- まえがき
- あらすじ
- 「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒」のネタバレありの感想と解説(全体)
- 女性覚醒を掲げながらも、あくまでもハーレイクイーンのファッキンな物語に!!
- 現代アメコミ映画の演出をファッショナブルに多用!!
- ラストでスーパーガールを横取り!?
- ハーレイクイーンは現代にサバイブする女性の鏡
- まとめ
まえがき
今回批評する映画はこちら
「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒」
ハーレクインを最後に見たのは、確か「スーサイドスクワッド」が最後だっただろうか。
スーサイドスクワッド自体は決して思い出したくない作品だが、それでもマーゴット・ロビー演じるハーレクインだけが輝いていたことを、今でも記憶している。
すでに海外ではひと月以上前に公開されており、高評価を続けている。スーサイドスクワッドを見た、いや見てしまった私からすると、信じられない評価だ。
ハーレクインとパンキッシュな女子たちが過激な冒険を繰り広げる本作。
メアリー・エリザベス・ウィンステッドもハーレクインの仲間として出演するということで、「10クローバーフィールドレーン」で彼女を好きになった私にとっては、もう本作を見ない理由など存在しない。
マーゴット・ロビーも今年で30歳、メアリーは35歳。アラサー女子たちの華麗なる覚醒を、楽しみに見たい。
それでは「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。
あらすじ
・「スーサイド・スクワッド」に登場して世界的に人気を集めたマーゴット・ロビー演じるハーレイ・クインが主役のアクション。悪のカリスマ=ジョーカーと別れ、すべての束縛から解放されて覚醒したハーレイ・クイン。モラルのない天真爛漫な暴れっぷりで街中の悪党たちの恨みを買う彼女は、謎のダイヤを盗んだ少女カサンドラをめぐって、残忍でサイコな敵ブラックマスクと対立。その容赦のない戦いに向け、ハーレイはクセ者だらけの新たな最凶チームを結成する。マーゴット・ロビーが自身の当たり役となったハーレイ・クインに再び扮し、敵役となるブラックマスクをユアン・マクレガーが演じた。監督は、初長編作「Dead Pigs」がサンダンス映画祭で注目された新鋭女性監督キャシー・ヤン。
「ハーレイ・クインの華麗なる覚醒」のネタバレありの感想と解説(全体)
新宿バルト9にて「#ハーレイクインの華麗なる覚醒 」を朝イチのファッキン早い時間に鑑賞ッ!
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2020年3月20日
DC映画独特の第四の壁を破る演出やデッドプール2を意識した負け犬たちのワンスアゲイン物語
従来の映画文法を徹底的に破壊し、新たなポップカルチャーを提示して見せた!
ある意味、見事なクソ映画だっ!!
女性覚醒を掲げながらも、あくまでもハーレイクイーンのファッキンな物語に!!
現代映画のもはや流行と言ってもよい「女性の男性からの解放」をテーマにしながらも、パンキッシュでやりたい放題なハーレイクイーン嬢を中心に映画が進んでいく、まさにファッキンな物語と形容するのがふさわしい一作。
マーゴットロビーは最近「スキャンダル」にも主演として出演しており、テーマ的には似ているところがある。しかし、本作ではスキャンダルで出来なかった男性への復讐を見事にやってのけている。女優って怖い、怖いね、、と思えるほど。
そして、男性のいやらしいセクハラ・パワハラをヴィランのサム・ロックウェルに込め、男性=悪として、もはや偏執的に描いている作りも特徴で、「もう大丈夫です、分かってます」とクドさを感じるようなところさえある。サム・ロックウェルも「リチャード・ジュエル」で良いモンを演じたのに、、
「スキャンダル」や「リチャード・ジュエル」で良いモンを演じてきたマーゴット・ロビーとサム・ロックウェルとは対照的な二人の演技を楽しむ映画でもある。
良い役をずっとやっていけばパブリックイメージも上がるのに、もったいないなぁと感じながらも、そんなお前らが大好きだ!!と映画ファンとして心を奪われるような感覚にもなったのは事実。
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まーゴット・ロビーとサム・ロックウェルの悪役演技が象徴するように、本作の演出の際たるものは破壊的だということ。
第4の壁を破る演出や、既存の銃撃シーンや爆破シーンを花火のように見せる演出。さらに、大胆な回想で物語のテンポをあえて悪くするような、そんな既存の映画文法を破壊するような、そんな作りにあえてしているようにも見える演出のオンパレードが目立った一作であった。
普通の映画なら絶対にやって欲しくない演出を取り入れながらも、「だからどうしたの?私はハーレイクイーンよ!!」と開き直るようなハーレイクイーンのキャラクターに、私の小言が見事にかき消されたと言ってもよい。
小さいことはもうどうでもいい。ただただ豪快なハーレイクイーンを堪能できれば、もうそれで良いのだ!!!
現代アメコミ映画の演出をファッショナブルに多用!!
