- 「ロマンスドール」のネタバレありで感想・解説
- あらすじ
- 不器用な映画、でもそれがいい
- しょうもない日常が映画として成り立つ、その理由は一生
- これぞ女性版「宮本から君へ」だ!!
- 余談:今作はピエール瀧さんの結末を予言していた?
- まとめ
「ロマンスドール」のネタバレありで感想・解説
今回批評する映画はこちら!
「ロマンスドール」
最初に言っておくと、この映画をもともと観る予定はなかった。
白状すると、謝ってチケットを買ってしまったのだ。
今週公開する映画のあらすじをざっと眺めていると、『「100円の恋」の◯◯監督が』との触れ込みを発見。
あの監督が!?観ねば!!
と息巻いてしまい、何も考えずにムビチケを購入してしまった。
・・・勘の良い方は既にピンと来たかもしれないが、今作のメガホンを取ったタナダユキ監督は「100円の恋」を撮っていない。「百万円と苦虫女」を撮ったのである。
・・・「100円」と「百万円」を見間違えた結果、今この記事を書いている。
製作陣には大変申し訳ないが、これが事実である。
せっかく1400円を払ったのだから、100円じゃ元は取れない。百万円の価値があることを期待して、鑑賞した。
極端にカットを割らずに長回しの連続で、しかも特段アクションが起きることもなく、長〜〜〜い会話劇の連続。高橋一生を堪能するには最適かもしれないが、あいにく私にはその趣味がない。
正直、かったるいとさえ感じたカメラや編集だった。特に大きなアクションが起きるわけでもなく、長回しの会話劇が続く。だからと言って、会話劇が面白いわけでもない。
高橋一生と蒼井優の結婚、そして別れの話で、「マリッジーストーリー」と共通しているところはあるが、今作は芸達者のスタッフ・キャストには見えない(あえて、そうしている)。
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決して映画的に上手いわけじゃない。むしろ不器用な印象さえ感じた。
ただ、その不器用さが今作には適していると思う。
高橋一生も蒼井優も、今作に出ているキャラクターは全て不器用。
不器用だからこそ、不完全だからこそ人間であり、夫婦なんだ。
鑑賞後は切なくも愛おしい感情に包まれた、本当に良い映画だった。
高橋一生のキャラクターよろしく、きっかけは適当だったかもしれない。でも、時間が経つにつれ夢中になり、愛おしくて仕方なかった。
思った以上の掘り出し物でした。
「ロマンスドール」鑑賞っ!
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2020年1月24日
やたらと長い、編集はかったるい。映画的に上手い訳じゃない。むしろ、不器用。
でも、その不器用さが嫌いになれない。もしろ、愛おしい。
蒼井優の名演技に感服!これぞ女性版「宮本から君へ」だ!!!
60点/100点#ロマンスドール
あらすじ
・「百万円と苦虫女」のタナダユキ監督が、自身初のオリジナル小説を自ら監督・脚本を手がけて実写映画化した大人のラブストーリー。美大卒業後、ひょんなことからラブドール製作工場で働き始めた北村哲雄。やがて彼は美人で気立ての良い園子に一目ぼれして結婚するが、自分がラブドール職人であることを園子に隠し続けていた。毎日が平穏に過ぎていく中、哲雄は仕事にのめり込み、園子とは次第にセックスレスになっていく。そんなある日、園子はずっと胸の中に抱えてきた秘密を哲雄に打ち明ける。不器用さと複雑さをあわせ持つ主人公・哲雄を高橋一生、優しさの中に強さを持つ妻・園子を蒼井優が演じる。
不器用な映画、でもそれがいい
この映画、不器用がすぎる。
人生まっすぐに生きられない人々で、この映画は溢れている。
主人公の高橋一生はお金目的でラブドールの製作工場で働き出し、そこで働くきたろうと共にラブドールを作り始める。
が、この仕事風景が本当にグッダグダで見てるこっちがイライラしてくる。一生の前では強気なきたろうも、女性モデルの前だと何も言えなくなってしまう。
ちなみに、女性モデルは蒼井優で、彼女の胸を形どってラブドールの胸を作ろうとしているのである。
モデルの胸に石膏?のようなものを塗り、型を作る仕事を、ひたすら一生になすりつけようとする、きたろう。そもそも、モデルを使おうとお前が言い出したのではないのか?
