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映画「コーダ あいのうた」ネタバレあり感想解説と評価 なぜルビーはチェックシャツばかり着ているのか

 
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この記事では、「コーダ あいのうた」のネタバレあり感想解説記事を書いています。
 
 目次
 

まえがき

 

 

今回批評する映画はこちら

 

「コーダ あいのうた」

 

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(C)2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

 2015年にベスト1にしたフランス映画「エール!」のアメリカリメイク。


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大体ね、リメイクにすると上手くいかないことが多いのが映画業界だよ。

 

Jホラーをリメイクしても全然怖くなかったし、韓国映画のリメイクも微妙。

ってか、ハリウッドって本当リメイク多いなぁ。

 

でもこちらの作品は、あまりにも前評判が高くてアカデミー作品賞もありえるっていうんだよねぇ。

とびっきり成功したリメイク作品。しかも過去にベスト1だと騒いだ映画だ。

 

これは見ないわけにはいかない。。

 

楽しむぞ!!!

 

それでは「コーダ あいのうた」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。

 

 

 

 
 

あらすじ

  
・家族の中でただ1人の健聴者である少女の勇気が、家族やさまざまな問題を力に変えていく姿を描いたヒューマンドラマ。2014年製作のフランス映画「エール!」のリメイク。海の町でやさしい両親と兄と暮らす高校生のルビー。彼女は家族の中で1人だけ耳が聞こえる。幼い頃から家族の耳となったルビーは家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていた。新学期、合唱クラブに入部したルビーの歌の才能に気づいた顧問の先生は、都会の名門音楽大学の受験を強く勧めるが、 ルビーの歌声が聞こえない両親は娘の才能を信じられずにいた。家業の方が大事だと大反対する両親に、ルビーは自分の夢よりも家族の助けを続けることを決意するが……。テレビシリーズ「ロック&キー」などで注目の集まるエミリア・ジョーンズがルビー役を演じ、「愛は静けさの中に」のオスカー女優マーリー・マトリンら、実際に聴覚障害を持つ俳優たちがルビーの家族を演じる。監督は「タルーラ 彼女たちの事情」のシアン・ヘダー。タイトルの「CODA(コーダ)」は、「Children of Deaf Adults= “⽿の聴こえない両親に育てられた⼦ども”」のこと。

eiga.com

 

 
 
 
 
 

「コーダ あいのうた」のネタバレありの感想と解説(全体)

「#コーダあいのうた 」鑑賞 これ以上、何を求めれば良いのか。 元のフランス映画「エール!」の素材の良さを活かしつつ、誰もが舌を巻くほどの味付けに仕上げた超一級リメイク作品。 まるで支那蕎麦からRAMENに変化を遂げたかのように、… https://t.co/2yXURUG7rr

 
 

 

文句の付けようがない

こんな凄いリメイクが今まであっただろうか・・・

 

また、嗚咽が出るほど泣いてしまった・・・

 

リアルタイムで見ていた、2015年日本公開の「エール!」を元にしたリメイク作品。

 

が、今作に関してはリメイクとは言いたくない。リメイクが持つネガティブな要素が目立ってしまうから。

 

何より、元の作品を超越してしまったら、リメイクだと言えるだろうか。

 

単にアメリカ版としてローカライズした訳でもなく、世界で通用する逸品へ仕上がっている。

 

元の作品が大好きな私にとっても、今作は驚くべき進化を遂げている。。

いま思い出しただけでも泣いてしまう。

 

今作でも、ラストに手話を使いながら歌い上げるシーンが用意されている。

元の作品でも見た光景だ。あの時は驚き、どうかするくらい涙を流した。

 

ある程度予想がついていたので、今回は驚きこそなかったが、あの時と同じように泣けてしまった。

 

分かっていても泣かされる。それほど作品の質が優れていた証拠としか言いようがない。もうぐうの音も出ないほどの完成度の高さだった。

 

 元の映画はあくまでフランス映画であって、フランス人に向けた映画だった。

 

だから楽曲もフランス人に馴染みのある曲や名曲で、地域固有の素材と味付けで仕上げた料理のような映画だった。

 

今作も元の素材を活かしつつも、誰もが舌を巻く味付けに仕上げ、まるで支那蕎麦からRAMENへと進化を遂げた世界に羽ばたく料理へと昇華させた。

 

 

素材の味を活かしつつ究極のブラッシュアップ

ストーリーや家族が住む家や職業、各シーンの撮り方などを基本的にコピーしつつも、少しの変化が驚くべき進化へと繋がっている映画なのだ。

 

なんだこの奇跡は。。

 

まずはロッシ家族の職業。

元は農業に勤しんでいたが、今回は漁業。第1次産業という点で共通していて、この被せ方も絶妙だ。

 

しかし驚くべきは、「全く同じだと面白くないでしょ」的な単純なスライドではない。

漁業にすることで、海上で無線が聴こえない→家族がルビーを必要とする環境の強化へと繋がっている。

作品全体の質を上げるための、かなり意図的なジョブチェンジだ。

 

そして細かいところだが、主人公の名前もルビー=宝石となっていて、まだネックレスや指輪として輝いていない原石のような意味合いも付している。

 

さらに、ルビーという呼称はあまりに意図的だと考えたのか、V先生はボブ・ディランになぞらえて「ボブ」という愛称を付ける。

 

ユーモアの加点とともに、音楽的な原石の意味合いをさりげなく加えているあたり、さすが複数人のオリジナル脚本による集合知の成果だ。

 

また、個人的に一番変化を感じたのは主人公のメンターとなる先生のキャラ造形。

 

「巻き舌が出来なければV先生と呼べ!」という自己紹介は、この先生が癖の強い人であることを説明するだけでなく、発声に絡めたトークによって直後の歌唱オーディションへとスムースに繋いでいる。

