- 「バッドボーイズ フォー・ライフ」のネタバレありの感想と解説(全体)
- あらすじ
- キレの良い漫才から生まれるバディ感の高まり
- 多くの映画から鉄板ネタをサンプリング
- 脚本の説明責任の高さ
- アクションの透明性の高さは天然水レベル
- ワイスピに影響を受けている?
- まとめ
「バッドボーイズ フォー・ライフ」のネタバレありの感想と解説(全体)
今回批評する映画はこちら!
「バッドボーイズ フォー・ライフ」
何本も映画を見ているうちに、どうしても苦手な監督・俳優が生まれてしまうのは、もはや自然の摂理だろう。
という前置きをしておいて正直に吐くが、マイケル・ベイとウィル・スミスは非常に苦手な組み合わせである。
サービス精神が旺盛なのは分かるが、どうも空回りしているように見えるマイケル・ベイ、そして演技に強い意志も未来も感じたことのないウィル・スミス。
今作のために「バッドボーイズ」を見直したが、中盤でもうお腹いっぱいになる飽和的なアクションの詰め込み方で、普通盛りを頼んだつもりが勝手に大盛りにされたご飯を無理やり食べているような感覚に襲われた。。
これぞベイ・マックスと言わんばかりの、、、これ以上の言及は避けるが。
今回はマイケル・ベイは監督しないと知っていたが、見る前から既にげんなりしていた私。それほどまでに、苦手という先入観は恐ろしい。
しかし、蓋を開けてみれば、現代刑事モノを代表する傑作!と思わず言ってしまいそうなほど素晴らしい続編であった。予想の10億倍面白かったというのは、嘘じゃない。
最っ高ぅぅぅぅ!!!!!!!!
いや、クッソ面白れぇぇぇぇぇ!!!!!!
と、上映中は心が踊った。
まずはコメディ描写の素晴らしさ。
現代のコメディ映画からサンプリングした鉄板のギャグ、冴え渡るウィル・スミスのツッコミ、まさかの老人イジリの多用。コメディ映画としても素晴らしい。
ただ、何より素晴らしいのは、脚本とアクションの透明性、アカウンタビリティ=説明責任の高さにある。「バッド」というタイトルに似合わない、誠実な映画だった。
どうやら続編が決定しているらしく、次はマイケル・ベイの元へと戻るらしい。あれだけ苦手だったウィル・スミスとマイケル・ベイに、これほど期待ができるのも嬉しい。
子供の頃、苦手だったピーマンが初めて美味しく感じられたような、映画ファンとして大人の階段を上ったような気分だ。
話は変わるが、最近は国会で桜を見る会が問われている。是非とも今作バッドボーイズを見て説明責任とは何か、透明性とは何かを学んで欲しいものだ。
・・・何故ここにきて時事ネタをぶち込んだのか自分でも訳が分からないが、ともかく次のバッドボーイズにも確かなWILLを感じたのは間違いない。
傑作!!
Tジョイプリンス品川で「#バッドボーイズ
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2020年1月31日
フォーライフ」鑑賞っ!
やられた!見事だ!
現代のコメディ映画の美点をふんだんに詰め込み、「バッド」な言葉による爆笑漫才が秀逸!
そんなバッドなコンビなのに、脚本・アクションの透明性の高さがベリーグッ!#桜を見る会 も今作を見習って欲しいなぁ
あらすじ
・ウィル・スミス&マーティン・ローレンス主演による大ヒットアクション映画「バッドボーイズ」の17年ぶり新作となるシリーズ第3弾。マイアミ市警の敏腕刑事コンビ、マイク・ローリーとマーカス・バーネット。ブランド物のスーツをスタイリッシュに着こなし、得意のドライビングテクニックでポルシェを飛ばすマイクに対し、マーカスは家族こそが守るべき大切なものと考え、そろそろ引退を考えている。若いエリートたちと組むことになった2人は、自分たちが年寄り扱いされることに我慢できない。そんな中、マイクが何者かに命を狙われ、バッドボーイズ最大にして最後の危機が訪れる。「ギャングスタ」で注目を集め、18年米バラエティ誌による「見るべき10人の監督たち」に選出された新鋭アディル・エル・アルビ&ビラル・ファラーがメガホンをとる。
キレの良い漫才から生まれるバディ感の高まり
まず今作は、コメディ映画として非常にクオリティが高いことが挙げられる。
いつものマイケル・ベイ作品であれば、ギャグ打率はデーブ・スペクターと同じ程度と言って良いだろう(どちらにも大変失礼だが、ご了承願いたい)
良い言い方に換言するならば、過去作のバッドボーイズは実験的な笑いに終始していたように感じる。
しかし今作は、現代コメディに欠かせない漫才要素が際立っている。ボケの一方通行がまかり通っていた時代は終わり、2010年代以降のコメディ映画は漫才ができる、特にキレの良いツッコミのできるコメディ映画が優秀だと感じている。
2008年に、吉本が北米最大のコメディ学校との提携を開始したが、少なからず関係はあったのかもしれない。
今作は現役感バリバリのウィル・スミスのツッコミ、映画で見るのも久しぶりなマーティン・ローレンスがボケという役回りに徹しており、この見事な使い分けが功を奏している。
すらっとしたウィル・スミスとぽっちゃりなマーティン・ローレンスは、まるで現代コメディの寵児であるキーガン=マイケル・キーとジョーダン・ピールのコンビのようにも感じるほどだ。
特に素晴らしかったのはウィル・スミスのツッコミっぷり。彼がどれだけ意識したか分からないが、同じ黒人のケヴィン・ハートのツッコミを彷彿とさせる言い回しであった。
とにかく大声で早口で、冷静かつ的確にツッコんでいく、まるで日本の漫才のような心地がするのがケヴィン・ハートのツッコミの美点である。