この一連の下りが象徴しているように、今作にはキャラクターの行動に常に迷いが生じる。今作ではこの迷いを強調し、あえて言い淀むシーンも多く含んでいる。
セリフを噛むカットも、あえて入れている。
こんなグダグダでいいのか、本気で心配する。ストーリーの進行を邪魔してるとさえ感じる。
ただ、この不器用さが後半には愛おしさに変化していくのだから、映画は分からない。
別にキャラクターが良き行動に出るわけじゃない。高橋一生も蒼井優も、不器用なのだから。ただ、それが人間くさくて共感を持つ。愛おしい。
しょうもない日常が映画として成り立つ、その理由は一生
冷静に考えると、今作は本当にしょうもない話だ(褒めてます)
主人公がお金目的で、なんとなくラブドールを作る所から始まるのだから。
ラブドールを知らない方のために、商品リンクを貼っておく。どう言えばいいか分からないが、大人のためのリカちゃん人形のようなものだと考えれば、分かりやすい。
これでも分かりづらいだろか?もっと端的に言えば、アダルトグッズである。
アダルトグッズを作る主人公。しかも主人公に情熱があるわけでもなく、お金目的。
しかし、お金と言ってもラブドールの工場は、とてもじゃないが儲かってるようには見えない。
後半の盛り上がりに向けて、あえて序盤を下げているのかもしれない。しかし、それにしてもしょうもなさすぎる。。
しかし、こんな拍子抜けな設定であるのに、映画として成立してしまう。これはひとえに、高橋一生の画力なのだろうか。
高橋一生だからこそ、アダルトグッズを作っているのに、何か芸術作品を作っているように見えてしまうのだから。
これぞ女性版「宮本から君へ」だ!!
基本的にはグダグダな会話劇であるが、今作はちょうどダレそうなタイミングで観客にショックを与える演出がある。
最初のショックは、高橋一生が蒼井優に告白するシーンである。
これまでグダグダな話だったのに、告白するときだけテレビで見るようなキラキラした高橋一生を見せてくるのだ。
これは男の私でも、少しやられた。。
そして第二のショックは、蒼井優のとある決断である。こればっかりはネタバレができない。さすがに、できない。
が、このショックを受けた時に、個人的に「宮本から君へ」を思い出した。
これぞ女性の大いなる決断。女性らしい。実に女性らしい。
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宮本から君へ、の宮本は、とにかく周りの空気を読まない。声の大きさ、威勢の良さ。その全てが、周りに伝わってしまう。
嘘をつけないといえば聞こえはいいが、とにかく「ウルサイ」やつであることは間違いない。何か問題があれば、外にさらけ出してしまうのだ。
宮本は非常に自分勝手なのだ。しかし、この性格が男を象徴していると感じる。愛する人のために、周りを巻き込むのが宮本であり、男なのだ。
一方、今作の蒼井優は自分に問題が起きても、周りに言おうとしない。隠している。
そして、秘密裏に大きな決断を下してしまう。
しかしこれも、全ては愛する人のため。愛する人のために嘘をつき、周りに影響ないように配慮する。これが女性らしさを象徴しているように感じる。
ゆえに、今作は女性版「宮本から君へ」だと感じる。
余談:今作はピエール瀧さんの結末を予言していた?
瀧さんがラストで捕まったが、あのラストは笑うしかなかった。
瀧さんがラブドール製作会社の社長というだけで思わず笑ってしまうが、おまけに捕まってしまうのだ。瀧さんが捕まるということを、映画では見事に予言?して見せたのだから。
まとめ
人間みんな、不器用。映画も不器用であっていいと思う。後半には、その不器用さが愛おしさに変わるのだから。
60点 / 100点