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映画「プロミシング・ヤング・ウーマン」ネタバレあり感想解説と評価 知らぬ存ぜぬは許しません

 
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この記事では、「プロミシング・ヤング・ウーマン」のネタバレあり感想解説記事を書いています。
 
 目次
 

まえがき

 

 

今回批評する映画はこちら

 

「プロミシング・ヤング・ウーマン」

 
 

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(C)Universal Pictures

 

アカデミー脚本賞を獲得した今作。

 

性暴力に遭った女性が犯人に復習する映画は、「レイプリベンジムービー」というジャンルで複数存在している。

 

最近見た作品では「アイ・スピット・オン・ユア・グレイヴ」がまさにそういったジャンルだろうか。ちなみに、タイトルを直訳すれば「お前の墓にツバを吐いてやる」。

なるほど、邦題を英語のままにした理由がよくわかった。

 

こうしたジャンルの中でも、一番面白かったのは梶芽衣子の「女囚さそり」シリーズだろうか。今見ても面白いので時間ある方はぜひ。

 

 

 

しかし、今作はジャンル映画に縛られない斬新な設定であるとの噂があり、一体全体どんな映画なのかよく分かってない。

 

リベンジものにも関わらず、何故かポップさに溢れており、ブリトニー・スピアーズやパリス・ヒルトンの曲が流れるという。

 

何が目的なのか、全くわからない。

 

 

それでは「プロミシング・ヤング・ウーマン」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。

 

 

 

 
 

あらすじ

  
・Netflixオリジナルシリーズ「ザ・クラウン」でチャールズ皇太子の妻カミラ夫人役を演じ、テレビシリーズ「キリング・イヴ Killing Eve」では製作総指揮や脚本を担当するなど、俳優・クリエイターとして幅広く活躍するエメラルド・フェネルが、自身のオリジナル脚本でメガホンをとった長編映画監督デビュー作。ごく平凡な生活を送っているかに見える女性キャシー。実はとてつもなく切れ者でクレバーな彼女には、周囲の知らないもうひとつの顔があり、夜ごと外出する謎めいた行動の裏には、ある目的があった。明るい未来を約束された若い女性(=プロミシング・ヤング・ウーマン)だと誰もが信じていた主人公キャシーが、ある不可解な事件によって約束された未来をふいに奪われたことから、復讐を企てる姿を描く。主人公キャシーを「17歳の肖像」「華麗なるギャツビー」のキャリー・マリガンが演じ、「スキャンダル」「アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル」や「スーサイド・スクワッド」で知られる女優マーゴット・ロビーが製作を務めている。2021年・第93回アカデミー賞で作品、監督、主演女優など5部門にノミネートされ、脚本賞を受賞した。

eiga.com


 

 
 
 
 

「プロミシング・ヤング・ウーマン」のネタバレありの感想と解説(全体)

 

 
 
 
 
 

1コマたりとも見逃せない!斬新すぎるリベンジスリラー

 
Twitterでは年間ベスト決定とまで書いてしまったが、鑑賞から1日経った今でも気持ちは変わってない。
 
リベンジものという一種のジャンル映画に囚われず、上質なスリラー映画としての完成度が高く、他の追随を許さない。
 
後で詳しく解説するが、全ての画、音、セリフに無駄がなく、有機的につながっている映画も珍しいのではないか。
 
あらすじは、主人公キャシーが夜な夜なバーに繰り出し、わざと酔ったふりをして男を誘う。男の自宅に連れ込まれ、事を致そうとした瞬間、これまで酔っていたキャシーは豹変しシラフに戻る。
 
酔ったというのは男を誘うための演技であり、女性の同意なく性交渉を迫る男にたっぷりと罵声を浴びせ、いかに己が矮小で卑屈な人間であるかを理解させる。そして、貶した相手の名前を書き、正の字でカウントするというデスノート執筆も彼女の日課となっている。
 
 
 
今作はリベンジと言っても、銃や打撃による物理的な復讐方法ではなく、あくまで「口撃」だけである。
今作のスリラーで特筆すべきなのは、物理的に人を傷つけないスリラーであること。
 
 
同じくスリラー映画&女性主人公&リベンジものとして「透明人間」があるが、この作品は物理的に犯人を攻撃する仕組みとなっている。
 
 
 
 
口だけで攻撃するリベンジものがスリラーとして面白いのか疑問に思うかもしれない。
 
 
しかし、アクションとしての派手さはないものの、キャシーが復讐相手に浴びせる一つ一つのセリフ回し、表情、次第に明らかになるキャシーの真の目的など、謎が謎を呼ぶ展開も素晴らしい。
 
