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映画「僕が跳びはねる理由」ネタバレあり感想解説と評価 自閉症を通して紡ぐ、壮大なコミュニケーションの旅路

 
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この記事では、「僕が跳びはねる理由」のネタバレあり感想解説記事を書いています。
 
 目次
 

まえがき

 

 

今回批評する映画はこちら

 

「僕が跳びはねる理由」

 
 

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(C)2020 The Reason I Jump Limited, Vulcan Productions, Inc., The British Film Institute

自閉症の作家である東田直樹の執筆したエッセイ「自閉症の僕が飛びはねる理由」を原作にしたドキュメンタリー。

 

毎年、自分の境遇によく似た題材のドキュメンタリー映画を目にする機会があり、そのすべてを高く評価している。

 

私自身は自閉症ではないのだが、「会話のできない」という触れ込みに思わず共感し、劇場に足を運んだ。

 

自身の境遇については後回しするとして、さっそく感想を語っていきたい。 

 

それでは「僕が跳びはねる理由」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。

 

 

 

 
 

あらすじ

  
会話のできない自閉症という障害を抱える作家・東田直樹が13歳の時に執筆し、世界30カ国以上で出版されたエッセイ「自閉症の僕が跳びはねる理由」をもとにしたドキュメンタリー。世界各地の5人の自閉症の少年少女たちの姿やその家族たちの証言を通して、自閉症と呼ばれる彼らの世界が、普通と言われる人たちとどのように異なって映っているのかを明らかにしていく。そして、自閉症者の内面がその行動にどのような影響を与えるかを、映像や音響を駆使して再現。彼らが見て、感じている世界を疑似体験しているかのような映像表現を紡ぎ、「普通とは何か?」という抽象的な疑問を多角的にひも解いていく。

 

eiga.com

 

 

 
 
 
 

「僕が跳びはねる理由」のネタバレありの感想と解説(全体)

 

 
 

 

自閉症を通して紡ぐ、壮大なコミュニケーションの旅路

 

自閉症と聞いて、何を思い浮かべるだろうか。

 

友人知人、あるいは知り合いに自閉症の人がいるケースは、きわめて稀だろう。

 

とすれば、私を含めたその他大勢は能動的に自閉症を学ぶことはせずに、映画やドラマなど映像メディアに描かれる自閉症をその印象の根幹とするのではないだろうか。 

 

世界的に見れば映画「レインマン」のダスティン・ホフマンや、日本では(少し昔だが)ドラマ「僕の生きる道」の草なぎ剛など、役者の演技として自閉症に接触する人が多いように思う。

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本作は、そんな役者の演技とは対極的に、世界各地の自閉症者とその両親をメインにした、ドキュメンタリー作品である。

 

東田直樹の著作が世界中で翻訳され、自閉症に対する考え方が変わったことが序盤に描かれる。

 

彼の著作以降、どのように自閉症者を理解し向き合っていくかが主題となっている。

 

本作で様々な自閉症の症状が説明されるが、最も重きが置かれるのは「会話」に関する問題である。

 

自閉症者は非自閉症者に比べ、周囲の環境から受け取る情報量が圧倒的に多く、個々の処理に膨大な労力と時間を要する。

 

そのため、会話を行うためにはその他の情報を処理してから、行う必要がある。

自閉症者が話せない訳ではない、話すのに時間が掛かるだけなのだ。

 

本作は、そうした自閉症者の会話の特長を丁寧に説明しながら、どのように言葉を伝えるかを描いている。

 

そう、本作は自閉症者の会話を通して、「言葉によるコミュニケーション」を描いた映画だといえる。

 

自閉症を取り上げた映像作品の数多くは、「言葉」ではなく「心」によるコミュニケーションが多いように感じる。全てを言わずとも、察することが出来る力を人は持っているが、自閉症の映画は、そうした察するコミュニケーションを全面に押し出している気がする。

 

しかし本作は、あえて言葉によるコミュニケーションにこだわる。

これにより、いかに自閉症者が非自閉症者と同じコミュニ―ケーションが取れるかが強調されているのだ。

 

日本のとある自閉症者の本を起点として、世界中に彼のメッセージが「言葉」として伝播し、自閉症の概念が変わる。

 

そんな壮大なコミュニケーションの旅路を、本作を見て感じた。

 

話は変わるが、私が4年前に鑑賞しその年のベストに選定したドキュメンタリー作品がある。

本作と同様、実際の自閉症者を主人公にした、「ぼくと魔法の言葉たち」だ。

 

この作品も「言葉」により自閉症が改善する様子を描いており、いかに言葉によるコミュニケーションが人間にとって大切なのかを説いている。

 

どちらの作品も、単に自閉症者を描いたわけではない。全ての人にとって普遍的な言葉の大切さを描いているので、是非とも多くの方に見て頂きたい。

 

 

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自閉症の世界を映画的に表現

 

主題が言葉であるにも関わらず、本作は見事な映画的表現を達成している。

 

自閉症の世界を、映画館の映像と音響を最大限活かして表現しているのだ。

 

前述した通り、自閉症者は周辺の環境から受け取る情報量が圧倒的に多い。

このことを本作では、視覚と聴覚による情報に絞り、自閉症者にはどのように世界を見聞きしているのかを、映像と音響で表現している。

 