字幕は標準語だったが、個人的には「なんでやねん!」と関西弁でウィル・スミスがツッコんでいるように聞こえた。
特に、犯罪現場に向かう車に赤ちゃんを連れ込もうとしたマーティンをツッコむスピード感とワードセンスはたまらない。
加えて、「バッド」ボーイズならではのFワードが炸裂する会話も爆笑を誘う。日本語の「クソ」では到底代替できない、Fワードのキレを是非とも字幕版で体感していただきたい。
そして、このツッコミの歯切れの良さが笑いを生むだけでなく、漫才要素を通してバディ感を高めることができるのも映画として非常に効率が良い。
ボケとツッコミは水と油。この対照的な関係を強化することが、バディムービーとしては最良の結果に結びつくのである。
観客へのサービスのために、ただ笑いを入れているわけではないのだ。ただ漫才をしているようで、実はバディのキャラ立ちに多大な貢献をしている。これは大きな副産物であると感じる。
1995年の「バッドボーイズ」ではコメディ映画に漫才が浸透してなかったので、無理はない。傑作バディ映画の裏には、実は名漫才が潜んでいるのだ。
多くの映画から鉄板ネタをサンプリング
今作は、他の映画でウケた鉄板ネタをサンプリングし、一本の映画として再構築できた点が最たる魅力である。
今作の笑えるポイントは漫才だけではない。きちんとスラップスティックな笑いも入れているのが素晴らしい。
いささか不謹慎ではあるが、アメリカのコメディでは高いところから人を落下させて笑いを取るのが鉄板ネタとして使われている。
ちなみに、これを発明したのは「アザーガイズ」で、こちらも最高の刑事コメディものだ。
今作でもふいに死体を落下させ、マーティンの(奥さんの)車にぶつけさせるというドイヒーなネタを披露してくれる。日本ではまず不可能な鉄板ネタに、腹がよじれるほど笑った。
そして、極め付けはバッドボーイズを老人扱いするようなイジリの数々。
実際は老人には見えないのに、やたらと老人扱いする描写は無理があるように感じるが、マーティン・ローレンスをこれに含むことで妙な説得力があるのも今作の絶妙なポイントだ。
老人ネタの定番はITの疎さと相場は決まっているが、今作ではマーティン・ローレンスをイジリ、アレクサを上手く使えず部屋をぶち壊す様子や、
ちなみに、老人がITに四苦八苦する様子は、シルベスター・スタローン映画のネタが代表例である。
「クリード」で「クラウドに写真を送る」という意味が分からず、ふいに曇り空を見上げるロッキー、「エクスペンダブルズ3」にてスマホを普段どのように使ってるかと聞かれたドルフ・ラングレンが「時計しか見ない」とふいに吐露するシーンなど、老人とITネタは鉄板なのだ。
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脚本の説明責任の高さ
今作は笑いに終始していた訳ではなく、脚本の説明責任の高さに驚くばかりだった。
脚本では、「家族という絆と鎖」をテーマに、良いことも悪いことも「家族」をテーマに話が進んでいく。そこには一点の曇りもなく、明快なストーリーとなっている。
親子で戦い、過去の因縁を清算しようとする物語は、まるで「クリード2」を見ているようだった。・・・あまりにもスタローンの引用が多くて自分でも驚いているが、別にスタローンに絞って紹介している訳ではない。
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何より、今になってバッドボーイズを復活させる理由がきちんと描かれたのが素晴らしい。しかも説明的でなく、アクションで見せてくれたのが嬉しい。
刑事ながらも悪さも同時に働いてきたウィル・スミスに、あんな悲劇が起きるのは違和感がない。むしろ必然だとも感じる。
ただ、強いて欠点を言うならウィル・スミスの命中率が高すぎることか?
まぁ、他の映画でも1発1中をテーマにしている映画はあるので、今作に限った話ではないが。
アクションの透明性の高さは天然水レベル
下手なアクション映画だと、
・いつ = When
・どこで = Where
・だれを = Who
・何を = What
・どうやって = How
・なぜ = Why
が分からないまま、カチャカチャしたカメラ・編集と暗い画面でアクションを見づらくしてしまう。
アクション映画でこのような見づらい作風にしてしまうのは、アクションに自信がないからだと感じる。
しかし今作は上記に挙げたような、アクションの5W1Hが完璧だと感じる。
夜間の戦闘であっても、きちんと体全体を明るく照らし、引きの画で撮り、カットを割らずに堂々とアクションを撮ってくれるのが嬉しい!!
特にラストバトルのアクションは必見だ!!
ワイスピに影響を受けている?
感じた人も多いと思うが、ラストの打ち上げシーンは「ワイルドスピード」を思い出した人も多いのではないか?
どこかの屋上で、ハイネケンを片手に家族でビールを飲む様子は、ワイスピを感じた。
これも、今作のサンプリング力の賜物であろうか?
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まとめ
まさかここまで楽しめるとは思わなかった。
バッドボーイズに何も思い入れのなかった自分が、ここまで感激を受けているのも珍しい。
映画のクオリティはもちろんだが、映画館で見れたことも大きいのかもしれない。
次回作にも期待したい!監督がベイであっても、俺は必ず見に行く!!!
90点 / 100点