 
主人公キャシーのトラップに引っかかった男性がことごとく成敗されていくのを見るだけで溜飲が下がる。
 
 
冒頭、ナンパ男が酔ったキャシーを自宅に連れて行くのだが、服を脱がされた途端に言い放つ
 
「What are you doing ?」が聞こえた瞬間から、2人の立場は完全に逆転する。
 
バイオリンの低音が強調されるまがまがしい劇伴を流しながら、これまでのナンパ男の行動を評価し、なぜ行為に至らなかったのかを冷酷なまでに説明する。
 
決して激高することなく、あくまでも冷静かつ淡々と言葉を放っていく。
 
しかし、あまりもに淡白な物言いは、時としてナイフに転じることもある。
 
ラスト以外は決して派手な行動に出ず、常に一本調子でナンパ男を一網打尽にしていく。
 
なぜ彼女がこのような行為に至ったのか、この際どうでもいい。
 
いかに彼女が武器も肉体も使わずに、言葉だけで男性を追い詰めていくかが今作の最大の特徴であり、魅力だろう。
 
件のナンパ男をコテンパンにし、朝帰りと見紛う姿で路地を歩きながらオープニングクレジットが流れるのだが、クレジットのフォントはなぜかバブルガムの商品タイトルのように、「異常にポップ」なのである。
 
スリラーなので、危険で攻撃的で血を彷彿とさせる「赤」ではなく、ピンクを使っているのがデザイナーの手腕が発揮されている。
 
この時には、なぜピンク色なのか、なぜポップなのかは全く説明されない。
 
だが、この時点で意味を分かる必要はない。
キャシーのカッコよさとタイトルクレジットのはしゃぎっぷりに、ただただ首を縦に振っていればいいのだ。
 
 

 

 

 
 
 

 

 

復讐するは過去にあり、ヤングアダルトな主人公。

 
10年前の大学生時代、キャシーの親友ニーナが性被害に遭ったことをきっかけに、復讐劇は始まる。
 
スリラー要素だけでも十分味わい深いのだが、本作にはもう一つ大きな物語の主軸が存在している。
 
キャシーは復讐の鬼になることで、過去から一歩も前に進めていないのだ。
 
語弊を招くかもしれないが、キャシーは大人になっても過去に囚われ続けているヤングアダルト状態なのである。
 
 
シャリーズ・セロンが演じた「ヤング≒アダルト」や、「ロミーとミッシェルの場合」などが、今作のヤングアダルト状態と酷似しているように感じる。
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親友ニーナのために過去の清算をすべく孤軍奮闘する姿は、美談のようにも聞こえるし、こっちも応援したくなる。

 

しかし、物事はそう単純には進まない。過去を気にしすぎるあまり、キャシーは一歩も前に進めない。大学時代から、時は止まったままなのだ。

  

 

 

 

過去の清算に憑りつかれ、一線を超えていくキャシー。

「知らぬ存ぜぬは許しません」が有名な、あの映画を思い出しました。

 

 

 

 
 
 

 

型にはめられた女性像を破壊する映画

 

さらにもう一つ、今作は「型にはめられた女性像の破壊」をテーマにしている。

 

さりげないセリフや服装、音楽でしか伝えられないのだが、その微弱な電波を受け取った時には、今作の見方が変わる。

 

キャシーは常に男性から、「女はかくあるべき」と指摘される。

しかしそれは、キャシーにとって足かせでしかない。

 

彼女は世間一般の女性像から逸脱し、常に世間と対抗している。

 

 

・服装

カフェでバイトしてる時は常にピンク色&花柄の服でコーデしており、 お世辞にも年相応とは言えない格好である。

 

このミスマッチ感の演出は、前述したヤングアダルト状態のメタファーとして大きな役割を果たしている。服装に加えて、キャンディーやガム、自室内に敷き詰められたピンク色の家具など、ピンクが象徴的に使われている。

 

さらに、ピンク=多くの女性が好きな色、女性らしい色として広く認知されており、世間一般が求める女性性としてのメタファーにもなっている。

 

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(C)Universal Pictures

 

ちなみに、ピンク=女性的、であることを強調した映画として、「キューティブロンド」を挙げておきたい。

男に好かれるため、世間が好む女性らしさを演出するために、自らをピンク色で包む主人公エル。

 

つまり、ピンクに身を包む=世間一般の女性像という型にはめられることを意味しているのだ。

  

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・あのお騒がせセレブの曲が何故使われた?

 

ブリトニースピアーズやパリスヒルトンの曲が使用されているのだが、妙な違和感を覚えなかっただろうか?

 

なぜ今になって、当時のお騒がせセレブの曲を使うのだろう?

 

1つは、キャシーがヤングアダルト状態であることを示すために、あえて過去に流行った曲を流しているから。

 

そしてもう一つは、ブリトニーやパリスヒルトン自体が、パパラッチによって「お騒がせセレブ」という型にはめられ、「彼女たちは非常識で判断能力がない」とレッテルが貼られてしまうのだ。

 

 

  

まとめ

 

まだ興奮が覚めないが、何度も何度も見かえしたい。

 

単純なリベンジもの、スリラーものに終始せずに、彼女が復讐をすることによって背負ってしまった負の遺産、復讐に利用される側の気持ち、様々な人間模様が交差し、常にギクシャクした関係が続く。

 

唯一の安心・安全な関係であった彼氏とも、ラストには衝撃のどんでん返し。

 

一コマ一コマの完成度、音楽との相性、画づくり、どれをとっても素晴らしい。

 

スリラー映画として満点どころか、映画としても大変優秀な出来栄え。

 

これを年間ベストに入れなくて、何を入れる?

 

面白かった!!!!

 

500,000,000点 / 100点 

 

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 以上です! ご覧いただきありがとうございました!
 
 
 
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