そして、エンドロールの最後は「まだ帰らないの?」といった、デッドプールのラストを思わせるセリフ付き。
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最近のコメディリリーフなアメコミ映画にはよく使われる演出だが、本作でもふんだんに引用し、まるでファストファッションのように軽々しく着こなしているように感じたのが本音なところ。
流行している演出だが、怖いのは映画のバランスを崩してしまうこと。基本的に映画は観客との関係を繋げない。あくまでドラマとして、観客がいないものとして描くのが基本だ。
冒頭から第4の壁を破り観客に語りかけてくるハーレイクイーン。
下手な映画、キャラクターがやるとげんなりしてしまうのだが、型破りなハーレイクイーンの型破りな演出は、絶妙な説得力を私にもたらしてくれた。
これでいい!もっとやってくれ!! とひたすら喋りまくるハーレイクイーンに聞き入る聴衆と化していた私がいた。
ジョーカーと別れた私、もう悲しいわぁ!!とデカ盛りのアイスとアルコール度数の高い酒を飲み、絵に描いたような自暴自棄に走るハーレイクイーン。
あぁ、これ何百回も見た演出だなぁ、コメディ映画で何百回も見たなぁって思っていたところ、、
いきなり
化学工場に車ごとつっこむ大爆発がッ!!
映像的にもド派手ななんだが、ハーレイクイーン自身のジョーカーとの出会いを彷彿とさせる工場の大爆発!もちろんジョーカーとの出会いをカットバックさせながら、工場に突っ込んでいくところが巧い。
化学工場、そしてジョーカーとの関係もブロークアップさせる、ダブルミーニングのブロークアップを見せてくれる。
化学工場だからかなのか、単なる赤色の炎ではなく青や水色の炎も出してハーレイクイーンの容姿と重ねるような爆発シーンを見せてくれる。
そんな美しい花火のような爆発を背に、ニヤニヤしながら歩いていくハーレイクイーン。。
ここでタイトルクレジットがドーーーン!!!
はいっっ!!100億点!!!!
と手放しで喜びたくなるようなオープニングを見せてくれた。
観客の心を掴むにはこれ以上ないスペシャルな演出。
これだ、これを見るために俺は映画館に足を運んでるんだ、、
が、しかし! 単に良いシーンで終わらせてくれるような映画ではない。カッコ良いタイトルクレジットが流れたと思いきや、すぐにまた第4の壁を破る演出が始まってしまう、、
正直、何も喋らなければカッコ良いままで終わるのに、、と思うところもあるが、そこはハーレイクイーンのキャラクターならではと、納得している自分がいた。
そうだ、彼女は空気なんて読まないのだ。それがファッキン・クイーンと自称する所以なんだ、と。
ラストでスーパーガールを横取り!?
特徴的だったのはラストのハーレイクイーンの服装。
原色が目立つ、赤と青と黄色のジャケット。
どう見てもこの配色、スーパーマンだ!!
まるでマントを被ったようにカラフルなジャケットを着ているラスト。スーパーマン?いや、スーパーガールを横取りしていたのかもしれない。。
セリフでは言わないが、服で伝える辺りがなんとも華麗なラストだった!!
DCコミックスで一番人気のスーパーマンを横取るようなラスト。ピックポケットが得意なアジア人女性と横に座ってのこの横取りラストは、あまりにも秀逸。
スーパーガールになってもいい? なんて言わずに勝手にスーパーガールのような格好になり、ヒーローを横取りしちゃうような魅力が、ハーレイクイーンその人なのだ!!
ハーレイクイーンは現代にサバイブする女性の鏡
本作で描かれたハーレイクイーンのラフな生活を通して、DCコミック映画は庶民的な暮らしをする女性像獲得したとも言える。
そもそも、DCコミックスのキャラクターは「神話的」なキャラクターばかりを描いてきた。宇宙人のスーパーマン、神がかり的な資産を持つバットマンなど。どこか人離れしていて、とっつきにくい。庶民派なキャラクターはほとんどいなかった。
親愛なる隣人スパイダーマンが象徴するようなマーベルコミックの庶民的キャラクターとは対照的なキャラ造形なのだ。
そんなDCコミックスのキャラクター像に、本作は風穴を開けた形となった。
ここで比較に用いたいのは、同じくDCコミック映画では「ワンダーウーマン」
この作品でDCコミックは華麗な復活を遂げる、完璧無比な強い女性像を描くことに成功している。
しかし一方で、あまりにも強いワンダーウーマンは現代に生きる女性にとって少々堅苦しい気もするのは、私だけじゃないだろう。
ハーレイクイーンは同じ女性でも、スーパーマーケットを利用し、アメリカでどこでも食べれるようなエッグサンドを好物とし、打ち上げにタコス店を利用するような、非常に庶民的な女性として描いている。
神話的なキャラクターを庶民派に変更することなく、ハーレイクイーンを庶民派に寄せることで、より多くのファン層を獲得しようとしたのではないかと、感じるところがった。
現代の女性主人公の映画の特徴は「ワイルド&ラフ」だ。女性があえて男性のようなワイルドさを見せ、飲み会で大失敗する様子を見せたり、はっちゃけるような描写が現代の映画に増えてきている。これもまた、時代の流行なのだ。
まとめ
小言が言いたくなるような映画ではある。
悪役の描き方が弱いとか、とってつけたような男性=悪の図式だとか、物語のテンポが悪いとか、、
が、そんなことはどうでも良い!だまらっしゃいとケリを入れてくるようなハーレイクイーンの燦燦たる姿を、ただ拝むのだ!!!
80点 / 100点