まずは音の表現。

例えば、単なる扇風機の音が映画ではヘリコプターのプロペラ音のように再現され、サラウンドで爆音が流れる。もはや非現実的な音響設計がなされている。

 

このプロペラ音は、おそらく「地獄の黙示録」の冒頭をオマージュしたものだろう。

自閉症者にとっての聴こえ方を、ウィラード大尉の聴こえ方と重ねるあたり、実に見事な引用である。

 

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また、プロペラ音のような重低音とは対照的に、耐えがたいほどの高音が爆音で流れるシーンもある。

黒板を爪で掻きむしる音と言えばよいのだろうか、とにかく聴くだけで苦しい音だ。

 

我々には絶対に体験できない自閉症者の聴こえ方を、様々な音のカタチで伝えてくる。

 

 

映像については、自閉症者の同じ行動を繰り返すといった特徴を説明する際に、印象的に用いられる。

 

イギリスに住む自閉症の少年は、道に置いてある電気関連の器具である、「緑の箱」をひたすら監視している。正式名称は、「トランスボックス」と呼ぶらしい。おそらく、誰でも一度は見たことがあるだろう。

 

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https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11172938871

 

 

その少年は、このトランスボックスの中に流れる音が聞こえるらしく、どの種類のトランスボックスなのかが気になって仕方がない。

 

劇中ではこのトランスボックスが非常によく映り、並々ならぬ存在感を我々に植え付ける。

 

そのほかにも、ただの雨を印象たっぷりに、湿度100%のところを1000%くらいにモイスチャーに描く。

 

普段我々が見ているものとは全く別の見え方ができる、映画という魔法に掛かったような気がしてならなかった。

 

 

 

同じく「会話」に悩む者として

私は自閉症ではないが、彼らと同じく会話に苦しむ人の1人である。

 

他の記事でも書いたことがあるが、私は生まれた頃からずっと、「吃音」という症状がある。

 

www.machinaka-movie-review.com

 

何を言いたいか頭の中では分かっていても、なかなか声として発することができない。

 

言うべき時に何も言えず、会話が滞ることが多い。

 

そんな私から見ると、自閉症者が何も言えないことに対して怒りといら立ちを感じ、真っ白なキャンバスを鉛筆で塗りつぶすシーンを見て、自然と涙があふれた。

 

私も同じような経験を何度もしたことがあった。いや、今現在もしている。

 

話せないという悔しさと悲しさは、時として脳内の許容値を超える時がある。

話せないという愚痴をこぼすことすら、上手く話せない。

 

これがいかに辛いことか、身に染みて分かる。自閉症者の心の叫びが、伝わってくる瞬間だった。

 

本作で描かれる自閉症者と同じく、私も未だに上手く会話出来ているとは思えない。

 

しかし、このままじゃいけない、と焦る気持ちもある。殻に閉じこもってはいけない。どんな形であれ、世に出たい。

 

上手く話せないなら、何をもってしてコミュニケーションを取るのか。

本作で提示されたのは、会話よりもさらに広義な「言葉」によるコミュニケーションの再考である。

 

話せないなら、文字で伝えれば良い。一つ一つの文字が単語になり、言葉になり、最終的には会話になる。

 

本作では文字盤やキーボードといったツールを通して会話をする場面が描かれる。アルファベットを指さしながら、文字から単語、単語から会話になる瞬間が、私の胸をさらに熱くさせた。

 

そう、上手く話せないなら、書けば良い。

 

書けば自分の意図は伝わる。書けば会話が出来る。

 

書くことでコミュニケーションを取ればよい。

 

実は本ブログも、そうした自身のコミュニケーションの想いから始めたものである。

 

本ブログを開設した当時、私は一単語を話すこともつまづくような、もはや絶望的とも言って良いような発話能力だった。

 

そんな時に出会ったのがブログであり、想いの丈を書き連ねるようになった。

 

この作業がどれほど功を奏したのか分からないが、今ではかなり楽に会話が出来るようになった。

 

本作が伝えたように、言葉によるコミュニケーションを諦めてはいけない。逃げてはいけない。

 

そうすれば、いつかは必ず会話の花が咲く。

 

そう信じて前を進め、そんなメッセージを感じた。

 

これからも文章と会話、両方のコミュニケーションを諦めずに、頑張って生きていきたい。

 

 

 

 

まとめ

他の自閉症を取り扱った映画では絶対に描かれない、自閉症のリアルがここにある。

 

自分の境遇と似ているシーンが数多く描かれ、とても他人事とは思えない映画であった。

 

そして、自閉症じゃなくても、私のような吃音者じゃなくても、本作は誰にも門戸を開くはずだ。

 

なぜなら、言いたいことが言えないという苦悩は、社会に生きる誰しもが感じることではないだろうか。

 

会話や発話に限った話ではない。誰かに言えない、今は言えない、色んな「言えない」を感じる瞬間が、誰にもあるはずだ。

 

そんな時、我々はどのように対応すれば良いのか、どう生きて行けば良いのか。そのヒントが今作には詰まっている。

 

是非ともご鑑賞ください。

 

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95点 / 100点 

 
関連画像

 

 
 
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