 

そして彼をメキシコ出身とすることで、彼もマイノリティの立場でありロッシ家族へとの親和性を高めることに成功している。

 

なんだこの上手さは。とにかくこの映画は上手さが際立っている。世界で評価されたい、賞を取りたいと一心不乱に努力し、凄まじい強度を獲得した映画である。

 

髪の毛から足の爪まで完璧なブラッシュアップがなされているリメイクは珍しくて、驚くしかないのだ。

 

もちろん、ストーリーや展開は元と同じだし同じ軌道を辿っている。しかし、少しの変化で大きな進化へと繋がっているのだ。

 

・・・何度も例に出して悪いが、やはりこの現象はラーメンと符号する。

 

元は中国人のために作られた支那蕎麦。

小麦による麺とスープ、具材を加えて蕎麦が出来上がる。

しかし、日本にローカライズする際には、小麦に水ではなくかん水を加えることによって、ラーメンが出来上がった。

 

ラーメンは瞬く間に日本で進化を遂げて、今では世界中で店が出来るほどの定番料理へと仕上がった。

 

フランスパン(フランス)でハンバーガー(アメリカ)を作ったような映画、だなんて言いたくない。

そもそも、ハンバーガーはアメリカ発祥ではない。

 

 

シング・ストーリーの継承

あとは何と言ってもデュエットのルビーとマイルズの素晴らしさではないだろうか。

 

ルビーを演じたエミリア・ジョーンズ。どこかで見たことのある顔だと思っていたが、なんと「ゴーストランドの惨劇」で娘役だった子だ。

私はとにかく、彼女に魅了された。

 

顔は非常に幼くも目力が際立ち強い意志を持つキャラに見えて、服装は基本的にネルシャツで単刀直入に言うとイモっぽい。

 

が、ひとたび歌えば破壊力抜群。美しくも力強い中音域のボイスは彼女を唯一無二の歌姫へと変貌させる。

 

そんなアンバランスな魅力に包まれたルビーが最後に歌うのは、ジュディ・コリンズの「Both Sides Now」だ。

 

もう、これ以上の選曲はないだろう。俺が断定する。

 

健常者と聾唖者という二つの間に挟まれ生きてきたルビーの人生を物語ると共に、会場にいる家族にメッセージを伝える役割も果たしている。

 

ちなみに元の映画ではMichel Saradouの 「Je Vole」を歌うが、こちらは(親元から)飛び立つということが強調されている。

 

こちらも素晴らしい選曲であるが、こちらも今作の方が1枚も2枚も上手で、一つの楽曲で複数のメッセージが見事なアンサンブルを奏でている。

 

実に素晴らしい。

 

エミリア・ジョーンズに夢中になって彼女ばかり書いてしまったが、ルビーを宝石に磨き上げたのはマイルズ演じるフェルディア・ウォルシュ=ピーロだ。長いからフェルと呼ばせて頂く。

 

フェルは青春音楽映画の大傑作「シング・ストリート」の主演を務めた役者であり、あの頃はフェルが音楽の道を切り開いた。

 

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そして今作では、彼女を支える素晴らしい助演となり、シング・ストーリーは継承された。

 

 

なぜ家族はチェックシャツばかり着ているのか

最後になるが、どうでも良いことを言っておきたい。

 

なぜルビーはチェックシャツばかり着ているのだろうか?

 

気づいた方も多いと思うが、最初から最後までルビーはシャツが多く、とりわけチェックシャツを着ている割合が高い。

 

 

チェックシャツは、比較的落ち着いた映像の中で極めて目立つ。なぜ今作でチェックシャツがフィーチャーされたのだろうか。

 

細部まで命を吹き込んでみせた今作だからこそ、ちゃんとした意味があるに違いない。

 

私が思うに、シャツは彼女が置かれた状態そのものを示している。

 

シャツは個人の判断や選択が委ねられる服で、ボタンを留めるか留めないか、シャツを入れるか出すかで大きく印象が変わる。

 

今作では基本的にシャツのボタンは留めないしシャツもインしない。

つまり、シャツは限りなくオープンな状態であり、ルビーの人生の可能性が開かれていることを意味する。

 

シャツをどう着こなすかは彼女の自由、人生も同じだ。

 

そして、チェックシャツは、最後に歌った「Both Side Now」を表すように、

二色=二つの側を暗喩しているものではないだろうか?

二色が近くで交わるデザインこそチェックシャツの特徴で、これはロッシ一家の健常者・聾唖者の関係を示すように感じる。


さらに、色にも着目すると偶然とは考えにくいことが見えてくる。


ルビーが最初に着る赤白のチェックシャツ、よく見るとルビーの原石のように思えてくる。

ルビーは赤だけでなく、実際には光の影響で白くなる部分がある。

チェックシャツはルビー自身を表すアイテムでもあるのだ。


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ルビーという名前は、宝石のように輝くことを込められて命名されたもの。つまり赤白のチェックシャツはルビーの

 

そして、最後のオーディションも彼女はシャツを着ているが、その上にセーターを着ている。

 

セーターを重ねている場合、シャツのボタンは留めるのが基本だ。

つまり、彼女は最後にはシャツのボタンを留めている→人生の選択肢を一本に決めた=歌手として生きる決断をしたという暗示ではないだろうか?

 

ちなみに、ルビーだけでなく、ルッソ一家もチェックシャツを多用している。これは必ず意図したものがあるはずだ。

 

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(C)2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

 

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(C)2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

 

 

まとめ

素晴らしい、としか言いようがない。

 

本当にお見事でした!!

 

99点 / 100点 

 

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 以上です! ご覧いただきありがとうございました!
 
 
 
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