画をうかがえるシーンが多数あるのだ。
娘の陽は、鈴鹿央士演じる同級生の隆を好きになる。父が再婚するだけで精一杯なのに、おまけに同級生のことも気になっている。
再婚した家族への「愛」と、同級生を想う「恋愛」が1つの作品に入り、同時並行的に描いていく。
これまで見てきた今泉監督の作品とは一線を画す内容となっていると確信したのは、やはりこの点に尽きる。
家族との話と同級生との話が同時並行的に描かれていくのだが、今作の見どころはこの二つが同居する場面が多いこと。
娘が好きな同級生は、娘だけでなくその家族と密に接触する場面が多いのだ。
今泉監督作品は共通して、主人公の自宅で多くの時間を過ごすことが多いのだが、今作の自宅シーンはそんな「愛」と「好き」が同居し、主人公の一挙手一投足にドキドキできる作品なのである。
志田彩良ちゃんの透明感にズキュン
これまで今泉監督の主人公は独身で20歳を超えた人が多かったように感じるが、今作は志田彩良さん演じる女子高校生の陽が主人公だ。
率直に言って、志田彩良さんの魅力にズキュンときた。
キュンです、なんかじゃ語れない。ジャスト、ズキュンだ。
再会する家族、そして好きな同級生にと大忙しな陽。非常に重責を担う役どころなのだが、志田彩良さんは見事にやってのけた。
一つ一つの言葉運び、歩き方、ご飯の食べ方、何をするにも幼さの中にも凛とした緊張感を持つ。
特に、その緊張感が冴えわたるのは「瞳」が映る瞬間だ。
澄み切った瞳が悲しげに遠い目をしたとき、まるでダイヤモンドのような輝きを放つ。
決して泣いてるわけじゃない。しかし、常に瞳が潤み、光に反射することで美しさがます。無限のスペクトルを持つ瞳に、誰もが目を奪われるだろう。
何より、特筆すべきは今作の彩良さんの立ち位置だ。
以前は「パンとバスと二度目のハツコイ」にて、深川麻衣の妹を演じた彩良さん。
今作は姉を演じることで、必然的に時間の流れを感じる。
監督がどれくらい意識しているか分からないが、偶然とも必然とも思える彩良ちゃんの立ち位置の逆転に、思わずニヤッとした瞬間だった。
余談だが、陽がプリンを食べるシーンは必見である。ただ既製品のプリンを食べるだけなのだが、、何故か美しさを感じる。
可愛い。冷静に考えると、ただプリンを食べているだけなのだが、なんという可愛さなのだろうか。。
世界は「愛」と「好き」にあふれている
再婚する家族への「愛」、そして同級生の「好き」が描かれる今作を観て感じたのは、愛と好きは世界中に溢れているということ。
再婚する家族と最初は上手くいかないものの、好きな同級生のおかげで家族との繋がりが強化される。一方、家族との関係が強化されたことで同級生と陽との関係がグッと近づく。
今作で魅力的なのは、このように「愛」と「好き」の好循環な相互作用によって、主人公の陽の半径2メートルが幸せになっていくこと。そして、半径6000キロとも言われる地球全体にも伝わるメッセージが添えられていること。
そう、世界は「愛」と「好き」に溢れているんだ。
普遍的なことかもしれないが、今作を観て再確認ができたのが素晴らしい。
そして、愛おしい。
まとめ
またもや今泉監督作品にキュンをして、主演の志田彩良さんにはズキュンとした。
ネタバレが出来ない作品なので、今回はあくまでも「側」の話ばかりだったが、公開後にはまた改めて今作を語れたらと思う。
92点 / 100点
以上です! ご覧いただきありがとうございました!