まえがき
今回批評する映画はこちら
「スキャンダル」
今作ほど「鼻」に注目する映画はないだろう。
第92回アカデミー賞にて今作が受賞したのはヘアー&メイクアップ賞。
日本人の辻一弘さんが二度目の賞を取ったことでも、日本では話題になった。
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シャリーズ・セロン演じる実在の人物メーガン・ケリーに似せるために、鼻をはじめとして大規模なメイクが行われた。
・・・世論はまさにセロンに注目した!
と言うダジャレが本気で面白いと思っている筆者の記事ではあるが、興味があれば読んでいってほしい。
あと、どうでもいいが、セロンの右にいる方の自主的メイクアップの凄さには、なぜ誰も言及しないのだろう。。
それでは「スキャンダル」ネタバレあり感想解説と評価、始めます。
あらすじ
・2016年にアメリカで実際に起こった女性キャスターへのセクハラ騒動をシャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビーの豪華共演で映画化。アメリカで視聴率ナンバーワンを誇るテレビ局FOXニュースの元・人気キャスターのグレッチェン・カールソンが、CEOのロジャー・エイルズを提訴した。人気キャスターによるテレビ界の帝王へのスキャンダラスなニュースに、全世界のメディア界に激震が走った。FOXニュースの看板番組を担当するキャスターのメーガン・ケリーは、自身がその地位に上り詰めるまでの過去を思い返し、平静ではいられなくなっていた。そんな中、メインキャスターの座のチャンスを虎視眈々と狙う若手のケイラに、ロジャーと直接対面するチャンスがめぐってくるが……。ケリー役をセロン、カールソン役をキッドマン、ケイラ役をロビーが、ロジャー・エイルズ役をジョン・リスゴーが演じる。監督は「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」のジェイ・ローチ、脚本は「マネー・ショート 華麗なる大逆転」でアカデミー賞を受賞したチャールズ・ランドルフ。シャーリーズ・セロンの特殊メイクを、「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」でアカデミー賞を受賞したカズ・ヒロ(辻一弘)が担当し、今作でもアカデミー賞のメイクアップ&スタイリング賞を受賞した。
「スキャンダル」のネタバレありの感想と解説(全体)
#スキャンダル 鑑賞!
— Blog_Machinaka🐻@映画ブロガー、ライター (@Blog_Machinaka) 2020年2月22日
アメリカ最大の保守系ニュースCHのFOXを舞台に、セクハラオヤジを3人のキャスターが成敗!!
..という話ではなく、淡々とセクハラ事案を問い詰めていく静かな演出、実在の人物に寄せるリアルな役作りで、実話に説得力を持たせ2時間あっというま!
素直に、すんげぇ面白かった!
思ったよりも真面目です
アメリカの保守系ニュースチャンネル「FOX」を舞台に、実際に起こったセクハラスキャンダルを取り上げた社会派作品。
冒頭に第4の壁を破る演出があり、予告編にはビリーアイリッシュのBadguyが流れ、スリリングな編集と3人が同じエレベーターに乗るシーンによって、思わず「この3人の美女がセクハラオヤジに報復!!最後はボコボコにされて一件落着!」のようなエンタメ映画を期待していたが、、
まぁ〜〜これが思ったよりも真面目な映画で!!
後述するが、今作はアダム・マッケイ監督の「マネーショート」と非常に性質が似ている。
予告編とは裏腹に3人の主人公が中々交わりそうで交わらない進行や、第4の壁を破る演出、エンドロールに流れる皮肉の効いたメッセージなど、アダム・マッケイ印がよく伝わる作品である。
ただ、アダム・マッケイよりも非常に真面目に物語は進行され、分かりやすいコメディリリーフはケイト・マッキノンに全委任している勢いなほど。
セクハラというよりも恐喝・強姦といった方がいいかもしないレベルの大事件であるため、娯楽的な要素を中々入れづらかったところもあるかもしれない。
その証拠に、今作の多くを占めるのは告発をする行為自体でなく、告発に至るまでの当事者の苦悩や葛藤となっている。
シャリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビーは同じFOXニュースのレポーターで、同じセクハラオヤジが相手で供託すれば良いのに、決して最後の最後まで仲間にならない。
セクハラオヤジは実在する人物ロジャー・エイルズで、これがまぁ憎らしいのなんのって。
今作に至るまでの系譜
実在の人物のセクハラスキャンダルを題材にした映画で、まず日本じゃやってくれないタイプの作品。
政治・経済の実話を映画化した作品はアメリカに多いが、今作はアダム・マッケイ監督の作品に強く影響を受けていると感じる。
脚本のチャールズ・ランドルフはアダム・マッケイ監督の「マネーショート」でも脚本を担当しており、なるほど!だから既視感があったのかと思わず膝を打った。
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また、マネーショートの精神的前日譚としては、同監督の「アザーガイズ」が挙げられる。
底抜けにアホなコメディでありながらも、エンドロールでなぜかリーマンショックやサブプライムローンの状況を表す統計データが流れ、一体俺は何を見てるんだ、、とうろたえること間違いなしの怪作となっている。
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さらに、ウォールストリートの鬼畜金融マンを描いた作品としてはスコセッシ監督の「ウルフ・オブ・ウォールストリート」があり、第4の壁を破る演出やマーゴット・ロビーが出演している点で、今作と共通点がある。
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これらの作品よりも前に、2005年にまたしてもアダム・マッケイ監督によって映画化された「俺たちニュースキャスター」があり、実際に起こった地方テレビ局の過激かつアホな視聴率合戦が描かれている。ちなみにこちらも実話である。
実録は面白いが、訴えられないように
つくづく思うが、この手の映画は本人から訴えられないのか本当に心配になる。
主要人物の全てが実名で、セクハラを起こしたロジャー・エイルズはFOXをクビになったとはいえマスコミ界の主要人物であることに変わりはない。
もちろん多くの人物から了承は得ていると思うが、中には事実と異なる描かれ方をされて訴訟に出るケースもあるだろう。
直近では、イーストウッドの「リチャード・ジュエル」にて登場していた女性記者の描き方が事実とあまりに異なるとして、映画自体が訴えられている事案がある。
アメリカは訴訟大国だけに、今作も誰かに訴訟されないことを祈るばかりである。
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まとめ
権力に媚びず、実名を出して映画化しようとする心意気はあっぱれ。
真面目なシーンが多いものの、会話シーンが中心でありながらもあっという間の二時間!!
是非とも映画館で鑑賞してください!
85点 / 100点